取締役が自己または第三者のため会社の事業と競合する取引を行う際の議事録。会社法第356条第1項第1号の重要事実の開示と第365条第2項の事後報告義務を反映しました。

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取締役会議事録(競業取引の承認の件)

第1部: 書式本文

取締役会議事録

  1. 会社の商号: 【株式会社何某】(取締役会設置会社)
  2. 開催日時: 【西暦年】年【月】月【日】日 午前・午後【時】時【分】分
  3. 開催場所: 【本店所在地または会議室名】
  4. 取締役現在数: 【 】名、出席取締役数: 【 】名(うち下記6の対象取締役を含む)
  5. 監査役出席: 【氏名】
  6. 対象取締役: 【氏名】(以下「対象取締役」という。本議案につき会社法第369条第2項の特別利害関係人に該当し、議決権を行使することができない)
  7. 議長: 定款の定めに基づき代表取締役【氏名】が議長に就任した
  8. 議事録作成者: 【氏名】

議長は、法令及び定款に定める定足数を充足していることを確認し、開会を宣言した。

第1号議案 対象取締役による競業取引の承認の件

議長は、対象取締役が自己または第三者のために当会社の事業の部類に属する取引を行おうとしていることを説明し、会社法第356条第1項第1号に基づき、次の重要な事実を開示した。

開示事項: 1. 取引の相手方: 【氏名または商号】 2. 取引の種類及び内容: 【 】 3. 取引の目的物及び数量: 【 】 4. 取引価格及び決済条件: 【 】 5. 取引期間: 【年月日】から【年月日】まで(または継続的取引の場合はその旨) 6. 当会社の事業との競合の程度及び当会社に及ぼす影響: 【 】 7. 承認を要する理由: 【 】

議長は、対象取締役が本議案について特別の利害関係を有するため、会社法第369条第2項により議決権を行使することができない旨を確認し、対象取締役を除く出席取締役の議決権数をもって定足数を算定のうえ、審議に付した。対象取締役を除く出席取締役は、上記開示事項を前提に慎重に審議した結果、全員一致(または過半数の賛成)をもって、上記取引を承認する旨を決議した。

決議事項: 1. 上記開示事項記載の取引を承認する。 2. 対象取締役は、会社法第365条第2項に基づき、取引を行った後、遅滞なく当該取引についての重要な事実を取締役会に報告しなければならない。 3. 承認の有効期間: 【年月日】まで(継続的取引の場合は取締役会が別段の決議をするまで)

議長は、以上をもって議事を終了し、閉会を宣言した。

上記の議事の経過の要領及びその結果を明確にするため、本議事録を作成し、出席取締役及び監査役がこれに記名押印する。

【作成日】

【株式会社何某】 議長・代表取締役 【氏名】 印 取締役 【氏名】(対象取締役) 印 取締役 【氏名】 印 監査役 【氏名】 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 取締役会設置会社の場合

修正条文例:

議長は、当会社が取締役会設置会社であることから、会社法第365条第1項により本議案の承認機関は取締役会であり、株主総会の承認を要しない旨を確認した。

一言解説: 取締役会非設置会社では株主総会の承認が必要となるが(会社法第356条第1項)、取締役会設置会社では第365条第1項によりこれに代えて取締役会の承認で足りる。定款・登記事項証明書で機関設計を確認したうえで承認機関を誤らないようにする。

B. 事前承認として付議する場合

修正条文例:

議長は、対象取締役が本取引を実行する前に本議案を取締役会に付議したものであること、及び承認は当該取引の実行前に得る必要があることを確認した。

一言解説: 競業取引の承認は取引実行前の事前承認が原則である。事後に追認的な承認決議を行った場合でも、承認前の期間についての任務懈怠責任(会社法第423条第1項)を当然に免れるものではない点に留意する。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

本書式は、取締役会設置会社において、取締役が自己または第三者のために会社の事業の部類に属する取引(競業取引)を行おうとする場合に、当該取引の実行前に取締役会の承認を得る場面で使用する。取締役会非設置会社(承認機関が株主総会となる)や、既に取引を実行してしまい承認を得ずに終わった事案の追認処理には、条文の構成が異なるため本書式をそのまま使用すべきではない。

根拠法令は、会社法第356条第1項第1号(競業取引についての重要な事実の開示及び承認)、第365条第1項(取締役会設置会社における承認機関は取締役会である旨)、第369条第2項(特別利害関係を有する取締役の議決権行使の制限)、第365条第2項(取引後遅滞なく重要な事実を取締役会に報告する義務)である。承認を得ずに競業取引を行った場合には、会社法第423条第2項により当該取引によって得た利益の額が会社に生じた損害の額と推定される。

なお、対象取引の内容や相手方が変動しうる継続的取引について、あらかじめ一定の範囲を定めて包括的に承認する運用も見られるが、開示すべき重要な事実が曖昧なまま包括承認の範囲を広げすぎると、個別取引について改めて承認を要するかどうかの判断が困難となる。包括承認を行う場合であっても、対象となる取引の種類・数量・期間の上限等をできる限り具体的に特定し、上限を超える取引や当初想定していない類型の取引が生じた場合には改めて取締役会に付議する運用を社内規程等で明確にしておくことが望ましい。

実務上よくある失敗として、第一に、承認決議の対象取引を「同種の事業全般」のように抽象的に記載し、取引の種類・目的物・数量・価格・期間等の重要事実の開示が不十分なまま決議してしまうケースがある。会社法第356条第1項第1号は取締役に重要な事実を開示したうえで承認を求めることを要求しており、開示が不十分な承認は個別具体的な取引について有効な承認とは評価されないおそれがある。議事録には取引の相手方、目的物、数量、価格、期間を具体的に記載することが対策となる。

第二に、対象取締役を議決権行使から除外せず定足数計算に含めてしまう会社法第369条第2項違反のケースがある。特別利害関係を有する取締役は議決権を行使できないため、議事録上も対象取締役の議決権数を定足数及び賛成数の算定から明確に除外して記載する必要がある。

第三に、取引実行後の事後報告(会社法第365条第2項)を怠り、会社への説明責任を果たさないケースがある。承認決議はあくまで取引実行前の許可にとどまり、実行後は取引の結果や重要な事実を遅滞なく取締役会に報告することが法定されているため、決議事項に事後報告義務を明記し、報告時期を管理することが望ましい。

以上のとおり、開示の具体性、議決権の除外、事後報告のいずれも承認の有効性や取締役の責任評価に影響しうるため、個別事案については取引の類型・影響の程度を含めて専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 会社が取締役会設置会社であり、承認機関が取締役会であることを確認したか
  • [ ] 取引の相手方、種類、目的物、数量、価格、期間等の重要事実を具体的に開示したか
  • [ ] 承認は取引の実行前に得られているか(事前承認の原則)
  • [ ] 対象取締役を会社法第369条第2項により議決権行使から除外したか
  • [ ] 定足数及び賛成数の算定から対象取締役の議決権を除外して記載したか
  • [ ] 監査役設置会社の場合、監査役の出席及び意見聴取の記録があるか
  • [ ] 承認決議に会社法第365条第2項の事後報告義務を明記したか
  • [ ] 事後報告の時期・方法を管理する社内手続を整備しているか
  • [ ] 承認の有効期間及び範囲(単発取引か継続的取引か)を明確にしたか
  • [ ] 承認を得ずに実行された場合の会社法第423条第2項の利益推定規定を認識しているか
  • [ ] 議長及び出席取締役・監査役の記名押印を得たか
  • [ ] 個別事案の該当性・開示の十分性について専門家への確認を予定しているか