総株主の議決権の10分の9以上を持つ株主が少数株主へ売渡しを求める請求書。会社法第179条の要件と第179条の3の会社の承認、第179条の4の通知手続を扱います。

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特別支配株主の株式等売渡請求書

第1部: 書式本文

対象会社の総株主の議決権の10分の9以上を自己又はその完全子法人等と合わせて保有する株主(特別支配株主)が、少数株主(売渡株主)の保有する株式の全部を金銭を対価として売り渡すことを請求する場面の書式である。対象会社への通知・承認取得、売渡株主への通知の各段階に対応した構成とする。

第1条(定義) 本書式において「特別支配株主」とは、株式会社の総株主の議決権の10分の9(対象会社の定款で これを上回る割合を定めた場合はその割合)以上を、自己又は自己が発行済株式の全部を有する法人その他これに準ずる法人として会社法施行規則で定める法人(特別支配株主完全子法人)と合わせて有している者をいう。

第2条(株式等売渡請求の内容の決定) 特別支配株主は、対象会社の株式(新株予約権を発行している場合は新株予約権を含めることができる。)の全部を売渡株主から売り渡すことを請求するにあたり、次の事項を定める。 1. 売渡株主に対して売渡株式の対価として交付する金銭の額又はその算定方法 2. 売渡株主に対する前号の金銭の割当てに関する事項 3. 特別支配株主が売渡株式等を取得する日(取得日)

第3条(対象会社に対する通知) 特別支配株主は、株式等売渡請求をしようとするときは、対象会社に対し、前条各号の事項及び売渡株式等の取得日における特別支配株主の保有株式数その他会社法施行規則で定める事項を通知し、対象会社の承認を受けなければならない。

第4条(対象会社の承認) 対象会社は、前条の通知を受けたときは、取締役会設置会社にあっては取締役会の決議によって、株式等売渡請求を承認するか否かを決定する。

第5条(売渡株主への通知又は公告) 対象会社は、株式等売渡請求を承認したときは、取得日の20日前までに、売渡株主及び登録株式質権者に対し、株式等売渡請求を承認した旨、特別支配株主の氏名又は名称及び住所、第2条各号の事項その他会社法施行規則で定める事項を通知し、又は公告する。

第6条(売渡株式等の取得) 特別支配株主は、取得日に、売渡株式等の全部を取得する。

第7条(代金の支払) 特別支配株主は、取得日以後遅滞なく、売渡株主に対し、第2条第1号の金銭を、会社が定める方法により支払う。

第8条(書面等の備置き及び閲覧等) 対象会社は、株式等売渡請求を承認した日から取得日後6か月を経過する日までの間、株式等売渡請求に関する事項を記載した書面又は電磁的記録をその本店に備え置き、売渡株主等の閲覧等に供する。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 9割以上保有(特別支配株主)の立場での修正

A-1. 第2条の対価決定の考慮要素を明記

追加記載例:「特別支配株主は、前項の対価の額の決定にあたり、対象会社の直近の株式価値算定書、類似会社比較法及びディスカウント・キャッシュ・フロー法による評価結果を参考にしたものとし、その算定根拠を別紙に添付する。」 一言解説: 対価の相当性を争われた場合に備え、算定根拠を書面化しておくことで、会社法第179条の8の売買価格決定申立てに対する説明資料として活用できる。

A-2. 取得日を柔軟に設定する条項の追加

追加記載例:「特別支配株主は、対象会社の承認を得た後、天災地変その他やむを得ない事由が生じたときは、対象会社と協議のうえ取得日を変更することができる。」 一言解説: スクイーズアウトの実行スケジュールに影響する事象(株主からの差止請求等)が生じた場合に備えた任意規定である。

B. スクイーズアウト対象となる少数株主(売渡株主)の立場での確認事項の追加

B-1. 差止請求権及び売買価格決定申立権の教示条項の追加

追加記載例:「売渡株主は、株式等売渡請求が法令又は定款に違反する場合であって売渡株主が不利益を受けるおそれがあるときは、会社法第179条の7に基づき特別支配株主に対し株式等売渡しの差止めを請求できる。また、取得価格に不服がある場合は、同法第179条の8に基づき裁判所に対し売買価格決定の申立てをすることができる。」 一言解説: 通知書面に権利教示を追加することで、少数株主の手続保障を明確化し、後日の紛争リスクを低減する目的で用いられる。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、支配株主が対象会社の少数株主を締め出し(スクイーズアウト)、完全子会社化を実現する場面で用いる。組織再編の一環としてM&A後の意思決定の迅速化やグループ経営の効率化を図る目的で利用されることが多い。他方、10分の9以上の議決権保有という要件を満たさない場合は本制度を利用できず、株式併合等の別の手法を検討する必要がある。また、対価の算定に恣意性がある場合や、少数株主の締め出し自体が不当な目的による場合には、後述の差止請求や売買価格決定申立てのリスクが顕在化しやすい。

根拠法令 会社法第179条は特別支配株主による株式等売渡請求の要件(議決権の10分の9以上の保有)を定める。同法第179条の2は売渡請求の内容として定めるべき事項を、同法第179条の3は対象会社に対する通知及び対象会社の承認手続を、同法第179条の4は売渡株主等に対する通知又は公告の方法及び期限を定める。同法第179条の7は売渡株主による差止請求権を、同法第179条の8は売買価格決定の申立てについて定めており、少数株主保護の中核をなす規定である。

実務でよくある失敗と対策 第一に、対象会社の取締役会承認を得ずに売渡株主への通知を先行させてしまう失敗がある。第4条のとおり対象会社の承認が通知の前提であることを条項上明確にし、手続の順序を誤らないようにする。第二に、対価の算定根拠を示さずに一方的な金額を提示し、多数の売買価格決定申立てを誘発する例がある。A-1のように算定根拠を書面化し、株式価値算定書を準備することが望ましい。第三に、取得日の20日前という通知期限(会社法第179条の4第1項、いわゆる差止請求の機会確保のための期間)を誤って計算し、手続に瑕疵が生じる例がある。取得日から逆算したスケジュール表を別途作成し、通知・公告の実施日を明確に管理することが望ましい。

対価の相当性や手続の適法性の判断は事案により大きく異なるため、個別事案は専門家に確認することが必要である。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 特別支配株主が対象会社の総株主の議決権の10分の9以上を保有していることを確認したか
  • [ ] 特別支配株主完全子法人を含めて保有割合を計算する必要がないか確認したか
  • [ ] 対価(金銭)の額又は算定方法を、算定根拠資料とともに準備したか
  • [ ] 対象会社の取締役会(取締役会非設置会社では取締役)の承認決議を得たか
  • [ ] 取得日から逆算し、20日前までの通知・公告のスケジュールを確定したか
  • [ ] 売渡株主等への通知又は公告の方法(個別通知か公告か)を確認したか
  • [ ] 新株予約権を売渡請求の対象に含めるか否かを確認したか
  • [ ] 差止請求・売買価格決定申立てに関する権利教示を通知書面に含めるか検討したか
  • [ ] 取得日後6か月間の書面等備置き・閲覧対応の準備をしたか
  • [ ] 代金の支払方法及び支払時期を明確にしたか