通販の受注処理・梱包・出荷を外部に委託する業務委託契約書。民法第643条の委任と個人情報保護法第25条の委託先監督義務を踏まえ、SLAを定めます。

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通信販売の受注・出荷に関する業務委託契約書

第1部: 書式本文

業務委託契約書

【通販事業者名】(以下「甲」という。)と【フルフィルメント事業者名】(以下「乙」という。)は、甲が乙に対し通信販売に係る受注処理及び商品出荷業務を委託するにあたり、以下のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(委託業務の内容) 甲は乙に対し、次の各号の業務(以下「本業務」という。)を委託し、乙はこれを受託する。 一 甲の通信販売サイトを通じて受注した注文情報の処理 二 商品の入庫検品、保管及び在庫管理 三 注文に応じた商品のピッキング、梱包及び発送 四 返品・交換商品の受領及び検品 五 甲が指定するその他付随業務

第2条(法的性質) 本契約に基づく本業務の委託は、民法第643条に定める委任及び同法第656条に定める準委任の性質を有するものとし、乙は善良な管理者の注意をもって本業務を遂行する。

第3条(業務遂行体制及び再委託) 1. 乙は、本業務の遂行に必要な人員、設備及び倉庫施設を自らの責任で確保する。 2. 乙は、甲の事前の書面による承諾を得た場合に限り、本業務の一部を第三者に再委託することができる。この場合、乙は再委託先の行為について自らの行為と同様の責任を負う。

第4条(サービス品質水準) 1. 乙は、別紙に定めるサービス品質水準(以下「SLA」という。)を遵守して本業務を遂行する。SLAには、受注確定から出荷までのリードタイム、誤出荷率、欠品連絡の即時性その他の指標を定めるものとする。 2. 乙は、SLAの達成状況を月次で甲に報告する。

第5条(委託料) 1. 甲は、乙に対し、本業務の対価として、出荷件数及び保管在庫量に応じた委託料を、乙が発行する請求書に基づき翌月末日までに支払う。 2. 繁忙期その他甲の指示により通常を超える出荷量が見込まれる場合、甲乙協議のうえ追加費用を定める。

第6条(個人情報の取扱い及び委託先の監督) 1. 乙は、本業務の遂行にあたり甲から提供を受ける購入者の個人情報を、個人情報保護法その他関係法令及び甲が別途定める取扱基準に従い適切に管理する。 2. 甲は、個人情報保護法第25条に基づき、乙に対する必要かつ適切な監督を行うものとし、乙は甲の求めに応じて個人情報の取扱状況に関する報告及び実地監査に協力する。

第7条(在庫管理責任) 1. 乙は、甲から預託された商品について、善良な管理者の注意をもって保管する。 2. 乙の責めに帰すべき事由により商品の滅失、毀損又は誤出荷が生じた場合、乙はこれによる損害を賠償する。

第8条(検品及び品質管理) 乙は、入庫時及び出荷時に商品の数量及び外観について検品を行い、異常を発見した場合は速やかに甲に報告する。

第9条(情報セキュリティ) 乙は、本業務に使用する情報システムについて、不正アクセスの防止その他の合理的なセキュリティ対策を講じる。

第10条(秘密保持) 甲及び乙は、本契約の履行を通じて知り得た相手方の営業上の秘密及び購入者情報を、相手方の書面による承諾なく第三者に開示してはならない。

第11条(SLA未達成時の対応) 乙のSLA未達成が【3】か月連続した場合、甲は乙に対し是正計画の提出を求めることができ、乙は【1】か月以内に是正計画を提出し、これを実行する。是正計画によっても改善が見られない場合、甲は委託料の減額又は本契約の解除を検討することができる。

第12条(契約期間及び中途解約) 1. 本契約の有効期間は契約締結日から1年間とし、期間満了の3か月前までに書面による解約の申し出がない限り1年間自動更新する。 2. 甲又は乙は、【6】か月前までに書面で通知することにより、期間途中でも本契約を解約することができる。

第13条(契約終了時の引継ぎ) 本契約が終了する場合、乙は甲の指示に従い、預託在庫及び受注データを甲又は甲の指定する第三者に引き継ぐものとし、必要な協力を行う。

第14条(損害賠償) 甲及び乙は、本契約に違反し相手方に損害を与えた場合、これにより生じた通常損害を賠償する。

第15条(準拠法及び管轄) 本契約は日本法に準拠し、本契約に関して紛争が生じた場合、【管轄裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

以上を証するため、本契約書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各1通を保有する。

【契約締結日】

甲(委託者・通販事業者) 住所: 名称: 代表者: 印

乙(受託者・フルフィルメント事業者) 住所: 名称: 代表者: 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節 委託者(通販事業者)向け

セール期間中の出荷遅延が売上及び顧客満足度に直結するため、SLA未達成時の対応をより厳格にしたい場合、第11条を次のように改める。 before:「乙のSLA未達成が【3】か月連続した場合、甲は乙に対し是正計画の提出を求めることができ…」 after:「乙が単月でSLAを著しく下回った場合(誤出荷率が【1】%を超えた場合等)、甲は直ちに是正措置の実施を求めることができ、当該月の委託料の一部を減額することができる。」 繁忙期に集中するトラブルへの即応性を高めるため、月次判定ではなく都度対応の仕組みに変更することが有効である。

B節 受託者(フルフィルメント事業者)向け

受託者としては、甲の指示による急激な出荷量増加に対応しきれず、体制構築のための猶予期間を確保したい。第5条を次のように改める。 before:「繁忙期その他甲の指示により通常を超える出荷量が見込まれる場合、甲乙協議のうえ追加費用を定める。」 after:「甲は、通常出荷量を【20】%超える出荷が見込まれる場合、少なくとも【14】日前までに乙に予告するものとし、乙は予告期間に応じた体制構築が困難な場合、対応可能な範囲での出荷を行えば足りるものとする。」 事前予告なき急な物量増加による誤出荷や遅配は乙の責に帰さないことを明確にし、責任範囲の線引きを明確化する。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

本書式は、通販事業者が自社で対応しきれない受注処理・出荷業務を外部の専門事業者に委託する場面で使用することを前提としている。委託先が甲の名で顧客と直接契約を締結する代理店的性質を伴う場合や、商品企画・価格決定の権限まで委ねる場合は、業務委託契約ではなく代理店契約又は販売委託契約の枠組みで設計し直す必要があり、本書式をそのまま当てはめるべきではない。

委任契約の基本規定である民法第643条及び準委任に関する同法第656条、善管注意義務を定める同法第644条、個人情報の取扱いを委託する場合の監督義務を定める個人情報保護法第25条が、本書式の骨格を支える法令である。商品保管を専業とする乙が倉庫業を営む場合は倉庫業法上の登録の要否も併せて確認する必要がある。

委託契約の実務では、SLAの数値目標が「迅速に出荷する」といった抽象的な努力義務にとどまり、遅延が生じても是正措置を発動できない例が頻出する。第4条のようにリードタイムや誤出荷率を具体的な数値で規定しておくことが有効な予防策となる。また、乙が再委託先に個人情報の取扱いを任せきりにし、甲の個人情報保護法第25条上の監督義務が形骸化する例もあり、第6条で再委託先を含めた監督・報告の体制を条項化しておくべきである。さらに、契約終了時の在庫及びデータの引継ぎ方法を定めずに切替時の出荷停止を招く例もあり、第13条のような引継ぎ協力義務が有効である。

SLAの数値水準や委託料の減額幅の妥当性は取扱商品の特性によって異なる。個別事案は専門家に確認したうえで、条項の細部を詰めることを推奨する。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 委託業務の範囲(受注処理・検品・梱包・出荷・返品対応)を具体的に列挙しているか
  • [ ] SLAの数値目標(リードタイム、誤出荷率等)を別紙で明確に定めているか
  • [ ] 委託料の算定方法(出荷件数・保管量等)と支払時期を明記しているか
  • [ ] 再委託の可否及び再委託先への責任の帰属を条項化しているか
  • [ ] 個人情報保護法第25条に基づく委託先監督の具体的方法(報告・監査)を定めているか
  • [ ] 商品の滅失・毀損時の責任分担及び損害賠償の範囲を明確にしているか
  • [ ] 繁忙期・セール時の出荷量増加への対応方法を定めているか
  • [ ] SLA未達成時の是正措置及びペナルティを具体的に定めているか
  • [ ] 契約終了時の在庫引揚げ及びデータ引継ぎ手続を定めているか
  • [ ] 中途解約の予告期間が双方にとって現実的な長さになっているか
  • [ ] 秘密保持及び情報セキュリティに関する条項を設けているか
  • [ ] 管轄裁判所の指定が実務上適切な場所になっているか