入札参加や与信審査で用いる取引実績を証明する書式です。契約件名、期間、金額、履行状況の記載要領を示します。記載例と注記を添えており、初めての担当者でも作成できます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
取引実績証明書
第1部: 書式本文
取引実績証明書は、入札参加資格の審査や与信審査、業務委託先の選定審査などにおいて、過去の取引の事実と内容を第三者に対して証明するために発行される書面である。証明者(発注者)が受注者の実績を客観的に裏づける立場で作成する点に特徴がある。以下は記載項目一覧と各項目の記載例である。
1. 標題 「取引実績証明書」と明記する。宛先(提出先の官公庁名・入札担当課名等)を併記する場合は標題の下に「【提出先名】御中」を付す。
2. 証明者の表示 記載例:「証明者 商号又は名称【株式会社〇〇建設】 所在地【東京都〇〇区〇〇一丁目二番三号】 代表者【代表取締役 〇〇 〇〇】 担当部署及び連絡先【総務部 電話〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇】」
3. 受証明者(取引先)の表示 記載例:「受証明者 商号又は名称【〇〇工業株式会社】 所在地【〇〇県〇〇市〇〇町〇番地】」
4. 証明の趣旨 記載例:「上記受証明者との間で下記のとおり取引を行った事実を証明する。」
5. 契約件名 記載例:「〇〇施設空調設備更新工事」「〇〇システム保守運用業務委託」等、契約書に記載された正式名称を用いる。略称は不可とし、契約書番号を併記することが望ましい【契約番号:〇〇】。
6. 契約期間 記載例:「契約締結日 令和【 】年【 】月【 】日 履行期間 自 令和【 】年【 】月【 】日 至 令和【 】年【 】月【 】日」。継続契約の場合は更新履歴も併記する。
7. 契約金額 記載例:「契約金額 金【 】円(消費税及び地方消費税額を含む)」。変更契約により金額が変動した場合は、当初金額と最終金額を併記し、変更理由を簡潔に付記する。
8. 履行場所・履行内容の概要 記載例:「履行場所【〇〇県〇〇市〇〇一丁目】 履行内容の概要【〇〇棟(延床面積〇〇平方メートル)における空調設備一式の更新及び試運転調整】」。入札参加資格審査で類似工事実績が問われる場合は、工種・規模・仕様を数値で具体的に記載する。
9. 履行状況 記載例:「上記契約は令和【 】年【 】月【 】日をもって完了し、検査に合格したことを確認した。」履行途中の場合は「現在履行中であり、令和【 】年【 】月【 】日時点で工程の【 】パーセントが完了している。」等と実態に即して記載する。
10. 発行年月日及び証明者署名押印欄 記載例:「以上のとおり相違ないことを証明する。令和【 】年【 】月【 】日 証明者 【商号又は名称】 【代表者職氏名】 印」
11. 発行番号(任意) 社内管理のため発行番号を付す場合は標題下に「証第【 】号」等を記載する。
12. 添付資料欄(任意) 記載例:「添付資料【契約書写し、検査調書写し各1通】」。審査機関から裏付け資料の添付を求められる場合、契約書の写しや検査完了報告書の写しを添付し、証明書本体との整合性を担保する。
13. 有効期限・用途限定に関する記載(任意) 記載例:「本証明書は、令和【 】年度〇〇入札参加資格審査の用途に限り使用するものとし、他の目的への転用を禁ずる。」用途を限定することで、証明者の責任範囲を明確化できる。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 発注者(証明者)の立場からの記載パターン
発注者が証明者として発行する場合、事実と異なる証明を行うと後日の紛争や信用毀損のリスクを負うため、履行状況欄は検査調書等の社内記録と完全に一致させる必要がある。記載例として「本証明書の内容は、令和【 】年【 】月【 】日付検査調書に基づくものである。」という一文を末尾に加えることで、証明の根拠を明確にし、後日の照会にも対応しやすくなる。単発の小規模契約では簡易様式で足りるが、公共工事等で入札参加資格の審査に用いられることを想定する場合は、様式第〇号など発注機関指定の書式に準拠しているかを事前に確認すべきである。
B. 受注者の立場からの記載パターン
受注者が発注者に証明書の発行を依頼する場面では、依頼文中に使用目的(例:「〇〇県物品購入契約入札参加資格審査のため」)を明記し、必要な記載項目を発注者に提示することで、記載漏れを防ぐことができる。また、複数の契約実績をまとめて証明してもらう必要がある場合は、契約ごとに件名・金額・履行期間を表形式で列挙する様式に変更し、「別紙記載のとおり」として一覧性を高める工夫が有効である。継続的な取引先との間で毎年発行を依頼する場合は、あらかじめ様式を固定した「取引実績証明書発行依頼書」を取り交わしておくと、発行事務の手間を軽減できる。
C. 金額が大きい・重要案件の場合の書き換え
契約金額が大きく信用審査上の重要性が高い場合は、単なる金額表示に加えて、支払実績(遅延の有無)についても言及を求められることがある。その際は「契約金額の支払は令和【 】年【 】月【 】日までに完了しており、遅延の事実はない。」との一文を追加することで、与信審査における説得力が高まる。
D. 継続取引と単発取引による書き換え
継続的な基本契約の下で複数の個別発注が積み重なっている取引の場合、単一の契約金額を記載する形式では実態を反映しきれない。この場合は「基本契約(契約番号【 】)に基づき、令和【 】年【 】月から令和【 】年【 】月までの間に累計【 】件、累計金額金【 】円の個別発注を履行した。」のように、累計実績として記載する様式に変更するのが実務上一般的である。これに対し単発の請負契約では、本文記載例どおり単一契約としての件名・期間・金額をそのまま用いれば足り、累計表記への変更は不要である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、入札参加資格審査、金融機関等による与信審査、取引先選定時の実績確認など、事実証明を目的とする場面で使用する。逆に、契約の成立や債権債務関係そのものを証明する必要がある場面(例えば代金請求の根拠資料)では、契約書や請求書・領収書等の一次資料を用いるべきであり、本証明書のみで足りるとは限らない。
公共工事に関する入札参加資格審査では、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の趣旨を踏まえ、発注者側が施工実績の的確な把握と公正な審査を行うことが求められており、証明書の記載内容が実際の履行実態と齟齬なく整合していることが前提となる。また、証明の対象となる取引が委任又は請負のいずれの性質を有するかによって、民法上の履行義務の内容(善管注意義務、仕事の完成義務等)が異なるため、契約類型を正確に把握した上で履行状況欄を記載する必要がある。
よくある失敗として、第一に、契約金額を税込・税抜のいずれで記載したか不明確なまま発行してしまう例がある。対策として、金額欄に「(消費税及び地方消費税額を含む)」等の注記を必ず加える。第二に、契約件名を通称・略称のまま記載し、契約書上の正式名称と一致せず審査で不備を指摘される例がある。対策として、契約書の表題を確認したうえで一字一句正確に転記する運用を徹底する。第三に、履行途中の案件を「完了」と誤記してしまう例があり、対策として発行前に社内の検査記録・進捗記録と突合するチェック工程を設けることが有効である。第四に、複数の担当者が独自の様式で証明書を発行してしまい、社内での証明内容にばらつきが生じる例があり、対策として発行権限者を限定し、発行台帳による一元管理を行うことが有効である。なお、審査基準や記載要件は発注機関・金融機関ごとに異なるため、個別の案件については弁護士等の専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 提出先(入札担当課、金融機関等)の指定様式の有無を確認したか
- [ ] 証明者・受証明者の商号、所在地、代表者名に誤りがないか
- [ ] 契約件名は契約書上の正式名称と一致しているか
- [ ] 契約番号を記載できる場合は記載したか
- [ ] 契約期間(締結日・履行期間)は契約書と一致しているか
- [ ] 契約金額は税込・税抜の別を明記したか
- [ ] 変更契約がある場合、当初金額と最終金額の双方を記載したか
- [ ] 履行状況(完了・履行中の別)は最新の検査記録と整合しているか
- [ ] 履行内容の概要は審査基準(類似工事の規模・工種等)を満たす具体性を有するか
- [ ] 発行年月日及び証明者の署名(記名)押印を付したか
- [ ] 社内の発行履歴・発行番号管理台帳に記録したか
- [ ] 発行後、写しを控えとして保管したか
- [ ] 添付資料(契約書写し等)が求められる場合、添付済みか
- [ ] 用途を限定する必要がある場合、その旨を明記したか
- [ ] 発行権限者以外が独自様式で発行していないか確認したか