見本市や展示会にブースを出展する際の出展契約書。民法の賃貸借に準じた区画使用条件を基礎に、中止・延期時の出展料返還と不可抗力を定めます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
展示会出展契約書
第1部: 書式本文
展示会出展契約書
主催者【主催者名称】(以下「甲」という。)と出展者【出展者名称】(以下「乙」という。)は、下記展示会への出展に関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(展示会の表示) 甲が主催する下記展示会(以下「本展示会」という。)への出展について、甲は乙に対し出展小間を提供し、乙はこれを利用する。 - 展示会名称: 【展示会名称】 - 開催期間: 【開催期間】(搬入日【 】、搬出日【 】を含む。) - 会場: 【会場名称・所在地】
第2条(出展小間) 1. 甲は乙に対し、会場内小間番号【 】、小間面積約【 】平方メートルの区画(以下「本小間」という。)を出展のために提供する。 2. 乙は、甲が定める配置図及び小間番号に従い本小間を使用し、無断で位置又は面積を変更してはならない。 3. 甲は、会場の都合その他やむを得ない事由がある場合、乙に事前通知のうえ小間の位置を変更することができる。
第3条(出展料) 1. 乙は甲に対し、出展料として金【 】円(消費税別)を、【支払期限】までに甲の指定する口座へ振り込む方法により支払う。 2. 振込手数料は乙の負担とする。 3. 甲が別途定めるオプション設備(電気容量増設、装飾工事申請等)の利用料は出展料に含まれない。
第4条(搬入出及び施工) 1. 乙は、甲が指定する搬入出日時及び動線に従い、自己の費用と責任で展示物及び装飾物の搬入出を行う。 2. 乙が独自の装飾工事を行う場合は、事前に施工図面を甲に提出し、承認を得なければならない。 3. 乙は、会場の防火・防災に関する規則及び施設管理者の指示に従わなければならない。
第5条(遵守事項) 乙は、本展示会期間中、次の事項を遵守する。 (1) 甲が定める会場使用細則及び出展者マニュアルの遵守 (2) 他の出展者の営業活動を妨げる行為の禁止 (3) 消防法その他の法令に基づく展示物・装飾物の安全基準の遵守 (4) 本小間以外の共用部分への展示物のはみ出しの禁止
第6条(保険) 乙は、自己の費用で展示物及び来場者に対する損害を担保する保険に加入するものとし、甲はこれを証する書類の提示を求めることができる。
第7条(中止・延期) 1. 甲は、天災その他やむを得ない事由により、本展示会を中止し又は延期することができる。 2. 甲は、中止又は延期を決定したときは、速やかに乙に通知する。
第8条(出展料の返還) 1. 甲の都合による中止の場合、甲は乙から収受済みの出展料から既に発生した実費相当額を控除した残額を返還する。 2. 不可抗力による中止の場合、甲は出展料のうち会場費等の既発生費用に相当する部分を控除した額を返還することができるものとし、返還割合は別途甲が定める基準による。 3. 延期の場合、乙は延期後の開催に出展するか出展を取りやめるかを選択できるものとし、取りやめる場合の出展料返還条件は前二項に準じる。
第9条(不可抗力) 天災地変、感染症のまん延、法令に基づく規制、会場施設の使用不能その他甲乙いずれの責にも帰すことができない事由により本契約上の義務の履行が不能又は著しく困難となった場合、当該義務を負う当事者はその履行を免れる。
第10条(損害賠償) 乙が本契約又は会場使用細則に違反し、甲又は第三者に損害を生じさせたときは、乙はその損害を賠償する。
第11条(中途解約) 乙が自己の都合により出展を取りやめる場合、乙は甲に対し速やかに書面で通知するものとし、既払出展料は原則として返還しない。
第12条(契約解除) 甲は、乙が本契約に違反し、相当期間を定めた催告後も是正しないときは、本契約を解除することができる。
第13条(協議事項) 本契約に定めのない事項は、甲乙誠実に協議して定める。
以上、本契約締結の証として本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各1通を保有する。
【締結日】
甲: 【住所】 【名称】 印 乙: 【住所】 【名称】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 主催者向け
A-1 修正後: 第8条第2項について、不可抗力中止時の返還割合を「開催日の90日超前の中止は80%、60日前は50%、30日前以降は返還しない」等、段階的な控除基準を別紙で明示する条文に差し替える。 一言解説: 返還割合を段階化しておくことで、会場キャンセル料の発生時期と出展者への説明のずれを防ぎ、個別交渉の負担を減らせる。
A-2 追加条文例: 「乙は、本小間の使用状況、来場者対応その他運営状況について甲が実施する巡回・指導に従うものとし、これに従わない場合、甲は乙に対し是正を求めることができる。」 一言解説: 多数の出展者を管理する主催者の立場では、会場全体の安全・秩序維持のための巡回権限を明記しておくと、トラブル出展者への対応根拠になる。
B. 出展者向け
B-1 修正後: 第8条に「甲の都合による中止の場合、乙は出展準備のために既に支出した費用(装飾工事費、印刷物代等)について、甲に対しその一部負担を協議により求めることができる。」を追加する。 一言解説: 出展者側では、出展料の返還だけでなく準備費用の負担の所在も争点になりやすいため、協議条項をあらかじめ設けておくと交渉の出発点になる。
B-2 運用上の留意点: 第4条の搬入出について、乙は自社の搬入出スケジュールを社内共有し、施工業者との契約に本契約の搬入出日時・動線の制約を反映させる。 一言解説: 出展者は自社の装飾業者や運送業者との契約と会場規則が食い違うと搬入出当日にトラブルになりやすいため、事前のスケジュール整合が実務上重要となる。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、見本市・展示会の主催者が出展者にブース区画を提供し、出展料を収受する場面で使用する。会場の賃貸借契約そのものではなく、区画利用権の設定と付随サービス提供を内容とする複合的な契約であるため、単純な建物賃貸借の条項をそのまま流用すると、搬入出や装飾工事に関する規律が抜け落ちる点に注意が必要である。長期の占有権や独占的排他利用を前提とする契約には適さない。
法的性質としては、特定の区画を一定期間使用させる点で民法上の賃貸借(民法第601条)に類似する部分があるが、判例・実務上は主催者の運営サービス提供を伴う無名契約(混合契約)として扱われることが多く、民法の賃貸借規定がそのまま適用されるとは限らない。危険負担に関する民法第536条の考え方(当事者双方の責めに帰することができない事由による履行不能の場合の反対給付債務の帰趨)は、中止時の出展料返還条項を検討する際の基礎となる。
実務でよくある失敗の一つ目は、出展料返還の基準を「協議による」とだけ定め、中止発生時に具体的な返還額をめぐって紛争化することである。第8条のように、既発生費用の控除方法や段階的な返還割合をあらかじめ数値で示しておくことが望ましい。
二つ目の失敗は、不可抗力条項に感染症のまん延や行政指導による会場使用制限など、近年現実に発生した事象を具体的に列挙していないため、想定外の事態が生じた際に不可抗力該当性の判断で対立することである。第9条のように例示を具体化し、該当性の判断基準を明確にしておくべきである。
三つ目の失敗は、装飾工事や搬入出の遅延・違反に対する是正措置や損害賠償の範囲が不明確なまま契約を締結し、他の出展者への迷惑行為が生じた際に対応根拠を欠くことである。第5条・第10条のように遵守事項と損害賠償を明記し、会場使用細則を契約の一部として引用しておくことが有効である。
出展料の返還割合や不可抗力の該当性判断は個別の事案ごとに異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 小間番号・面積・配置図が契約書又は別紙で特定されているか
- [ ] 出展料の金額、支払期限、振込手数料の負担者を明記したか
- [ ] 搬入出の日時・動線・施工承認手続を定めたか
- [ ] 会場使用細則・出展者マニュアルを契約の一部として引用したか
- [ ] 中止・延期時の出展料返還基準を段階的かつ具体的に定めたか
- [ ] 不可抗力の定義に近年想定される事象(感染症、行政規制等)を含めたか
- [ ] 保険加入の要否と証明書類の提出義務を定めたか
- [ ] 中途解約時の出展料の取扱いを明記したか
- [ ] 装飾工事による会場・近隣小間への損害の賠償責任の所在を明確にしたか
- [ ] 契約解除事由と催告手続を定めたか