工事や制作の請負代金が未払いのまま放置された際に、民法第632条及び第633条の報酬支払時期を示して速やかな支払を求める催告書です。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
請負代金支払催告書
第1部: 書式本文
請負代金支払催告書
宛先: 【注文者住所】 【注文者商号・氏名】 御中
作成日: 【西暦】年【月】月【日】日
差出人: 【請負人住所】 【請負人商号・氏名】 【担当部署・担当者名】 印
件名: 請負代金の支払催告について
当社は、貴社に対し、下記のとおり催告する。
- 当社と貴社は、【西暦】年【月】月【日】日付【請負契約書・注文書】に基づき、【工事名・制作物名】に関する請負契約(以下「本契約」という)を締結した。
- 当社は、本契約に基づき、【西暦】年【月】月【日】日、目的物である【工事・成果物】を完成させ、貴社に引き渡した。
- 民法第632条により、請負人は仕事を完成することを約し、注文者はその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約することによって、請負契約の効力が生じる。当社は既に仕事を完成させ、引渡しを完了している。
- 民法第633条により、報酬は、物の引渡しを要するときは引渡しと同時に支払わなければならないのが原則である。本件では既に引渡しが完了しているため、貴社の報酬支払義務は履行期にある。
- 貴社は、当社に対し、下記の請負代金債務を負っている。
- 請負代金額: 金【請負代金額】円
- 引渡日: 【西暦】年【月】月【日】日
- 約定支払期限: 【西暦】年【月】月【日】日(既に経過)
- 当社は貴社に対し、本書面到達後【10日】以内、すなわち【最終支払期限】までに、上記請負代金全額を下記口座へ支払うことを求める。
- 支払期日の翌日から支払済みまで、年3パーセント(または契約書に定める約定利率)の割合による遅延損害金をあわせて請求する。
- 貴社が目的物の【瑕疵・契約不適合】を理由に支払を留保していると認識している場合は、その具体的内容及び根拠資料を【回答期限】までに書面でご提示いただきたい。
- 上記期限までに支払または前項の具体的な回答がない場合、当社は法的措置への移行を検討する。
- 本催告は、当社が有するその他の権利(留置権、同時履行の抗弁への対応等)を放棄する趣旨のものではない。
以上
お振込先・お問い合わせ先 【金融機関名・支店名・口座種別・口座番号】 【口座名義】 【担当部署・担当者名】 【電話番号・メールアドレス】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 請負人側
修正後の文例:
当社は、【西暦】年【月】月【日】日、貴社検収担当者【氏名】立会いのもと目的物の引渡しを完了し、貴社から検収完了の確認【メール・検収書】を受領している。民法第633条により報酬支払義務は引渡しと同時に履行期を迎えているため、【最終支払期限】までの支払を求める。
一言解説: 検収完了の記録(検収書・メール等)を具体的に引用することで、注文者側からの「未検収」を理由とする支払拒否の主張を封じやすくなる。検収記録が存在しない場合は、写真や作業日報など代替となる証拠の有無をあわせて確認しておく。
B. 注文者側
修正後の文例:
貴社ご指摘の請負代金については、目的物に【具体的な不具合内容】が認められ、契約不適合責任(民法第562条以下)に基づく修補を求めている段階であり、支払を留保している。修補が完了するまでの間、民法第533条の同時履行の抗弁を主張する。
一言解説: 注文者側で使う場合は、単なる支払拒否ではなく、契約不適合の具体的内容と修補請求の事実を明記し、同時履行の抗弁の根拠を示すことが重要である。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、工事や制作物の引渡しが完了しているにもかかわらず、請負代金が支払期日までに支払われない場合に使用する。仕事が未完成のまま代金のみを請求する場面や、検収・引渡しの事実自体に争いがある場面では使用に適さず、まず引渡しの事実を証拠化してから送付すべきである。
根拠法令は、民法第632条(請負の意義)、第633条(報酬の支払時期、原則として引渡しと同時履行)である。あわせて、目的物に契約不適合がある場合の取扱いとして、民法第559条により売買の規定(第562条以下の契約不適合責任)が請負に準用される点、及び同時履行の抗弁権を定める民法第533条にも留意する必要がある。
実務でよくある失敗の一つ目は、引渡しの事実を証拠化しないまま代金請求書のみを送付してしまうことである。請負代金は原則として引渡しと同時履行の関係にあるため、引渡しの事実(検収書、受領書、写真等)を示さないと、注文者から「未引渡し」を理由に支払を拒まれた場合に反論が難しくなる。対策として、本文2項及び第2部Aの文例で引渡日・検収担当者・検収記録を具体的に特定する構成としている。
二つ目の失敗は、注文者側から瑕疵・契約不適合を理由に支払を拒まれた際、その主張の当否を確認せずに一律に支払を強要する内容にしてしまうことである。契約不適合の主張が事実であれば、注文者は民法第533条の同時履行の抗弁や、修補請求(民法第562条)を主張できる立場にあり、これを無視した強い請求は後の交渉をこじらせるおそれがある。対策として、本文8項に瑕疵主張がある場合の資料提示を求める条項を設け、争いの有無を切り分ける構成としている。
三つ目の失敗は、出来高部分のみが完成している未完成の請負契約について、全額の請負代金を請求してしまうことである。仕事が全部完成していない段階では、原則として報酬請求権は発生せず、注文者の責めに帰すべき事由による履行不能等の例外的な場合に限り、民法第634条により出来高に応じた報酬を請求できるにとどまる。対策として、本書式を送付する前に完成の有無及び引渡しの事実を確認することを想定した記載としている。
四つ目の失敗は、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の適用対象となる取引であるにもかかわらず、同法上の支払期日規制を踏まえずに催告してしまうことである。資本金要件等を満たす取引では、下請法第4条第1項第2号により給付を受領した日から起算して60日以内のできるだけ短い期間内に代金を支払うことが親事業者に義務付けられており、契約書の支払期日がこれより後ろ倒しになっている場合には別途の検討を要する。対策として、取引が下請法の適用対象に該当するかを事前に確認し、該当する場合は同法上の支払期日も本文に付記することが望ましい。契約不適合の有無や出来高報酬の算定は個別の事案により結論が異なるため、専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 目的物の引渡し(検収)が完了している事実を証拠化しているか
- [ ] 請負契約書上の報酬支払時期の定めを確認したか
- [ ] 仕事が全部完成しているか、出来高段階でないかを確認したか
- [ ] 注文者から契約不適合(瑕疵)の主張が既にされていないか確認したか
- [ ] 契約不適合の主張がある場合、同時履行の抗弁との関係を整理したか
- [ ] 遅延損害金の起算日と利率(約定・法定)を確認したか
- [ ] 最終支払期限を相当な期間で設定したか
- [ ] 内容証明郵便での送付要否を検討したか
- [ ] 振込先口座情報に誤りがないか確認したか
- [ ] 法的措置移行後の対応方針(訴訟提起等)を社内で確認したか
- [ ] 下請法の適用対象取引に該当しないか、該当する場合の支払期日規制を確認したか