床面の剥離洗浄やワックス塗布を定期的に委託する契約書です。実施回数、養生方法、床材の損傷時の責任分担を規定します。ひな型をもとに数分で自社仕様に調整できます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
定期床清掃・ワックス業務委託契約書
第1部: 書式本文
【発注者商号】(以下「甲」という。)と【清掃業者商号】(以下「乙」という。)とは、甲が管理する建物の床面清掃及びワックス塗布業務の委託に関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的) 本契約は、甲が乙に対し、後記対象床面における剥離洗浄、洗浄清掃及びワックス塗布業務(以下「本業務」という。)を委託し、乙がこれを受託することについて定めることを目的とする。
第2条(対象床面及び実施回数) 1. 対象床面は【所在地・建物名・対象フロア及び床材(長尺塩ビシート、Pタイル等)】とする。 2. 本業務の実施回数は、全面剥離洗浄年【2】回、部分ワックス塗り重ねを月【1】回とし、実施日程は甲乙協議のうえ別紙年間計画表に定める。
第3条(作業内容) 乙は各実施回において、次の工程を行う。(1)既存ワックス皮膜の剥離剤による除去、(2)床面洗浄及びすすぎ、(3)乾燥確認後のワックス塗布(【2〜3】層)、(4)艶出し仕上げ。乙は使用する剥離剤及びワックスの製品名並びに希釈率を事前に甲へ通知する。
第4条(養生及び作業時間帯) 1. 乙は、作業範囲に隣接する什器、壁面、エレベーター内、避難経路等について、作業開始前に養生シート等による保護措置を講じる。 2. 本業務は原則として甲の営業時間外(【〇時〇分から〇時〇分まで】)に実施し、乾燥時間中は当該区域への立入りを制限する旨を甲が利用者に周知する。乙は乾燥完了前の立入りにより発生した事故について、立入り制限措置を適切に講じていた場合は責任を負わない。
第5条(什器の移動) 1. 甲は、作業対象区域内の移動可能な什器・備品について、作業開始前に乙の指示に従い退避させる。固定什器の移動が必要な場合は、事前に甲乙協議のうえ移動方法及び費用負担を定める。 2. 乙は、什器の移動を行う場合、破損防止のための適切な方法により行い、破損が生じた場合は次条の定めに従う。
第6条(床材及び周辺物の損傷時の責任) 1. 乙の作業に起因して床材の変色、膨れ、剥離不良その他の損傷(以下「本件損傷」という。)が生じた場合、乙は自己の費用と責任において原状回復又は損害賠償を行う。 2. 既存の床材の経年劣化又は施工不良に起因して本業務の実施中に不具合が顕在化した場合(既存ワックスの層間剥離、下地の含水等)は、乙は速やかに甲へ報告し、原因調査の結果に応じて甲乙協議のうえ追加費用の負担を定める。 3. 乙は、本件損傷の有無を確認するため、作業前後の床面状態を写真により記録し、甲の求めに応じて提示する。
第7条(薬剤の安全管理) 乙は、剥離剤その他の薬剤の使用に当たり、製品の安全データシート(SDS)を現場に備え、換気の確保及び作業員への保護具着用を徹底する。甲の従業員又は利用者が薬剤の臭気等により体調不良を訴えた場合、乙は直ちに換気強化等の措置を講じ、甲に報告する。
第8条(委託料及び支払方法) 1. 本業務の委託料は、全面剥離洗浄1回につき【〇〇】円、月次ワックス塗り重ね1回につき【〇〇】円(いずれも消費税別途)とする。 2. 甲は、乙が発行する請求書に基づき、実施月の翌月末日までに乙の指定する口座に振り込む方法により支払う。
第9条(実施報告) 乙は、各実施後【3】営業日以内に、実施日、作業内容、使用薬剤、写真記録を添付した業務報告書を甲に提出する。
第10条(契約期間) 本契約の有効期間は【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】から1年間とし、期間満了の【1】か月前までに甲乙いずれからも書面による別段の意思表示がないときは、同一条件で1年間自動更新するものとし、以後も同様とする。
第11条(秘密保持) 甲及び乙は、本契約の履行に関連して知り得た相手方の業務上の秘密を、相手方の書面による事前の承諾なく第三者に開示してはならない。
第12条(反社会的勢力の排除) 甲及び乙は、自己が暴力団その他反社会的勢力に該当せず、これらと関係を有しないことを表明し保証する。
第13条(合意管轄) 本契約に関する紛争については、【〇〇地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
以上の合意を証するため本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ各自1通を保有する。
【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】
(甲) 住所:【 】 商号:【 】 代表者:【 】印 (乙) 住所:【 】 商号:【 】 代表者:【 】印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 発注者向け書き換え
A-1. テナントが多数入居する複合ビルで実施する場合
第4条2項修正例:「本業務は各テナントの営業時間を踏まえ、フロアごとに個別の作業時間帯を別紙に定める。乙は作業開始の【3】営業日前までに対象テナントへ周知文書を掲示するものとし、周知は甲乙いずれの負担で行うかを別紙に定める。」 一言解説: フロア単位で営業時間が異なるビルでは一律の作業時間帯を定めると実施困難となるため、フロアごとの調整規定を設ける。
A-2. 床材の経年劣化が既に生じている場合
第6条2項追加例:「甲は、契約締結時点における床材の劣化状況を乙に開示し、乙は当該開示内容を前提として作業計画を立案する。開示された劣化箇所に起因する不具合について、乙は責任を負わない。」 一言解説: 老朽化した床材への施工トラブルを防ぐため、事前開示と責任範囲の限定を明文化しておくことが有効である。
B. 清掃業者向け書き換え
B-1. 特殊な床材(大理石、天然石等)を扱う場合
第3条修正例:「対象床面が大理石又はこれに類する天然石材である場合、乙は一般的な樹脂ワックスに代えて石材専用の保護剤を使用し、使用前に甲の承諾を得る。研磨作業を伴う場合は、粉じん対策として集じん機を使用する。」 一言解説: 石材は薬剤や研磨方法を誤ると不可逆的な損傷が生じるため、材質に応じた施工方法の限定を条項化しておく必要がある。
B-2. 乾燥時間中の立入りによる事故リスクを避けたい場合
第4条2項追加例:「乙は、作業区域の出入口にコーンバー及び『清掃中・乾燥中につき立入禁止』の表示を設置する。甲の従業員又は利用者が表示を無視して立ち入り、転倒等の事故が発生した場合、乙は責任を負わない。」 一言解説: 表示措置の有無が過失の有無を左右するため、具体的な措置内容を条文に落とし込み、免責の前提条件を明確にする。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使ってはいけない場面 本書式は、床面の剥離洗浄やワックス塗布のように、日常清掃とは別枠で計画的・定期的に実施する専門工事的性格の強い業務を委託する場合に用いる。日々の床モップ清掃のような日常清掃業務は別途の業務委託契約書又は点検表を用いるべきであり、両者を一つの契約に混在させると実施頻度や費用の対応関係が不明確になりやすい。
根拠法令及び留意点 本業務は請負契約としての性質を有し、成果物である床面の仕上がりについて契約不適合責任(民法第562条以下)の適用が問題となり得る。既存床材の劣化に起因する不具合か、乙の施工に起因する不具合かの切り分けが紛争の中心となるため、作業前後の写真記録により立証手段を確保しておくことが重要である。また、剥離剤等の化学物質を使用する業務であることから、労働安全衛生法上の化学物質管理(安全データシートの備付け等)にも留意する必要がある。契約不適合責任の期間や免責範囲の設計は個々の床材・薬剤によって異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
実務でよくある失敗と対策 第一に、既存床材の劣化状況を確認しないまま作業に着手し、施工後に生じた不具合の原因が施工にあるのか経年劣化にあるのか争いになる例が多い。対策として、作業前の状態を写真等で記録し、劣化状況の開示・確認を条項化する。第二に、乾燥時間中の立入り制限が徹底されず、利用者の転倒事故につながる例がある。対策として、具体的な表示・区画措置の内容を条文に明記し、措置を怠った場合の責任を明確にする。第三に、薬剤の臭気に関する苦情対応が定まっておらず現場が混乱する例があり、換気強化等の初動対応を条項に定めておくことが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 対象床面の所在・フロア・床材の種類を特定したか
- [ ] 全面剥離洗浄と部分ワックス塗り重ねの実施回数を分けて定めたか
- [ ] 作業時間帯(営業時間外か)と乾燥時間中の立入制限方法を定めたか
- [ ] 什器移動の主体と費用負担を明確にしたか
- [ ] 床材損傷時の責任分担と写真記録による立証手段を定めたか
- [ ] 既存床材の経年劣化に起因する不具合の取扱いを定めたか
- [ ] 使用薬剤の安全データシート備付け・換気確保を義務付けたか
- [ ] 特殊床材(石材等)がある場合の施工方法の限定を検討したか
- [ ] 実施報告書の提出期限と記載内容を定めたか
- [ ] 委託料を全面洗浄と月次塗り重ねで区分して定めたか