不動産や事業用資産を売却・取得する際の議事録。会社法第362条第4項第1号の重要な財産の処分・譲受けの該当性判断と、取引条件や相手方の記載方法を解説します。

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取締役会議事録(重要な財産の処分及び譲受けの件)

第1部: 書式本文

取締役会議事録

  1. 会社の商号: 【株式会社何某】(取締役会設置会社)
  2. 開催日時: 【西暦年】年【月】月【日】日 午前・午後【時】時【分】分
  3. 開催場所: 【本店所在地または会議室名】
  4. 取締役現在数: 【 】名、出席取締役数: 【 】名
  5. 監査役出席: 【氏名】
  6. 議長: 代表取締役【氏名】
  7. 議事録作成者: 【氏名】

議長は、定足数を充足していることを確認し、開会を宣言した。

第1号議案 不動産の【売却・取得】(重要な財産の処分及び譲受け)承認の件

議長は、下記不動産の【売却・取得】が会社法第362条第4項第1号に定める「重要な財産の処分及び譲受け」に該当するかどうかについて、最高裁判所平成6年1月20日判決が示す考慮要素(当該財産の価額、会社の総資産に占める割合、当該財産の保有目的、処分等の頻度、会社における従来の取扱い等)を総合的に考慮した結果を報告した。

対象不動産及び取引条件: 1. 対象不動産の表示: 【所在・地番・地目・地積または家屋番号・構造・床面積】 2. 取引の相手方: 【氏名または商号】(当会社の取締役・大株主等の利害関係者に該当する場合はその旨を明記) 3. 帳簿価額: 金【 】円、当会社の総資産に占める割合: 約【 】% 4. 売買価格(譲渡または譲受けの対価): 金【 】円 5. 保有目的及び取得後の使用予定: 【 】 6. 決済日及び引渡日: 【年月日】 7. 契約の停止条件: 本契約は当会社取締役会の承認を条件として効力を生ずる旨を契約書に明記する 8. 利益相反取引該当性の検討結果: 該当する場合は会社法第356条第1項第2号または第3号及び第365条第1項の承認手続を併せて履行する

出席取締役は、上記考慮要素及び取引条件を踏まえて慎重に審議した結果、全員一致(または過半数の賛成)をもって、原案どおり承認する旨を決議した。

決議事項: 1. 上記不動産の【売却・取得】を承認する。 2. 契約締結、決済及び登記手続の実行担当者: 代表取締役【氏名】 3. 利益相反取引に該当する場合は、これに伴う承認手続もあわせて完了させるものとする。

議長は、以上をもって議事を終了し、閉会を宣言した。

上記の議事の経過の要領及びその結果を明確にするため、本議事録を作成し、出席取締役及び監査役がこれに記名押印する。

【作成日】

【株式会社何某】 議長・代表取締役 【氏名】 印 取締役 【氏名】 印 監査役 【氏名】 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 不動産売買の場合

修正条文例:

議長は、対象不動産の売買契約書案において、本契約が当会社取締役会の承認を停止条件として効力を生ずる旨が明記されていることを確認し、当該条件と本決議の内容が整合していることを報告した。

一言解説: 不動産売買では、契約書上の停止条件文言と取締役会決議の対象・条件を一致させておかないと、契約の効力発生時期や決議の有効性について後日争いが生じうる。決済前に契約書と議事録を突合して確認することが望ましい。

B. 取締役会設置会社の場合

修正条文例:

議長は、当会社が取締役会設置会社であり、会社法第362条第4項第1号に定める重要な財産の処分及び譲受けは取締役会の決議事項であって代表取締役に委任することができない旨を確認したうえで、重要性が低いと判断される取引類型については、あらかじめ社内規程で定める金額基準の範囲内に限り代表取締役への委任が可能である旨を付言した。

一言解説: 重要な財産の処分・譲受けに該当する限り、個別の決定を代表取締役に一任することはできない。もっとも、重要性が乏しいと評価できる範囲(少額・定型的な取引等)については、社内規程で基準を明確化したうえで委任することが可能と整理されている。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

本書式は、取締役会設置会社が不動産その他の事業用資産を売却または取得するに当たり、当該取引が「重要な財産の処分及び譲受け」に該当するため取締役会の決議を要する場面で使用する。取引額・財産の重要性が低く、社内規程上代表取締役の決裁権限の範囲内にとどまる取引や、非取締役会設置会社における決議には、本書式をそのまま使用すべきではない。

根拠法令は、会社法第362条第4項第1号(重要な財産の処分及び譲受けは取締役会の決議事項)である。「重要な財産」の該当性については、最高裁判所平成6年1月20日判決が、当該財産の価額、会社の総資産に占める割合、当該財産の保有目的、処分等の頻度、会社における従来の取扱い等を総合的に考慮して判断すべき旨を示しており、実務上の判断基準として広く参照されている。重要性が乏しいと評価できる取引については、社内規程に基づく代表取締役への委任も許容されると解されている。また、取引の相手方が取締役や大株主等の利害関係者である場合には、会社法第356条及び第365条の利益相反取引規制が重複して適用される可能性がある。

実務上よくある失敗として、第一に、最高裁判例が示す総合考慮要素を検討せず、帳簿価額の総資産に占める割合のみで重要性を判断し、本来必要な取締役会決議を欠いたまま契約を締結してしまうリスクがある。割合基準だけでは、保有目的や処分頻度、会社の従来の取扱いといった質的な要素が反映されないため、議事録上に判例の考慮要素ごとの検討結果を記載し、総合判断の過程を残すことが対策となる。

第二に、取引の相手方が取締役・大株主等の利害関係者である場合に、会社法第356条・第365条の利益相反取引規制との重複適用を見落とすケースがある。重要財産の処分等の承認決議のみを経て利益相反取引としての承認手続を欠くと、別途、任務懈怠責任や取引の効力に関する問題が生じうるため、相手方の属性を確認し、該当する場合は両手続を併せて履践する必要がある。

第三に、不動産売買契約の停止条件(取締役会承認を条件とする旨)を契約書と議事録の間で整合させないケースがある。契約書上の停止条件の文言と、取締役会決議で承認した取引条件(価格、対象不動産の表示、決済日等)に齟齬があると、契約の効力発生や決議の有効性について疑義を招くおそれがあるため、決済前に契約書案と議事録案を突合しておくことが望ましい。

以上のとおり、重要性判断、利益相反規制の重複適用、契約条件との整合性はいずれも取引の効力に関わる重要な留意点であるため、個別事案については取引の規模・相手方の属性を踏まえて専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 最高裁平成6年1月20日判決の考慮要素(価額、総資産に占める割合、保有目的、処分頻度、従来の取扱い)を検討したか
  • [ ] 帳簿価額の割合のみに依拠せず総合的に重要性を判断したか
  • [ ] 対象不動産の表示、価格、決済日等の取引条件を具体的に記載したか
  • [ ] 取引の相手方が取締役・大株主等の利害関係者に該当しないか確認したか
  • [ ] 該当する場合、会社法第356条・第365条の利益相反取引承認手続を別途履践したか
  • [ ] 契約書の停止条件(取締役会承認を条件とする旨)と議事録の内容が整合しているか
  • [ ] 重要性が乏しい取引について代表取締役へ委任する場合の社内規程上の基準を確認したか
  • [ ] 監査役の出席・意見聴取の記録があるか
  • [ ] 決済・登記手続の実行担当者を明確にしたか
  • [ ] 議長及び出席取締役・監査役の記名押印を得たか
  • [ ] 個別事案の該当性判断について専門家への確認を予定しているか