新株予約権の申込者に対する割当てを決定する議事録。会社法第243条第2項の割当決議に加え、付与対象者ごとの個数決定と割当契約の締結手続をあわせて解説します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
取締役会議事録(新株予約権の割当ての決定の件)
第1部: 書式本文
取締役会議事録
株式会社【会社名】は、【開催年月日】午前・午後【◯】時【◯】分より、当会社本店【所在地】において取締役会を開催した。
-
取締役の総数及び出席取締役数 取締役の総数【◯】名のうち、出席取締役数【◯】名(会社法第369条第1項の定足数を充足)
-
出席監査役 監査役【◯】名出席
-
議長 代表取締役【氏名】が議長席に着き、開会を宣し、本取締役会は適法に成立した旨を述べ、直ちに議事に入った。
-
前提事実の確認(募集事項決定との区別) 議長は、当会社が【募集事項決定日】開催の取締役会において、会社法第238条に基づき新株予約権に関する募集事項(発行数、行使価額、行使期間、譲渡制限の有無等)を決定済みであること、及び本議事録はこれとは別個の「割当ての決定」に関するものであることを確認した。
-
申込状況の報告 議長は、会社法第242条に基づき募集事項を通知した結果、下記の対象者から申込みがあった旨を報告した。
- 申込者: 【氏名(役職)】、申込個数: 【◯】個
-
申込者: 【氏名(役職)】、申込個数: 【◯】個
-
議案の上程 議長は「新株予約権の割当ての決定の件」を議案として上程した。
-
決議事項(割当てを受ける者及び割り当てる新株予約権の数の決定) 審議の結果、出席取締役全員異議なく、会社法第243条第1項に基づき、下記のとおり割当てを受ける者及び割り当てる新株予約権の数を決定することを可決した。当会社が発行する本新株予約権は譲渡制限新株予約権であるため、本決議は同条第2項に基づく取締役会決議として行うものである。
| 付与対象者 | 役職 | 割当個数 | 権利行使価額 |
|---|---|---|---|
| 【氏名】 | 【取締役】 | 【◯】個 | 【◯】円 |
| 【氏名】 | 【従業員】 | 【◯】個 | 【◯】円 |
-
払込みの要否の確認 本新株予約権は無償で発行するものであり、会社法第238条第1項第3号に基づき、割当てを受ける者は新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないことを確認した。
-
税制適格ストックオプションの要件確認 本新株予約権を租税特別措置法第29条の2に定める税制適格ストックオプションとして設計する場合、下記の要件を満たしていることを確認する。
- 権利行使価額が、本割当契約締結時における当会社株式の1株当たり時価相当額以上であること
- 権利行使期間が、新株予約権の割当てに係る決議の日後2年を経過した日から当該決議の日から10年を経過する日までの間であること(会社法上の非上場会社等の場合の特則を含め、租税特別措置法上の要件に従う)
- 新株予約権の譲渡が禁止されていること
-
付与対象者が租税特別措置法第29条の2第1項各号に定める者(当会社又はその子会社の取締役・執行役・使用人等で一定の要件を満たす者)に該当すること
-
割当契約の締結 会社は、付与対象者との間で、割当個数・行使価額・行使期間・譲渡制限等を内容とする新株予約権割当契約を締結するものとする。契約締結担当者: 【氏名】
-
決議の方法及び結果 議長は各取締役に意見を求めたが特段の異議なく、出席取締役の全員一致をもって上記各号を承認可決した。
-
閉会 以上をもって本日の議事を終了したので、議長は閉会を宣した。(閉会時刻: 【◯】時【◯】分)
-
議事録の作成 本議事録を作成し、議長及び出席取締役・監査役が次に記名押印する。
【作成年月日】 株式会社【会社名】 取締役会
議長・代表取締役 【氏名】 印 出席取締役 【氏名】 印 出席監査役 【氏名】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: ストックオプションとしての記載パターン
税制適格ストックオプション(租税特別措置法第29条の2)としての利用を想定する場合、第9項の要件確認を必ず議事録に残す。特に権利行使価額の設定は、割当契約締結時点の株価(直近の第三者評価や取引実績に基づく時価)以上でなければならず、この点を誤ると税制適格性を欠き、権利行使時に給与所得等として課税されるリスクが生じる。付与対象者ごとに行使価額の算定根拠(算定日・算定方法)を別紙として添付し、議事録本文と紐づけておく運用が望ましい。
B節: 取締役会設置会社としての記載パターン
取締役会設置会社において、譲渡制限新株予約権の割当てを決定する場合、会社法第243条第2項に基づき取締役会の決議によらなければならない。第7項では「譲渡制限新株予約権であるため取締役会決議として行う」旨を明記し、決議機関の根拠を明確化している。非取締役会設置会社の場合は株主総会の決議に置き換える必要があり、また譲渡制限のない新株予約権を発行する場合は、募集事項の決定時に別段の定めがない限り原則として取締役の決定(取締役会非設置会社)又は取締役会決議に委任可能な範囲を確認する必要がある。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、新株予約権の募集事項決定(会社法第238条)後に、申込みを受けた者の中から実際に割当てを受ける者及び割当個数を決定する場面で使用する。募集事項の決定と割当ての決定は会社法上区別された別個の決議事項であり、無償で付与するストックオプションの実務で頻繁に用いられる。総数引受契約(第244条)による場合は割当決議自体が不要となるため、その場合は本書式を使用しない。根拠法令は、募集事項の決定に関する第238条、申込みに関する第242条、割当てを受ける者及び数の決定に関する第243条第1項及び第2項、払込みの要否を定める第238条第1項第3号及び第244条、並びに税制適格ストックオプションの要件を定める租税特別措置法第29条の2である。
実務でよくある失敗として、第一に、税制適格ストックオプションを意図しているにもかかわらず、権利行使価額の設定を誤り、租税特別措置法第29条の2の要件を欠いてしまうケースがある。同条は、権利行使価額が新株予約権に係る契約締結時の株式の時価以上であることを要件の一つとしており、これを下回る価額で設定すると、税制適格の前提が崩れ、付与対象者に想定外の課税(給与課税等)が生じるおそれがある。本書式第9項のように、決議時点で算定根拠を明記し、直近の株価算定資料を添付する運用が対策となる。
第二に、付与対象者ごとの個数決定を一覧化せず、後日締結する割当契約書との整合が取れなくなるケースがある。付与対象者が多数に上る場合、個別の口頭確認や別途のメールのみで個数を管理すると、議事録との齟齬が生じやすい。本書式第7項のように、付与対象者・役職・割当個数・行使価額を表形式で一覧化し、議事録本体に組み込むことが対策となる。
第三に、募集事項決定議事録(第238条)と割当決議議事録(第243条)を混同し、両者の決議日・決議機関の違いを議事録上明確にしないケースがある。募集事項の決定は原則として株主総会の特別決議(第238条第2項、第309条第2項第6号。取締役会設置会社が有利発行に該当しない場合等一定の場合は取締役会に委任可能)によることが多い一方、割当ての決定は譲渡制限新株予約権である場合は取締役会決議による。本書式第4項のように、募集事項決定が別議事録である旨を明記することが対策となる。なお、税制適格要件の充足の有無や権利行使価額の算定方法の妥当性については、会社の株価評価や制度設計により結論が異なるため、個別事案は専門家に確認することが不可欠である。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 募集事項決定(第238条)の議事録と本議事録(割当決議)を明確に分けて作成したか
- [ ] 当会社が発行する新株予約権が譲渡制限新株予約権かどうかを確認し、決議機関を正しく選択したか(第243条第2項)
- [ ] 付与対象者ごとの割当個数を表等で一覧化したか
- [ ] 無償発行か有償発行かを明確にしたか(第238条第1項第3号、第244条)
- [ ] 税制適格ストックオプションとする場合、権利行使価額が契約締結時の時価以上であることを確認したか(租税特別措置法第29条の2)
- [ ] 権利行使期間・譲渡制限の内容が租税特別措置法上の要件と整合しているか確認したか
- [ ] 付与対象者が租税特別措置法第29条の2第1項各号の対象者要件を満たすか確認したか
- [ ] 新株予約権割当契約の締結担当者・締結期限を明記したか
- [ ] 総数引受契約(第244条)による発行ではないことを確認したか
- [ ] 取締役会の定足数(第369条第1項)を満たしているか確認したか