信用不安や契約違反を理由に新規取引を停止する通知書です。停止の理由と範囲、既存契約の履行、再開の条件を明示します。相手方との認識のずれを防ぐ具体的な記載例を示します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
取引停止通知書
第1部: 書式本文
取引停止通知書
【取引先名称】御中
【年】年【月】月【日】日
【通知する当事者名称】 【住所】 【代表者名】 印
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
さて、誠に遺憾ながら、下記の理由により貴社との新規取引を停止させていただきたく、ご通知申し上げます。
記
第1条(停止の理由) 取引停止の理由は下記のとおりである。 【理由、例:貴社の信用状況の著しい悪化が判明したため/貴社による【基本契約名称】第【 】条所定の義務違反が是正されなかったため】
第2条(停止の範囲) 本通知により停止するのは、本通知到達日以降の新規発注(新たな個別契約の締結)である。本通知到達日時点で既に成立している個別契約の履行には影響を及ぼさない。
第3条(既存契約の履行) 既に発注済みの個別契約については、当社及び貴社は従前の条件どおりこれを履行する。ただし、貴社に契約違反があると当社が判断する場合は、この限りでない。
第4条(与信管理上の措置) 当社は、本通知に併せて、貴社に対する与信枠を見直し、以後の取引条件として前払い又は担保の提供を求めることがある。
第5条(停止の期間) 本停止は、当社が第7条に定める再開条件が満たされたと認めるまでの間継続する。停止期間の定めはあらかじめ設けない。
第6条(通知の効果) 本通知は基本契約の解除を意味するものではなく、新規発注を見合わせる措置にとどまる。ただし、状況が改善しない場合、当社は別途基本契約の解除を検討することがある。
第7条(再開の条件) 取引再開を検討する条件は下記のとおりとする。 (1) 停止理由となった事実の解消が客観的資料により確認できること (2) 貴社から再発防止策の提示があること (3) 当社所定の与信審査を通過すること
第8条(独占禁止法上の留意) 本通知に基づく取引停止は、正当な理由に基づくものであり、独占禁止法上の不当な取引拒絶に該当しないよう留意して行う。
第9条(秘密保持) 本通知及びこれに関連する協議の過程で知り得た相手方の営業上の情報は、目的外に使用又は第三者に開示してはならない。
第10条(記録の保存) 当社は、停止理由を裏付ける資料及び本通知に関する記録を【 】年間保存する。
第11条(連絡窓口) 本通知に関する問合せ及び再開に向けた協議の窓口は下記のとおりとする。 担当部署:【 】 担当者:【 】 連絡先:【 】
第12条(協議) 本通知の内容に関して疑義が生じた場合は、当社と貴社は誠実に協議する。
以上、ご通知申し上げます。
敬具
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節:信用不安を理由とする場合
信用状況の悪化を理由とするときは、根拠事実を具体的に示します。
第1条(修正例) 貴社について【年】年【月】月【日】日付信用調査報告書において支払遅延の事実が複数確認されたため、取引を停止する。
一言解説:抽象的な「信用不安」だけでなく、確認できた具体的事実を示すことで通知の合理性を裏付けます。
B節:契約違反を理由とする場合
契約違反を理由とするときは、違反の内容と是正機会を与えた経緯を記載します。
第1条(修正例) 貴社は【基本契約名称】第【 】条に定める品質基準を【年】年【月】月及び【年】年【月】月の2回にわたり満たさず、当社が是正を求めたにもかかわらず改善が見られなかったため、取引を停止する。
一言解説:是正機会を与えた事実を記載することで、一方的な停止ではないことを示せます。
C節:取引先側で異議を申し立てる場合
取引先は、停止理由に事実誤認がある場合や改善状況を説明する回答書として書き換えます。
第7条(修正例・回答書) 当社は、貴社ご指摘の品質基準未達について、【年】年【月】月に是正措置を完了しており、客観的資料を添えて説明いたしますので、取引再開についてご検討いただきたく存じます。
一言解説:再開条件に対応する形で具体的な是正状況を示すことが説得力を高めます。
D節:既存契約の履行にも慎重を期す場合
信用不安が著しい場合、既存契約の履行についても担保提供等の条件を付すことがあります。
第3条(修正例) 既存の個別契約については、貴社が相当の担保を提供した場合に限り履行を継続する。担保の提供がない場合、当社は民法第533条の同時履行の抗弁権その他の権利を留保する。
一言解説:信用不安が深刻な場合には既存契約の履行条件も見直す必要があることを示す修正です。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面
取引先の信用状況の悪化や重大な契約違反が判明し、以後の新規取引におけるリスクを回避するために新規発注を停止したい場合に使用します。基本契約自体を直ちに解除するのではなく、様子を見ながら段階的に対応したい場面に適しています。
使ってはいけない場面
取引停止が競争者の排除や共同の取引拒絶を目的とする場合、独占禁止法上の不公正な取引方法(一般指定第2項の共同の取引拒絶、第2項単独の取引拒絶等)に該当するおそれがあります。また、下請取引において下請事業者の責めに帰すべき事由がないにもかかわらず発注を停止する場合は、下請代金支払遅延等防止法上の受領拒否禁止に抵触するおそれがあるため、本書式をそのまま用いるべきではありません。
根拠法令
取引停止の可否については契約自由の原則(民法第521条)が出発点となりますが、継続的取引関係がある場合には信義則(民法第1条第2項)による制約が働くことがあります。独占禁止法上は、単独の取引拒絶が原則として自由であるとされる一方、不当な目的による取引拒絶や共同ボイコットは不公正な取引方法として規制されます(独占禁止法第2条第9項、第19条)。既存契約の解除については民法第541条(催告解除)及び第542条(無催告解除)が関係します。
よくある失敗と条項上の対策
- 停止理由を具体的に示さず、後日「不当な取引拒絶」と主張される失敗があります。対策として第1条で客観的事実を具体的に記載します。
- 既存契約の扱いを明確にせず、取引先が「全ての取引が終了した」と誤解する失敗があります。対策として第2条・第3条で既存契約への影響がないことを明記します。
- 再開条件を示さず、取引先が改善の道筋を持てないまま関係が硬直化する失敗があります。対策として第7条のように具体的な再開条件を提示します。
また、取引停止の通知と基本契約の解除通知を混同し、意図せず基本契約全体を解除したものと解釈される失敗も見られます。第6条のように、新規発注の見合わせにとどまり解除ではないことを明記することが重要です。
信用不安の程度や契約違反の内容、取引先との力関係によって取り得る対応は大きく異なるため、個別事案は専門家に確認のうえ通知内容及びその後の対応方針を決定してください。
第4部: 使用前チェックリスト
- 停止理由となる事実を客観的資料で裏付けられるか確認したか
- 新規発注停止の範囲(既存契約への影響の有無)を明記したか
- 既存の個別契約の履行方針を明記したか
- 与信管理上の措置(前払い・担保提供等)の要否を検討したか
- 再開条件を具体的に示したか
- 独占禁止法上の不当な取引拒絶に該当しないか確認したか
- 下請法の適用対象取引かどうかを確認したか
- 基本契約の解除に発展する可能性を踏まえた社内体制を整えたか
- 通知の到達を証明できる方法(内容証明郵便等)を検討したか
- 相手方からの異議・回答への対応窓口を明確にしたか
- 停止理由と基本契約の解除とを混同していないか確認したか
- 与信審査を通過した場合の再開手続を社内で整備したか