感染性廃棄物や廃油など特別管理産業廃棄物の処理委託契約書です。事前の情報提供義務、性状の明示、緊急時の対応を規定します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
特別管理産業廃棄物処理委託契約書
第1部: 書式本文
【排出事業者名】(以下「甲」という)と【処理業者名】(以下「乙」という)は、特別管理産業廃棄物の処理委託に関し、次のとおり契約(以下「本契約」という)を締結する。
第1条(目的) 甲は、甲の事業活動に伴い排出される特別管理産業廃棄物の処理業務(収集運搬・処分)を乙に委託し、乙はこれを受託する。
第2条(委託する廃棄物の種類及び性状) 1. 委託する特別管理産業廃棄物の種類は【品目】(感染性廃棄物、廃油、廃酸、廃アルカリ、PCB汚染物等の区分による)とする。 2. 甲は、委託に先立ち、廃棄物データシート(WDS)その他の書面により、性状、成分、数量、荷姿、取扱い上の注意事項を乙に提供する。 3. 甲は、性状に変更が生じた場合、遅滞なく乙に通知する。
第3条(許可の確認) 乙は、特別管理産業廃棄物収集運搬業許可(許可番号【許可番号】)及び特別管理産業廃棄物処分業許可(許可番号【許可番号】)を有していることを表明し、許可証の写しを甲に提出する。
第4条(特別管理産業廃棄物管理責任者) 1. 甲は、廃棄物処理法第12条の2第8項に基づき特別管理産業廃棄物管理責任者【氏名】を選任し、乙に通知する。 2. 乙もまた自社の管理責任者を選任し、甲に通知する。
第5条(事前調査及び情報提供義務) 乙は、委託を受けるにあたり必要と認める場合、甲の排出場所において廃棄物の性状に関する立入調査を行うことができ、甲はこれに協力する。
第6条(処理の方法) 乙は、感染性廃棄物にあっては焼却その他の滅菌処理、廃油・廃酸・廃アルカリにあっては中和・分離等、当該廃棄物の性状に応じた適正な処理方法により処理を行う。処理方法の詳細は別紙のとおりとする。
第7条(容器・荷姿) 1. 甲は、感染性廃棄物について、バイオハザードマークを付した密閉容器に収納して引き渡す。 2. 液状廃棄物は漏洩防止措置を施した容器を用いる。
第8条(管理票の運用) 甲は、引渡しの都度、廃棄物処理法第12条の3に基づく産業廃棄物管理票を交付し、乙は法定期日内に写しを返送する。特別管理産業廃棄物については、返送期限内の未返送があった場合、甲は速やかに乙へ状況を照会する。
第9条(緊急時の対応) 1. 運搬中又は保管中に飛散、流出、火災その他生活環境保全上の支障が生じ、又は生じるおそれがある事態が発生した場合、乙は直ちに応急措置を講じるとともに、甲及び関係行政機関に通報する。 2. 甲は、緊急時の連絡体制(連絡先【緊急連絡先】)を乙に事前に通知する。
第10条(委託料金) 本業務の委託料金は【数量】あたり金【金額】円(消費税別)とし、甲は乙に対し毎月末締め翌月末払いで支払う。
第11条(契約期間) 本契約の有効期間は【年月日】から【年月日】までとする。期間満了の1か月前までに書面による終了の申出がない場合、同一条件で1年間自動更新する。
第12条(再委託の禁止) 乙は、甲の書面による事前承諾がある場合を除き、本業務を第三者に再委託してはならない。
第13条(損害賠償及び原状回復) 乙の処理に起因して生活環境保全上の支障が生じた場合、乙は自己の費用と責任において原状回復その他必要な措置を講じ、甲及び第三者に生じた損害を賠償する。
第14条(契約の解除) 甲又は乙は、相手方の許可取消し、業務停止処分、その他本契約の重大な違反があったときは、催告なく本契約を解除できる。
第15条(反社会的勢力の排除) 甲及び乙は、自己が暴力団等反社会的勢力に該当しないことを表明し、該当が判明した場合は無催告で解除できるものとする。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 排出事業者(甲)の立場
排出事業者は、特別管理産業廃棄物について通常の産業廃棄物より重い注意義務を負うと解されており、性状情報の提供不備や緊急時対応の遅れが自社の責任問題に直結しやすい。
Before:「甲は、性状、成分、数量、荷姿、取扱い上の注意事項を乙に提供する。」 After:「甲は、委託開始前に廃棄物データシート(WDS)を乙に提出し、感染性の有無、発火性・引火性、混合禁忌物質の有無を明記する。性状に変更が生じた場合は、変更内容を反映したWDSを速やかに再提出し、乙の受入可否の再確認を得るまでの間、当該廃棄物の引渡しを行わない。」 一言解説: 性状変更を通知するだけでなく、再確認完了までの引渡し停止を義務化することで、事故発生時に甲の情報提供義務違反を問われるリスクを下げる。
Before:「運搬中又は保管中に事態が発生した場合、乙は直ちに応急措置を講じ、甲及び関係行政機関に通報する。」 After:「運搬中又は保管中に生活環境保全上の支障が生じ、又は生じるおそれがある事態が発生した場合、乙は探知後直ちに(遅くとも【1】時間以内に)甲に第一報を行い、以後の経過及び講じた措置を書面で報告する。甲は当該報告を受け、必要に応じて自ら都道府県知事等への報告その他の措置を講じることができる。」 一言解説: 通報の時間的目安と甲への報告経路を明確にし、甲が自らの責任で行政対応を行う機会を確保する。
B節: 処理業者(乙)の立場
処理業者としては、甲から提供される性状情報の正確性を前提に受託しているため、情報不備に起因するリスクを甲側に負担させる条項が重要となる。
Before:「乙の処理に起因して支障が生じた場合、乙は損害を賠償する。」 After:「乙の処理に起因して生活環境保全上の支障が生じた場合、乙は原状回復その他必要な措置を講じる。ただし、当該支障が甲の提供した性状情報の誤り若しくは不記載、又は甲が指定した容器・荷姿の不備に起因する場合は、甲がその費用及び責任を負うものとする。」 一言解説: WDS等の記載内容に依拠して処理方法を選択している以上、情報起因のリスクは排出事業者側に帰属させることを明文化する。
Before:「乙は、必要と認める場合、立入調査を行うことができ、甲はこれに協力する。」 After:「乙は、契約締結前及び契約期間中随時、甲の排出場所において性状確認のための立入調査を実施できるものとし、甲は正当な理由なくこれを拒否できない。乙が調査の結果、提供された性状情報との齟齬を発見した場合、乙は受託の可否又は処理方法の見直しを甲に求めることができる。」 一言解説: 調査権を「できる」規定に留めず、甲の受忍義務と調査結果を踏まえた受託見直しの手続まで定め、乙が誤った性状情報に基づき処理を行うリスクを軽減する。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、感染性廃棄物、廃油、PCB汚染物等の特別管理産業廃棄物の処理を委託する場合に使用する。通常の産業廃棄物と混同して一般の産業廃棄物処理委託契約書を流用すると、特別管理産業廃棄物管理責任者の選任や性状情報の提供義務など法定事項が欠落するおそれがあるため使用してはならない。
根拠法令としては、廃棄物処理法第12条の2(特別管理産業廃棄物に関する規制及び委託基準)、同条第8項(特別管理産業廃棄物管理責任者の設置義務)、施行規則第8条の13の2(委託契約書の記載事項)が中心となる。性状情報の提供方法として、日本産業廃棄物処理振興センター等が公表するWDS(廃棄物データシート)の様式を用いる実務が広く行われている。
よくある失敗として、第一に一般の産業廃棄物委託契約書の書式を流用し、特別管理産業廃棄物管理責任者の選任や緊急時対応条項が抜け落ちるケースがある。対策として本書式第4条、第9条のように専用の条項を設ける。第二に、性状情報を口頭又は簡易なメモで伝達し、後日の紛争時に証拠が残らないケースがある。対策として、WDSの書面交付及び保存を契約上の義務として明記する。第三に、緊急時の連絡先や対応手順が契約書に定められておらず、事故発生時に対応が遅れるケースがあり、対策として第9条のように連絡体制と時間的目安を具体的に定めることが有効である。
性状情報の提供範囲や緊急時対応の分担については廃棄物の種類ごとに個別性が高いため、個別の事案については弁護士・行政書士等の専門家への確認を推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 乙が特別管理産業廃棄物の収集運搬業・処分業の許可を有しているか、品目区分と照合したか
- [ ] 廃棄物データシート(WDS)等による性状情報の提供方法を定めたか
- [ ] 特別管理産業廃棄物管理責任者(甲・乙双方)の選任及び通知手続を定めたか
- [ ] 容器・荷姿(バイオハザードマーク、漏洩防止等)の要件を具体的に記載したか
- [ ] 緊急時の連絡体制及び対応手順(通報時間の目安を含む)を定めたか
- [ ] マニフェストの交付・返送期限及び未返送時の対応を定めたか
- [ ] 性状変更時の再通知・受入可否再確認の手続を定めたか
- [ ] 再委託禁止条項を含めたか
- [ ] 損害賠償の範囲及び情報起因リスクの負担者を明確にしたか
- [ ] 反社会的勢力排除条項を含めたか