親の土地に子が家を建てるなど土地を無償で借りる場面の書式。民法第593条の使用貸借として、借地借家法が適用されない点と終了事由を確認します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
土地使用貸借契約書
第1部: 書式本文
【貸主氏名】(以下「甲」という。)と【借主氏名】(以下「乙」という。)とは、乙が甲所有の下記土地上に建物を所有することを目的として、民法第593条以下の使用貸借契約(以下「本契約」という。)を締結する。
記 【土地の表示:所在〇〇、地番〇〇、地目〇〇、地積〇〇㎡】
第1条(使用貸借の目的) 甲は、甲の所有する上記土地(以下「本件土地」という。)を無償で乙に貸し渡し、乙は乙の所有する建物(所在〇〇、家屋番号〇〇、以下「本件建物」という。)の敷地として本件土地を借り受ける。
第2条(借地借家法の不適用の確認) 1. 甲及び乙は、本件土地の貸借が賃料の授受を伴わない使用貸借であることを相互に確認する。 2. 建物所有を目的とする土地の賃貸借には借地借家法が適用され強い存続保護が及ぶが、使用貸借にはこれが適用されないことは判例上確立しており(最高裁昭和47年4月14日第一小法廷判決等)、甲乙は本契約が同法上の借地権を発生させるものではないことを確認する。
第3条(使用方法) 乙は、本件土地を専ら本件建物の敷地として使用するものとし、甲の書面による事前の承諾なく、本件建物以外の建築物の築造、増改築又は本件土地の第三者への転貸をしてはならない。
第4条(公租公課の負担) 本件土地に係る固定資産税及び都市計画税は甲が負担し、本件建物に係る固定資産税及び都市計画税は乙が負担する。
第5条(土地の無償返還に関する届出) 甲及び乙は、法人が当事者となる場合その他必要と認めるときは、所轄税務署長に対し「土地の無償返還に関する届出書」を提出し、本件土地の使用貸借が借地権の設定に当たらないことを税務上も明確にする。
第6条(使用貸借の期間) 1. 本契約の期間は、契約締結日から【〇】年間とする。 2. 甲及び乙は、期間満了前に協議の上、本契約を更新することができる。
第7条(終了事由) 1. 乙が死亡したときは、民法第597条第3項により本契約は当然に終了する。ただし、乙の相続人が本件建物を相続した場合の取扱いについては、甲乙(甲及び乙の相続人)が別途協議する。 2. 乙が本件土地の使用収益をするに足りる目的を達した(本件建物を取り壊し又は他に処分した)と認められるときは、甲は民法第597条第2項に基づき本契約を解除することができる。 3. 期間の定めのない使用貸借において使用目的の定めもない場合は、甲はいつでも本契約を解除することができる(民法第598条第2項)。
第8条(甲による解除) 乙が第3条に違反して無断で増改築又は転貸をしたときは、甲は民法第594条第3項に基づき、催告を要せず本契約を解除することができる。
第9条(本件建物の収去及び土地の返還) 1. 本契約が終了したときは、乙は自己の費用と責任において本件建物を収去し、本件土地を更地の状態で甲に返還する。 2. 甲及び乙は、必要があるときは、本件建物を収去せずに相当の対価で甲乙間で譲渡する旨を別途協議することができる。
第10条(必要費等の償還) 乙が本件土地について特別の必要費又は有益費を支出したときは、民法第583条第2項の準用(民法第600条)により、その償還について甲乙協議する。
第11条(反社会的勢力の排除) 甲及び乙は、自己が暴力団その他の反社会的勢力に該当せず、これらと関係を有しないことを表明し保証する。
第12条(協議事項) 本契約に定めのない事項及び解釈に疑義が生じた事項は、甲乙誠意をもって協議し解決する。
以上の合意を証するため本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各自1通を保有する。
【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】
(甲) 住所:【 】 氏名:【 】 印 (乙) 住所:【 】 氏名:【 】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 貸主(土地所有者)向け書き換え
A-1. 将来相続に伴い土地を売却又は分筆する可能性がある場面
第7条追加例:「甲又はその相続人が本件土地を第三者に売却する必要が生じたときは、乙に対し【1】年前までに通知し、本件建物の収去又は買取りについて協議する。」 解説: 使用貸借は借地権と異なり土地の処分に対する対抗力がないため、実際上は円滑な明渡しのため予告期間を設けておくと親族間の紛争を避けやすい。
A-2. 借主に相続が発生した場合の取扱いを明確にしたい場面
第7条1項修正例:「乙が死亡した場合、本契約は当然に終了するが、甲は乙の相続人からの申出があるときは、新たな使用貸借契約の締結について誠実に協議する。」 解説: 借主死亡による当然終了(民法第597条第3項)を前提としつつ、実際に建物を相続した親族が住み続けられるよう再契約の道を残す。
B. 借主(建物所有者)向け書き換え
B-1. 住宅ローンを利用して建物を新築する場面
第2条追加例:「乙は、本件建物の建築資金に係る金融機関からの借入れに際し、本契約書の写しを金融機関に提出することができるものとし、甲はこれに協力する。」 解説: 金融機関は担保となる土地の権原(使用貸借か賃貸借か)を確認するため、使用貸借であることを示す本契約書の提出への協力を明記しておくと融資手続が円滑になる。
B-2. 借主が土地の一部を家庭菜園等に利用したい場面
第3条修正例:「乙は、本件建物の敷地として使用する部分に加え、本件土地のうち甲が指定する区画を家庭菜園として無償で使用することができる。」 解説: 使用範囲を建物敷地に限定すると付随的な利用が用途違反とされかねないため、許容範囲を具体的に区画で特定しておく。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使ってはいけない場面 本書式は、親の土地に子が家を建てて住むなど、建物所有を目的として土地を無償で借りる場面に用いる。賃料の授受がある場合には借地借家法上の借地権が発生する賃貸借契約となるため本書式はなじまず、土地賃貸借契約書(借地契約書)を用いるべきである。
根拠法令の解説 使用貸借は民法第593条から第600条までに規定される。建物所有目的の土地賃貸借には借地借家法が適用され、法定更新や正当事由制度により借主が強く保護されるが、使用貸借にはこれらの規定が適用されないことが判例上確立している(最高裁昭和47年4月14日判決等)。この結果、貸主は比較的容易に契約を終了させ土地の返還を受けられる一方、借主の地位は不安定であり、この非対称性が本契約類型の最大の特徴である。税務上も、法人が関与する場合には土地の無償返還に関する届出書の提出により、借地権の認定課税を回避する実務がある。
実務でよくある失敗と対策 第一に、使用貸借であるにもかかわらず借地借家法の保護が及ぶと誤解し、後日の土地明渡しを巡って紛争になる失敗がある。第2条のように借地借家法が適用されないことを明記する。第二に、借主死亡後の建物の相続人と貸主との関係が整理されず、実質的な住み替えが妨げられる失敗がある。第7条のように相続後の協議枠組みを設ける。第三に、契約終了時の建物収去義務が曖昧なまま放置され、土地の返還が滞る失敗がある。第9条のように収去義務と代替手段(建物の買取り協議)を明記する。相続や税務上の取扱いは個別事情により大きく異なるため、専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 賃料の授受が一切ないこと(使用貸借であること)を確認したか
- [ ] 借地借家法が適用されない旨を条項で明記したか
- [ ] 本件土地及び本件建物の登記事項(所在・地番・家屋番号等)を正確に記載したか
- [ ] 借主死亡時に契約が終了する旨(民法第597条第3項)と相続後の取扱いを定めたか
- [ ] 固定資産税等の公租公課の負担者を土地・建物で区別して定めたか
- [ ] 法人が当事者となる場合、土地の無償返還に関する届出書の提出要否を確認したか
- [ ] 契約終了時の建物収去義務及び土地の返還方法を定めたか
- [ ] 無断増改築・転貸の禁止と違反時の解除条項を定めたか
- [ ] 特別の必要費・有益費の償還ルールを定めたか