育児や介護中の社員を正社員のまま処遇する企業向け。所定労働時間や賃金換算を定め、パートタイム・有期雇用労働法第8条の均衡待遇に配慮した制度です。

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短時間正社員制度規程

第1部: 書式本文

第1条(目的) 本規程は、【株式会社〇〇】(以下「会社」という。)における短時間正社員制度について定め、所定労働時間を短縮しながらも正社員としての雇用区分及び処遇の均衡を維持することにより、多様な事情を抱える従業員が能力を発揮しながら就業を継続できる環境を整備することを目的とする。

第2条(定義) 本規程において「短時間正社員」とは、期間の定めのない労働契約を締結し、賃金が労働時間に応じて算定されることを除き通常の正社員と同様の待遇が適用される従業員であって、所定労働時間が通常の正社員よりも短い者をいう。

第3条(適用対象者) 短時間正社員制度は、【育児又は介護の事由により所定労働時間の短縮を要する従業員/事由を問わず短時間勤務を希望する従業員】のうち、会社が業務上支障がないと認めた者に適用する。

第4条(所定労働時間) 1. 短時間正社員の所定労働時間は、1週間当たり【20】時間以上【 】時間未満の範囲で、本人の希望及び業務の状況を踏まえて個別に定める。 2. 所定労働日及び勤務時間帯は、労働条件通知書に定める。

第5条(賃金の換算方法) 1. 短時間正社員の基本給は、通常の正社員の基本給に、短時間正社員の所定労働時間を通常の正社員の所定労働時間で除して得た割合(以下「勤務時間割合」という。)を乗じて算定する。 2. 諸手当のうち、通勤手当、家族手当その他労働時間の長短に連動しない性質の手当については、通常の正社員と同一の基準により支給する。役職手当その他労働時間に連動する性質の手当については、勤務時間割合を乗じて算定する。

第6条(賞与) 賞与は、通常の正社員と同一の算定基礎(考課結果等)により算定した額に、賞与算定期間における勤務時間割合を乗じて支給する。

第7条(退職金) 退職金の算定に当たっては、短時間正社員として勤務した期間について、勤務時間割合を考慮した算定方法【 】により算定する。勤続年数の算定に当たっては、短時間正社員としての勤務期間も通常の正社員の勤続年数と同様に通算する。

第8条(社会保険・雇用保険の適用) 短時間正社員は、所定労働時間及び雇用契約の期間が健康保険法、厚生年金保険法及び雇用保険法の定める適用要件を満たす限り、通常の正社員と同様に各保険を適用する。

第9条(申出手続) 1. 短時間正社員制度の利用を希望する従業員は、【1】か月前までに、所定の申出書により【人事部】に申し出るものとする。 2. 会社は、業務上の支障の有無を検討の上、利用の可否及び所定労働時間を本人と協議して決定する。

第10条(適用期間) 1. 短時間正社員制度の適用期間は、【1】年を単位とし、本人の申出により更新することができる。 2. 適用事由が育児又は介護に限定される場合、当該事由が消滅したときは、原則として通常の正社員の所定労働時間に復帰する。

第11条(教育訓練・昇進昇格) 会社は、短時間正社員に対し、所定労働時間が短いことのみを理由として教育訓練の対象から除外し、又は昇進昇格の機会を制限しない。

第12条(人事評価) 短時間正社員の人事評価は、労働時間の長短にかかわらず、業務の質及び成果を基準として通常の正社員と同一の評価基準により行う。

第13条(通常勤務への復帰) 短時間正社員は、適用期間中であっても、【1】か月前までに申し出ることにより、通常の所定労働時間の正社員に復帰することができる。

第14条(改廃) 本規程の改廃は、就業規則の変更手続に準じて行う。

第15条(附則) 本規程は【西暦年】年【 】月【 】日から施行する。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節: 育児・介護事由型向け(適用事由を育児・介護に限定する企業)

A-1 第3条の修正例 「本制度は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員、又は要介護状態にある対象家族を介護する育児介護休業法第2条第4号に定める従業員に適用する。」 一言解説: 事由を育児・介護に限定する場合、育児介護休業法上の対象家族の定義を引用することで、既存の育児・介護関連規程との整合性を保ちやすくなる。

A-2 第10条の修正例 「適用事由(養育する子の年齢又は介護を要する対象家族の状態)が消滅したときは、消滅した日の属する月の翌月から通常の所定労働時間に復帰するものとし、本人はその旨を速やかに会社に届け出るものとする。」 一言解説: 事由限定型では、事由消滅時の復帰タイミングを明確にしておかないと、事由が消滅した後も短時間勤務が漫然と継続し、他の従業員との公平性を欠く結果になりやすい。

B節: 事由を限定しない型向け(誰でも利用できる制度とする企業)

B-1 第3条の修正例 「本制度は、事由を問わず、本人が希望し、かつ会社が業務上支障がないと認めた従業員に適用する。ただし、同一部署内での利用者数が【 】名を超える場合は、業務運営上の調整のため利用時期を協議することがある。」 一言解説: 事由を限定しない場合は利用希望者が特定の部署に集中するおそれがあるため、利用者数の調整規定をあらかじめ設けておくと、業務運営とのバランスを取りやすい。

B-2 第10条の修正例 「適用期間は事由を問わず【1】年を単位として更新するものとし、更新の都度、本人の意向及び業務の状況を踏まえて所定労働時間を見直すことができる。」 一言解説: 事由を限定しない制度では長期利用が想定されるため、期間ごとの見直しを組み込み、労働時間や役割分担を定期的に調整できるようにしておくことが望ましい。

第3部: 書き方と法的ポイントの解説

本規程を導入すべき場面は、育児・介護等を理由にパートタイマーへ転換すると賞与・退職金・昇進機会等で処遇が大きく低下してしまい、結果として退職を選ぶ従業員が生じている企業、あるいは多様な人材の定着を図るために正社員のまま柔軟な働き方の選択肢を用意したい企業である。逆に、既に全社的な時差出勤・フレックスタイム制度により所定労働時間を変えずに柔軟性を確保できている企業では、賃金換算等の設計負担が大きい短時間正社員制度を新設せずとも、既存制度の拡充で対応できる場合がある。

根拠法令としては、パートタイム・有期雇用労働法第8条が、短時間労働者及び有期雇用労働者について、通常の労働者との間の待遇差が不合理と認められるものであってはならないと定めており、同法第9条は、職務内容及び配置の変更範囲が通常の労働者と同一である場合の差別的取扱いを禁止している。短時間正社員は期間の定めのない労働契約を締結する正社員であるためこれらの規定が直接適用される場面は限られるが、賃金の時間比例による換算という考え方(いわゆる均衡待遇の趣旨)はこれらの規定の考え方と共通する。また、労働契約法第3条第2項は労働契約が均衡を考慮しつつ締結・変更されるべき旨を定めており、賃金・賞与・退職金の算定に当たり通常の正社員との整合性を確保する必要がある。育児を事由とする場合は育児介護休業法第23条第1項の所定労働時間の短縮措置との関係も整理が必要となる。

実務でよくある失敗の一つ目は、基本給のみ時間比例で減額し、通勤手当や家族手当等の労働時間の長短に連動しない手当まで一律に減額してしまい、従業員から処遇への不満が生じることである。第5条のように手当の性質に応じて算定方法を書き分けることで、この失敗を防止できる。

二つ目の失敗は、退職金や勤続年数の算定において短時間正社員としての勤務期間の扱いを定めず、通常勤務への復帰後に勤続年数の算定を巡って争いが生じることである。第7条のように勤続年数は通算する旨を明記しつつ、退職金の算定方法は別途具体的に定めておくことが対策となる。

三つ目の失敗は、短時間正社員であることを理由に教育訓練や昇進昇格の対象から除外する運用が行われ、パートタイム・有期雇用労働法の趣旨に反する処遇格差が生じることである。第11条・第12条のように労働時間の長短を理由とした機会制限を禁止する旨を明記することが対策となる。

賃金換算方法及び退職金算定方法の具体的な設計については、個別事案は専門家に確認することを推奨する。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 短時間正社員の定義(通常の正社員との違い)を明記したか
  • [ ] 適用対象事由(育児・介護限定か、事由を問わないか)を明確にしたか
  • [ ] 所定労働時間の範囲(週の下限・上限)を定めたか
  • [ ] 基本給の時間比例換算方法を定めたか
  • [ ] 労働時間に連動しない手当と連動する手当を区別して算定方法を定めたか
  • [ ] 賞与・退職金の算定方法及び勤続年数の通算を定めたか
  • [ ] 社会保険・雇用保険の適用要件との整合性を確認したか
  • [ ] 申出手続と適用期間・更新方法を定めたか
  • [ ] 教育訓練・昇進昇格における不利益取扱いの禁止を明記したか
  • [ ] 通常勤務への復帰手続を定めたか