融資型クラウドファンディングで出資を募る場面の匿名組合契約書。商法第535条の匿名組合と金融商品取引法第2条第2項のみなし有価証券に対応します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
融資型クラウドファンディングに関する匿名組合契約書
第1部: 書式本文
【営業者商号】(以下「営業者」という。)と【出資者氏名又は名称】(以下「匿名組合員」という。)とは、営業者が営む金銭消費貸借による貸付事業のための出資に関し、次のとおり匿名組合契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(匿名組合契約) 本契約は、商法第535条に定める匿名組合契約であり、匿名組合員は営業者の営む【貸付ファンド名】に係る事業(以下「本事業」という。)のために出資を行い、営業者は本事業から生じる利益を匿名組合員に分配する。
第2条(本事業の内容) 営業者は、匿名組合員からの出資金を原資として、【貸付先事業者名】に対し、貸付金額【金〇〇円】、利率年【〇〇】%、貸付期間【〇〇】か月の条件で金銭消費貸借による貸付け(以下「本件貸付け」という。)を実行する。
第3条(出資) 匿名組合員は、本契約締結日から【〇〇年〇〇月〇〇日】までに、出資金【金〇〇円】を営業者の指定する口座に払い込む。
第4条(財産の帰属) 1. 匿名組合員が営業者に対して出資した財産は、商法第536条第1項に基づき営業者に帰属する。 2. 匿名組合員は、本件貸付けに係る貸付債権その他の本事業に係る財産について、何らの権利も有しない。
第5条(業務執行) 1. 本事業に関する業務執行は営業者が単独で行い、匿名組合員は本事業の業務執行を行わず、営業者を代理する権限も有しない。 2. 営業者は、貸付先の信用状況の悪化その他本事業に重大な影響を及ぼす事由が生じた場合、遅滞なく匿名組合員に通知する。
第6条(利益及び損失の分配) 1. 営業者は、本件貸付けから収受した利息から、営業者の受ける営業者報酬(第7条)を控除した残額を、匿名組合員の出資割合に応じて分配する。 2. 貸付先の債務不履行により元本の全部又は一部が回収不能となった場合、当該回収不能額は匿名組合員の出資額を限度として匿名組合員の損失として負担する。
第7条(営業者報酬) 営業者は、本事業の運営の対価として、本件貸付けから収受した利息額の【20】%を営業者報酬として収受する。
第8条(分配の時期及び方法) 営業者は、本件貸付けに係る利息の受領後【30】日以内に、前条の分配額を匿名組合員の指定口座に送金する方法により分配する。
第9条(みなし有価証券としての規制の遵守) 1. 本契約に基づく匿名組合員の出資持分は、金融商品取引法第2条第2項第5号に定めるみなし有価証券に該当する。 2. 営業者は、本契約の締結の媒介又は取次ぎを行うにあたり、第二種金融商品取引業の登録(金融商品取引法第29条)を受けた電子募集取扱業者を通じて勧誘を行うものとし、当該業者の交付する契約締結前交付書面その他の法定書面を匿名組合員に交付する。 3. 営業者は、貸付先の実名その他の詳細情報を開示できない場合であっても、貸付先の事業内容、返済原資及び信用状況の概要について合理的な範囲で情報を開示する。
第10条(契約期間) 本契約の期間は、本契約締結日から本件貸付けに係る元利金が完済され匿名組合員への最終分配が完了するまでとする。
第11条(中途解約の制限) 匿名組合員は、営業者の事前の書面同意がない限り、本事業の期間中に本契約を中途解約することができない。
第12条(反社会的勢力の排除) 営業者及び匿名組合員は、自己が暴力団その他の反社会的勢力に該当せず、これらと関係を有しないことを表明し保証する。
第13条(合意管轄) 本契約に関する紛争については、【〇〇地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
以上の合意を証するため本書2通を作成し、両当事者記名押印の上、各自1通を保有する。
【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】
(営業者) 住所:【 】 商号:【 】 代表者:【 】 印
(匿名組合員) 住所:【 】 氏名又は名称:【 】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 営業者(事業者)向け書き換え
A-1. 複数の貸付先に分散して貸し付けるファンド型の場合
第2条修正例:「営業者は、出資金を原資として、別紙記載の複数の貸付先に対し、それぞれの条件により貸付けを実行する。個別の貸付先ごとの回収状況は分配額に反映させる。」 解説: 単一貸付先へのファンドは貸倒れ時の損失が集中するため、複数貸付先への分散を明記することで貸倒れリスクの平準化を図ることができる。
A-2. 貸付先の匿名性を維持したい不動産担保付貸付ファンドの場合
第9条3項修正例:「営業者は、貸付先の実名を開示しない代わりに、担保物件の種類、所在エリア、担保評価額及び貸付比率(LTV)を開示する。」 解説: 匿名貸付では実名開示が困難な場合が多いため、担保情報等の代替的な指標を開示することで匿名組合員の投資判断の材料を確保する。
B. 匿名組合員(出資者)向け書き換え
B-1. 元本毀損リスクを重視する個人投資家の場合
第6条2項追加例:「営業者は、貸付先の延滞が【60】日を超えて継続した場合、遅滞なく匿名組合員にその状況及び回収見込みを報告する。」 解説: 個人投資家は貸付先の状況を直接把握できないため、延滞発生時の早期報告義務を課すことで情報の非対称性を緩和する。
B-2. 中途換金性を求める出資者の場合
第11条修正例:「匿名組合員は、営業者が指定する譲渡先候補への出資持分の譲渡について、営業者の合理的な範囲での協力を求めることができる。ただし譲渡の成否を営業者は保証しない。」 解説: 匿名組合の持分は流動性に乏しいため、譲渡協力条項を設けることで換金ニーズに一定程度応える余地を残す。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面と使ってはいけない場面の解説 本書式は、いわゆるソーシャルレンディング又は融資型クラウドファンディングと呼ばれるスキームにおいて、事業者(営業者)が多数の出資者から匿名組合契約により資金を集め、その資金を第三者への貸付けに充てる場面で用いる。出資者が事業の意思決定に関与する形態(共同事業性が強い任意組合形態)を想定する場合や、出資者が営業者の財産に対する持分的権利を有する形態を予定する場合には、匿名組合の財産帰属の仕組み(商法第536条第1項)と整合しないため、本書式ではなく任意組合契約書等の別形式を検討すべきである。
根拠法令の解説 匿名組合契約は商法第535条に定められ、当事者の一方(匿名組合員)が相手方(営業者)の営業のために出資をし、営業者がその営業から生じる利益を分配することを約する契約である。出資された財産は商法第536条第1項により営業者に帰属し、匿名組合員は営業者の行為について第三者に対して権利義務を有しない(同条第2項)。融資型クラウドファンディングにおける匿名組合の出資持分は、金融商品取引法第2条第2項第5号のみなし有価証券(組合契約に基づく権利のうち出資者が出資対象事業から生じる利益の配当等を受けることができる権利)に該当し、その取得勧誘の媒介又は取次ぎを業として行う者は、原則として第二種金融商品取引業の登録(金融商品取引法第29条、第28条第2項)を要する。また、貸付行為自体を営業者が業として行う場合は貸金業法上の貸金業登録の要否も別途検討を要する。
実務でよくある失敗と対策 第一に、貸付先の匿名性を理由に情報開示を一切行わず、金融商品取引法上求められる契約締結前交付書面等の説明義務を果たさない失敗がある。第9条3項のように担保情報等の代替的な開示事項を具体的に定める。第二に、複数貸付先に対する分配の計算方法を定めず、個別貸付先の貸倒れが生じた際の分配額の算定で紛争となる失敗がある。第2条修正例のように貸付先ごとの回収状況を分配に反映させる仕組みを明記する。第三に、匿名組合員の中途解約を無制限に認めてしまい、貸付原資が事業期間中に流出する失敗がある。第11条のように中途解約を制限し、必要に応じて譲渡による換金の途を代替的に設ける。金融商品取引法及び貸金業法の適用関係はスキームの詳細により結論が異なるため、個別の商品設計については専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 出資持分がみなし有価証券に該当することを前提とした規制対応を確認したか
- [ ] 勧誘の媒介・取次ぎを行う電子募集取扱業者の第二種金融商品取引業登録を確認したか
- [ ] 契約締結前交付書面その他の法定書面の交付体制を整えたか
- [ ] 貸付先に関する開示事項(実名開示困難な場合の代替情報)を具体的に定めたか
- [ ] 出資財産が営業者に帰属し匿名組合員に権利がないことを明記したか
- [ ] 利益及び損失(元本毀損リスク)の分配方法を明確にしたか
- [ ] 営業者報酬の算定方法及び控除順序を定めたか
- [ ] 分配の時期及び回収不能時の取扱いを定めたか
- [ ] 中途解約の可否及び制限を定めたか
- [ ] 貸金業登録の要否を含む関連業法の適用関係を確認したか