賃借人が第三者へ転貸や賃借権譲渡を行う前に、民法第612条の承諾を得るため使用予定や条件を示して賃貸人へ申し入れる書面です。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
賃借権譲渡・転貸承諾請求書
第1部: 書式本文
賃借権譲渡・転貸承諾請求書
【賃貸人住所】 【賃貸人氏名・名称】 御中
【作成日:西暦年月日】
【賃借人住所】 【賃借人氏名・名称】 印
件名: 賃借権の【譲渡・転貸】に関する承諾のお願い
賃借人は、賃貸人に対し、下記のとおり賃借権の【譲渡・転貸】について、民法第612条第1項に基づく承諾を求める。
- 賃借人と賃貸人は、【物件所在地】について【契約締結日】付賃貸借契約(以下「本契約」という。)を締結している。
- 賃借人は、【事情、例:事業所移転・親族への店舗承継等】のため、本契約に基づく賃借権を下記の者へ【譲渡・転貸】したいと考えている。
- 譲受人・転借人: 【氏名・名称、住所、連絡先】
- 使用目的: 【新たな使用目的、現在の使用目的との異同】
- 予定時期: 【譲渡・転貸開始予定日】
- 民法第612条第1項は、賃借人が賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない旨を定めている。
- 同条第2項は、賃借人が賃貸人の承諾を得ずに第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人が契約を解除できる旨を定めている。賃借人は、無断譲渡・転貸による契約解除のリスクを避けるため、事前に本書面により承諾を求めるものである。
- 【譲渡・転貸】後の賃料支払方法については、下記のとおり予定している。
- 【賃料の支払主体・保証人の要否・敷金の取扱い等】
- 賃借人は、【譲渡・転貸】後も、本契約上の賃借人としての地位又は連帯保証等の責任を維持する用意があることを申し添える。(転貸の場合)
- 賃貸人は、本書面到達後【回答期限、例:14日】以内に、承諾の可否について回答されたい。
- 賃貸人が承諾しない場合は、その理由を書面により明らかにされたい。
- 承諾に際して敷金の再差入れ、賃料の見直し、新賃借人・転借人との面談その他の条件がある場合は、あわせて提示されたい。
- 承諾書面のひな形が必要な場合は、賃借人において準備するので申し出られたい。
- 賃借人は、譲受人・転借人の資力及び使用目的を示す資料(【資料名、例:決算書・営業計画書等】)を必要に応じて提出する用意がある。
- 本契約の賃借人としての義務(未払賃料、原状回復義務等)は、【譲渡・転貸】の実行前に生じたものについて、引き続き賃借人が履行する。
以上
本申入れへの回答送付先 【送付先住所】 【担当者名】 【電話番号・メールアドレス】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 承諾を求める賃借人
修正文例:
賃借人は、【譲受人・転借人】の使用目的及び資力について、【資料、例:決算書・身分証明書等】を添付し、賃貸人の判断に資する情報を提供する。背信的行為と認めるに足らない事情があることを併せて説明する。
一言解説: 無断譲渡・転貸による解除が制限される「背信的行為と認めるに足りない特段の事情」の考え方を意識し、承諾を得やすくするための事情説明を具体的に記載すると効果的である。特に親族間承継のように賃借人との人的関係が強い場面では、賃貸人が懸念しやすい使用継続性・支払能力の不安を先回りして解消する説明を加えると承諾を得やすい。
B. 賃貸人側
修正文例:
賃貸人は、賃借人からの申入れについて、譲受人・転借人の使用目的が本契約の用法(【用法、例:店舗としての使用】)に反しないこと、及び賃料支払能力に問題がないことを確認できた場合に限り承諾する。承諾に際しては、賃借人及び譲受人・転借人との間で、賃借人の地位承継又は転貸借契約の内容を明記した合意書を別途締結することを条件とする。
一言解説: 賃貸人側は、承諾の可否を判断する材料(用法遵守・資力・連帯保証の有無)を先に整理し、条件付き承諾とする形で回答すると、後日の紛争を予防しやすい。承諾の対価として承諾料を求める慣行がある地域・物件種別もあるため、承諾条件に承諾料の要否をあわせて明記しておくと、後の認識違いを防げる。
第3部: 賃借権譲渡・転貸承諾請求書に関する解説
使う場面・使わない場面
本書式は、賃借人が第三者へ賃借権を譲渡し、又は賃借物を転貸しようとする際に、事前に賃貸人の承諾を得るために使用する。既に無断で譲渡・転貸を実行してしまった後の事後承諾を求める場合にも応用できるが、その場合は民法第612条第2項の解除リスクが既に発生している点に留意し、背信的行為に当たらない事情をより丁寧に説明する構成に修正する必要がある。単なる同居人の追加や、賃借人本人が主体的に使用を継続する範囲内の利用形態については、譲渡・転貸に該当しない場合があり、本書式を用いる前に該当性を検討すべきである。
根拠法令
本書式の根拠は民法第612条であり、第1項は賃借権の譲渡・転貸に賃貸人の承諾を要すること、第2項は無承諾の譲渡・転貸があった場合の賃貸人の解除権を定めている。もっとも、判例上、賃借人の行為が賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合には、無断譲渡・転貸であっても解除権の行使が制限されるとされており、承諾を求める際にはこの背信性の有無を意識した事情説明が重要となる。事業用店舗の賃借権譲渡の場面では、借地借家法上の定期建物賃貸借に関する規律(借地借家法第38条)との関係も別途確認を要する。
実務でよくある失敗と条項上の対策
第一に、譲受人・転借人の情報を曖昧にしたまま承諾を求め、賃貸人の判断材料が不足して回答が遅れる失敗がある。第2項のように使用目的・予定時期・連絡先を具体的に記載することでこれを防ぐ。第二に、承諾後の賃料支払主体や敷金の取扱いを詰めずに進め、後日の紛争につながる例があるため、第5項で賃料・敷金の取扱いをあらかじめ整理しておく。第三に、無断で譲渡・転貸を先行させてから事後的に承諾を求め、解除リスクを負ってしまう例があるため、必ず実行前に本書式を送付し、回答を得てから譲渡・転貸を実行する運用を徹底する。第四に、譲渡後も賃借人が旧契約上の未払債務について責任を負うのか整理しないまま手続を進め、後日の請求先が不明確になる例があるため、第12項のように既発生債務の履行主体をあらかじめ明示しておく。
背信的行為に当たるかどうかの評価は個々の事情に左右されるため、承諾取得の進め方について専門家に相談しておくことが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 賃貸借契約書に譲渡・転貸を禁止又は制限する特約がないかを確認したか
- [ ] 譲受人・転借人の氏名・使用目的・予定時期を具体的に記載したか
- [ ] 譲受人・転借人の資力・使用目的に関する資料を準備したか
- [ ] 承諾後の賃料支払主体・敷金・連帯保証の取扱いを整理したか
- [ ] 無断譲渡・転貸を先行させていないか(実行前に送付しているか)を確認したか
- [ ] 背信的行為と認めるに足りない事情の説明を用意したか
- [ ] 回答期限を具体的に記載したか
- [ ] 承諾条件(合意書締結等)への対応方針を検討したか
- [ ] 定期建物賃貸借等、特別な契約形態に該当しないかを確認したか
- [ ] 弁護士等の専門家に承諾取得の進め方について確認したか