学生の職場体験や無給インターンを受け入れる際に、労働者性の有無・保険・秘密保持・撮影可否を本人と確認する書式。労働基準法第9条の判断基準と安全配慮義務を踏まえます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
インターンシップ・職場体験受入れ同意書
第1部: 書式本文
【受入企業名】(以下「甲」という)は、【参加者氏名】(以下「乙」という)及び【学校・仲介機関名】(以下「丙」という)との間で、職場体験・インターンシップの実施に関し、次のとおり確認する。
第1条(目的) 本書は、乙が甲において行う職場体験・インターンシップ(以下「本プログラム」という)の内容、労働者性の有無及び安全管理に関する事項を確認することを目的とする。
第2条(実施期間及び内容) 本プログラムの実施期間は【開始日】から【終了日】まで、内容は【体験内容(見学・実務体験等)】とする。
第3条(労働者性の確認) 本プログラムにおいて乙が行う活動は、見学、説明の聴講及び甲の指揮命令によらない自主的な体験を中心とし、甲の指揮命令の下で労務を提供し、その対価として賃金の支払いを受ける労働契約関係を成立させるものではないことを甲乙丙は確認する。
第4条(乙が労働者と評価される場合の取扱い) 本プログラムの実態が、乙が甲の指揮命令を受けて労務を提供し、その提供する労務が甲の事業の遂行に不可欠な業務に及ぶ場合、甲は当該部分について労働基準法上の労働者として扱い、最低賃金以上の賃金を支払う。
第5条(保険への加入) 丙は、本プログラム参加中に乙に生じた傷害等について、傷害保険又はこれに準ずる保険に加入する。甲は、加入状況を確認する。
第6条(秘密保持) 乙は、本プログラムを通じて知り得た甲の営業上・技術上の情報を、第三者に開示又は漏えいしない。
第7条(撮影・記録の可否) 本プログラムの様子を写真又は映像で記録し、広報等に使用する場合の可否は【可否・条件】とする。
第8条(安全配慮) 甲は、乙の生命、身体の安全に配慮し、危険を伴う作業への従事を求めない。
第9条(中止・変更) 甲、乙又は丙は、正当な理由がある場合、本プログラムの実施を中止し、又は内容を変更することができる。
第10条(未成年者に関する特則) 乙が未成年者である場合、丙は乙の親権者の同意を取得の上、本プログラムへの参加を申し込む。
以上、上記の内容を確認し、下記に署名する。
【確認日】 甲: 【氏名・名称】 印 乙: 【氏名】 印 丙: 【氏名・名称】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 受入企業の立場から
受入企業としては、無給インターンの実態が労働者性を帯びないよう、業務内容を体験・見学中心に限定する記載を強化することが望ましい。
修正例:「乙が甲の事業所内で行う作業は、社員の業務説明の聴講、簡易な資料整理の見学及び任意参加のワークショップに限るものとし、甲の指示に基づき成果物の作成又は納品を行わせない。」
一言解説:実際の業務遂行への従事度合いが高まるほど労働者性が肯定されやすくなるため、体験内容を具体的に限定し記録に残すことがリスク低減につながる。
B. 参加者・学生の立場から
参加者としては、体験中に事故等が生じた場合の連絡体制と、実費(交通費等)の負担について明確化させることが望ましい。
修正例:「甲は、本プログラム中に乙の負傷等が生じた場合、直ちに丙及び乙の緊急連絡先に連絡するとともに、必要な応急措置を講じる。交通費の負担は【負担者】とする。」
一言解説:体験学習の性質上、賃金は発生しない場合が多いが、緊急時対応や実費精算のルールを曖昧にすると参加者側の不安要素になるため、明記しておくことが望ましい。
C. 学校・仲介機関の立場から
学校・仲介機関としては、複数の受入企業と反復的にプログラムを実施する場合に備え、事前オリエンテーションの実施と評価・フィードバックの方法を条項化することが有効である。
修正例:「丙は、本プログラム開始前に乙に対しオリエンテーションを実施し、甲は終了後、乙の取組状況について丙所定の様式によりフィードバックを行う。」
一言解説:学校側の教育目的を達成するためには、単発の受入れにとどまらず、事前指導と事後評価の枠組みを制度化しておくことが望ましい。
学校・仲介機関としてはさらに、複数の受入企業を紹介する場合に備え、企業ごとの受入条件や過去のトラブル有無を記録した紹介先リストを整備しておくことが望ましい。
修正例:「丙は、乙を紹介する受入企業について、過去の受入実績及び本プログラムに関する苦情の有無を確認した上で紹介する。」
一言解説:紹介実績のない企業や過去にトラブルがあった企業を漫然と紹介し続けると、学校側の信用にも関わるため、事前の確認プロセスを制度化しておくことが望ましい。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、企業が学生等の職場体験や無給のインターンシップを受け入れる際に、労働者性の有無、保険加入、秘密保持及び撮影可否について本人及び学校・仲介機関と確認する場面で使用する。有給のインターンシップで実質的に労働契約が締結される場合には、通常の雇用契約書を用いるべきであり、本書式をそのまま使用すべきではない。
根拠法令としては、労働基準法第9条が「労働者」を事業に使用される者で賃金を支払われる者と定義しており、インターンシップの実態が、使用者の指揮命令の下で労務を提供し、その労務が事業の遂行に不可欠なものである場合には、無給と称していても労働基準法上の労働者と判断され、最低賃金法の適用を受ける可能性がある。厚生労働省の実務上の解釈においても、見学や体験的な要素が中心であるか、指揮命令に基づく労務提供が中心であるかにより判断が分かれるとされている。また、甲は乙に対し労働契約の有無にかかわらず、信義則上の安全配慮義務を負うと解される。
実務でよくある失敗として、第一に、名目上は「職場体験」としながら、実際には社員と同様の業務を長時間行わせ、後日、乙又はその保護者から未払賃金を請求されるケースがある。体験内容を見学・補助的な作業に限定し、実務を伴う場合は労働契約に切り替える運用が対策となる。第二に、保険への加入状況を確認しないまま体験を実施し、事故発生時に十分な補償が得られないケースがあり、丙による保険加入の確認を甲側でも行う体制が必要である。第三に、体験中に知り得た営業秘密の取扱いについて何も定めず、後日情報の拡散が問題となるケースがあり、秘密保持条項を設けることが望ましい。
第四に、仲介機関が受入企業の実態を確認しないまま紹介を続け、労働者性が疑われる運用を行っている企業に学生を送り込み続けてしまうケースがあり、受入企業の事前確認プロセスを設けることが対策となる。
労働者性の判断は個別の業務実態に照らして総合的に行われるため、実際の運用にあたっては弁護士等の専門家に個別に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 本プログラムの内容が体験・見学中心であることを明記したか
- [ ] 労働者性が認められる場合の取扱い(賃金支払い)を定めたか
- [ ] 傷害保険等への加入状況を確認したか
- [ ] 秘密保持義務を明記したか
- [ ] 撮影・記録の可否及び広報利用の範囲を定めたか
- [ ] 安全配慮に関する事項を明記したか
- [ ] 未成年者の場合の親権者同意取得を確認したか
- [ ] 緊急時の連絡体制を定めたか
- [ ] 実費(交通費等)の負担者を明記したか
- [ ] 事前オリエンテーション・事後評価の実施方法を検討したか
- [ ] 受入企業の過去の受入実績・苦情有無を確認したか
- [ ] 甲乙丙三者それぞれの署名欄を設けたか