自社特許を他社製品に使わせて収益化する場面の契約書。特許法第77条の専用実施権と第78条の通常実施権、実施料算定方法を定めます。

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特許ライセンス契約書

第1部: 書式本文

【特許権者】(以下「甲」という)と【実施希望者】(以下「乙」という)は、甲が保有する特許権の実施許諾に関し、以下のとおり契約(以下「本契約」という)を締結する。

第1条(定義) 本契約において「本特許権」とは別紙特許権目録記載の特許権を、「本製品」とは本特許権の実施品として乙が製造販売する【製品名・分野】をいう。

第2条(実施許諾) 甲は乙に対し、本特許権について【専用実施権/通常実施権】を許諾する。専用実施権を設定する場合、甲乙は特許法第98条第1項第2号に基づき遅滞なく特許庁への登録手続を行う。

第3条(実施権の範囲) 本許諾の範囲は、地域を【日本国内/全世界】、期間を【期間】、用途分野を【分野】とする。乙は当該範囲を超えて本特許権を実施してはならない。

第4条(実施料) 1. 乙は甲に対し、本契約締結時に一時金として金【金額】円を支払う。 2. 乙は甲に対し、本製品の純売上高に対し【料率】%のランニングロイヤルティを四半期ごとに算定し支払う。 3. 乙は甲に対し、各四半期のランニングロイヤルティが金【最低額】円に満たない場合であっても、最低実施料(ミニマムロイヤルティ)として金【最低額】円を支払う。

第5条(純売上高の定義・報告) 前条の純売上高とは、本製品の総売上高から返品、値引き、運送保険料及び消費税相当額を控除した額をいう。乙は各四半期終了後【日数】日以内に実施料算定報告書を甲に提出する。

第6条(サブライセンス) 乙は、甲の書面による事前の承諾を得た場合に限り、本特許権の実施を第三者に再許諾できる。再許諾を行う場合の条件は甲乙別途協議する。

第7条(改良発明の取扱い) 乙が本特許権の実施過程で完成させた改良発明の取扱い(甲への通知、実施許諾の要否)については甲乙別途協議のうえ定める。

第8条(不争条項) 乙は、本契約の有効期間中、本特許権の有効性について特許無効審判その他の異議を申し立てないものとする。ただし、乙が本特許権に基づく権利行使を受けた場合の防御としての主張はこの限りでない。

第9条(保証の限定) 甲は、本特許権が第三者の権利を侵害しないこと及び本特許権が将来にわたり有効に存続することを保証するものではない。

第10条(第三者侵害への対応) 本特許権を侵害する第三者を発見した場合、甲乙は速やかに相互に通知し、対応方針を協議する。

第11条(秘密保持) 甲乙は、本契約に関連して知り得た相手方の技術上・営業上の秘密情報を、相手方の書面による承諾なく第三者に開示してはならない。

第12条(契約期間・更新) 本契約の有効期間は本契約締結日から本特許権の存続期間満了日までとする。

第13条(解除) 甲又は乙は、相手方が本契約に違反し、催告後【日数】日以内に是正されない場合、本契約を解除できる。

第14条(解除後の措置) 本契約が終了した場合、乙は本特許権の実施を直ちに停止し、未払いの実施料を甲に支払う。

第15条(準拠法・管轄) 本契約は日本法に準拠し、【地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. ライセンサー(特許権者)向け

第4条に「乙は本製品の販売数量にかかわらず年間最低実施料【金額】円の支払義務を負う」とのミニマムロイヤルティ条項を強化し、第10条に「乙は第三者侵害を発見した場合、甲の指示なく独自に警告等の対応をしてはならない」との権利行使の主導権確保条項を追加する。一言解説: 収益の下限保証と侵害対応の主導権を確保することが甲側の交渉の要点である。

B. ライセンシー向け

第3条に「乙は本許諾期間中、甲が第三者に対し同一分野で本特許権の実施を許諾しないものとする」との独占的取扱いを求める文言、または第9条に「甲は本特許権が第三者の特許権を侵害しない限度で相当の注意を払ったことを表明する」との限定的保証を追加交渉する。一言解説: 乙としては投資回収の予見可能性のため、分野独占や最低限の保証水準を確保する交渉が重要である。

C. 独占的実施権/非独占的実施権の書き分け

専用実施権とする場合は第2条に「乙は本特許権につき甲を含む何人に対しても独占的に実施する権利を有し、甲は自ら実施せず、かつ第三者に実施許諾しない」と明記し登録を必須とする。通常実施権(非独占)とする場合は第2条を「甲は乙に対し非独占的通常実施権を許諾し、甲は自ら実施し、又は第三者に重ねて実施許諾できる」と改め登録を不要とする。一言解説: 専用実施権は登録が効力発生要件、通常実施権は特許法第99条により登録なくして当然に対抗できる点が制度上の大きな違いである。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

本書式は、自社が保有する特許を他社製品に実装させて実施料収益を得る場面、または他社の特許技術を自社製品に採用する場面で用いる。既に特許を受ける権利の段階(出願前・出願中)にある技術の実施許諾や、特許権そのものを譲渡する場面には適さず、それぞれ別の書式(仮実施許諾契約、特許権譲渡契約)を検討すべきである。

法的根拠として、特許法は実施権を専用実施権(第77条)と通常実施権(第78条)に区分する。専用実施権は特許庁への登録が効力発生要件(特許法第98条第1項第2号)であり、登録なき専用実施権は法的に存在しないものとして扱われる。これに対し通常実施権は特許法第99条により当然対抗制度が採用されており、登録がなくても第三者(特許権の譲受人等)に対抗できる。この違いを理解せずに「独占的通常実施権」という中間的な形態を選択する実務も多いが、これは契約上の債権的独占にとどまり、甲が第三者に重ねて実施許諾した場合に乙が直接排除できるわけではない点に注意が必要である。

実施料の算定方式には、契約締結時に一括で支払う一時金(イニシャルフィー)、売上高や生産数量に応じて継続的に支払うランニングロイヤルティ、及び販売実績が低調な場合でも最低額の支払いを保証するミニマムロイヤルティがある。これらを組み合わせる際は、純売上高の定義(値引き・返品・消費税の扱い)を明確にしないと算定基準を巡る紛争が生じやすい。

実務でよくある失敗の一つ目は、専用実施権として合意したにもかかわらず登録手続を怠り、特許権が譲渡された場合に新権利者へ対抗できなくなるケースである。対策として第2条に登録協力義務を明記する。二つ目は、不争条項を無制限に定め、独占禁止法上の不公正な取引方法(公正取引委員会「特許・ノウハウライセンス契約に関する独占禁止法上の指針」参照)に該当するリスクを見落とすケースである。対策として第8条のように防御目的の主張まで制限しない設計とする。三つ目は、サブライセンスの可否を定めずに乙が独断で第三者に実施させ、甲の把握しない実施行為が拡大するケースである。対策として第6条で事前承諾制とする。なお、個別事案は専門家に確認してください。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 対象特許権を別紙目録で特定したか(登録番号・出願番号)
  • [ ] 専用実施権か通常実施権かを明記したか
  • [ ] 専用実施権の場合、特許庁への登録手続を条項に盛り込んだか
  • [ ] 実施許諾の地域・期間・分野の範囲を限定したか
  • [ ] 実施料の算定方式(一時金・ランニングロイヤルティ・ミニマムロイヤルティ)を定めたか
  • [ ] 純売上高等の算定基準を明確に定義したか
  • [ ] サブライセンスの可否と条件を定めたか
  • [ ] 不争条項が独占禁止法上問題ない範囲に限定されているか確認したか
  • [ ] 特許有効性・非侵害の保証範囲を明記したか
  • [ ] 第三者侵害発見時の対応手続を定めたか
  • [ ] 契約終了後の実施停止・在庫処理を定めたか
  • [ ] 管轄裁判所を明記したか