来訪者応対や取次ぎ業務を外部に委託する契約書です。業務範囲、指揮命令関係の整理、来訪者情報の守秘義務を明確にします。提出先や保存期間の目安もあわせて整理しています。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
受付業務委託契約書
第1部: 書式本文
【〇〇株式会社】(以下「甲」という。)と【〇〇株式会社】(以下「乙」という。)は、甲の運営する施設における受付業務の委託に関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的)
甲は、甲が運営する【施設名称】(以下「本施設」という。)における受付業務を乙に委託し、乙はこれを受託する。
第2条(業務内容)
- 乙が受託する業務(以下「本業務」という。)の範囲は、次の各号のとおりとする。 一 来訪者の受付、来訪目的の確認及び訪問先への取次ぎ 二 入館証の発行及び回収 三 電話・インターホン対応並びに簡易な案内 四 郵便物・宅配便の受領及び保管場所への引継ぎ 五 前各号に付随する記録の作成
- 本業務には、甲の従業員に対する労務管理、来訪者の入退館可否の最終判断その他甲の意思決定に関わる業務を含まないものとする。
第3条(業務遂行体制及び指揮命令関係)
- 乙は、本業務の遂行に必要な人員(以下「業務従事者」という。)を自ら選任、配置及び管理するものとし、業務従事者に対する具体的な作業方法、勤務割当て及び労務管理は、乙の裁量と責任において行う。
- 甲は、業務従事者に対し、直接指揮命令を行わないものとする。甲が本業務の遂行方法について要望がある場合は、乙の現場責任者を通じて申し入れるものとする。
- 甲及び乙は、本業務の実施に当たり、労働者派遣事業と請負・準委任により行われる事業との区分に関する基準に照らし、実態として労働者派遣に該当することのないよう、前二項の運用を遵守する。
第4条(委託形態)
本業務は、乙が自らの裁量と責任において遂行する準委任(民法第656条)とする。ただし、乙が特定の成果物(受付記録の月次報告書等)の完成を約する業務については、当該部分に限り請負(民法第632条)の性質を有するものとする。
第5条(業務従事者の資質)
- 乙は、本業務に従事させる者について、接遇に必要な知識及び技能を有する者を配置するものとする。
- 乙は、業務従事者の氏名、経歴の概要を事前に甲に通知し、甲が本施設のセキュリティ上支障があると合理的に判断した場合、乙は当該業務従事者の配置を見直すものとする。
第6条(委託料)
- 甲は乙に対し、本業務の委託料として月額金【〇〇円】(消費税別)を、毎月末日締め翌月【〇〇日】までに乙が指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。
- 振込手数料は甲の負担とする。
第7条(来訪者情報の取扱い及び守秘義務)
- 乙は、本業務の遂行に伴い知り得た来訪者の氏名、所属、来訪目的その他の個人情報(以下「来訪者情報」という。)を、本業務の遂行目的以外に利用してはならない。
- 乙は、来訪者情報を、業務従事者のうち本業務に必要な範囲の者にのみ取り扱わせるものとし、適切な安全管理措置を講じる。
- 甲は、個人情報の保護に関する法律第25条に基づき、乙に対する必要かつ適切な監督を行うものとし、乙は甲が求める場合、来訪者情報の取扱状況について報告する。
- 甲及び乙は、本契約の存続中及び終了後【3】年間、来訪者情報及び本業務の遂行を通じて知り得た相手方の営業上の秘密を第三者に開示又は漏えいしてはならない。
第8条(再委託の制限)
乙は、本業務の全部又は主要な部分を第三者に再委託してはならない。ただし、甲の事前の書面による承諾を得た場合はこの限りでない。
第9条(記録の作成及び保存)
- 乙は、来訪者の受付記録(氏名、来訪日時、面会先、退館日時等)を作成し、甲乙合意する保存期間(目安として【1】年間)保存する。
- 甲が保存期間満了前に記録の廃棄を求めた場合、乙は速やかに廃棄し、廃棄完了を甲に報告する。
第10条(損害賠償)
- 甲又は乙は、本契約に違反し、相手方に損害を与えたときは、その損害(直接かつ通常の損害に限る。)を賠償する責任を負う。
- 前項の賠償額は、本契約に別段の定めがある場合を除き、本契約に基づく直近【6】か月分の委託料相当額を上限とする。ただし、故意又は重過失による場合はこの限りでない。
第11条(契約期間)
本契約の有効期間は、【西暦年月日】から【西暦年月日】までの【1】年間とし、期間満了の【3】か月前までに甲乙いずれからも書面による更新拒絶の申出がない限り、同一条件でさらに【1】年間更新するものとし、以後も同様とする。
第12条(中途解約)
甲又は乙は、相手方に対し【3】か月前までに書面で通知することにより、本契約を中途解約することができる。
第13条(反社会的勢力の排除)
甲及び乙は、自己又は自己の役員が暴力団、暴力団員その他の反社会的勢力に該当しないこと及び将来にわたっても該当しないことを表明し、保証する。
第14条(協議事項)
本契約に定めのない事項又は本契約の解釈に疑義が生じた事項については、甲乙誠実に協議の上、これを解決する。
第15条(合意管轄)
本契約に関する紛争については、【〇〇地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 委託者(施設側・甲)の立場からの修正条文例
- A-1(セキュリティ要求水準が高い施設の場合):第5条第2項を「業務従事者の配置に当たっては、甲が指定する身元確認手続(反社会的勢力該当性の確認を含む。)を経るものとする。」に強化する一言解説。金融機関等セキュリティ要求の高い施設では、配置前の確認プロセスを契約上具体化しておくことが望ましい。
- A-2(受付業務に加え清掃・警備等複数業務を一括委託する場合):第2条の業務範囲を「別紙業務仕様書のとおりとし、業務ごとの委託料内訳を別紙に定める。」に変更し、業務ごとの責任範囲を明確化する一言解説。
- A-3(甲が来訪者情報を独自のシステムで一元管理したい場合):第9条に「乙は、受付記録を甲の指定するシステムに直接入力するものとし、乙は当該システムの操作に必要な範囲でのみアクセス権を付与される。」を追加する。
B節: 受託者(乙)の立場からの修正条文例
- B-1(業務従事者の急な欠勤リスクに備えたい場合):第3条に「乙は、業務従事者の欠勤等により業務に支障が生じないよう、代替要員を確保するものとし、代替要員の配置についても本契約の定めを適用する。」を追加する一言解説。
- B-2(甲からの直接指示のリスクを避けたい場合):第3条第2項を「甲の要望は、書面又は乙が指定する連絡窓口を経由して伝達するものとし、業務従事者個人への直接の作業指示は行わない。」とより具体化し、偽装請負のリスクを低減する。
- B-3(委託料の改定を求めやすくしたい場合):第6条に「委託料は、最低賃金の改定その他人件費水準の変動があった場合、甲乙協議の上、改定することができる。」を追加する。
第3部: 書き方と法的ポイント解説(解説)
使う場面・使ってはいけない場面
本契約書は、施設の受付・来訪者対応業務を外部事業者に委託する場面で使用する。一方で、受付業務に従事する者を甲の指揮命令下に置き、実質的に甲の従業員と同様の働き方をさせることを予定している場合には、本契約書のような請負・準委任構成の契約ではなく、労働者派遣契約を締結すべきであり、契約の名称のみを業務委託としても実態が労働者派遣であれば違法な労働者供給又は無許可派遣と評価されるおそれがある。
根拠法令
準委任は民法第656条により委任の規定が準用される契約類型であり、受任者(乙)が自らの裁量で事務を処理する点に特徴がある。特定の成果物の完成を目的とする部分は民法第632条の請負に該当し得る。委託者(甲)が業務従事者に対して直接具体的な指揮命令を行う実態がある場合には、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)第2条第1号に定める「労働者派遣」に該当し得るため、いわゆる偽装請負とならないよう、指揮命令系統を契約書上も実務上も乙側に一元化しておく必要がある。また、来訪者情報の取扱いに関しては、個人情報保護法第25条により、甲は乙に対する必要かつ適切な監督義務を負う。
よくある失敗と条項上の対策
- 契約書上は業務委託としながら、実際には甲の担当者が業務従事者に日々の作業を直接指示してしまい、偽装請負と評価されるリスクを生む失敗。→ 第3条のように指揮命令系統を乙に一元化し、甲からの要望は現場責任者経由とする運用を明記する。
- 来訪者情報の取扱いに関する監督条項がなく、委託先での情報漏えい時に甲の管理責任が問われる失敗。→ 第7条第3項のように監督権限及び報告義務を条文化する。
- 損害賠償の上限額を定めず、想定外の高額請求リスクを双方が抱える失敗。→ 第10条のように賠償額の上限と故意・重過失の例外を明記する。
指揮命令関係の実態評価や、個別の業務内容が労働者派遣に該当するか否かの判断は、業務の具体的な運用実態によって結論が異なるため、個別事案は専門家(弁護士等)に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト(チェックリスト)
- 業務範囲(受付・取次ぎ等)を具体的に列挙したか
- 甲から業務従事者への直接指揮命令を禁止する条項を設けたか
- 委託形態が請負・準委任のいずれに該当するか整理したか
- 委託料の金額、支払期日、支払方法を明記したか
- 来訪者情報の利用目的及び安全管理措置を定めたか
- 個人情報保護法第25条に基づく甲の監督権限を条文化したか
- 再委託の可否及び承諾手続を定めたか
- 受付記録の保存期間及び廃棄手続を定めたか
- 損害賠償の範囲及び上限額を検討したか
- 契約期間、更新条件、中途解約の予告期間を確認したか
- 反社会的勢力排除条項を含めたか
- 紛争発生時の合意管轄裁判所を定めたか