納入品の受入検査の方法・抜取基準・合格判定を合意する書面。商法第526条の買主の検査及び通知義務を前提に、検査省略時や不合格時の取扱いを定めます。

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受入検査基準に関する合意書

第1部: 書式本文

【買主商号】(以下「甲」という。)と【売主商号】(以下「乙」という。)は、甲乙間の継続的取引基本契約に基づき乙が甲に納入する物品(以下「本物品」という。)の受入検査に関し、以下のとおり合意する(以下「本合意書」という。)。

第1条(目的) 本合意書は、乙が甲に納入する本物品について、甲が行う受入検査の方法、合格判定基準及び不合格時の取扱いを定め、もって商法第526条に定める買主の検査及び通知義務の履行方法を両当事者間であらかじめ明確化することを目的とする。

第2条(検査対象) 本合意書に基づく受入検査(以下「本検査」という。)の対象は、別紙「品目一覧表」に定める品目とする。品目の追加又は変更は、甲乙協議の上、別紙の改訂により行う。

第3条(検査方法) 1. 甲は、別紙に定める区分に従い、全数検査又は抜取検査のいずれかにより本検査を行う。 2. 抜取検査による場合、サンプルサイズ及び合格判定個数は、別紙のロットサイズ・検査水準(AQL)に基づく抜取検査表による。 3. 甲は、抜取検査の結果、当該ロットが不合格となった場合には、当該ロット全体について全数検査に切り替えることができる。

第4条(合格判定基準) 1. 合格判定は、別紙「検査基準書」に定める寸法、外観、性能その他の項目について行う。 2. 検査基準書に定めのない事項については、乙が甲に提出した仕様書又は見本の内容を基準とする。 3. 本物品の機能に影響を及ぼさない軽微な外観上の不整合の取扱いについては、別紙に許容範囲を定める。

第5条(検査の実施時期及び場所) 1. 甲は、本物品の納入を受けた日から【5】営業日以内に本検査を実施する。 2. 本検査は、甲の指定事業所で行う。ただし、甲乙合意の上、乙の事業所内で出荷前検査(乙工場立会検査)を実施し、これをもって本検査の全部又は一部に代えることができる。

第6条(検査結果の通知) 1. 甲は、本検査の結果、不合格品があると判断したときは、前条第1項の期間内に、不合格の品目、数量及び不合格理由を書面又は電磁的方法により乙に通知する(以下「不合格通知」という。)。 2. 甲が前条第1項の期間内に不合格通知をしなかったときは、当該ロットは本検査に合格したものとみなす。この場合、甲は当該不適合を理由とする追完請求、代金減額請求、損害賠償請求及び契約解除をすることができない。ただし、乙が納入時に当該不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときはこの限りでない。 3. 直ちに発見できない瑕疵は、甲がこれを発見した日から【14】日以内に乙に通知することにより、前項にかかわらず契約不適合責任を追及できる。

第7条(不合格品の取扱い) 1. 甲は、不合格通知をした本物品について、乙の指示があるまで善良な管理者の注意をもって保管する。 2. 乙は、不合格通知の受領日から【7】営業日以内に、代替品の納入、修補又は返還受領のいずれの方法によるかを甲に通知する。乙が期間内に指示をしないときは、甲は乙の費用負担で不合格品を返送できる。 3. 代替品が納入された場合、当該代替品についても本検査を実施する。

第8条(検査の省略) 1. 甲及び乙は、乙が一定期間にわたり継続して安定した品質の本物品を納入した実績を踏まえ、別紙に定める品目について本検査の全部又は一部を省略することができる。 2. 検査省略の対象品目について契約不適合が判明した場合であっても、乙は当該不適合について契約不適合責任を免れない。

第9条(立会検査) 乙は、甲があらかじめ通知した上で本検査に立ち会うことを求めたときは、これに応じるものとする。乙の立会いは、本検査の結果に対する乙の異議申立権を制限するものではない。

第10条(検査記録の保存) 甲及び乙は、本検査の結果に関する記録(検査成績書、写真等を含む。)を、本物品の納入日から【3】年間保存する。

第11条(検査費用の負担) 1. 本検査に要する甲の人件費その他の通常の費用は、甲の負担とする。 2. 不合格ロットの再検査及び全数検査への切替えに要する追加費用は、乙の負担とする。

第12条(秘密保持) 甲及び乙は、本検査の実施を通じて知り得た相手方の技術上・営業上の情報を、相手方の事前の書面による承諾なく第三者に開示し、又は本合意書の目的以外に使用してはならない。

第13条(契約不適合責任との関係) 本合意書は、甲乙間の個別売買契約に基づく契約不適合責任(民法第562条から第564条まで)の内容を変更するものではなく、本検査における合格判定は、当該契約不適合責任の存否に関する終局的な判断を意味するものではない。

第14条(有効期間) 本合意書は、締結日から効力を生じ、甲乙間の基本契約が終了するまで効力を有する。

第15条(準拠法及び管轄) 本合意書は日本法に準拠し、本合意書に関する紛争については、【管轄裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

以上を証するため本書2通を作成し、甲乙記名押印の上各1通を保有する。

【作成日】

甲(買主) 住所: 名称: 代表者: 印 乙(売主) 住所: 名称: 代表者: 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節 検査する買主向け

買主としては、検査の発見漏れが請求権喪失に直結するため、通知期間を確保しやすい長さに調整し検査省略の範囲を限定したい。

before:「甲は、本物品の納入を受けた日から【5】営業日以内に本検査を実施する。」 after:「甲は、本物品の納入を受けた日から【10】営業日以内に本検査を実施するものとし、繁忙期等合理的な事情があるときは、乙に通知の上、【5】営業日を限度として延長できる。」 解説: 商法第526条の検査期間は「遅滞なく」の解釈に委ねられるため、自社の検査体制に見合った現実的な期間を確保し、延長の余地も残す。

before:「甲及び乙は…別紙に定める品目について本検査の全部又は一部を省略することができる。」 after:「本検査の省略は、乙が別紙の不良率実績を【12】か月連続達成した品目に限り認め、甲は品質実績が悪化したと認めるときはいつでも省略を解除し、全数検査に復帰させることができる。」 解説: 省略は検査コストを削減する一方で不適合発見の遅れを伴うため、実績要件と一方的解除権を組み合わせ買主が主導権を保持する。

B節 納入する売主向け

売主としては、抜取検査による過度な全数検査への切替えで不当な返品・代金減額を受けることを防ぎたい。

before:「甲は、抜取検査の結果、当該ロットが不合格となった場合には、当該ロット全体について全数検査に切り替えることができる。」 after:「甲は、抜取検査の結果、当該ロットが不合格となった場合には、乙に理由を示した上で協議を求めるものとし、協議が調わないときに限り全数検査に切り替えることができる。追加費用は甲乙協議の上で分担する。」 解説: 切替えを買主の一存とすると乙の追加費用負担が際限なく拡大しかねないため、協議前置と費用分担条項で乙の予測可能性を確保する。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

本書式は、継続的な物品供給取引において、納入物の受入検査の手順と合否基準をあらかじめ明文化しておきたい場面で使用する。個別の売買契約ごとに検査条件を口頭で取り決めていると、検査担当者の交代や取引先の変更のたびに基準が曖昧になり、不合格判定を巡る紛争の温床となる。逆に、単発かつ少量の売買であって継続的な取引基本契約を前提としない場合や、検査基準自体が業界標準(JIS規格等)に準拠すれば足りる単純な取引の場合には、個別契約書内に簡潔な条項を置く方が実務上小回りが利く。

根拠法令としては、商人間の売買における買主の目的物検査及び不適合の通知義務を定める商法第526条が中心となる。同条第1項は買主に遅滞なく目的物を検査する義務を課し、同条第2項は不適合を発見したときの直ちの通知義務を、同条第3項は直ちに発見できない不適合について6か月以内の通知義務を定めており、これらを怠ると買主は追完請求、代金減額請求、損害賠償請求及び契約解除をすることができなくなる。あわせて、民法第562条から第564条までの契約不適合責任の規定が実体的な救済手段を定めるため、本合意書はこれらを前提に検査の手続面を補完する位置づけとなる。

実務でよくある失敗として、第一に、検査の実施時期を定めずに運用した結果、買主の検査が遅延し、商法第526条の「遅滞なく」の要件を満たさず契約不適合責任を追及できなくなるケースがある。対策として第5条のように具体的な検査期間を日数で明記する。第二に、抜取検査で合格としたロットに不良品が混入していた場合の取扱いを定めておらず、紛争時に検査基準の合意内容が不明確になるケースがある。対策として第4条及び別紙で合格判定基準とサンプリング方法を特定し、検査記録の保存(第10条)により事後の検証を可能にする。第三に、検査省略の合意後に品質が悪化しても復帰手続がなく、不良品の流出を止められないケースがある。対策として第8条のように省略の要件と解除権を明記する。検査基準の設計や通知期間の妥当性は業種・品目によって異なるため、個別事案は専門家に確認の上で条項を確定することを推奨する。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 検査対象品目を別紙で特定しているか
  • [ ] 全数検査と抜取検査の区分を品目ごとに定めているか
  • [ ] 抜取検査のサンプルサイズ・合格判定個数(AQL等)を明記しているか
  • [ ] 検査の実施時期(納入後何営業日以内か)を定めているか
  • [ ] 検査の実施場所(買主事業所か売主工場立会いか)を明確にしているか
  • [ ] 不合格通知の方法・期限を商法第526条の通知義務と整合させているか
  • [ ] 不合格品の取扱い(代替品納入・修補・返品)の手順と期限を定めているか
  • [ ] 検査省略を認める場合、その要件と解除条件を明記しているか
  • [ ] 検査費用及び追加検査費用の負担者を明確にしているか
  • [ ] 本合意書と個別売買契約上の契約不適合責任との関係を整理しているか
  • [ ] 管轄裁判所の指定が実務上適切な場所になっているか