完済後に抵当権や譲渡担保を解除し登記の抹消に協力する旨の証書。民法第398条の22等の消滅に関する規律を踏まえ、抹消手続と費用負担を明確化。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
担保解除証書
第1部: 書式本文
【担保権者商号】(以下「甲」という。)は、【設定者商号】(以下「乙」という。)に対し、下記のとおり担保解除証書(以下「本証書」という。)を差し入れる。
第1条(被担保債権の完済確認) 甲及び乙は、甲乙間の【〇〇年〇〇月〇〇日】付【契約名】に基づき乙が甲に対して負担していた債務(以下「本件債務」という。)が、【〇〇年〇〇月〇〇日】をもって完済されたことを相互に確認する。
第2条(対象担保権) 本件債務を担保するため、下記のとおり設定されていた担保権(以下「本件担保権」という。)は、本件債務の完済により消滅したことを甲乙確認する。 記 1. 担保権の種類:【抵当権/根抵当権/譲渡担保権等】 2. 目的物:【不動産の表示又は動産・債権の表示】 3. 設定契約日:【〇〇年〇〇月〇〇日】 4. 登記(登録)の表示:【登記所・受付年月日・受付番号等】
第3条(消滅原因) 本件担保権の消滅は、被担保債権の弁済による消滅という付従性(民法第369条に基づく抵当権にあっては同法の一般原則、根抵当権にあっては元本確定後の民法第398条の22)に基づくものであることを甲乙確認する。
第4条(抹消手続への協力) 甲は、乙に対し、本件担保権の登記(登録)の抹消手続に必要な書類(登記済証又は登記識別情報、印鑑証明書、委任状その他登記手続上必要な一切の書類)を、本証書と同時に交付する。
第5条(抹消登記手続の費用負担) 本件担保権の抹消登記手続に要する登録免許税その他の費用は、乙の負担とする。
第6条(占有物・書類の返還) 本件担保権が動産譲渡担保又は株式質権であった場合、甲は、乙に対し、占有していた担保目的物(株券等)を本証書と同時に返還する。
第7条(保険契約への質権解除) 本件担保権に付随して火災保険等の保険金請求権に設定されていた質権がある場合、甲は当該質権を解除し、保険会社への解除通知に必要な書類を乙に交付する。
第8条(清算条項) 甲及び乙は、本件債務及び本件担保権に関し、本証書に定めるもののほか何らの債権債務のないことを相互に確認する。
第9条(表明保証) 甲は、本証書交付時点において、本件担保権について第三者への譲渡又は再担保設定を行っていないことを表明し保証する。
第10条(協議及び合意管轄) 本証書に関する紛争については、【〇〇地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
以上を証するため本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各自1通を保有する。
【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】
(甲) 住所:【 】 商号:【 】 代表者:【 】 印 (乙) 住所:【 】 商号:【 】 代表者:【 】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 担保権者向け書き換え
A-1. 複数の担保権が設定されている場合の一部解除
第2条修正例:「本件担保権のうち、下記記載の【第1順位抵当権】のみを解除の対象とし、その余の担保権は引き続き別債務を担保するものとして存続する。」 解説: 一つの担保目的物に複数の被担保債権が設定されている場合、解除対象を明確に限定し、存続する担保権との混同を防ぐ。
A-2. 根抵当権について元本確定前に一部解除する場面
第3条修正例:「本件根抵当権は元本確定前であり、本件債務の完済は根抵当権自体の消滅事由とはならないため、乙の請求に基づき別途根抵当権抹消契約を締結する。」 解説: 根抵当権は元本確定前は個別債務の弁済によっても当然には消滅しない性質(随伴性の欠如)があるため、通常の抵当権と区別して取り扱う必要がある。
B. 設定者向け書き換え
B-1. 抹消登記手続を自ら早期に完了させたい場面
第4条修正例:「甲は、本証書交付と同時に、乙が指定する司法書士に対し抹消登記手続に必要な書類一式を直接交付する。」 解説: 書類授受の遅延によって抹消登記が滞ることを防ぐため、乙側の手続実施者へ直接交付する運用とする。
B-2. 担保解除後に不動産を売却予定の場面
第9条追加例:「甲は、乙が本件不動産を第三者に売却するにあたり、抹消登記が完了していることを証する必要がある場合、甲の名義による抹消証明書の発行に協力する。」 解説: 売却契約の決済までに抹消登記が完了しない場合に備え、抹消証明書の発行協力を明記し取引の円滑化を図る。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使ってはいけない場面 本書式は、抵当権、根抵当権、動産譲渡担保、株式質権等の担保権について、被担保債権が完済されたことに伴い担保権を消滅させ、登記の抹消その他の解除手続を行う場面で用いる。被担保債権が完済されていないにもかかわらず一部の担保のみを解除する場合(増担保後の一部解除等)は、担保権者の与信判断に関わるため、本書式をそのまま用いず、残存する担保の十分性を検討した上で個別に条項を調整する必要がある。また根抵当権については、元本確定前は個別の被担保債権が消滅しても根抵当権自体は当然には消滅しない点に留意する。
根拠法令 抵当権は付従性の原則により、被担保債権が弁済その他の事由により消滅すれば、抵当権も原則として消滅する。これに対し根抵当権は、元本確定前は特定の債権との結び付きが緩やかであり(随伴性の否定、民法第398条の7)、個別債務の完済のみでは当然には消滅しないため、元本確定後において民法第398条の22に基づく消滅の手続を要する。担保権の抹消登記手続は不動産登記法に基づき、登記権利者(設定者)と登記義務者(担保権者)が共同で申請するのが原則であり、本証書と抹消登記に必要な書類の交付が実務上重要となる。動産譲渡登記や株式に関する質権についても、それぞれの制度に基づく抹消・解除の手続が必要である。
実務でよくある失敗と対策 第一に、被担保債権の完済を口頭で確認したのみで書面化せず、後日担保権消滅の事実の立証が困難になる失敗がある。第1条のように完済の事実を書面で確認する。第二に、抵当権と根抵当権の消滅要件の違いを理解せず、根抵当権について完済のみで当然に消滅すると誤解し、抹消登記手続が進まない失敗がある。第3条及びA-2修正例のように根抵当権の特殊性を踏まえた条項とする。第三に、抹消登記に必要な書類の交付を先送りにし、乙が売却等の予定していた取引に間に合わない失敗がある。第4条のように本証書交付と同時の書類交付を明記する。抹消登記手続の詳細は司法書士等の専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 被担保債権の完済(消滅)を書面で確認したか
- [ ] 対象となる担保権の種類・目的物・登記の表示を正確に記載したか
- [ ] 根抵当権の場合、元本確定の有無及び消滅要件を確認したか
- [ ] 抹消登記手続に必要な書類を本証書と同時に交付したか
- [ ] 抹消登記手続の費用負担を明記したか
- [ ] 占有担保(動産譲渡担保・株式質権等)の目的物の返還を定めたか
- [ ] 保険金請求権への質権がある場合、その解除手続を定めたか
- [ ] 甲による担保権の第三者への再設定がないことを確認したか
- [ ] 複数担保がある場合、解除対象を正確に限定したか