組合員資格の喪失を解雇事由とするユニオン・ショップ協定の書式です。適用範囲、除外者、解雇手続の運用ルールを明確にします。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
ユニオン・ショップ協定書
第1部: 書式本文
【会社名】(以下「会社」という)と【労働組合名】(以下「組合」という)は、組合員資格の取得及び喪失と雇用関係の取扱いに関し、次のとおりユニオン・ショップ協定(以下「本協定」という)を締結する。
第1条(目的) 本協定は、会社の従業員が組合に加入することを促進し、労使関係の安定を図ることを目的とする。
第2条(適用範囲) 本協定は、会社に勤務する従業員のうち、第3条に定める者を除く全ての正社員(以下「対象従業員」という)に適用する。
第3条(適用除外者) 次の各号のいずれかに該当する者は、本協定の適用から除外する。 1. 就業規則上の管理監督者及びこれに準ずる職位にある者 2. 人事、労務、機密事項の取扱いに関する職務に従事し、組合との利害が対立する立場にある者として会社と組合が別途書面で合意した者 3. 有期雇用契約者、パートタイム従業員その他組合規約上組合員資格を有しない者 4. 試用期間中の者(試用期間満了後は対象とする)
第4条(組合加入の原則) 対象従業員は、採用後【〇】日以内に組合に加入しなければならない。会社は、採用時に対象従業員に対し本協定の内容及び組合加入の手続を説明する。
第5条(組合加入の勧奨) 会社は、対象従業員が組合に加入するよう協力するものとし、組合の加入勧誘活動に対し不当な妨害を行わない。
第6条(組合員資格の喪失) 対象従業員が組合を脱退し、又は組合規約に基づき除名された場合、組合はその旨を書面で会社に通知する。
第7条(解雇の取扱い) 1. 会社は、前条の通知を受けた場合、当該従業員について解雇の要否を検討する。 2. 会社は、解雇を検討するに当たり、当該従業員に弁明の機会を付与し、除名事由の当否及び他部門への配置転換等解雇回避の可能性を含めて総合的に判断する。 3. 会社は、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には解雇を行わない。
第8条(除名手続の適正の確認) 会社は、組合からの除名通知を受けた場合、組合規約上の除名手続(弁明の機会の付与、決議機関の議決等)が適正に履践されたことを組合に確認する。
第9条(解雇の時期及び予告) 会社が第7条に基づき解雇を行う場合は、労働基準法第20条の定めに従い、少なくとも30日前の予告又は平均賃金の【30】日分以上の解雇予告手当の支払いを行う。
第10条(協議) 会社は、第6条の通知を受けてから解雇の判断を行うまでの間、必要に応じて組合と協議する機会を設ける。
第11条(適用除外者の異動) 第3条各号に該当していた者が当該地位を離れ対象従業員の要件を満たすに至った場合、会社は速やかに組合に通知し、当該従業員は組合加入の対象となる。
第12条(有効期間) 1. 本協定の有効期間は【〇年〇月〇日】から【1】年間とする。 2. 期間満了の【1】か月前までに双方から異議がないときは、さらに1年間更新するものとし、以後も同様とする。
第13条(改定及び解約) 会社又は組合は、【90】日前の書面による通知により、本協定の改定又は解約を申し入れることができる。
第14条(協議事項) 本協定に定めのない事項及び解釈に疑義が生じた事項は、会社と組合が誠実に協議のうえ定める。
以上の合意を証するため、本協定書2通を作成し、両当事者記名押印のうえ、各1通を保有する。
【〇年〇月〇日】 会社 【所在地】【会社名】【代表者役職氏名】 印 組合 【所在地】【組合名】【執行委員長氏名】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 会社の立場から
A-1 解雇回避努力を明示する条項 「会社は、除名通知を受けた従業員について、配置転換、他部門への異動その他の解雇回避措置の可能性を検討したうえで、解雇の要否を判断する。」 一言解説: 会社は、組合の除名決定に機械的に従って解雇すると解雇権濫用(労働契約法第16条)と評価されるリスクを負う立場にあるため、独自の実質判断過程を協定上に残し、解雇の客観的合理性・社会的相当性を担保したい。
A-2 除名手続の適正性確認条項 「会社は、除名の効力について疑義がある場合、組合に対し除名決議に至る手続関係書類の提示を求めることができ、必要な確認ができるまで解雇の判断を留保できる。」 一言解説: 会社としては、組合内部の手続に瑕疵がある除名(適正手続を欠く除名)に基づく解雇は無効と判断されるリスクがあるため、事前確認の権限を確保しておくことが重要。
B節: 労働組合の立場から
B-1 迅速な解雇実施を求める条項 「会社は、組合から除名通知を受けた日から【14】日以内に、解雇の要否について組合に回答するものとする。」 一言解説: 組合側はユニオン・ショップの実効性(組織強制力)を確保するため、会社が除名決定を長期間放置して事実上有名無実化させることを防ぎたい立場にあり、回答期限を設けることで実効性を担保する。
B-2 適用除外者の限定解釈条項 「第3条第2号の適用除外者の範囲については、組合との事前協議によって個別に確定するものとし、会社が一方的に対象範囲を拡大することはできない。」 一言解説: 組合は適用除外の範囲が広がりすぎると組織率が低下するため、除外者の認定に組合の関与を残すことで、会社による恣意的な組織対象の縮小を防止したい。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面 企業別労働組合が事業場の相当数の労働者を組織し、組織拡大・労使関係の安定化を図る目的でユニオン・ショップを導入する場面で用いる。導入に当たっては、組合が事業場の過半数を組織していることが前提となることが多い。
使ってはいけない場面 組合が少数派であり、実質的に組織強制の効果を持たない状況や、適用対象・除外者の切り分けが曖昧なまま拙速に締結する場面では使うべきでない。また、解雇回避努力や弁明機会の付与を組合の意向のみで省略するような運用を予定した締結は避けるべきである。
解説: 根拠法令と判例上の留意点 ユニオン・ショップは、労働組合法第7条第1号ただし書において、使用者が特定の労働組合の組合員であることを雇用条件とする協定を締結することが不当労働行為の例外として許容される根拠となっている。もっとも、憲法第28条が保障する団結権には、いかなる組合に加入するかしないかの自由(消極的団結権)も含まれると解する立場があり、他組合への加入者や組合に加入しない自由を行使した者への解雇適用については判例上限定的に解されている(最高裁判例の考え方が参照される)。さらに、ユニオン・ショップに基づく解雇であっても、労働契約法第16条の解雇権濫用法理の適用を免れるものではなく、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められる点に留意が必要である。
よくある失敗と対策 1. 適用除外者の範囲を曖昧にしたまま締結する失敗。対策として第3条のように管理監督者等の除外類型を具体的に列挙する。 2. 除名通知を受けて機械的に解雇する失敗。対策として第7条のように弁明機会の付与と解雇回避検討を協定上の手続として明記する。 3. 解雇予告手続を欠落させる失敗。対策として第9条のように労働基準法第20条に基づく予告又は予告手当の支払いを明記する。
個別事案は専門家に確認のうえ、組織率や職場構成の実態を踏まえて適用範囲・手続を調整されたい。
第4部: 使用前チェックリスト
- 組合が事業場の労働者の過半数を組織しているか確認したか
- 適用除外者(管理監督者、有期雇用者等)の範囲を具体的に定めているか
- 除名通知を受けた場合の弁明機会付与の手続を定めているか
- 解雇回避努力(配置転換等)の検討過程を協定上明記しているか
- 除名手続自体の適正性(弁明機会、決議要件等)を確認する仕組みがあるか
- 解雇予告(労働基準法第20条)の手続を協定に反映しているか
- 消極的団結権(組合に加入しない自由)との抵触が生じない設計になっているか
- 適用除外者の異動時の組合加入手続を定めているか
- 有効期間・更新・解約条件を明記しているか
- 就業規則の解雇事由との整合性を確認したか