セット内容

  • 投資契約書(優先株式・シリーズA向け)2バージョン(投資家側/発行会社側)Word形式
  • 優先分配・希薄化防止(アンチダイリューション)条項の設計例
  • 表明保証・誓約事項チェックリスト

こんな場面で

シリーズA以降のラウンドで、投資家が優先株式を引き受けて出資する取引を書面化したい場面。

特長

  • 残余財産優先分配・みなし清算条項を投資家保護の観点から整理
  • 希薄化防止条項(フルラチェット/加重平均方式)を選択式で収録
  • J-KISS型投資契約書(toshi-keiyaku-j-kafu)からの移行時に参照すべき条項差分を解説
以下はAIが作成し弁護士監修前のβ版である。一般的な参考情報として無料公開しており、個別事案への適合性は保証しない。重要な取引に使用する際は専門家によるレビューを受けること。監修完了後に正式版へ差し替える。

投資契約書(優先株式・シリーズA)(監修用ドラフト)

⚠ 本ファイルは弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布を禁止する。

商品ID: toshi-keiyaku-yusen-kabu / 価格: 4,980円 / 立場バージョン: 投資家側有利・発行会社側有利(第1部は中立版をベースとする)

本商品は、シリーズA以降のラウンドにおいて、投資家が種類株式(優先株式)を引き受けて出資する取引を書面化するための投資契約書一式である。残余財産優先分配権及びみなし清算条項を投資家保護の観点から整理し、希薄化防止条項(フルラチェット方式・加重平均方式)を選択式で収録している。J-KISS型投資契約書(toshi-keiyaku-j-kafu)からの移行時に確認すべき条項差分についても第3部で解説する。


第1部: 契約書本文(標準版・中立)

優先株式投資契約書

株式会社〇〇〇〇(以下「甲」又は「発行会社」という。)と〇〇〇〇(以下「乙」又は「投資家」という。)とは、甲が発行するA種優先株式(以下「本優先株式」という。)を乙が引き受けることに関し、以下のとおり投資契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(前提事項)

  1. 甲は、本契約締結に先立ち、本優先株式の発行を可能とするため、会社法第108条に基づき本優先株式の内容を定める定款変更を行うものとし、当該定款変更は同法第309条第2項に定める株主総会の特別決議(議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う決議)によって承認されることを要する。
  2. 甲は、前項の定款変更決議及び本優先株式の発行に関する募集事項の決定(会社法第199条、非公開会社においては原則として株主総会の特別決議、又は同法第200条に基づく委任がある場合は取締役会決議)について、本契約締結日までにすべて適法に完了していること、又は払込期日までに完了することを表明し、保証する。
  3. 甲は、本契約締結にあたり必要な会社法上の手続をすべて適法に履践していることを前提として、乙は本優先株式を引き受ける。

第2条(本優先株式の発行要項)

本優先株式の発行要項は次のとおりとする。

(1)発行する株式の種類及び数: A種優先株式〇〇株 (2)発行価額: 1株につき金〇〇〇円とし、その総額は金〇〇〇円とする。 (3)優先配当: 甲が剰余金の配当を行う場合、本優先株式の株主は、普通株式の株主に先立ち、1株当たり発行価額に年〇%を乗じた額を上限として、非累積型(当該事業年度に配当されなかった額を翌事業年度以降に累積しない方式)の優先配当を受けるものとする。 (4)残余財産優先分配権: 第3条に定めるところによる。 (5)議決権: 本優先株式は、株主総会において普通株式と同一の議決権を有するものとする。ただし、会社法第108条第1項第3号に基づき、別紙に定める事項について本優先株式の種類株主総会の決議を要するものとする(拒否権付株式としての側面。会社法第322条参照)。 (6)払込期日: 令和〇年〇月〇日

第3条(残余財産優先分配権)

  1. 甲が解散、清算その他残余財産の分配を行う事由が生じた場合、本優先株式の株主は、普通株式の株主に先立ち、1株当たり発行価額の〇〇倍(1倍とする例が多い。)に相当する額(以下「優先分配額」という。)の分配を受けるものとする。
  2. 前項の優先分配後の残余財産の分配方法については、次の各号のいずれか(本契約締結時に甲乙間で選択し、別紙に記載する。)に従うものとする。 (1)非参加型: 本優先株式の株主は、優先分配額を超えて残余財産の分配を受けないものとし、優先分配後の残余財産は普通株式の株主にのみ分配する。ただし、本優先株式の株主は、優先分配額による分配に代えて、本優先株式を普通株式に転換したものとみなして算定される分配額を選択することができるものとする(いわゆるコンバージョン選択権)。 (2)参加型: 本優先株式の株主は、優先分配額の分配を受けた後、なお残存する残余財産についても、普通株式に転換したものとみなして算定される割合により、普通株式の株主とともに分配を受けるものとする。ただし、本優先株式の株主が取得する分配額の総額は、発行価額の〇〇倍を上限とする(キャップ付参加型)。
  3. 複数の種類株式(例えばシリーズAとシリーズBの優先株式)が発行されている場合の優先順位は、原則として発行時期の新しいものを優先する(いわゆるラストイン・ファーストアウト)ものとするか、又はパリパス(同順位)とするかを別紙に定める。

第4条(みなし清算条項)

  1. 甲についてM&A(甲の発行済株式の過半数の譲渡、事業の全部若しくは重要な一部の譲渡、又は甲が消滅会社となる合併等、実質的に支配権が移転する取引をいう。以下同じ。)が生じた場合、当該M&Aにより甲の株主に対して交付される対価の総額を、甲が解散したものとみなして前条の規定に従い分配する(以下「みなし清算条項」という。)。
  2. みなし清算条項の適用にあたり、対価が金銭以外(株式その他の財産)である場合の評価方法は、当事者間で別途合意する算定方法(M&Aの相手方の直近の資金調達時評価額、上場会社の場合は市場価格の一定期間の平均値等)によるものとする。
  3. みなし清算条項は、会社法上の解散・清算の手続を経ることなく契約上の合意によりM&A対価の分配順序を定めるものであり、その私法上の効力については、対象会社の株主総会決議を経た上で契約に基づき任意に対価分配を行う限りにおいて有効と解する見解が一般的であるものの、少数株主の同意取得プロセス等の実務上の論点も含め、個別事案ごとに慎重な検討を要する。

第5条(希薄化防止条項)

  1. 甲が本優先株式の発行価額を下回る価額(以下「下回る発行」という。)で普通株式又は他の種類株式を発行する場合、本優先株式の転換価額(本優先株式を普通株式に転換する際の基準となる価額をいい、発行当初は発行価額と同額とする。以下同じ。)は、次の各号のいずれか(本契約締結時に甲乙間で選択し、別紙に記載する。)に従い調整するものとする。 (1)フルラチェット方式: 転換価額を、下回る発行における1株当たりの発行価額まで引き下げる。算定式は次のとおりとする。 調整後転換価額 = 下回る発行における1株当たり発行価額 (2)加重平均方式(ブロード・ベース): 次の算定式により調整後転換価額を算定する。 調整後転換価額 = 調整前転換価額 ×(A+B)÷(A+C) A:下回る発行の直前における完全希薄化後発行済株式総数(潜在株式を含む。ストックオプションプール、未行使新株予約権を含む。) B:下回る発行により調達される総額を調整前転換価額で除した株式数 C:下回る発行により現実に発行される株式数 (3)加重平均方式(ナロー・ベース): 前号の算定式におけるAを「下回る発行の直前における発行済株式総数(潜在株式を含まない。)」に置き換えて算定する。
  2. フルラチェット方式は投資家に最も有利で発行会社の希薄化が大きく、加重平均方式(ブロード・ベース)は発行会社・投資家双方にとって穏当な調整として広く採用され、ナロー・ベースはブロード・ベースよりもやや投資家寄りの調整結果となる。いずれの方式を採用するかは当事者間の協議による。
  3. 株式分割、株式併合、株式無償割当てその他の資本的取引が生じた場合、転換価額は当該取引の内容に応じて合理的に調整するものとする。

第6条(表明保証)

甲は、乙に対し、本契約締結日及び払込期日現在において、次の各号の事項を表明し、保証する。

(1)甲が日本法に基づき適法に設立され、有効に存続する株式会社であること (2)本契約の締結及び履行が、甲の定款その他の社内規則、法令又は甲が当事者となる他の契約に違反しないこと (3)本優先株式の発行に関する定款変更決議、募集事項の決定その他会社法上必要な手続を適法に履践していること (4)甲の計算書類(貸借対照表、損益計算書等)が、本契約締結日現在で乙に開示した直近の内容から重要な変更がなく、一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠して作成されていること (5)甲が保有し、又は事業に使用する知的財産権について、甲が正当な権原を有していること、及び第三者の知的財産権を侵害していないこと (6)甲の発行済株式及び新株予約権について、本契約締結日現在で乙に開示した資本政策表(キャップテーブル)に記載のとおりであり、他に開示していない発行済又は発行予定の株式・新株予約権が存在しないこと (7)甲の事業に関し、本契約締結日現在で乙に開示していない重大な訴訟、紛争、行政処分又は税務調査が係属していないこと (8)甲が労働関係法令を遵守しており、従業員との間で重大な労働紛争が生じていないこと (9)甲が反社会的勢力(第12条に定める。)に該当せず、また反社会的勢力と取引関係を有していないこと

第7条(誓約事項(コベナンツ))

  1. 甲は、本優先株式が発行済みである間、乙の事前の書面による承諾を得ることなく、次の各号の行為(以下「重要decision事項」という。)を行ってはならない。 (1)定款の変更(本優先株式の内容に影響を及ぼすものに限る。) (2)本優先株式よりも優先し、又は同順位となる種類株式又は新株予約権の発行 (3)年間事業計画において定めた予算総額の〇〇%を超える借入れ又は資本的支出 (4)代表取締役の選任又は解任 (5)事業の全部又は重要な一部の譲渡、会社の合併、会社分割その他の組織再編 (6)解散又は破産手続、民事再生手続その他の倒産手続の申立て
  2. 甲は、乙に対し、次の各号に定める頻度で、甲の事業及び財務の状況に関する報告を行うものとする。 (1)月次報告: 月次試算表及び資金繰り実績を、翌月〇〇日までに提供する。 (2)四半期報告: 四半期ごとの事業進捗報告及び予算対比を、四半期終了後〇〇日以内に提供する。 (3)年次報告: 年次の計算書類及び翌事業年度の事業計画を、事業年度終了後〇〇日以内に提供する。
  3. 甲は、乙に対し、合理的な事前通知のうえ、甲の帳簿及び記録を閲覧する権利を認めるものとする。

第8条(優先引受権(Pro-rata Right))

  1. 甲が本契約締結後に新株、新株予約権又は新株予約権付社債その他の資金調達に関する証券(以下「新規証券」という。)を発行しようとする場合、乙は、当該発行の時点における乙の甲に対する出資比率(完全希薄化後ベース)に応じて、新規証券の全部又は一部を優先的に引き受ける権利(以下「優先引受権」という。)を有する。
  2. 甲は、新規証券の発行条件を決定した後、乙に対し、当該条件を書面で通知しなければならず、乙は、通知受領後〇〇日以内に優先引受権を行使するか否かを甲に通知するものとする。
  3. 前項の期間内に乙が優先引受権を行使しない場合、甲は、通知した条件と同等以上の条件で、第三者に新規証券を発行することができる。ただし、当該条件が乙に通知した条件よりも甲に有利な場合は、乙に対し再度の通知及び優先引受権行使の機会を与えるものとする。
  4. 優先引受権は、ストックオプション(役員・従業員向け新株予約権)の発行その他別紙に定める適用除外事由には適用しない。

第9条(クロージング条件)

  1. 乙による払込みは、次の各号の事項がすべて充足されることを条件とする。 (1)第6条の表明保証が重要な点において真実かつ正確であること (2)本優先株式の発行に関する定款変更決議及び募集事項の決定その他会社法上必要な手続がすべて完了していること (3)本契約及び関連する株主間契約(甲の既存株主を含む当事者間で締結される場合)が有効に締結されていること (4)本契約締結日以降、甲の事業又は財務状況に重大な悪影響を及ぼす事由が生じていないこと
  2. 乙は、払込期日までに、第2条第2号に定める発行価額の総額を甲の指定する銀行口座に払い込むものとする。
  3. 甲は、払込期日において、定款変更後の定款、株主総会議事録、株主名簿への記載事項を証する書面その他乙が合理的に要求する書類を乙に交付するものとする。

第10条(表明保証違反時の措置)

甲が第6条の表明保証に違反したことが判明した場合、乙は、甲に対し、当該違反により乙に生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その累計額は、乙が本契約に基づき甲に払い込んだ金額を上限とする。ただし、甲の故意又は重過失による場合はこの限りでない。

第11条(譲渡制限)

  1. 本優先株式は、甲の定款に定める譲渡制限株式に該当するものとし、乙が本優先株式を第三者に譲渡する場合、会社法第136条以下に定める譲渡承認手続を要する。
  2. 前項の規定にかかわらず、乙の関連会社又は乙が運営するファンドの後継ファンドへの譲渡については、甲は合理的な理由なく承認を拒否してはならない。

第12条(反社会的勢力の排除)

  1. 甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、自己(自己の役員を含む。)が、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロ又は特殊知能暴力集団その他これらに準ずる者(以下「反社会的勢力」と総称する。)に該当しないこと、及び反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有していないことを表明し、保証する。
  2. 甲又は乙が前項の表明保証に違反した場合、相手方は、何らの催告を要せず本契約を解除することができる。

第13条(秘密保持)

甲及び乙は、本契約の締結及び履行を通じて知り得た相手方の営業上・技術上の秘密情報を、相手方の事前の書面による承諾なく第三者に開示又は漏えいしてはならない。ただし、法令上の開示義務がある場合、専門家(弁護士、公認会計士、税理士等)への開示又は乙の投資者(LP)に対する運用報告のための開示についてはこの限りでない。

第14条(有効期間)

本契約は、本契約締結日から、乙が本優先株式の全部を処分するまでの間、その効力を有する。ただし、第7条、第10条、第12条、第13条及び第15条の規定は、本契約終了後も〇年間、なお効力を有する。

第15条(協議事項及び合意管轄)

  1. 本契約に定めのない事項又は本契約の解釈に疑義が生じた事項については、甲乙誠意をもって協議のうえ解決するものとする。
  2. 本契約に関する紛争については、〇〇地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

以上、本契約締結の証として本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ、各自1通を保有する。

〇〇〇〇年〇〇月〇〇日

(甲)住所    商号 株式会社〇〇〇〇    代表者名         印

(乙)住所    氏名又は名称       印


第2部: 立場別修正パターン

第1部は投資家・発行会社いずれにも偏らない中立版として構成している。以下は、実際の商品として収録する「投資家側有利バージョン」「発行会社側有利バージョン」を作成する際の差分(代替条文)である。

A. 投資家側有利バージョンへの変更

A-1. 第3条(残余財産優先分配権)を参加型かつキャップなしに変更

修正前(中立版): 非参加型を基本とし、参加型を選択する場合もキャップ付とする。

修正後(投資家側有利): 「本優先株式の株主は、優先分配額の分配を受けた後、なお残存する残余財産について、キャップを設けることなく普通株式の株主とともに分配を受けるものとする(フル participating preferred)。」

解説: キャップなし参加型は投資家に最も有利な設計であり、M&A時の対価配分において創業株主・普通株主の取り分を大きく圧縮する。発行会社・既存株主からは強い抵抗が予想される。

A-2. 第5条(希薄化防止条項)をフルラチェット方式に固定

修正後: 「転換価額の調整は、フルラチェット方式(下回る発行における1株当たり発行価額まで転換価額を引き下げる方式)によるものとする。」とし、加重平均方式の選択肢を削除する。

解説: フルラチェット方式は、下回る発行の規模にかかわらず転換価額を一律に引き下げるため、既存株主(創業株主を含む。)の希薄化が加重平均方式より大きくなる。投資家保護を最優先する場合に採用される。

A-3. 第7条(誓約事項)の重要decision事項を拡張し、事前承諾を必須化

修正後: 重要decision事項に「年間事業計画及び予算の承認」「主要な役員(CTO等)の採用・解任」「本契約に基づく優先引受権の行使機会を経ない新規証券の発行」を追加し、承諾を得ない行為の効力を無効とする文言を付す。

A-4. 第10条(表明保証違反時の措置)の損害賠償上限を撤廃

修正後: 「甲が第6条の表明保証に違反した場合、乙は、甲に対し、当該違反により乙に生じた一切の損害(弁護士費用を含む。)の賠償を請求することができる。」とし、上限規定を削除する。

解説: 上限を撤廃することで、重大な表明保証違反(粉飾決算の発覚等)が生じた場合の投資家保護を強化する。発行会社側からは強い抵抗が予想される。

A-5. 第4条(みなし清算条項)にドラッグアロング権の発動条件との連動を明記

追加条文例: 「甲は、本優先株式の株主の事前の書面による同意を得ることなく、みなし清算条項に基づく優先分配額を下回る対価によるM&Aを実行してはならない。」

解説: 経営陣が投資家に不利な条件でM&Aを強行することを防止する趣旨の条項であり、投資家保護の観点から重要である。

B. 発行会社側有利バージョンへの変更

B-1. 第3条(残余財産優先分配権)を非参加型・1倍に限定

修正後: 「本優先株式の株主は、発行価額の1倍に相当する優先分配額を超えて残余財産の分配を受けないものとする。」とし、参加型の選択肢及びコンバージョン選択権のみを残す設計とする。

解説: 非参加型・1倍は発行会社・創業株主にとって最も穏当な設計であり、シリーズA以降の標準的な着地点とされることが多い。

B-2. 第5条(希薄化防止条項)を加重平均方式(ブロード・ベース)に固定

修正後: 「転換価額の調整は、加重平均方式(ブロード・ベース、完全希薄化後発行済株式総数を基準とする方式)によるものとする。」とし、フルラチェット方式の選択肢を削除する。

解説: 加重平均方式(ブロード・ベース)は既存株主の希薄化を最も緩和する設計であり、発行会社側が優先的に求める設計である。

B-3. 第7条(誓約事項)の重要decision事項を限定し、報告頻度を緩和

修正後: 重要decision事項を「定款変更」及び「本優先株式に優先する種類株式の発行」の2項目に限定し、月次報告を四半期報告に統合する。

解説: 経営の機動性を確保し、投資家対応に伴う管理コストを抑制する趣旨の修正である。

B-4. 第8条(優先引受権)の適用除外事由を拡張

修正後: 適用除外事由に「金融機関からの借入れに伴う新株予約権の発行」「事業提携先に対する戦略的な第三者割当」を追加する。

解説: 資金調達の機動性を確保するため、優先引受権の対象から一定の取引類型を除外することを発行会社側は求める傾向がある。

B-5. 第10条(表明保証違反時の措置)に短期の除斥期間を追加

追加条文例: 「乙は、払込期日から〇〇か月以内に請求しない限り、前項に基づく損害賠償を請求することができない。」

解説: 表明保証違反に基づく責任の期間を限定することで、発行会社の予測可能性を高める趣旨の修正である。

C. 中立バージョンの位置づけ

第1部の本文がこれに該当する。残余財産優先分配権は非参加型を基本としつつコンバージョン選択権を付し、希薄化防止条項は加重平均方式(ブロード・ベース)を軸に他の方式も選択可能とする、投資家・発行会社双方にとって受け入れられやすい設計を採用している。


第3部: 逐条解説(購入者向け)

第1条(前提事項) 種類株式の発行には、会社法第108条に基づく定款変更(発行可能種類株式総数、優先配当、残余財産分配、議決権制限等の内容を定款に定める必要がある。)が前提となり、同法第309条第2項の株主総会特別決議を要する点が、普通株式のみを対象とするJ-KISS型新株予約権との大きな違いである。

第2条(発行要項) 議決権制限の有無・拒否権付株式としての設計(会社法第108条第1項第3号、第322条)は、投資家が経営に関与する程度をどこまで契約及び定款で担保するかという観点から重要である。

第3条(残余財産優先分配権) 非参加型・参加型の選択が最大の交渉ポイントとなる条項。非参加型はコンバージョン選択権を付すことで、企業価値が大きく向上した場合に投資家が普通株式転換を選択できるようにするのが実務上一般的な設計である。参加型を採用する場合も、キャップ(分配上限)を設定することでバランスを取る例が多い。

第4条(みなし清算条項) 残余財産優先分配権をM&A時にも及ぼすための契約上の工夫である。会社法上の解散・清算の手続を経ないままの契約上の合意にとどまるため、その効力については裁判例上の議論があり、株主総会の承認を要する重要な財産処分(事業譲渡等)としての手続を適切に履践することが実務上重要である。

第5条(希薄化防止条項) フルラチェット方式・加重平均方式(ブロード・ベース/ナロー・ベース)の3方式のうち、フルラチェット方式は投資家保護が最も強く、加重平均方式(ブロード・ベース)が国内外の実務で最も広く採用されている。算定式の分母・分子に含める株式数の範囲(潜在株式を含めるか等)によって調整結果が変わるため、計算例を別紙に示しておくことが購入者の理解を助ける。

第6条(表明保証) シリーズA以降の投資契約では、財務諸表の正確性、知的財産権の帰属、訴訟の不存在、労務コンプライアンスなど、J-KISS型よりも詳細な表明保証が求められるのが一般的である。デューデリジェンスの結果を踏まえて表明保証の対象・除外事項(開示済み事項のリスト等)を調整する必要がある。

第7条(誓約事項(コベナンツ)) 事前承諾を要する重要decision事項の範囲と、月次・四半期の情報開示義務が、投資後のガバナンスの中心となる。事前承諾事項が広範になるほど投資家のガバナンス関与は強まるが、発行会社の経営の機動性は損なわれるため、両者のバランスをどう設計するかが交渉の中心となる。

第8条(優先引受権(Pro-rata Right)) 既存投資家が将来ラウンドでの持株比率の希薄化を防ぐための権利。優先引受権の適用除外事由(ストックオプション発行等)を明確にしておかないと、通常の資金調達実務が硬直化するおそれがある。

第9条(クロージング条件) 種類株式発行の場合、定款変更決議の完了がクロージングの前提条件となる点がJ-KISS型と異なる実務上のポイントである。

第10条(表明保証違反時の措置) 損害賠償責任の上限設定(cap)の要否・水準が交渉の中心となる。上限を設ける場合も、故意・重過失の場合は上限を適用しないとする例外を設けるのが一般的である。

第11条(譲渡制限) 種類株式であっても譲渡制限株式としての性質を有する限り、会社法第136条以下の譲渡承認手続を要する。投資ファンドの内部再編(ファンドの持分譲渡等)に対応するための例外規定を設けておくことが実務上望ましい。

第12条・第13条(反社会的勢力の排除・秘密保持) 現在の投資契約実務でほぼ必須の条項であり、他の商品と同様の標準的な設計とした。

第14条・第15条(有効期間・協議管轄) 存続条項の対象(誓約事項、表明保証違反時の措置等)を明確に列挙しておくことが重要である。


第4部: 監修者への確認依頼事項

  1. 第1条の定款変更決議(会社法第108条・第309条第2項)について、種類株式の内容として定款に定めるべき事項(発行可能種類株式総数、残余財産分配、議決権制限等)の記載レベルがテンプレートとして十分か確認いただきたい。
  2. 本優先株式の発行が金融商品取引法上の有価証券の募集に該当する場合の取扱い(少人数私募(同法施行令第1条の7等)に該当し有価証券届出書の提出が不要となる想定が一般的だが、投資家の人数・態様(複数の機関投資家が参加するシリーズAラウンド等)によっては届出義務が生じる可能性がある点)について、注意喚起の記載の要否を確認いただきたい。
  3. 第4条のみなし清算条項について、会社法上の解散・清算手続を経ない契約上の合意としての効力に関する裁判例上の議論状況(有効性を肯定する見解・慎重な見解の双方)を踏まえ、テンプレートの記載ぶりに修正すべき点がないか確認いただきたい。
  4. 第5条の希薄化防止条項(フルラチェット方式・加重平均方式)の算定式について、実務上一般的に用いられる算定式(完全希薄化後株式数の定義を含む。)と齟齬がないか、数値例を用いた検算を含めて確認いただきたい。
  5. 本優先株式の発行に伴う登記実務(発行済株式総数及び種類株式の内容に関する登記事項の変更登記、会社法第911条第3項等)について、テンプレートに追加すべき記載がないか確認いただきたい。
  6. 第6条の表明保証条項について、シリーズA投資契約における実務上の相場観(表明保証の対象範囲、開示schedule(Disclosure Schedule)の要否)と比較して、テンプレートとして過不足がないか確認いただきたい。
  7. 新株予約権(J-KISS型)からの移行時における転換価額・転換株式数の算定(toshi-keiyaku-j-kafu商品との接続部分)について、優先株式ラウンドでの発行価額決定とJ-KISS型新株予約権の転換処理を同時並行で行う場合の実務上の留意点を第3部に追記すべきか確認いただきたい。
  8. 第7条の誓約事項(事前承諾事項・情報開示義務)の内容が、独占禁止法上の優越的地位の濫用や、スタートアップの経営の自律性を過度に制約するものと評価されるリスクがないか、投資契約の実務相場に照らして確認いただきたい。