ベンチャー投資ファンドを組成する場面の組合契約書。投資事業有限責任組合契約に関する法律に基づき、GPの業務執行権限と損益分配・登記事項を定めます。

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投資事業有限責任組合契約書

第1部: 書式本文

【無限責任組合員名称】(以下「GP」という。)及び別紙記載の各出資者(以下「LP」と総称する。)は、投資事業有限責任組合契約に関する法律(以下「有責法」という。)に基づき、次のとおり投資事業有限責任組合契約(以下「本契約」という。)を締結し、投資事業有限責任組合(以下「本組合」という。)を組成する。

第1条(組合の名称及び目的) 本組合は「【〇〇投資事業有限責任組合】」と称し、有責法第3条第1項各号に掲げる事業のうち、未公開株式への投資その他これに付随する事業を営むことを目的とする。

第2条(組合員及び出資) 1. 本組合の無限責任組合員はGPとし、有限責任組合員は別紙記載のLPとする。 2. 各組合員は、別紙記載の出資約束金額の範囲内で、GPの発する出資請求(キャピタルコール)に応じて出資を履行する。 3. GPの出資約束金額は、組合員全員の出資約束金額の合計額の【1】%以上とする。

第3条(組合の登記) GPは、本組合の成立後2週間以内に、有責法第17条に基づき、組合の名称、事務所の所在地、組合員の氏名又は名称及び住所(LPについては氏名又は名称及び住所のうち法令上登記を要する事項)、組合契約の効力発生日その他の登記事項を主たる事務所の所在地を管轄する登記所において登記する。

第4条(業務執行) 1. 本組合の業務執行は、有責法第7条に基づきGPが行う。LPは本組合の業務を執行する権限を有しない。 2. GPは、投資先の選定、投資の実行及び回収、組合財産の管理その他本組合の運営に必要な一切の行為を、善良な管理者の注意をもって行う。 3. 次の各号の行為は、LPの総出資約束金額の【過半数】に相当する出資約束金額を有するLPの事前の書面同意を要する。 (1) 単一の投資先への投資額が組合総約束金額の【20】%を超える投資 (2) GPの利害関係者に対する投資

第5条(有限責任) LPは、有責法第9条第1項に基づき、その出資の価額を限度として本組合の債務を弁済する責任を負う。ただし、LPが本組合の業務を執行した場合その他有責法第9条第2項各号に該当する場合、当該LPは無限責任組合員と同様の責任を負うことがある。

第6条(投資期間及び組合の存続期間) 1. 本組合が新規投資を実行できる期間(投資期間)は、本組合の成立日から【5】年間とする。 2. 本組合の存続期間は、成立日から【10】年間とする。ただし、GPはLPの総出資約束金額の【過半数】の同意を得て、【1】年ごとに合計【2】年を限度として存続期間を延長することができる。

第7条(損益の分配) 1. 本組合の投資先の株式等の売却その他の処分により生じた収益は、投資元本の回収を優先した後、GPに対する成功報酬(キャリード・インタレスト)として当該収益の【20】%をGPに分配し、残額をLPの出資割合に応じて分配する。 2. GPに対する成功報酬は、LPが優先的に投資元本及び優先分配率【年8】%相当額の分配を受けた後に発生するものとする(ハードルレート方式)。

第8条(管理報酬) 本組合は、GPに対し、投資期間中は組合総約束金額の【2】%、投資期間経過後は投資済み残高の【2】%に相当する年間管理報酬を四半期ごとに支払う。

第9条(組合員の脱退) 1. LPは、GPの事前の書面同意なく本組合から任意に脱退することができない。 2. LPが死亡、破産手続開始の決定その他有責法及び組合契約に定める事由に該当した場合、当該LPは本組合から脱退する。

第10条(GPの解任) LPの総出資約束金額の【3分の2】以上に相当する出資約束金額を有するLPが合意した場合、GPを解任し後任のGPを選任することができる。

第11条(秘密保持及び反社会的勢力の排除) 各組合員は、本組合の運営に関して知り得た非公開情報を第三者に開示してはならず、また自己が暴力団その他の反社会的勢力に該当しないことを表明し保証する。

第12条(合意管轄) 本契約に関する紛争については、【〇〇地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

以上の合意を証するため本書を作成し、GP及び各LPが記名押印する。

【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】

(GP) 住所:【     】 名称:【     】 代表者:【     】 印

(LP) 別紙のとおり

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 無限責任組合員(GP)向け書き換え

A-1. 迅速な投資判断を優先したい早期ステージ特化ファンドの場合

第4条3項修正例:「単一の投資先への投資額が組合総約束金額の35%を超える場合に限り、LPの事前同意を要する。」 解説: シード・アーリー期投資では意思決定速度が競争力を左右するため、LP同意を要する事項の閾値を引き上げ機動性を確保する。

A-2. 存続期間中に追加ファンド組成を予定する場合

第6条2項追加例:「GPは、本組合の投資期間中に後継ファンドを組成する場合、既存LPに対し優先的な出資機会を提供する。」 解説: 既存LPとの関係を継続するため、後継ファンドへの優先的な参加機会を契約上保障しておくことが信頼関係の維持に資する。

B. 有限責任組合員(LP)向け書き換え

B-1. 機関投資家として利益相反管理を重視する場合

第4条3項2号修正例:「GPの利害関係者に対する投資は、投資額の多寡にかかわらず常にLPの事前の書面同意を要する。」 解説: 機関投資家は利益相反取引への監視を強く求める傾向があるため、金額基準を設けず一律に同意を要件化する。

B-2. GPの運用実績が不透明な立ち上げ初号ファンドへの出資の場合

第10条修正例:「GPが重大な義務違反を行った場合、LPの総出資約束金額の過半数の合意によりGPを解任できる。」 解説: 実績の乏しいGPへの出資では、解任のハードルを3分の2から過半数に引き下げることでLPのガバナンス機能を強化できる。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面と使ってはいけない場面の解説 本書式は、ベンチャーキャピタルやバイアウトファンドが未公開株式等への投資を目的として資金を募る際に、GPとLPとの間で組合を組成する場面で用いる。有責法の対象事業は有価証券投資等の限定列挙(有責法第3条第1項各号)であり、不動産の直接保有を主目的とする事業や貸付けのみを目的とする事業は対象事業に含まれない場合があるため、投資対象が有責法上の対象事業に該当するかを事前に確認する必要がある。該当しない場合には民法上の任意組合契約又は他の事業体を検討すべきであり、本書式をそのまま用いるべきではない。

根拠法令の解説 本組合は投資事業有限責任組合契約に関する法律に基づき組成される。同法第3条第1項は組合の対象事業を限定列挙しており、第7条はGPのみが業務執行権限を有する旨を定める。第9条第1項はLPの責任がその出資の価額を限度とする有限責任である旨を定めるが、同条第2項はLPが業務執行その他の行為を行った場合に無限責任組合員と同様の責任を負う場合があることを定めており、LPが業務執行権限を有しないことを契約上も明記する必要がある(第4条1項)。また、同法第17条は組合の登記事項及び登記義務を定めており、登記を怠ると第三者への対抗要件を欠くほか、過料の制裁の対象となり得る。

実務でよくある失敗と対策 第一に、LPが投資先の選定に関与する運用実態を作ってしまい、有責法第9条第2項の無限責任化リスクを見落とす失敗がある。第4条1項及び第4条3項のように、LPの関与を事前同意権にとどめ業務執行そのものを行わない構成とする。第二に、組合成立後の登記を失念し、第三者対抗要件を欠いたまま投資活動を開始してしまう失敗がある。第3条のように登記義務の期限を明記し履行を確実にする。第三に、キャリード・インタレストの計算方法があいまいで、投資元本回収前に成功報酬が発生してしまう失敗がある。第7条2項のようにハードルレート方式を採用し優先分配の順序を明確にする。ファンドの投資対象や規模により有責法の適用の有無や税務上の取扱いが異なるため、個別の組成スキームは専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 投資対象事業が有責法第3条第1項各号の対象事業に該当するか確認したか
  • [ ] GPの出資約束金額が組合総額の一定割合以上であることを定めたか
  • [ ] LPが業務執行権限を有しない旨を明記し無限責任化リスクを遮断したか
  • [ ] 組合成立後の登記事項及び登記期限を確認したか
  • [ ] LPの事前同意を要する重要事項(大口投資、利益相反取引等)を定めたか
  • [ ] 投資期間及び存続期間、延長の可否と要件を定めたか
  • [ ] 損益分配及びキャリード・インタレストの計算方法(ハードルレート等)を明確にしたか
  • [ ] 管理報酬の算定基礎と支払時期を定めたか
  • [ ] LPの脱退事由及びGPの解任要件を定めたか
  • [ ] 秘密保持義務、反社会的勢力排除条項及び合意管轄を定めたか