特定の財産を特定の者に遺贈する内容の遺言書文例です。受遺者の特定、放棄された場合の帰属、遺言執行者の指定を含みます。提出先や保存期間の目安もあわせて整理しています。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
特定遺贈を含む遺言書文例
第1部: 書式本文
遺言書
遺言者【氏名】は、次のとおり遺言する。
第1条(特定遺贈・不動産) 遺言者は、遺言者の有する下記不動産を、【受遺者の氏名】(生年月日【生年月日】、住所【住所】、遺言者との続柄又は関係【続柄・関係】)に遺贈する。 記 所在【所在】、地番【地番】、地目【地目】、地積【地積】平方メートル
第2条(特定遺贈・預貯金) 遺言者は、【金融機関名】【支店名】の預貯金債権(口座番号【口座番号】)の全部を、【受遺者の氏名】に遺贈する。
第3条(特定遺贈・動産) 遺言者は、遺言者が所有する【動産の表示、例:絵画・貴金属等】を、【受遺者の氏名】に遺贈する。
第4条(受遺者の特定方法) 本遺言における受遺者の氏名、生年月日及び住所は、本遺言書作成日現在のものであり、受遺者の同一性の確認は戸籍及び住民票により行うものとする。
第5条(受遺者が遺言者より先に死亡した場合の扱い) 第1条ないし第3条の受遺者が遺言者の死亡以前に死亡したときは、当該受遺者に対する遺贈はその効力を生じない(民法994条1項)。この場合、当該財産は【代わりの帰属先、例:遺言者の長男〇〇】に遺贈する。
第6条(遺贈の放棄があった場合の扱い) 受遺者が遺贈を放棄したとき(民法986条)は、放棄された財産は遺言者の相続人が民法900条以下の法定相続分に従い相続するものとする。
第7条(受遺者の催告への対応) 相続人その他の利害関係人は、受遺者に対し、相当の期間を定めて遺贈を承認するか放棄するかを催告することができ(民法987条)、期間内に確答がないときは遺贈を承認したものとみなす。
第8条(遺贈に伴う費用及び負担) 第1条の不動産に係る遺贈の履行に要する登記費用は、遺言者の相続財産の中から支出する。
第9条(その他の財産の処分) 前各条に定める財産を除く遺言者の一切の財産は、【包括受遺者又は相続人の氏名】に相続させる(又は包括して遺贈する)。
第10条(遺言執行者の指定) 遺言者は、本遺言の執行者として次の者を指定する(民法1006条1項)。 氏名【氏名】、住所【住所】、生年月日【生年月日】、職業【職業】
第11条(遺言執行者の権限) 遺言執行者は、本遺言の執行に必要な一切の行為をする権限を有し、預貯金の解約及び払戻し、不動産の登記手続その他の権限を単独で行使できるものとする(民法1012条1項)。
第12条(付言事項) 【遺言者から受遺者・相続人への伝言、遺贈の趣旨説明等を任意で記載】
作成年月日及び署名押印 【年】年【月】月【日】日 遺言者 住所【住所】 氏名【氏名】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 遺言者側の記載パターン
A-1. 内縁の配偶者に特定遺贈をする場合 「遺言者は、遺言者と長年生活を共にしてきた【氏名】(住所【住所】、遺言者との関係:内縁の配偶者)に対し、第1条記載の不動産を遺贈する。」 一言解説: 内縁配偶者には法定相続分がないため、特定遺贈によらなければ財産を承継させることができない。遺留分を有する相続人がいる場合は、遺留分侵害額請求(民法1046条)への配慮も必要である。
A-2. 世話になった知人・団体に遺贈する場合 「遺言者は、遺言者の療養看護に努めた【氏名】に対し、第2条記載の預貯金債権の3分の1に相当する額を遺贈する。」 一言解説: 特定遺贈は個人だけでなく法人・団体に対しても可能であるが、団体への遺贈(いわゆる遺贈寄付)の場合は当該団体の受入れ体制や税務上の取扱いを事前に確認しておくことが望ましい。
A-3. 複数の受遺者に同一財産を割合的に遺贈する場合 「遺言者は、第2条記載の預貯金債権を、【受遺者A】に3分の2、【受遺者B】に3分の1の割合で遺贈する。」 一言解説: 特定の財産を複数の者に割合で遺贈することも可能であるが、解約・払戻し手続の際に受遺者間の合意形成が必要になる場合があるため、遺言執行者の権限を明確にしておくことが望ましい。
B節: 受遺者側の対応パターン
B-1. 遺贈を承認する場合の対応 「受遺者は、第1条記載の不動産の遺贈を承認し、遺言執行者と協力して所有権移転登記手続を行う。」 一言解説: 特定遺贈は放棄しない限り当然に効力が生じるため(民法986条と異なり承認の意思表示は不要)、受遺者が積極的に何もしなくても遺贈自体は有効に成立する点に注意が必要である。
B-2. 遺贈を放棄する場合の対応 「受遺者は、第3条記載の動産の遺贈を放棄する旨を、遺言執行者に対し書面により通知する。」 一言解説: 遺贈の放棄はいつでも行うことができ(民法986条1項)、放棄すると遺言者の死亡時に遡って効力を生じる。放棄後の財産の帰属先は第6条のような手当てがない限り相続人に帰属する。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、特定の財産を特定の者に承継させる特定遺贈(民法964条)を内容とする遺言書の文例である。包括遺贈が相続財産全体に対する割合的な承継であるのに対し、特定遺贈は個々の財産を個別に指定して承継させる点に特徴があり、受遺者は相続人の地位(債務の包括承継等)を当然には引き継がない。
本書式を使ってはいけない場面としては、遺言者の財産のほぼ全部を特定の者に承継させたい場合が挙げられる。この場合は個々の財産を列挙する特定遺贈よりも、包括遺贈又は「相続させる」旨の遺言(相続人に対する場合)の方が財産の漏れを防げることが多い。また、遺留分を有する相続人の遺留分を大きく侵害する内容になっていないかについても、作成段階で試算しておくことが望ましい。
よくある失敗として、第一に、受遺者が遺言者より先に死亡した場合の扱いを定めておらず、当該遺贈が失効し(民法994条1項)、対象財産の帰属が不明確になる例がある。対策として、第5条のように代わりの帰属先をあらかじめ指定しておくことが有効である。第二に、遺贈対象財産以外の財産(いわゆる「その他一切の財産」)についての条項を欠き、遺言作成後に取得した財産や記載漏れの財産について遺産分割協議を要してしまう例がある。対策として、第9条のような包括的な受け皿条項を必ず設けることが望ましい。第三に、遺言執行者を指定せず、不動産の遺贈による登記手続に相続人全員の協力が必要となり手続が停滞する例がある。対策として、第10条・第11条のとおり遺言執行者を指定し、単独で登記手続等ができる権限を明記することが重要である。個別の事案については専門家(弁護士・司法書士等)に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 遺贈の対象財産が第三者から見て特定できる程度に具体的に記載されているか
- [ ] 受遺者の氏名・住所・生年月日等、同一性を確認できる情報を記載しているか
- [ ] 受遺者が遺言者より先に死亡した場合の帰属先を定めているか(民法994条1項)
- [ ] 受遺者が遺贈を放棄した場合の財産の帰属先を定めているか(民法986条)
- [ ] 遺贈対象財産以外の財産についての包括的な受け皿条項があるか
- [ ] 遺言執行者を指定し、その権限の範囲を明記しているか(民法1006条・1012条)
- [ ] 遺留分を有する相続人の遺留分を侵害していないか試算したか
- [ ] 遺贈の履行費用(登記費用等)の負担者を定めているか
- [ ] 内縁配偶者や団体への遺贈の場合、受入れ側の事情を確認したか
- [ ] 全文を遺言者が自書し、日付・署名・押印を欠いていないか(民法968条1項)