提起した訴えを取り下げる書面です。被告が応訴した後の同意の要否、一部取下げ、再訴の可否を踏まえた記載例です。押さえるべき法令上の要件を反映した記載としています。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
訴えの取下書
第1部: 書式本文
訴えの取下書
【裁判所名】 御中
事件番号 【令和◯年(ワ)第◯号】 事件名 【◯◯請求事件】 原告 【原告氏名】 被告 【被告氏名】
原告は、上記事件について、次のとおり訴えを取り下げます。
第1 取下げの範囲 【全部・別紙請求目録記載◯項の請求について一部】、訴えを取り下げます。
第2 取下げの理由 【理由(例:被告との間で裁判外の和解が成立したため、証拠上請求を維持することが困難と判断したため等)】
第3 被告の同意について 本件は【被告が本案について準備書面を提出し、または口頭弁論もしくは弁論準備手続において弁論をした・していない】状況にあります。被告が本案について応訴した後の取下げに該当する場合、原告は被告に対し、本取下書の副本送達後2週間以内に異議を述べるよう求めます。異議がない場合、民事訴訟法261条5項により取下げに同意したものとみなされます。
第4 再訴禁止の確認 原告は、本取下げが【本案について終局判決を受けた後の取下げに該当する・該当しない】ことを確認しており、該当する場合は民事訴訟法262条2項により同一の訴えを提起できないことを了解しています。
添付書類 1 訴訟委任状 【◯通】(代理人による場合)
【令和◯年◯月◯日】
原告 【住所】 【原告氏名】 印 (訴訟代理人弁護士【氏名】)
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 原告の立場から
被告が既に本案について応訴している事案では、第3項に加え「被告代理人【氏名】から【令和◯年◯月◯日】付書面により本取下げについて同意を得ている」旨の一文を追記し、同意書面の写しを添付書類に加える。理由は、応訴後の取下げは被告の同意がなければ効力を生じない(民事訴訟法261条2項)ため、同意の有無・時期を書面上明確にしておかないと、取下げの効力について後日争いが生じるおそれがあるためである。
請求の一部のみを取り下げる場合は、第1項を「別紙請求目録記載の請求のうち、第◯項(【請求内容】)に係る部分を取り下げます」のように特定し、残存する請求と取り下げる請求の範囲を明確に区別する。範囲が曖昧だと、裁判所が訴訟の一部終了をどのように処理すべきか判断できず、期日運営に支障が生じるためである。
本案の終局判決後に取下げを行う場面(和解による解決後、判決確定前に別途取下げを選択する場合等)では、第4項において再訴禁止効(民事訴訟法262条2項)が生じることを原告自身が理解した上での取下げであることを明記し、「本取下げの効果について説明を受け、了解済みである」旨を付記する。再訴禁止効を知らずに取下げを行うと、後日同一請求を再度提起できず不利益を被る典型的な失敗事例となるためである。
B節: 裁判所・被告の立場から
裁判所へ提出する際は、期日直前の取下げである場合、「本取下書は【令和◯年◯月◯日】午前【◯時】の口頭弁論期日に先立ち提出するものであり、期日の取消しを求めます」との一文を加え、期日対応の要否を裁判所に明示する。期日運営上、取下げの提出時期が不明確だと期日が維持されたまま関係者が出頭するなどの混乱が生じるためである。
被告の立場から取下げに対応する場合、被告が本案について応訴済みであれば、取下書の受領後2週間以内に同意または異議の意思表示を行う必要がある。異議を述べる場合は「被告は、本件取下げに異議があり、同意しない」旨の書面を速やかに提出する対策が必要であり、放置すると民事訴訟法261条5項により同意したものとみなされる点に注意する。
場面バリエーションとして、被告が複数存在し、一部の被告についてのみ取下げを行う場合は、取下書の当事者欄に「被告【氏名】に対する訴えを取り下げます」と明記し、他の被告との関係で訴訟が継続することを明確にする。当事者を特定しないまま「訴えを取り下げます」とのみ記載すると、全被告に対する取下げと誤解されるおそれがあるためである。
また、被告が法人であり、担当者ではなく法務部門や訴訟代理人を通じて同意可否を判断する場合は、裁判所は取下書の副本送達先を被告代理人事務所に指定し、「送達先 【被告代理人事務所名】気付」と記載することで、送達から異議期間の起算までの手続を円滑にすることができる。個人の被告に比べ組織内の意思決定に時間を要することが多いため、余裕をもった期日設定を促す配慮が実務上有用である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
訴えの取下書は、原告が提起した訴えの全部または一部を終了させる意思表示として、判決確定前の任意の時点で使用する。他方、被告が本案について応訴済みであるにもかかわらず被告の同意を得る見込みがない場合や、既に本案判決が言い渡され再訴禁止効を避けたい場合には、取下げではなく訴えの変更や上訴による対応を検討すべきであり、安易に取下書を使用すべきではない。
根拠法令として、民事訴訟法261条1項は判決確定に至るまで訴えの全部または一部を取り下げることができる旨を、同条2項は被告が本案について準備書面を提出し、弁論準備手続において申述をし、または口頭弁論をした後は、被告の同意を得なければ取下げの効力を生じない旨を定める。同条5項は、取下書の送達を受けた日から2週間以内に被告が異議を述べないときは、取下げに同意したものとみなす旨を規定している。また、同法262条2項は、本案について終局判決があった後に訴えを取り下げた者は、同一の訴えを提起することができない旨を定めており、いわゆる再訴禁止効の根拠条文である。
よくある失敗の第一は、被告が既に応訴しているにもかかわらず被告の同意取得を失念し、取下げの効力が生じないまま手続を進めてしまうことである。取下書提出前に被告の応訴状況(準備書面の提出、弁論準備手続や口頭弁論での申述の有無)を訴訟記録で確認し、応訴後であれば同意書面の取得または2週間の異議期間の経過を待つ対策が必要である。
第二の失敗は、再訴禁止効の対象となる場面であることに気づかず取下げを行い、後日同一請求を再提起できなくなることである。本案判決の言渡し後に取下げを検討する際は、判決の内容と取下げの影響を照合し、再訴禁止効が生じることを十分に理解した上で判断する対策を取るべきである。
第三の失敗は、一部取下げの範囲が特定されておらず、審理の対象が不明確になることである。請求目録や訴状の請求の趣旨と対応させて、取り下げる部分を項目ごとに特定して記載する対策により、この失敗を避けることができる。なお、取下げの効力や再訴禁止効の該当性については事案により判断が分かれ得るため、個別事案については弁護士等の専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- 事件番号・事件名・当事者名が訴訟記録と一致しているか
- 取下げの範囲(全部または一部)が請求の趣旨と対応する形で特定されているか
- 被告が本案について応訴済みか(準備書面提出・弁論準備手続・口頭弁論)を確認したか
- 応訴済みの場合、被告の同意書面を取得したか、または異議期間の経過を確認する予定か
- 本案について終局判決が既に出ているか(再訴禁止効の該当性)を確認したか
- 再訴禁止効が生じる場合、原告がその不利益を理解しているか
- 被告が複数の場合、取下げの対象となる被告を明示しているか
- 期日が近接している場合、期日対応(取消し等)について裁判所へ明示したか
- 代理人による提出の場合、訴訟委任状に取下げの特別授権が含まれているか
- 取下書の副本を被告に送達する準備ができているか
- 被告が法人の場合、送達先(代理人事務所等)を明確に指定したか
- 取下げの理由(和解成立・証拠不足等)を客観的に記載できているか
- 一部取下げの場合、残存する請求について今後の主張立証方針を確認したか
- 訴訟費用の負担について当事者間で合意または確認ができているか
- 取下げ後に別途和解調書や合意書を作成する必要がないか検討したか
- 反訴が提起されている場合、反訴の取扱いに影響がないか確認したか