借地借家法38条に基づく定期建物賃貸借契約書。事前説明・期間満了通知の要件に対応。
定期建物賃貸借契約書(監修用ドラフト)
⚠ 本ファイルは弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布を禁止する。
商品ID: teiki-tatemono-chintaishaku-keiyaku / 価格: 3,480円 / 立場バージョン: 貸主有利・借主有利・標準(中立)
本ドラフトは借地借家法第38条に定める定期建物賃貸借を対象とする。定期建物賃貸借は、公正証書等の書面(又は借主の承諾を得た電磁的記録)による契約締結、契約前の書面による事前説明(更新がなく期間満了により終了する旨)、期間満了前の通知義務等、通常の賃貸借(普通借家)にはない厳格な要件が課される類型であり、これらを欠くと定期建物賃貸借としての効力が否定され、普通借家契約とみなされるおそれがある。第1部にはこれらの要件を満たす標準(中立)版を掲載する。
第1部: 契約書本文(標準版・中立)
定期建物賃貸借契約書
貸主〇〇〇〇(以下「貸主」という。)と借主〇〇〇〇(以下「借主」という。)とは、末尾表示の建物(以下「本物件」という。)について、借地借家法第38条に定める定期建物賃貸借契約(以下「本契約」という。)を次のとおり締結する。
記
賃貸借期間:〇〇〇〇年〇〇月〇〇日から〇〇〇〇年〇〇月〇〇日まで(〇年間) 賃料:月額金〇〇〇〇円 敷金:金〇〇〇〇円 使用目的:住居(又は事務所)
第1条(契約の性質)
- 本契約は、借地借家法第38条第1項に基づく定期建物賃貸借契約であり、同条の要件を満たす公正証書その他の書面(又は借主の承諾を得た電磁的記録)によって締結するものとする。
- 本契約には借地借家法第26条から第30条まで(更新に関する規定)の適用がなく、期間の満了により本契約は更新されることなく終了する。
第2条(事前説明)
- 貸主は、本契約の締結に先立ち、本契約書とは別個独立の書面を借主に交付し、本契約が借地借家法第38条第1項の規定による建物の賃貸借であり、契約の更新がなく、期間の満了により本契約が終了することについて説明した。
- 借主は、前項の説明を受け、その内容を理解したうえで本契約を締結することを確認する。
第3条(賃貸借期間)
本契約の賃貸借期間は上記のとおりとし、期間の満了により本契約は当然に終了する。借地借家法第29条第1項の規定(期間1年未満の建物賃貸借は期間の定めのないものとみなす規定)は、定期建物賃貸借契約には適用されない。
第4条(賃料)
- 借主は、貸主に対し、賃料を毎月末日までに翌月分を貸主の指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。振込手数料は借主の負担とする。
- 経済事情の変動、公租公課の増減その他の事情により賃料が近隣相場と比較して不相当となったときは、貸主及び借主は協議のうえ賃料を改定することができる。
第5条(敷金)
- 借主は、本契約締結時に貸主に対し敷金を預託する。
- 敷金は無利息とし、本契約終了後、本物件の明渡しが完了した時から〇か月以内に、借主の賃料等の未払債務及び原状回復費用を控除した残額を借主に返還する。
第6条(使用目的及び用法遵守義務)
借主は、本物件を前記使用目的にのみ使用し、貸主の書面による事前の承諾なく、その用途を変更してはならない。
第7条(転貸及び賃借権の譲渡の禁止)
借主は、貸主の書面による事前の承諾を得ることなく、本物件の全部若しくは一部を第三者に転貸し、又は本契約に基づく賃借権を譲渡してはならない。
第8条(修繕)
- 本物件の使用に必要な修繕は、借主の故意又は過失による損傷を除き、貸主の負担において行う。
- 借主は、本物件に修繕を要する箇所を発見したときは、遅滞なく貸主に通知しなければならない。
第9条(期間満了による終了の通知)
- 賃貸借期間が1年以上である場合、貸主は、期間満了の1年前から6か月前までの間(以下「通知期間」という。)に、借主に対し、本契約が期間満了により終了する旨を書面で通知しなければならない。
- 貸主が通知期間を経過した後に前項の通知をした場合、貸主は、当該通知の日から6か月を経過した後でなければ、本契約の終了を借主に対抗することができない。
- 貸主が第1項の通知を失念した場合の対応については、監修時に借地借家法38条4項の解釈を踏まえて別途整理する。
第10条(借主からの中途解約)
- 本物件の床面積が200平方メートル未満であり、かつ住居として使用されている場合において、借主が転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により本物件を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、借主は貸主に対し解約の申入れをすることができる。
- 前項の解約の申入れがあった場合、本契約は、解約の申入れの日から1か月を経過することによって終了する。
第11条(原状回復)
- 借主は、本契約終了時、通常の使用に伴う損耗及び経年変化を除き、本物件を原状に回復して貸主に明け渡す。
- 原状回復の範囲及び費用負担については、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の考え方を参考とし、別紙の負担区分表による。
第12条(再契約)
貸主及び借主は、本契約の期間満了に際し、双方の合意により、本契約と同一又は異なる条件で新たな定期建物賃貸借契約を締結すること(再契約)を妨げない。ただし、貸主は再契約を保証するものではない。
第13条(反社会的勢力の排除)
- 貸主及び借主は、自己(自己の役員を含む。)が暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業その他これらに準ずる者に該当しないことを表明し、保証する。
- 前項の表明保証に違反した場合、相手方は何らの催告を要せず本契約を解除することができる。
第14条(協議事項)
本契約に定めのない事項又は疑義が生じた事項については、貸主及び借主が誠意をもって協議のうえ解決する。
第15条(合意管轄)
本契約に関する紛争については、本物件の所在地を管轄する地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
以上、本契約締結の証として本書2通を作成し、貸主・借主記名押印のうえ、各自1通を保有する。
〇〇〇〇年〇〇月〇〇日
(貸主)住所 氏名 印 (借主)住所 氏名 印
物件の表示:所在・家屋番号・種類・構造・床面積
第2部: 立場別修正パターン
A. 貸主有利バージョンへの変更
A-1. 第10条(借主からの中途解約)の適用範囲を限定
修正後: 中途解約特約を設けず、法定要件(床面積200㎡未満の居住用建物・転勤等のやむを得ない事情)に該当する場合を除き、借主からの中途解約を認めない旨を明記する。事業用途(事務所・店舗)の定期建物賃貸借では、法定の中途解約権(借地借家法38条7項)の適用対象外であるため、中途解約に関する定めを置かなければ、借主は残存期間の賃料相当額を負担するリスクを負う。
A-2. 第4条(賃料)に賃料自動改定特約を追加
追加条文例: 「賃料は、契約締結日から2年ごとに、消費者物価指数の変動率に応じて改定する。」
解説: 定期建物賃貸借契約においては、借地借家法32条の賃料増減請求権を排除する特約(同法38条9項)が認められている点が普通借家契約との大きな違いである。賃料改定に関する特約を明確にしておくことで、将来の増減額請求権を巡る紛争を回避しやすくなる。
A-3. 第9条(期間満了による終了の通知)に借主による受領確認を追加
追加条文例: 「借主は、貸主から前条の通知を受領したときは、遅滞なく受領確認書を貸主に交付する。」
解説: 通知の到達を巡る紛争を防ぐため、借主に受領確認書の交付を求める例がある。
A-4. 第5条(敷金)の返還時期を延長
修正後: 敷金返還時期を「明渡し完了時から3か月以内」等、貸主が原状回復費用を精査する時間を確保できる期間に設定する。
A-5. 第12条(再契約)に再契約時の賃料改定条項を追加
追加条文例: 「再契約を締結する場合の賃料は、再契約時点における近隣相場を踏まえて貸主が提示する額とし、借主はこれに応じない場合、再契約をしないことができる。」
B. 借主有利バージョンへの変更
B-1. 第9条(期間満了による終了の通知)に貸主の通知懈怠時の効果を明確化
修正後: 「貸主が通知期間内に第1項の通知をしなかった場合、貸主は期間満了をもって本契約の終了を借主に対抗することができない。この場合、貸主が改めて終了の通知をした日から6か月を経過した時に本契約は終了する。」
解説: 借地借家法38条4項の効果を借主保護の観点からより明確に条文化したものである。
B-2. 第10条(借主からの中途解約)の適用範囲を拡大
修正後: 事業用途の定期建物賃貸借であっても、「借主は6か月前の書面による予告をもって本契約を中途解約することができる」旨の任意の中途解約権を追加する。法定の中途解約権(38条7項)は居住用・200㎡未満に限定されるため、事業用物件では契約で手当てしない限り借主に中途解約権はない点を踏まえた借主保護の修正である。
B-3. 第4条(賃料)に賃料減額請求権を明記
修正後: 「経済事情の変動等により賃料が近隣相場に比べ不相当に高額となったときは、借主は貸主に対し賃料の減額を請求することができる」旨を明記する。定期建物賃貸借契約であっても、当事者間で借地借家法32条の適用を排除する特約(同法38条9項)を置かない限り、賃料増減請求権の規定は適用され得る点に留意すべきである。
B-4. 第11条(原状回復)の負担区分をガイドライン準拠に統一
修正後: 「借主の負担範囲は、国土交通省ガイドラインにおける借主負担分(善管注意義務違反・故意過失による損耗)に限定し、通常損耗・経年変化分は貸主の負担とする」旨を明記し、別紙負担区分表の内容がガイドラインに沿ったものであることを条文上でも確認できるようにする。
B-5. 第12条(再契約)に再契約時の優先交渉権を明記
追加条文例: 「貸主が期間満了後に本物件を第三者に賃貸しようとするときは、借主に対し再契約締結について優先的に交渉する機会を与えるものとする。」
C. 標準(中立)バージョンの位置づけ
第1部の本文がこれに該当する。借地借家法38条の要件(書面性、事前説明義務、期間満了通知義務)を確実に満たしつつ、貸主・借主双方の利害をバランスさせる構成とする。
D. 用途別の追加確認事項
D-1. 事業用途(事務所・店舗)の場合
追加確認事項: 事業用途の場合は借地借家法38条7項の法定中途解約権(居住用・200㎡未満限定)の適用がないため、第10条を削除するか、当事者間で任意の中途解約条項を設けるかを明確にする必要がある。
D-2. 転勤者の一時的な自宅賃貸(リロケーション)の場合
追加確認事項: 転勤期間の見込みと賃貸借期間を一致させ、再契約(第12条)の要否をあらかじめ想定しておくことが望ましい。転勤期間が延長された場合の再契約交渉について、貸主・借主双方が事前にどこまで柔軟に対応するか合意しておくと紛争予防になる。
D-3. 再開発予定地の暫定利用の場合
追加確認事項: 再開発計画の進捗により賃貸借期間が短縮される可能性がある場合、その旨を事前説明書面(第2条)に明記し、借主が計画変更リスクを認識したうえで契約することを確認しておく必要がある。
第3部: 逐条解説(購入者向け)
総論(定期建物賃貸借の特徴) 定期建物賃貸借は、契約の更新がなく期間満了により確定的に終了する点が普通借家契約との最大の違いである。転勤による一時的な自宅賃貸、再開発予定地の暫定利用等、契約終了時期を明確にしたいニーズに対応する類型として利用される。
第1条(契約の性質) 借地借家法38条1項は、定期建物賃貸借契約が「公正証書による等書面によって」締結されることを要件とする。2022年の同法改正により、借主の承諾があれば電磁的記録による契約締結も認められるようになった。
第2条(事前説明) 契約書とは別個独立の書面による事前説明は、定期建物賃貸借の効力発生要件とされる(借地借家法38条3項)。この説明を欠いた場合、契約の更新がない旨の定めは無効となり、普通建物賃貸借とみなされる(最高裁判例の趣旨も踏まえた重要な要件である)。
第3条(賃貸借期間) 定期建物賃貸借では、普通借家契約と異なり1年未満の期間を定めることも有効である(借地借家法29条1項の適用がない)。
第4条(賃料) 定期建物賃貸借では、当事者間で賃料増減請求権(借地借家法32条)を排除する特約を有効とする規定(同法38条9項)があり、これが普通借家契約にはない大きな特徴である。ただし、特約を置かない場合は通常どおり32条が適用され得るため、賃料改定に関する当事者の意図を契約書上で明確にしておくべきである。
第5条(敷金) 敷金返還に関するルールは2020年施行の改正民法で明文化された(民法622条の2)。原状回復費用控除後の残額を返還する旨は、この規定を踏まえた記載である。
第6条・第7条(用法遵守・転貸禁止) 一般的な賃貸借契約と共通する基本条項。
第8条(修繕) 民法606条・607条の2に対応する修繕義務・借主による修繕権の規定を踏まえた条項。
第9条(期間満了による終了の通知) 賃貸借期間が1年以上の場合、貸主は期間満了の1年前から6か月前までに終了通知をしなければならず、これを怠ると期間満了による終了を借主に対抗できなくなる(借地借家法38条4項)。実務上最も見落とされやすい要件であり、通知漏れが定期建物賃貸借の効力を巡る紛争の主要な原因となっている。
第10条(借主からの中途解約) 床面積200㎡未満の居住用建物について、転勤・療養・介護等のやむを得ない事情がある場合の借主の中途解約権は借地借家法38条7項の強行規定であり、これを契約で排除することはできない。事業用物件にはこの規定の適用がないため、中途解約権を認めるかどうかは契約自由の範囲内で定める。
第11条(原状回復) 国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は法的拘束力を持たないが、裁判実務・行政指導において参照される基準であり、負担区分表を別紙として添付する運用が推奨される。
第12条(再契約) 定期建物賃貸借は更新という概念がないため、期間満了後も引き続き貸借関係を継続したい場合は、形式上「再契約」を締結する必要がある。再契約は法律上の権利ではなく、当事者の合意に基づく新たな契約である点を明記しておくべきである。
第13条〜第15条(反社条項・協議・管轄) 一般的な賃貸借契約と共通する標準条項。
普通建物賃貸借との比較(購入者向け補足)
貸主・借主双方が本テンプレートを利用する前に理解しておくべき最大のポイントは、定期建物賃貸借には更新という概念がなく、期間満了により確定的に契約が終了する点である。普通建物賃貸借では、貸主による更新拒絶には借地借家法28条の正当事由が必要とされ、実務上は正当事由が認められにくく契約が事実上継続することが多いのに対し、定期建物賃貸借では正当事由の有無を問わず期間満了により終了する。この違いを貸主・借主双方が契約締結前に正確に理解しているかどうかが、事前説明義務(第2条)の実質的な機能である。
定期建物賃貸借の主な利用場面を整理すると、次のとおりである。
- 転勤等で一時的に自宅を賃貸に出し、帰任後に再入居したい場合
- 再開発・建替え計画がある土地上の建物を、計画実行までの間暫定的に賃貸したい場合
- 事業用テナントとの契約で、一定期間ごとに賃料・契約条件を見直したい場合
- 相続や売却の予定があり、契約終了時期を確実に確定させたい場合
いずれの場面でも、借主にとっては契約更新がなく退去を迫られる可能性がある点をあらかじめ十分に理解したうえで契約することが重要であり、これが借地借家法38条が事前説明義務を貸主に課す趣旨である。
第4部: 監修者への確認依頼事項
- 第2条の事前説明書面について、契約書とは別個独立した書面であることを示す具体的な書式例(説明書のひな形)を第1部の後に添付すべきか確認いただきたい。
- 第9条の期間満了通知に関して、貸主が通知期間を徒過した場合の実務上の対応(改めて通知した日から6か月経過後に終了するという運用)について、購入者向け解説として十分か確認いただきたい。
- 第10条の借主からの中途解約について、事業用物件(住居以外)における任意の中途解約権の付与を標準版に含めるべきか、それとも貸主有利バージョン(第2部A-1)のみに留めるべきか方針を確認いただきたい。
- 第4条の賃料改定特約について、借地借家法38条9項に基づく賃料増減請求権の排除特約を標準版で明記するか、それとも監修者の判断で削除すべきか確認いただきたい。
- 2022年の借地借家法改正(電磁的記録による契約締結の許容)を踏まえ、第1条の記載が最新の実務(借主の承諾取得手続を含む)に対応しているか確認いただきたい。
- 再契約(第12条)について、貸主に再契約締結を義務付けない旨を明記することが、消費者契約法上の不当条項規制との関係で問題とならないか確認いただきたい。
- 第2部D-1の事業用途への転用について、法定中途解約権が適用されない旨の説明を購入者向け解説(第3部第10条解説)にどの程度詳しく記載すべきか確認いただきたい。
- 第2条の事前説明を怠った場合の効果(更新がない旨の定めの無効化)について、購入者向け解説にどの程度具体的な裁判例・行政解釈を引用すべきか確認いただきたい。
上記の確認事項を踏まえ、監修完了後に本テンプレートを正式版として公開する予定である。
特に第9条の期間満了通知義務は、貸主が失念しやすく、かつ失念した場合の効果が重大であるため、購入者向けチェックリストとしての機能を重視した解説を付す方針である。
チェックリスト化する候補項目は次のとおりである。
- 契約締結時に事前説明書面を別途交付したか
- 契約書面(又は電磁的記録)に更新がない旨を明記したか
- 期間満了の1年前から6か月前までのカレンダーにリマインドを設定したか