退職者から使用期間や業務の種類・退職事由の証明を求められた場面で交付する法定書式。労働基準法第22条に基づき請求のない事項を記入しない運用にも対応する。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
退職証明書
第1部: 書式本文
退職証明書 【株式会社〇〇】(以下「当社」という)は、下記の者について、労働基準法第22条に基づき、下記のとおり証明する。
記
-
氏名 【〇〇 〇〇】
-
生年月日 【19〇〇年〇月〇日】
-
使用期間 【20〇〇年〇月〇日】から【20〇〇年〇月〇日】まで
-
業務の種類 【営業職(法人向け営業活動全般)】
-
当社における地位 【〇〇部〇〇課 課長】
-
賃金 【月給 〇〇円(基本給〇〇円、諸手当〇〇円を含む)】
-
退職の事由 【自己都合退職/定年退職/期間満了退職/解雇】 (解雇の場合は、その理由を付記する) 【〇〇の理由により、就業規則第〇条第〇号に基づき解雇したもの】
-
証明日・発行者 20〇〇年〇月〇日 【株式会社〇〇 代表取締役 〇〇 〇〇】 印
-
交付方法 本証明書は本人からの請求に基づき、【郵送/手交】により交付する。
-
請求事項の確認欄 本人が請求した証明事項に☑を付す欄(使用期間/業務の種類/地位/賃金/退職事由(解雇理由))を設け、請求のない事項は記載しない運用とする。
-
在職中の解雇予告に基づく請求への対応 解雇予告を受けた在職中の労働者から請求があった場合の証明事項は「退職の事由(解雇理由)」に限定される旨を、社内の交付基準に明記する。
-
再交付時の記録 同一人物から複数回の請求があった場合に備え、請求日・請求事項・交付日を記録する台帳を備える。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 請求事項のみ記載する場合
記載例: 「当社は、上記の者について、本人からの請求に基づき、下記の事項のみを証明する。使用期間:20〇〇年〇月〇日から20〇〇年〇月〇日まで/退職の事由:自己都合退職」 一言解説: 労働基準法第22条第3項は、退職証明書に労働者が請求しない事項を記入してはならないと定める。転職活動での不利益(いわゆるブラックリスト的運用)を防ぐ趣旨であるため、本人が請求した項目以外(特に解雇理由や賃金額)は空欄のまま発行してはならない。
記載例2: 「本人から追加の請求があった場合は、当該追加事項について別途証明書を再発行する。」 一言解説: 請求範囲は退職時点で固定されるものではなく、転職先の求めに応じて後日追加請求されることも多い。都度、請求書面(メール可)で範囲を確認してから再発行する運用にしておくと第22条第3項違反を避けやすい。
B. 全項目を記載する場合
記載例: 「当社は、上記の者について、本人からの請求に基づき、使用期間、業務の種類、当社における地位、賃金及び退職の事由(解雇の場合はその理由)の全てを証明する。」 一言解説: 全項目請求の場合であっても、記載内容は客観的事実に限定し、退職の事由については就業規則の根拠条文まで具体的に記載する。解雇理由を抽象的・一方的な評価表現(「協調性に欠けたため」等)のみで記載すると、後日の紛争で不利な証拠となり得る点に注意する。
記載例2: 「賃金の記載は、退職前3か月間の平均額とし、算定期間を付記する。」 一言解説: 賃金額の証明を求められた場合、単月額か平均額かで転職先の評価に影響するため、算定期間・算定方法を明記して誤解を避ける。
記載例3: 「業務の種類の記載は、退職時点の担当業務に加え、過去に従事した主要な業務を時系列で付記する。」 一言解説: 転籍・出向を経て複数の業務を経験した労働者の場合、退職時点の業務のみを記載すると経歴の実態と乖離することがある。全項目証明では、請求の範囲内で経歴の実態を正確に反映させることが望ましい。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、退職した労働者から使用期間、業務の種類、地位、賃金、退職の事由について証明を求められた場面で使用する法定書式である。労働基準法第22条第1項は、労働者が退職の場合において、使用期間、業務の種類、当該事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む)について証明書を請求した場合、使用者は遅滞なくこれを交付しなければならないと定めている。在職中の労働者が転職活動等のために証明を求める場合は同条第2項が適用され、解雇の予告がされた日以後に退職の事由(解雇の理由)について証明書を請求できる。
本書式を使ってはいけない場面としては、労働者からの請求がないにもかかわらず会社の判断のみで解雇理由等を記載した証明書を作成し、第三者(転職予定先等)に直接送付するような運用が挙げられる。これは第22条第4項が禁止する、労働者の就業を妨げる目的での通信・示し合わせに該当しうる行為であり、証明書は必ず本人からの請求と本人への交付を前提とする。
また、在職中の労働者からの請求は、退職した労働者からの請求(第1項)とは根拠条文が異なる点にも注意が必要である。第22条第2項は、解雇の予告がされた日から退職の日までの間に労働者が請求できる証明事項を「退職の事由(解雇の理由を含む)」に限定しており、使用期間や賃金額まで含めた第1項と同様の全項目証明を義務付けているわけではない。在職中の請求に対して安易に賃金額等まで証明書に記載してしまうと、社内の給与情報の取扱いとして別の問題を招きかねないため、請求の根拠が第1項(退職後)か第2項(在職中・解雇予告後)かを区別して対応する必要がある。
実務でよくある失敗の一つ目は、労働基準法第22条第3項が定める「労働者の請求しない事項を記入してはならない」というルールを見落とし、退職理由や賃金額まで一律に全項目記載してしまうことである。本書式では第1部の記載項目に「請求事項の確認欄」を設け、本人が請求した項目のみをチェックして反映する運用とすることで、この失敗を防止している。
二つ目の失敗は、解雇の場合の退職事由を「一身上の都合」等の曖昧な表現に置き換えてしまい、後日の紛争(不当解雇の主張等)において証明書の記載と会社の主張が食い違う事態を招くことである。本書式では解雇の場合、就業規則の根拠条文と具体的な理由を付記する形式とし、証明内容と社内手続の整合性を確保する。
三つ目の失敗は、証明書の交付を漫然と先延ばしにし、「遅滞なく」交付すべき義務(第22条第1項)を怠ることである。退職者側は転職先への提出期限を抱えていることが多く、交付の遅延がそれ自体トラブルの火種になりやすい。本書式では交付方法・時期をあらかじめ定め、請求受付から一定期間内に発行する社内フローと連動させることが望ましい。
なお、解雇理由の記載内容や、退職者との間で退職事由の認識に争いがある個別事案については、記載を誤ると別の紛争を誘発しかねないため、弁護士等の専門家に確認のうえで作成することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 本人からの請求があったことを書面・メール等で確認したか
- [ ] 請求された証明事項の範囲(使用期間/業務の種類/地位/賃金/退職事由)を特定したか
- [ ] 請求のない事項を記載していないか(労働基準法第22条第3項)
- [ ] 使用期間の起算日・終了日が雇用契約・退職辞令と一致しているか
- [ ] 業務の種類の記載が実際の職務内容と整合しているか
- [ ] 賃金額の算定期間・算定方法を明記したか
- [ ] 解雇の場合、理由欄に就業規則の根拠条文を付記したか
- [ ] 解雇理由の記載が抽象的な評価表現のみになっていないか
- [ ] 「遅滞なく」交付できる社内フローになっているか、交付方法(郵送/手交)と交付先が本人であることを確認したか
- [ ] 発行者(代表者名・押印)と発行日を記載し、第三者への直接送付など就業妨害と誤解されうる運用になっていないか
- [ ] 在職中の請求か退職後の請求かを区別し、根拠条文(第22条第1項/第2項)に応じた証明範囲としたか
- [ ] 請求日・請求事項・交付日を記録する台帳に記載したか