通路への物置設置などで通行を妨げられた場合に、民法第210条の囲繞地通行権や妨害排除請求権を根拠として撤去を求める書面です。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
通行妨害排除請求書
第1部: 書式本文
通行妨害排除請求書
【発送日: 20〇〇年〇月〇日】 【文書番号: 第〇号】
宛先: 【妨害している側の氏名または名称】様 差出人: 【通行する側の氏名または名称・住所・連絡先】
冠省
貴殿におかれましては、平素より近隣の一員としてご健勝のことと存じます。
本書面は、貴殿が所有または管理する【土地の所在地・地番】(以下「本件土地」といいます)上に設置された【物置・資材・車両等、障害物の具体的内容】(以下「本件障害物」といいます)により、私が本件土地に隣接する【通行する側の所有地・地番】(以下「私所有地」といいます)から公道に至るために従来利用してきた通路(以下「本件通路」といいます)の通行が妨げられている状況について、その撤去を求めるものです。
1. 事実の経緯
私所有地は【袋地である事情、または本件通路以外に公道への出入りが著しく困難である事情を具体的に記載】の状況にあり、従前より本件通路を通行して公道に出入りしてまいりました。ところが、【20〇〇年〇月頃】、貴殿において本件通路上に本件障害物を設置され、以降、車両および徒歩による通行が著しく困難な状態が継続しております。
2. 法的根拠
私所有地が公道に至るために他の土地を通行しなければならない土地(いわゆる袋地)に該当する場合、民法第210条により、私所有地の所有者は公道に至るまで本件土地を通行する権利(囲繞地通行権)を有します。この通行の場所および方法は、民法第211条により、通行権を有する者のために必要であり、かつ本件土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならないとされていますが、本件通路は従前より現に利用してきた既存の通路であり、他に合理的な代替経路は存在しません。
また、私所有地の所有権に基づき、本件通路部分の平穏な通行利益が妨げられている状態は、判例上認められている所有権に基づく妨害排除請求権(条文上の明文はなく、所有権の効力として解釈上認められるものです)の対象となるものと考えます。
なお、本件通路の通行につき通行地役権(民法第280条)の設定合意や取得時効の成立が別途認められる場合には、これによる通行権も併せて主張し得るものですが、本書面は主として囲繞地通行権および妨害排除請求権を根拠とするものです。
3. 請求事項
つきましては、貴殿に対し、本書面到達後【2週間】以内に、本件通路上に設置された本件障害物を撤去し、私所有地から公道への通行を妨げない状態を回復されるよう求めます。
4. 償金についての付言
本件通路の通行にあたり、民法第212条に基づき、本件土地に生じる損害に対して償金をお支払いする用意があります。償金の要否・金額については、別途協議させていただければ幸いです。
5. 期限徒過の場合の対応
上記期限までに本件障害物の撤去にご対応いただけない場合、やむを得ず、通行妨害排除および通行の確認を求める法的手続を検討せざるを得ません。
6. 連絡先
本件に関するご連絡・ご回答は、下記連絡先までお願いいたします。 【電話番号・メールアドレス等】
草々
【差出人氏名】 【住所】 【連絡先】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 通行する側(袋地所有者・利用者)が発送する場合
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修正条文例: 「私所有地は、民法第210条第1項に定める『他の土地に囲まれて公道に通じない土地』に該当し、貴殿所有の本件土地を通行しなければ公道に至ることができません。」 一言解説: 210条の要件である「袋地性」を具体的な地形・接道状況とともに明示すると、通行権の発生根拠が説得的になります。
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修正条文例: 「本件通路は従前から現に利用されてきた経路であり、民法第211条にいう『損害が最も少ないもの』として選定された通路です。」 一言解説: 211条は通行権者に自由な選択を認めるものではなく、土地所有者の損害最小化を要求している点を踏まえ、代替経路の不存在を併せて説明すると効果的です。
B. 妨害している側(本件土地の所有者・占有者)が回答する場合
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修正条文例: 「本件障害物は一時的な資材置場として設置したものであり、貴殿の通行を意図的に妨げる目的はありませんでした。本書面到達後速やかに撤去いたします。」 一言解説: 妨害の意図がないことを示しつつ任意撤去に応じることで、紛争の早期解決と訴訟リスクの回避につながります。
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修正条文例: 「本件通路以外にも、貴殿所有地から公道に至る合理的な経路(【具体的な経路】)が存在すると考えており、民法第211条に定める『損害が最も少ない場所及び方法』の再検討を求めます。」 一言解説: 撤去に応じない場合は、単なる拒絶ではなく211条の要件に沿った代替案を具体的に示すことで、後の紛争において合理性を主張しやすくなります。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
使う場面・使ってはいけない場面
本書式は、自己の土地が袋地またはこれに準ずる状態にあり、既存の通路を隣接地所有者が物置等で塞いでいる場合に、任意の撤去を促すために用います。他方、通行地役権の設定合意や登記が既に存在し、その履行(妨害排除)を求める場合には、囲繞地通行権(民法第210条)ではなく地役権(民法第280条)を根拠とする通知に組み替える必要があり、本書式をそのまま流用すべきではありません。また、通行の可否について当事者間に根本的な争いがあり、境界・所有権自体が不明確な場合は、本書式による通知よりも先に測量・境界確定等の手続を検討すべきです。
根拠法令
民法第210条(公道に至るための他の土地の通行権)、民法第211条(通行の場所及び方法)、民法第212条(償金)、民法第280条(地役権の内容)を根拠とします。所有権に基づく妨害排除請求権は条文上の明文規定ではなく、所有権の物権的効力として判例上認められているものである点に留意してください。
実務でよくある失敗と対策
第一に、袋地性の主張が抽象的で、具体的にどの経路がどの程度困難かを示さないまま通知してしまう失敗があります。事実経過欄には、代替経路の有無・距離・道路状況を具体的に記載することが対策となります。
第二に、償金(民法第212条)への言及を欠いたまま一方的に撤去のみを求め、相手方の心証を悪化させる失敗があります。償金支払いの意思を明示する条項を設けることで、任意交渉での解決可能性が高まります。
第三に、通行地役権と囲繞地通行権を混同し、根拠条文を誤って引用する失敗があります。地役権は契約や時効取得等によって別途成立する権利であり、囲繞地通行権とは発生要件が異なるため、事案に即して根拠を選別する必要があります。
個別の事案における袋地該当性の判断や請求の可否については、専門家に確認することを推奨します。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 通行する側の土地が公道に至るために本件土地の通行を要する状態(袋地またはこれに準ずる状態)にあるか確認したか
- [ ] 本件通路が従前から現に利用されてきた経路であることを裏付ける資料(写真・利用履歴等)があるか
- [ ] 代替経路の有無とその困難性を具体的に説明できるか
- [ ] 障害物の設置時期・内容を正確に特定したか
- [ ] 民法第210条・第211条・第212条の該当性を事案に即して検討したか
- [ ] 通行地役権の設定合意や時効取得が別途成立していないか確認したか
- [ ] 撤去期限を明確に設定したか(2週間程度が一般的な目安)
- [ ] 償金支払いの意思の有無・金額の目安を検討したか
- [ ] 期限徒過後の対応(法的手続の検討等)を段階的に記載したか
- [ ] 発送方法(内容証明郵便等、証拠化の要否)を検討したか
- [ ] 個別事案の袋地該当性・請求内容について専門家に確認したか