マンション・ビル向け建物管理委託契約書。マンション管理適正化法の重要事項説明義務に対応。
建物管理委託契約書(マンション・ビル・監修用ドラフト)
⚠ 本ファイルは弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布を禁止する。
商品ID: tatemono-kanri-itaku-keiyaku / 価格: 3,980円 / 立場バージョン: 委託者有利・管理業者有利・標準(中立)
本ドラフトは、区分所有マンションの管理組合又は単独所有ビルのオーナーが、建物の事務管理業務・管理員業務・清掃業務・設備管理業務等を管理業者に委託する契約書を対象とする。委託者がマンション管理組合である場合、マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下「マンション管理適正化法」という。)に基づき、管理業者には重要事項説明義務(同法72条)及び管理事務の報告義務(同法77条)が課される。第1部にはこの規制趣旨を踏まえた標準(中立)版を掲載する。
第1部: 契約書本文(標準版・中立)
建物管理委託契約書
委託者〇〇〇〇(管理組合又は建物所有者。以下「甲」という。)と管理業者〇〇〇〇(以下「乙」という。)とは、末尾表示の建物(以下「本建物」という。)の管理業務について、次のとおり管理委託契約(以下「本契約」という。)を締結する。
記
委託業務の対象:本建物の共用部分及び附属施設 委託期間:〇〇〇〇年〇〇月〇〇日から1年間(期間満了の3か月前までに甲乙いずれからも別段の意思表示がない場合、同一条件で1年間更新される。) 委託費:月額金〇〇〇〇円(消費税別)
第1条(委託業務の内容)
- 甲は乙に対し、本建物について次に掲げる業務(以下併せて「管理事務」という。)を委託し、乙はこれを受託する。 (1)事務管理業務(会計業務、出納業務、管理規約等の届出関係事務の補助等。マンションの場合を含む。) (2)管理員業務(受付、点検、立会い等) (3)清掃業務(日常清掃、定期清掃) (4)建物・設備管理業務(建物、電気設備、給排水設備、消防用設備等の点検及び保守)
- 前項各号の業務の具体的な内容及び実施頻度は、別紙業務仕様書のとおりとする。
第2条(委託期間及び更新)
- 本契約の委託期間は上記のとおりとする。
- 期間満了の3か月前までに甲乙いずれからも更新拒絶の書面による意思表示がない場合、本契約は同一条件でさらに1年間更新されるものとし、以後も同様とする。
第3条(委託費)
- 甲は乙に対し、委託費を毎月末日までに翌月分を乙の指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。
- 別紙業務仕様書に定める業務の範囲を超える臨時の業務(大規模修繕工事の立会い、災害復旧対応等)を委託する場合の費用は、甲乙協議のうえ別途定める。
第4条(善管注意義務)
乙は、善良な管理者の注意をもって管理事務を行わなければならない。
第5条(再委託)
- 乙は、管理事務の一部を第三者に再委託することができる。ただし、事務管理業務のうち基幹事務(管理組合の会計の収支決算案の作成、出納その他マンション管理適正化法施行規則に定める業務をいう。)の一括再委託は禁止する。
- 乙は、再委託した業務の履行について、自ら行った場合と同等の責任を負う。
第6条(重要事項説明及び契約成立時の書面交付)
- 甲がマンションの管理組合である場合、乙は、本契約の締結に先立ち、マンション管理適正化法第72条に基づき、甲(管理組合の集会)に対し、管理業務主任者をして重要事項を記載した書面を交付して説明させた。
- 乙は、本契約の成立時に、マンション管理適正化法第73条に基づく契約成立時の書面(又はこれに準ずる書面)を甲に交付する。
第7条(管理事務の報告)
- 乙は、甲に対し、毎月〇日までに前月分の管理事務に関する報告書を提出する。
- 甲がマンションの管理組合である場合、乙は、マンション管理適正化法第77条に基づき、事業年度終了後、甲の管理者等に対し、当該事業年度における管理事務に関する報告を行う。
第8条(会計業務における財産の分別管理)
- 乙は、甲から徴収した管理費及び修繕積立金その他の金銭(以下「管理費等」という。)を乙の固有財産及び他の顧客の財産と分別して管理する。
- マンションの管理組合を委託者とする場合、乙は、マンション管理適正化法及び同法施行規則が定める収納・保管口座の分別管理方式(甲名義口座での管理等)に従う。
第9条(免責事項)
- 乙は、天災その他乙の責めに帰することができない事由により管理事務の履行が遅延し、又は履行できなかったことについて、責任を負わない。
- 乙が善管注意義務を尽くしてもなお防止できなかった事故又は損害について、乙は責任を負わない。
第10条(秘密保持)
乙は、管理事務の遂行にあたり知り得た甲及び本建物の区分所有者・利用者に関する情報を、本契約の履行の目的以外に使用し、又は正当な理由なく第三者に開示してはならない。本契約終了後も同様とする。
第11条(損害賠償)
乙の責めに帰すべき事由により甲又は第三者に損害を与えたときは、乙はその損害を賠償する責任を負う。
第12条(契約の解除)
- 甲又は乙は、相手方が本契約に違反し、相当の期間を定めて是正を催告したにもかかわらずその期間内に是正されないときは、本契約を解除することができる。
- 甲又は乙は、少なくとも3か月前に書面で予告することにより、本契約を中途解約することができる。
- 甲又は乙が、破産手続開始その他の倒産手続の申立てを受け、又は自ら申し立てたときは、相手方は催告を要せず本契約を解除することができる。
第13条(反社会的勢力の排除)
- 甲及び乙は、自己(自己の役員を含む。)が暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業その他これらに準ずる者に該当しないことを表明し、保証する。
- 前項の表明保証に違反した場合、相手方は何らの催告を要せず本契約を解除することができる。
第14条(協議事項)
本契約に定めのない事項又は疑義が生じた事項については、甲及び乙が誠意をもって協議のうえ解決する。
第15条(合意管轄)
本契約に関する紛争については、本建物の所在地を管轄する地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
以上、本契約締結の証として本書2通を作成し、甲・乙記名押印のうえ、各自1通を保有する。
〇〇〇〇年〇〇月〇〇日
(甲)住所 管理組合名又は氏名 管理者名 印 (乙)住所 商号又は名称 代表者名 印 マンション管理業者登録番号 〇〇〇〇
物件の表示:所在・建物名称・構造・階数・戸数(区分所有建物の場合)
第2部: 立場別修正パターン
A. 委託者有利バージョンへの変更
A-1. 第9条(免責事項)の乙の免責範囲を限定
修正後: 「乙は、善管注意義務を尽くしたことを自ら立証した場合に限り、前項の免責を主張することができる」旨に変更し、免責の主張について乙側に立証責任を負わせる構成とする。
A-2. 第7条(管理事務の報告)の報告頻度を引き上げ
修正後: 「乙は、毎月の報告書に加え、四半期ごとに管理事務の実施状況及び改善提案をまとめた報告会を開催する」旨を追加する。
A-3. 第3条(委託費)に業務改善時の減額協議条項を追加
追加条文例: 「甲は、乙の業務品質が別紙業務仕様書の水準を著しく下回ると認めるときは、乙に対し委託費の減額又は業務改善計画の提出を求めることができる。」
A-4. 第5条(再委託)の甲の事前承諾を要件化
修正後: 「乙は、管理事務の全部又は一部を第三者に再委託しようとするときは、あらかじめ甲の書面による承諾を得なければならない」旨に変更し、基幹事務以外の再委託についても甲の統制を及ぼす。
A-5. 第12条(契約の解除)の甲からの解約予告期間を短縮
修正後: 「甲は、1か月前に書面で予告することにより、本契約を中途解約することができる」旨に短縮し、業者変更の機動性を高める。
B. 管理業者有利バージョンへの変更
B-1. 第3条(委託費)に臨時費用の請求手続を簡素化
修正後: 「別紙業務仕様書の範囲を超える臨時の業務について、甲の事前の書面承諾を得た場合は当該業務に要した実費相当額を甲が負担する」旨とし、乙が緊急対応した場合の事後承諾(追認)でも費用請求できる例外を明記する。
B-2. 第9条(免責事項)の免責範囲を拡大
修正後: 「乙は、管理員・清掃員等の履行補助者の軽過失による損害について、甲に対し責任を負わない」旨を追加し、履行補助者の行為に関する責任を限定する。
B-3. 第12条(契約の解除)の乙からの解約予告期間を明確化しつつ違約金条項を追加
追加条文例: 「甲が正当な理由なく契約期間中に乙以外の管理業者への変更を目的として本契約を解約する場合、甲は乙に対し、残存委託期間に係る委託費の一部に相当する違約金を支払う。」
B-4. 第11条(損害賠償)に賠償額の上限を設定
追加条文例: 「乙が本契約に基づき負う損害賠償責任の累計額は、事故発生時点における直近1年分の委託費相当額を上限とする。ただし、乙の故意又は重過失による場合はこの限りでない。」
B-5. 第4条(善管注意義務)に業務仕様書の合理的解釈権を追加
修正後: 「別紙業務仕様書の記載に疑義が生じた場合、乙は自己の専門的知見に基づき合理的な方法により業務を遂行することができるものとし、これにより甲の意図と齟齬が生じても直ちに義務違反とはならない」旨を追加する。
C. 標準(中立)バージョンの位置づけ
第1部の本文がこれに該当する。区分所有マンションの管理組合及び単独所有ビルのオーナーの双方に利用可能な構成とし、マンション管理適正化法上の重要事項説明義務・管理事務報告義務を確実に反映しつつ、委託者・管理業者双方の利害をバランスさせる。
D. 建物類型別の追加確認事項
D-1. 大規模マンション(複数棟・タワー型)の場合
追加確認事項: 共用施設(ラウンジ、ゲストルーム、機械式駐車場等)の管理業務を別紙業務仕様書に個別に記載し、通常の共用部分管理業務と区別して委託費を積算する必要がある。
D-2. 小規模ビル(単独所有・テナント数戸)の場合
追加確認事項: テナントとの賃貸借契約に付随するビルメンテナンス業務(清掃、設備点検)を本契約でまとめて委託する場合、テナント専有部分への立入りに関する承諾取得手続を明記しておく必要がある。
D-3. 築古マンション・大規模修繕を控えた物件の場合
追加確認事項: 大規模修繕工事の実施にあたり、乙が工事監理業務を兼務する場合の利益相反(管理業者自身の系列施工会社への発注等)に関する説明義務を追加で定めることが望ましい。
第3部: 逐条解説(購入者向け)
総論(マンションとビルの適用関係の違い) マンション管理適正化法は、区分所有者が2以上存在する共同住宅(マンション)の管理組合を委託者とする管理委託契約に適用され、重要事項説明義務(72条)及び管理事務の報告義務(77条)等の規制が及ぶ。これに対し、単独所有者が管理者となるオフィスビル・商業ビルの管理委託契約には同法の適用はなく、民法上の準委任契約・請負契約の混合契約として、契約自由の原則により内容を定めることになる。本テンプレートはマンション・ビル双方に使える汎用条項を基本としつつ、マンション固有の規制条項(第6条・第7条・第8条の一部)を組み込む構成としている。
第1条(委託業務の内容) 事務管理業務・管理員業務・清掃業務・設備管理業務の4分類は、マンション管理業界における標準的な業務区分である。別紙業務仕様書との整合性が管理品質を巡る紛争予防の鍵となる。
第2条(委託期間及び更新) 管理委託契約は通常1年更新とする例が多く、マンション管理組合が委託者の場合、更新の可否は総会(集会)決議事項となるのが一般的である。
第3条(委託費) 基本委託費と臨時業務費用を区別する構成。大規模修繕工事の立会い等、通常の管理事務の範囲を超える業務は別途費用が発生する旨を明確にしておくことがトラブル防止になる。
第4条(善管注意義務) 準委任契約(民法656条・644条)の受任者に課される基本的な注意義務水準を定める条項。
第5条(再委託) マンション管理適正化法施行規則が定める「基幹事務」(出納、会計収支決算案の作成等)の第三者への一括再委託は同法上禁止されている(同法76条)。ビル管理の場合はこの規制の適用がないため、再委託の可否は契約自由に委ねられる。
第6条(重要事項説明及び契約成立時の書面交付) マンション管理適正化法72条は、管理業者が管理組合(総会)に対し契約締結前に管理業務主任者による重要事項説明を行うことを義務付けている。この手続を欠くと行政処分の対象となり得る重要な規制である。
第7条(管理事務の報告) 同法77条は、管理業者が事業年度終了後に管理事務の報告を行うことを義務付けている。月次の業務報告は法定義務ではないが、実務上ほぼ標準的に行われている。
第8条(会計業務における財産の分別管理) 管理費等の分別管理(管理組合名義口座による管理等)は、管理業者の使い込み等の不正防止のための重要な規制であり、同法施行規則に具体的な方式が定められている。ビル管理の場合、法令上の強制はないが、同様の分別管理を契約上定めることが望ましい。
第9条(免責事項) 不可抗力及び善管注意義務を尽くした場合の免責を定める一般的な条項。免責の範囲を広げすぎると委託者に不利になるため、立証責任の所在を明確にしておくことが望ましい。
第10条(秘密保持) 区分所有者・入居者等の個人情報を取り扱う業務であるため、個人情報保護法上の委託先の監督義務(同法25条)との関係でも重要な条項である。
第11条(損害賠償) 賠償額の上限設定(キャップ)を設けるかどうかは、委託者・管理業者間の交渉の中心的なポイントになりやすい。
第12条(契約の解除) 中途解約の予告期間は、後任の管理業者への引継ぎ期間を考慮して設定する必要がある。
第13条〜第15条(反社条項・協議・管轄) 一般的な業務委託契約と共通する標準条項。
管理業者選定・変更時のチェックリスト(購入者向け補足)
管理組合又はビルオーナーが管理業者を選定・変更する際に確認すべき代表的な事項を整理すると、次のとおりである。
- 委託業務の範囲(事務管理・管理員・清掃・設備管理)が別紙業務仕様書に具体的に記載されているか
- 委託費の内訳(人件費相当額、諸経費等)が明示されているか
- 重要事項説明(マンションの場合)が総会又は集会で適切に行われたか
- 管理費等の分別管理方式が明記されているか
- 再委託の範囲・禁止事項(基幹事務の一括再委託禁止等)が明記されているか
- 契約解除・中途解約の条件が明記されているか
管理業者を変更する場合、現管理業者からの引継ぎ(会計帳簿、設備台帳、鍵の管理等)に一定の期間を要するため、中途解約の予告期間(第12条)は引継ぎに必要な実務上の期間を考慮して設定することが望ましい。
第4部: 監修者への確認依頼事項
- 第6条・第7条・第8条のマンション管理適正化法対応部分について、単独所有ビルを委託者とする場合にはこれらの条項を削除又は任意規定として扱う旨の注記を追加すべきか確認いただきたい。
- 第5条の基幹事務の一括再委託禁止(マンション管理適正化法76条)について、条文の引用及び「基幹事務」の定義の記載が最新の同法施行規則と整合しているか確認いただきたい。
- 第8条の管理費等の分別管理方式について、同法施行規則が定める複数の方式(甲名義口座による収納・保管、乙名義口座を経由する方式等)のうちどれを標準版に採用するか確認いただきたい。
- 第11条の損害賠償の上限設定(第2部B-4)について、管理業界における実務相場(年間委託費相当額を上限とする例が多いか等)を確認いただきたい。
- 第12条の中途解約予告期間(3か月前)が、マンション管理組合の総会決議スケジュール(次期管理業者選定の実務)と整合する期間か確認いただきたい。
- 個人情報保護法上の委託先監督義務との関係で、第10条の秘密保持条項に加えて、個人データの安全管理措置に関する具体的な条項を追加すべきか確認いただきたい。
- マンション管理業者登録制度(マンション管理適正化法44条)における登録の要否について、乙が未登録の事業者である場合の取扱いを購入者向け解説に追記すべきか確認いただきたい。
- 第2部D-3の大規模修繕工事における利益相反(管理業者の系列施工会社への発注)に関する説明義務の追加について、実務上の標準的な対応方法を確認いただきたい。
上記の確認事項を踏まえ、監修完了後に本テンプレートを正式版として公開する予定である。
単独所有ビルとマンション管理組合のいずれにも対応する汎用性の高いテンプレートとする方針が適切かどうかも、あわせてご意見をいただきたい。
よろしくご確認をお願いしたい。
以上の各事項について監修者のご意見を反映したうえで、本テンプレートを正式に公開する。