セット内容

  • 投資契約書(J-KISS型)2バージョン(投資家側/発行会社側)Word形式
  • 転換条件・評価上限(バリュエーションキャップ)の設計例
  • クロージング手続きチェックリスト

こんな場面で

シード期のスタートアップが、株価算定を先送りしつつ早期に資金調達を行うJ-KISS型新株予約権による投資を受け入れる場面。

特長

  • 評価上限・ディスカウント率・転換トリガー事由を選択式で規定
  • 次回資金調達時の転換手続き・みなし清算条項を標準装備
  • 株主間契約書(kabunushikan-keiyaku-so)とあわせてシード期の資本政策書類を揃えられる
以下はAIが作成し弁護士監修前のβ版である。一般的な参考情報として無料公開しており、個別事案への適合性は保証しない。重要な取引に使用する際は専門家によるレビューを受けること。監修完了後に正式版へ差し替える。

投資契約書(J-KISS型・シード)(監修用ドラフト)

⚠ 本ファイルは弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布を禁止する。

商品ID: toshi-keiyaku-j-kafu / 価格: 4,980円 / 立場バージョン: 投資家側有利・発行会社側有利(第1部は中立版をベースとする)

本商品は、シード期のスタートアップが、株式の評価額の算定を先送りしつつ早期に資金調達を実施する場面において用いられる、J-KISS型新株予約権(無償割当てではなく有償の募集新株予約権として発行するものをいう。以下同じ。)の発行契約書一式である。評価上限(バリュエーションキャップ)・ディスカウント率・転換トリガー事由を選択式で規定し、次回資金調達時の転換手続及びみなし清算条項を標準装備する構成としている。株主間契約書(kabunushikan-keiyaku-so)とあわせて利用することで、シード期の資本政策書類を一式整えることを想定している。


第1部: 契約書本文(標準版・中立)

新株予約権発行契約書(J-KISS型)

株式会社〇〇〇〇(以下「甲」又は「発行会社」という。)と〇〇〇〇(以下「乙」又は「投資家」という。)とは、甲が発行する新株予約権(以下「本新株予約権」という。)を乙が引き受けることに関し、以下のとおり新株予約権発行契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(前提事項)

  1. 甲は、令和〇年〇月〇日開催の甲の取締役会(甲が取締役会非設置会社である場合は株主総会)において、会社法第238条及び第240条(取締役会設置会社の場合)又は第238条及び第239条(株主総会決議による場合)に基づき、乙に対し本新株予約権を割り当てる旨の募集事項を決定したことを確認する。
  2. 甲は、本契約締結にあたり必要な会社法上の手続(取締役会決議又は株主総会決議、割当先の決定、募集事項の通知等)をすべて適法に履践していることを表明し、乙はこれを前提として本新株予約権を引き受ける。
  3. 本新株予約権は無償割当て(会社法第277条以下)ではなく、乙が本契約に基づき払込金額を払い込むことにより取得する有償の募集新株予約権(会社法第238条以下)であることを確認する。

第2条(本新株予約権の発行要項)

本新株予約権の発行要項は次のとおりとする。

(1)新株予約権の名称: 甲第〇回新株予約権 (2)発行する新株予約権の数: 〇〇個(本新株予約権1個につき目的たる株式数は普通株式〇株とする。) (3)本新株予約権と引換えに払い込む金銭(払込金額): 本新株予約権1個につき金〇〇〇円とし、その総額は金〇〇〇円とする。当該払込金額は、本新株予約権の発行時点における公正な評価額として、第三者算定機関の算定又は当事者間の合理的な協議により決定したものであることを甲は表明する。 (4)本新株予約権の行使に際して出資される財産の価額(行使価額): 1株につき金1円とする。ただし、第3条に定める転換価額の算定方法に従い、実際に発行される株式数を調整することにより経済的な転換条件を実現するものとし、行使価額自体は名目的な金額とする。 (5)本新株予約権を行使することができる期間(行使期間): 第4条に定める転換トリガー事由が発生した日の翌日から〇〇日間、又は第5条に定める満期日から〇〇日間のいずれか早い期間とする。 (6)本新株予約権の割当日: 令和〇年〇月〇日 (7)払込期日: 令和〇年〇月〇日

第3条(評価上限及びディスカウント率)

  1. 本新株予約権の転換にあたっては、次の各号のいずれか(本契約締結時に甲乙間で選択し、別紙に記載する。)に従い、転換価額を算定するものとする。 (1)評価上限方式: 次回適格資金調達(第4条第1項に定める。以下同じ。)における発行価額の算定基礎となる甲の株式価値が、あらかじめ定める評価上限額(以下「評価上限額」という。金〇〇〇円と設定する例が多いが、当事者間の協議により決定する。)を超える場合には、評価上限額を次回適格資金調達直前の完全希薄化後株式数で除した価額を転換価額とする。 (2)ディスカウント方式: 次回適格資金調達における1株当たりの発行価額に、あらかじめ定めるディスカウント率(以下「ディスカウント率」という。〇〇%〔例: 20%〕とする例が多い。)を乗じて得た額を控除した価額を転換価額とする。 (3)併用方式: 前2号のうちいずれか投資家に有利な(転換価額が低い)方を転換価額とする。
  2. 前項の評価上限額及びディスカウント率は、本新株予約権の発行時点における甲の企業価値、資金調達の状況その他の事情を勘案して当事者間で協議のうえ決定するものとし、評価上限額を設定しない場合(ディスカウント方式のみを採用する場合)もあり得る。
  3. 転換価額の算定にあたり、完全希薄化後株式数には、発行済株式総数のほか、本新株予約権及び他の新株予約権、ストックオプションプールとして留保される株式数を含めるものとするか否かについては、別紙に定めるところによる。

第4条(転換トリガー事由及び転換株式数の算定)

  1. 「次回適格資金調達」とは、本新株予約権の発行後、甲が普通株式又は種類株式の発行等により、累計金〇〇〇円以上の資金調達を実施することをいう。
  2. 次回適格資金調達が実施された場合、乙は、本新株予約権の全部を行使し、次の算定式により算定される数の株式(次回適格資金調達において発行される株式と同種のものとする。)の交付を受けるものとする。 転換株式数 =(払込金額の総額)÷(第3条に基づき算定される転換価額)
  3. 次回適格資金調達が生じないまま、甲についてM&A(甲の発行済株式の過半数の譲渡、事業の全部若しくは重要な一部の譲渡、又は甲が消滅会社となる合併等、実質的に支配権が移転する取引をいう。以下同じ。)が生じた場合、乙は、本新株予約権を行使し、又は第6条のみなし清算条項に従い金銭の分配を受けるものとする。
  4. 甲が株式上場(証券取引所への上場をいう。)に至った場合、乙は、上場申請直前の適用可能な評価額を基準として、本新株予約権を普通株式に転換するものとする。
  5. 前各項のいずれの事由も生じないまま、本新株予約権の発行から〇〇か月を経過した日(以下「満期日」という。)が到来した場合、乙は、次のいずれかを選択できるものとする。 (1)評価上限額を完全希薄化後株式数で除した価額を転換価額として、本新株予約権を普通株式又はあらかじめ定める種類株式に転換すること (2)払込金額相当額の返還を甲に請求すること(甲の資金繰りに影響する可能性があるため、返還時期・分割払等の取扱いは別途協議する。)

第5条(満期日)

  1. 本新株予約権の満期日は、割当日から起算して〇〇か月後の応当日とする。
  2. 満期日が到来した場合の取扱いは、前条第5項の定めるところによる。

第6条(みなし清算条項)

  1. 次回適格資金調達が生じる前に甲についてM&Aが生じた場合、乙は、当該M&Aにより甲の株主に対して支払われる対価のうち、乙が本新株予約権に基づき取得すべき額として次の各号のいずれか高い額の分配を優先的に受けることができるものとする(以下「みなし清算条項」という。)。 (1)払込金額の〇〇倍(1倍とする例が多い。)に相当する額 (2)本新株予約権を行使したものとみなした場合に取得できる普通株式の数に、M&Aにおける1株当たりの対価を乗じた額
  2. みなし清算条項に基づく分配は、甲の株主間で別途締結される株主間契約又は投資契約における残余財産優先分配権の定めと整合的に運用するものとし、重複や矛盾が生じる場合は当事者間で協議のうえ調整する。
  3. みなし清算条項の効力は、会社法上の剰余金の配当及び残余財産の分配に関する規律(株主平等原則、会社法第105条、第504条等)との関係で契約上の合意にとどまる場合があり、その私法上の効力については見解が分かれ得る点に留意する必要がある。

第7条(表明保証)

甲は、乙に対し、本契約締結日及び払込期日現在において、次の各号の事項を表明し、保証する。

(1)甲が日本法に基づき適法に設立され、有効に存続する株式会社であること (2)本契約の締結及び履行が、甲の定款その他の社内規則、法令又は甲が当事者となる他の契約に違反しないこと (3)本新株予約権の発行に関する取締役会決議又は株主総会決議その他の会社法上必要な手続を適法に履践していること (4)甲の発行済株式及び新株予約権について、本契約締結日現在で乙に開示した資本政策表(キャップテーブル)に記載のとおりであり、他に開示していない発行済又は発行予定の株式・新株予約権が存在しないこと (5)甲の事業に関し、本契約締結日現在で乙に開示していない重大な訴訟、紛争又は行政処分が係属していないこと

第8条(クロージング手続)

  1. 乙は、払込期日までに、第2条第3号に定める払込金額の総額を甲の指定する銀行口座に払い込むものとする。
  2. 甲は、払込期日において、次の各号の書類を乙に交付し、又は乙の閲覧に供するものとする。 (1)本新株予約権の発行に係る取締役会議事録又は株主総会議事録の写し (2)新株予約権原簿(会社法第249条)への記載事項を証する書面又はその写し (3)その他乙が合理的に要求する書類
  3. 乙による払込みが完了したことをもって、本新株予約権の発行手続は完了するものとする。

第9条(会社法上の手続及び登記)

  1. 甲は、本新株予約権の発行に伴い、会社法第911条第3項に定める登記事項(新株予約権の数、内容等)に変更が生じる場合、払込期日から2週間以内に変更登記の申請を行うものとする。
  2. 甲は、本新株予約権の内容を新株予約権原簿に記載し、法令上要求される期間、これを備え置くものとする。
  3. 甲は、本新株予約権の行使又は転換により株式を発行する場合、会社法第915条に定める変更登記その他必要な手続を遅滞なく履践するものとする。

第10条(誓約事項)

  1. 甲は、本新株予約権の行使期間中、乙の事前の書面による承諾を得ることなく、次の各号の行為を行ってはならない。 (1)定款の変更(本新株予約権の内容に実質的な影響を及ぼすものに限る。) (2)本新株予約権よりも優先する権利を有する新株予約権又は種類株式の発行 (3)事業の全部又は重要な一部の譲渡
  2. 甲は、乙に対し、四半期に一度、事業の状況及び財務状況に関する報告を行うものとする。

第11条(譲渡制限)

乙は、甲の事前の書面による承諾を得ることなく、本新株予約権を第三者に譲渡してはならない。ただし、乙の関連会社又はファンドの運営に関連する譲渡についてはこの限りでない場合がある旨、別途合意することができる。

第12条(反社会的勢力の排除)

  1. 甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、自己(自己の役員を含む。)が、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロ又は特殊知能暴力集団その他これらに準ずる者(以下「反社会的勢力」と総称する。)に該当しないこと、及び反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有していないことを表明し、保証する。
  2. 甲又は乙が前項の表明保証に違反した場合、相手方は、何らの催告を要せず本契約を解除することができる。

第13条(秘密保持)

甲及び乙は、本契約の締結及び履行を通じて知り得た相手方の営業上・技術上の秘密情報を、相手方の事前の書面による承諾なく第三者に開示又は漏えいしてはならない。ただし、法令上の開示義務がある場合又は専門家(弁護士、公認会計士、税理士等)への開示についてはこの限りでない。

第14条(有効期間)

本契約は、本契約締結日から本新株予約権の行使、消滅又は満期日における処理が完了するまで、その効力を有する。

第15条(協議事項及び合意管轄)

  1. 本契約に定めのない事項又は本契約の解釈に疑義が生じた事項については、甲乙誠意をもって協議のうえ解決するものとする。
  2. 本契約に関する紛争については、〇〇地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

以上、本契約締結の証として本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ、各自1通を保有する。

〇〇〇〇年〇〇月〇〇日

(甲)住所    商号 株式会社〇〇〇〇    代表者名         印

(乙)住所    氏名又は名称       印


第2部: 立場別修正パターン

第1部は投資家・発行会社いずれにも偏らない中立版として構成している。以下は、実際の商品として収録する「投資家側有利バージョン」「発行会社側有利バージョン」を作成する際の差分(代替条文)である。

A. 投資家側有利バージョンへの変更

A-1. 第3条(評価上限及びディスカウント率)を併用方式かつ低評価上限に固定

修正前(中立版): 評価上限方式・ディスカウント方式・併用方式から選択式で規定。

修正後(投資家側有利): 「本新株予約権の転換価額は、評価上限方式(評価上限額に基づき算定される価額)とディスカウント方式(次回適格資金調達の発行価額にディスカウント率を乗じて算定される価額)のうち、いずれか投資家に有利な(転換価額がより低い)価額とする。」を必須条項化し、評価上限額を市場相場より保守的な水準に設定するよう発行会社に求める。

解説: 併用方式(MFN型/Most Favored Nation的な設計)は投資家に有利な算定結果を常に選択できるため、投資家側の交渉ポジションが強い場面で採用されやすい。発行会社にとっては将来の希薄化率が読みにくくなる点がデメリットとなる。

A-2. 第4条第3項(M&A時の取扱い)にオプトアウト不可の文言を追加

追加条文例: 「前項のM&Aが生じた場合、甲は、乙の事前の書面による同意なく、乙に不利益となる条件でM&Aを実行してはならない。」

解説: 発行会社が投資家の意向を確認せずにM&Aを実行し、みなし清算条項の適用を回避しようとする事態を防ぐための修正である。

A-3. 第7条(表明保証)の対象事項を拡張

追加条文例: 「甲は、乙に対し、甲の知的財産権が第三者の権利を侵害していないこと、甲の従業員との間で労働関係の紛争が生じていないこと、及び甲が過去に締結した契約について重大な債務不履行が存在しないことをあわせて表明し、保証する。」

解説: シード期の投資契約であっても、投資家側は将来の資金調達・M&Aに備え、表明保証の対象を幅広く求める傾向がある。

A-4. 第10条(誓約事項)の事前承諾事項を拡張

修正後: 事前承諾事項に「年間予算総額〇〇円を超える支出」「代表者の変更」「本新株予約権の行使価額に影響を及ぼす資本政策上の変更」を追加する。

A-5. 第5条(満期日)における返還請求権に遅延損害金を追加

追加条文例: 「甲が満期日到来後〇〇日以内に払込金額相当額を返還しない場合、甲は年〇分の割合による遅延損害金を付して支払うものとする。」

解説: 満期日到来時の払込金額返還義務は発行会社の資金繰りを圧迫しやすく、実効性を確保する観点から遅延損害金条項を求める投資家が多い。

B. 発行会社側有利バージョンへの変更

B-1. 第3条(評価上限及びディスカウント率)をディスカウント方式のみに限定

修正後: 「本新株予約権の転換価額は、次回適格資金調達における1株当たりの発行価額にディスカウント率を乗じて算定される価額とする。評価上限額は設定しない。」

解説: 評価上限額を設定しないことで、企業価値が急拡大した場合の投資家の転換価額を市場価格に連動させ、発行会社・既存株主の希薄化を抑制する。シード投資家からは抵抗が予想される修正である。

B-2. 第4条第5項(満期日到来時の取扱い)を転換一本化

修正後: 「満期日が到来した場合、乙は、評価上限額を完全希薄化後株式数で除した価額を転換価額として、本新株予約権を普通株式に転換しなければならない。」とし、返還請求の選択肢(第4条第5項第2号)を削除する。

解説: 返還請求権を残すと発行会社の資金繰りリスクが高まるため、資金繰りに不安のある発行会社は転換一本化を求める傾向がある。

B-3. 第6条(みなし清算条項)の倍率を引き下げ

修正後: 「払込金額の1倍に相当する額」を上限とし、参加型(優先分配後にさらに普通株主と同様の分配を受ける方式)を明示的に排除する。

解説: みなし清算条項の倍率が高いほど、M&A時に創業株主が受け取る対価が圧縮されるため、発行会社側は1倍・非参加型を基本形として求める。

B-4. 第10条(誓約事項)の事前承諾事項を限定列挙

修正後: 事前承諾事項を「定款変更(本新株予約権の内容に直接影響するものに限る。)」及び「本新株予約権に優先する新株予約権・種類株式の発行」の2項目のみに限定し、日常的経営判断への関与を排除する。

B-5. 第11条(譲渡制限)を厳格化

修正後: 「乙は、甲の事前の書面による承諾を得ることなく、本新株予約権の全部又は一部を、関連会社への譲渡を含め、いかなる第三者にも譲渡してはならない。」とし、関連会社への譲渡自由の例外を削除する。

解説: 発行会社にとっては、投資家が変わることによる株主構成の不安定化を避けたいという動機がある。

C. 中立バージョンの位置づけ

第1部の本文がこれに該当する。評価上限方式・ディスカウント方式のいずれも選択可能な形にとどめ、みなし清算条項の倍率も1倍・非参加型を標準として記載する、バランス型の設計である。


第3部: 逐条解説(購入者向け)

第1条(前提事項) J-KISS型の新株予約権は、無償割当てではなく有償で発行される募集新株予約権(会社法第238条以下)である点を明確にする条項。取締役会設置会社であれば取締役会決議(募集事項の決定を取締役会に委任する場合を含む。)、非設置会社であれば株主総会の特別決議が必要となる場合があり、機関設計に応じた手続の確認が必須である。

第2条(発行要項) 行使価額を名目的な1円に設定し、実際の転換株式数を第3条・第4条の算定式によって調整するという設計が、J-KISS型(Coral Capital等が公開する国内標準ひな形に代表される設計)の特徴である。行使期間の設定は、転換トリガー事由の発生時期と整合させる必要がある。

第3条(評価上限及びディスカウント率) 本商品の中核となる条項。評価上限額は次回資金調達時の投資家の取得比率の上限を画す機能を持ち、ディスカウント率は早期投資のリスクに対する対価としての性格を持つ。両者を併用するか、いずれか一方のみを採用するかは、当事者間の交渉力や市場慣行に応じて決定される。評価上限額の設定水準は、直近の同業他社の資金調達実績等を参考に決定することが一般的である。

第4条(転換トリガー事由) 次回適格資金調達、M&A、IPO、満期日の4つのトリガー事由を規定している。「適格」資金調達の定義(累計調達額の閾値)は、少額のブリッジファイナンス等を転換トリガーから除外する趣旨で設けられることが多い。

第5条(満期日) 満期日の設定は、投資家にとっては資金回収の最終的な担保となる一方、発行会社にとっては資金繰りリスクとなるため、双方の利害が最も先鋭化しやすい条項の一つである。

第6条(みなし清算条項) 残余財産分配とは異なる契約上の合意により、M&A時の対価配分を優先的に投資家に帰属させる条項。種類株式のみなし清算条項とは異なり、新株予約権者としての地位に基づく契約上の権利にとどまるため、他の株主(普通株主、他の種類株主)との関係で対価配分の優先劣後をどのように実現するかは、別途の合意(株主間契約等)と整合させる必要がある。

第7条(表明保証) シード期の会社であるため、上場企業や成熟企業向けの詳細な表明保証(知的財産権、環境、労務等)をどこまで求めるかは案件により異なる。過度に詳細な表明保証を求めることは、シード期の発行会社にとって対応コストが大きい点にも留意すべきである。

第8条(クロージング手続) 新株予約権原簿(会社法第249条)への記載は発行会社の義務であり、投資家はクロージング時にその履行を確認する実務が一般的である。

第9条(会社法上の手続及び登記) 新株予約権の発行に伴う登記事項の変更登記(会社法第911条第3項各号、第915条)は、払込期日から2週間以内に行う必要があり、期限徒過は過料の対象となり得るため、スケジュール管理が重要である。

第10条(誓約事項) 事前承諾事項の範囲をどこまで広げるかは、投資家の関与度と発行会社の経営の機動性のトレードオフである。シード期は投資家の数が少なく管理コストが低いため、比較的広い事前承諾事項を設定する例もみられる。

第11条(譲渡制限) 新株予約権自体の譲渡制限であり、株式譲渡制限とは別の規律である点に注意が必要である。

第12条(反社会的勢力の排除) 現在の投資契約実務でほぼ必須の条項であり、他の商品と同様の標準的な設計とした。

第13条・第14条・第15条(秘密保持・有効期間・協議管轄) 一般的な契約管理条項。有効期間は本新株予約権の行使・消滅・満期処理の完了時点までとするのが自然である。


第4部: 監修者への確認依頼事項

  1. 第1条の会社法上の手続(取締役会決議又は株主総会決議)について、甲の機関設計(取締役会設置会社か否か、公開会社か非公開会社か)に応じた手続の分岐をテンプレート上どこまで明示すべきか確認いただきたい。
  2. 第2条第4号の行使価額を名目的な1円に設定する設計について、税務上(発行会社側の受贈益課税、投資家側の取得価額の算定等)の適正性に問題が生じないか、特に本新株予約権の払込金額の算定根拠(第三者算定機関の利用有無を含む。)の記載レベルが十分か確認いただきたい。
  3. 本新株予約権の発行が金融商品取引法上の有価証券の募集に該当する場合の取扱い(少人数私募(同法施行令第1条の7等)に該当し届出が不要となる想定が一般的だが、投資家の人数・態様によっては有価証券届出書の提出が必要となる可能性がある点)について、注意喚起の記載を追加すべきか確認いただきたい。
  4. 第3条の評価上限額・ディスカウント率の一般的な相場観(水準・レンジ)について、国内のシード投資実務における最新の動向(Coral Capital等が公表する統計やひな形の改訂動向を含む。)と整合的か確認いただきたい。
  5. 第6条のみなし清算条項について、契約上の合意にとどまる場合の私法上の効力(株主平等原則、会社法上の剰余金分配規制との関係)に関する裁判例上の議論状況を踏まえ、条項の実効性に関する注記を追加すべきか確認いただきたい。
  6. 第9条の新株予約権原簿への記載及び変更登記の要否・期限について、令和以降の会社法・商業登記実務の運用上、テンプレートの記載に更新すべき点がないか確認いただきたい。
  7. 本新株予約権が行使され株式に転換される際、種類株式(優先株式)ではなく普通株式に転換する設計を標準としている点について、次回資金調達で優先株式ラウンドが行われる場合の転換株式の種類の整合性(toshi-keiyaku-yusen-kabu商品との接続)に問題がないか確認いただきたい。
  8. 第4条第5項の満期日到来時における払込金額の返還請求権について、発行会社の資金繰りに与える影響を踏まえ、テンプレートとして返還請求権を残す設計を標準とすることの当否、及び分割返還・猶予等の代替設計を第3部の解説に追加すべきか確認いただきたい。