画面設計やデザインカンプの制作を委託する契約書。著作権法第21条以下の譲渡範囲と第20条の同一性保持権の不行使、修正回数の上限を明確に定める。

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UI/UXデザイン制作委託契約書

第1部: 書式本文

〇〇〇〇(以下「甲」という。デザイン会社)と〇〇〇〇(以下「乙」という。発注者)とは、乙が提供するアプリケーション又はウェブサービスの画面設計及びデザイン(以下「本デザイン」という。)の制作について、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(目的) 甲は、民法第632条に定める請負契約として、乙の指示に基づき、ワイヤーフレーム、情報設計(IA)、ビジュアルデザインカンプ及びデザインシステムの制作(以下「本業務」という。)を行う。

第2条(業務範囲) 本業務の具体的な範囲(画面数、対応デバイス、成果物の形式)は別紙のとおりとする。

第3条(制作スケジュール及び対価) 制作スケジュール及び委託料は別紙のとおりとし、乙は別紙に定める支払条件に従い甲に対価を支払う。

第4条(ユーザーリサーチへの協力) 乙は、甲が本デザインの制作にあたりユーザーインタビュー、アクセス解析データの分析等のリサーチを行う場合、必要な情報提供及び協力を行う。

第5条(検収及び修正) 1. 甲は、各成果物(ワイヤーフレーム、デザインカンプ等)を乙に提示し、乙は別紙に定める確認期間内に、内容を確認する。 2. 乙は、各成果物について、別紙に定める回数(標準〇回)を上限として修正を依頼することができる。 3. 前項の上限回数を超える修正依頼については、甲乙協議のうえ追加費用を定める。

第6条(著作権の帰属) 1. 本デザインにかかる著作権(著作権法第21条以下に規定する複製権、翻案権等を含む。)は、委託料の完済を条件として乙に譲渡される。 2. 甲が本デザインの制作に利用した汎用性のあるUIキット、アイコン素材、フォントその他の第三者素材にかかる権利は前項の譲渡の対象外とし、その利用条件(ライセンスの種類、乙による利用継続の可否)は別紙のとおりとする。

第7条(著作者人格権の不行使) 1. 甲は、著作権法第20条に定める同一性保持権を含む著作者人格権を、乙又は乙が指定する者に対して行使しない。 2. 前項の規定は、乙が本デザインの本質的な特徴を著しく損なう改変を行うことまで許容する趣旨ではない。

第8条(デザインシステムの提供) 甲は、本デザインの一貫性を維持するため、色彩、タイポグラフィ、コンポーネント等を定めたデザインシステム(デザインガイドライン)を成果物として提供する場合、乙が今後の機能追加においてこれを参照できるよう、編集可能な形式(デザインファイルの原本)で納品する。

第9条(ユーザビリティに関する保証の限定) 甲は、本デザインが特定のコンバージョン率、利用者数その他の事業上の成果を保証するものではない。

第10条(契約不適合責任) 納品された本デザインに契約の内容に適合しない状態がある場合、乙は民法第562条から第564条までの規定に従い、甲に対し履行の追完、報酬減額、損害賠償又は契約の解除を請求することができる。当該請求は、乙が契約不適合を知った時から1年以内に甲に通知しなければならない。

第11条(秘密保持) 甲及び乙は、本契約の履行の過程で知り得た相手方の営業上の秘密情報(未公開のサービス企画を含む。)を第三者に開示してはならない。

第12条(ポートフォリオ掲載) 甲は、本デザインの完成後、乙の事前の書面による承諾を得たうえで、自社の実績紹介として本デザインの一部を自社ウェブサイト等に掲載することができる。

第13条(合意管轄) 本契約に関する紛争については、〇〇地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. デザイン会社向けの修正

A-1. 修正回数超過時の追加費用の明確な単価設定

修正後:「第5条第2項の上限回数を超える修正依頼については、1回あたり別紙に定める単価に基づき追加費用を請求する。」 一言解説: 「協議のうえ」という曖昧な定めでは追加費用の請求が実務上機能しにくいため、単価をあらかじめ明示する修正である。

A-2. リサーチ協力不足による納期延伸の免責

修正後:「乙が第4条のリサーチ協力を遅延した場合、当該遅延日数に応じて納期を延伸するものとし、甲はこれによる遅延について責任を負わない。」 一言解説: デザイン制作の前提となるリサーチが発注者の協力不足により停滞した場合の責任を発注者に帰属させる修正である。

B. 発注者向けの修正

B-1. デザインシステムの継続利用権の明確化

修正後:「甲は、デザインシステムを構成するコンポーネントファイルを、乙が将来自社又は第三者の開発者を用いて機能追加・改修を行う際に支障のない形式(Figma等の編集可能なファイル形式)で提供する。」 一言解説: 発注者が将来別のデザイン会社や社内デザイナーに引き継ぐ際に、成果物が実質的に利用できないファイル形式(画像化されたもの等)で納品されることを防ぐ修正である。

B-2. ユーザビリティテストの実施義務追加

追加条文例:「甲は、デザインカンプの確定前に、乙の指定するユーザー層を対象としたユーザビリティテストを実施し、結果を踏まえた改善提案を行う。」 一言解説: 主観的な見た目の良し悪しだけでなく、実際の利用者による検証を経た成果物を求める発注者側の修正である。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、アプリやウェブサービスの画面設計・ビジュアルデザインの制作を外部のデザイン会社に委託する場面で用いる。他方、フロントエンド・バックエンドの実装を含むシステム全体の開発を委託する場合には、開発委託契約書を別途締結すべきであり、本書式はデザインカンプ等の設計・意匠面の制作に特化した契約である。

根拠法令 本デザインは著作権法上、美術の著作物又は図形の著作物として保護されうる。デザインの著作権を譲渡する場合、同法第61条第2項に基づき、複製権や翻案権に加え、二次的著作物の利用に関する権利(同法第28条)を含めて譲渡する旨を明記しなければ、これらの権利は譲渡人に留保されたものと推定される点に留意が必要である。また、著作者人格権のうち同一性保持権(同法第20条)は、著作物の内容又は題号を著作者の意に反して改変されない権利であり、発注者が将来デザインに手を加える際に問題となりうるため、不行使特約(第7条)により対応するのが実務上一般的である。UI/UXデザインの分野では、アイコン素材、フォント、UIキット等の第三者素材が制作過程で利用されることが多く、これらは通常デザイン会社が第三者からライセンスを受けて利用しているものであるため、著作権譲渡の対象から除外し、利用条件を別途明確にする必要がある。

実務でよくある失敗と対策 第一に、修正回数の上限が定められているものの、超過時の追加費用の算定基準が曖昧で、都度の交渉に時間を要する失敗がある。A-1のようにあらかじめ単価を設定することが対策となる。第二に、デザインシステムの納品形式が画像(PNG、PDF等)にとどまり、発注者が将来別の担当者に引き継ぐ際に編集ができない失敗がある。第8条及びB-1のように編集可能な形式での納品を明記することが対策となる。第三に、UIキットやフォント等の第三者素材のライセンス条件を確認せず利用した結果、当該素材が商用利用不可のライセンスであったことが後日判明し、成果物全体の利用に支障が生じる失敗がある。第6条第2項のように第三者素材の利用条件を別紙で明確にし、事前にライセンス確認を行うことが対策となる。

デザインが特定の事業成果(コンバージョン率向上等)を生むかどうかは多くの外部要因に左右されるため、成果保証を行わないことを明記したうえで、個別事案は専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 業務範囲(画面数・対応デバイス・成果物形式)を別紙で具体的に定めたか
  • [ ] 著作権譲渡条項に著作権法第27条・第28条の譲渡を明記したか
  • [ ] 同一性保持権の不行使特約を定めたか
  • [ ] 第三者素材(UIキット・フォント・アイコン)の利用条件を確認したか
  • [ ] 修正回数の上限及び超過時の追加費用単価を定めたか
  • [ ] デザインシステムの納品形式(編集可能なファイルか)を確認したか
  • [ ] ユーザーリサーチ・ユーザビリティテストの実施範囲を定めたか
  • [ ] 成果保証を行わない旨(コンバージョン率等)を明記したか
  • [ ] 契約不適合責任の通知期間を定めたか
  • [ ] ポートフォリオ掲載の可否及び承諾手続を定めたか