M&AのDDで開示資料を電子的に閲覧させる際の利用規約です。ID管理、ダウンロード制限、閲覧ログ、終了後のデータ削除を定めます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
バーチャルデータルーム利用規約
第1部: 書式本文
【対象会社名】(以下「開設者」という。)は、【取引名称】に係るデューデリジェンスのため、電子的に開示資料を保管・閲覧させるバーチャルデータルーム(以下「本データルーム」という。)を開設する。本データルームの利用を希望する者(以下「参加者」という。)は、本規約に同意のうえアクセスIDの発行を受けるものとする。
第1条(目的) 本規約は、本データルームを通じて開示される資料(以下「開示資料」という。)の閲覧に関する条件を定めることを目的とする。
第2条(アクセスIDの発行及び管理) 1. 開設者は、参加者ごとに個別のアクセスID及びパスワードを発行する。 2. 参加者は、発行を受けたアクセスIDを第三者に共有し、又は貸与してはならない。 3. 参加者の担当者に変更が生じた場合、参加者は速やかに開設者に届け出て、アクセス権限の変更手続を受ける。
第3条(アクセス権限の範囲) 開設者は、参加者の属性(買収候補者、外部専門家等)及び手続の進捗段階に応じて、閲覧可能な開示資料の範囲を個別に設定することができる。
第4条(閲覧方法) 開示資料の閲覧は、開設者が指定する本データルームのシステム上でのみ行うものとし、参加者は開設者が別途承認した場合を除き、開示資料を外部のシステムに複製してはならない。
第5条(ダウンロード及び印刷の制限) 1. 開示資料のダウンロード及び印刷は、開設者があらかじめ許可した資料に限り、かつ開設者が定める手続に従って行うものとする。 2. 前項の許可を受けてダウンロード又は印刷した開示資料についても、参加者は当該資料を本手続の目的以外に使用してはならない。
第6条(閲覧ログの記録) 開設者は、参加者による開示資料の閲覧、検索、ダウンロード等の履歴(以下「閲覧ログ」という。)を記録し、必要に応じて参加者に照会することができる。
第7条(目的外使用の禁止) 参加者は、開示資料を【取引名称】に係る検討及び意思決定の目的以外に使用してはならず、開示資料に含まれる情報を用いて開設者又は第三者の営業活動を妨げてはならない。
第8条(秘密保持) 1. 参加者は、開示資料及び本データルームを通じて知り得た開設者の営業上又は技術上の秘密情報(不正競争防止法第2条第6項に定める営業秘密に該当する情報を含む。)を第三者に開示又は漏えいしてはならない。 2. 前項の義務は、本データルームの利用終了後も存続する。
第9条(知的財産権の帰属) 開示資料に関する著作権その他の知的財産権は、開設者又は開示資料の作成者に帰属し、本規約に基づく閲覧許諾は、これらの権利の譲渡又は利用許諾を意味しない。
第10条(個人情報を含む資料の取扱い) 開示資料に個人情報保護法第2条第1項に定める個人情報が含まれる場合、参加者は当該情報を本手続の目的の範囲内でのみ取り扱い、安全管理のために必要な措置を講ずる。
第11条(禁止行為) 参加者は、次の各号に掲げる行為を行ってはならない。 (1) アクセスIDを不正に共有し、又は権限のない者に本データルームを利用させる行為 (2) システムの脆弱性を探索し、又はシステムに不正にアクセスする行為 (3) 開示資料をスクリーンショット、写真撮影その他の方法により無断で複製する行為
第12条(利用停止) 開設者は、参加者が本規約に違反した場合又は違反のおそれがあると判断した場合、当該参加者のアクセスIDを停止し、又は失効させることができる。
第13条(データの削除及び返却) 1. 本手続の終了、中止又は参加者の脱退が確定した場合、開設者は当該参加者のアクセス権限を速やかに失効させる。 2. 参加者は、開設者が許可した手続によりダウンロードした開示資料の電子データを、開設者の指示に従い削除し、又は返却するとともに、削除又は返却が完了した旨を書面で報告する。
第14条(損害賠償) 参加者が本規約に違反したことにより開設者又は第三者に損害が生じた場合、当該参加者は自らの責任と負担においてこれを賠償する。
第15条(免責) 開設者は、システム障害その他の技術的な事由により本データルームの利用に支障が生じた場合であっても、参加者に生じた損害について、開設者の故意又は重過失による場合を除き責任を負わない。
第16条(合意管轄) 本規約に関する紛争については、〇〇地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. データルーム開設者向けの修正
A-1. アクセスログの監査権限の明確化
修正後:「開設者は、閲覧ログを分析し、通常の閲覧態様と異なる大量ダウンロード等の異常な挙動を検知した場合、参加者に事情の説明を求め、必要に応じてアクセス権限を一時停止することができる。」 一言解説: 単なるログ記録にとどまらず、異常検知時の具体的な対応権限を明記することで、情報流出の予兆を捉えた早期対応を可能にする修正である。
A-2. 複数買収候補者間の情報遮断(クリーンチーム条項)の追加
追加条文例:「開設者は、複数の買収候補者が並行して本データルームを利用する場合、候補者間で閲覧状況その他の情報が共有されないよう、候補者ごとに独立した閲覧環境を提供する。」 一言解説: 入札形式のM&Aでは候補者間の公平性確保が重要であるため、開設者は候補者ごとの情報遮断を明記する修正を行う。
B. 閲覧参加者向けの修正
B-1. 外部専門家の利用範囲の明確化
修正後:「参加者が起用する弁護士、公認会計士等の外部専門家についても、参加者と同一のアクセスIDの範囲内で本データルームを利用させることができるものとし、当該外部専門家の行為は参加者の行為とみなす。」 一言解説: DDには外部専門家の関与が不可欠であるため、参加者側は自己のチームに含まれる専門家の利用を明確に許容する修正を求める。
B-2. 削除完了報告の様式簡素化
修正後:「削除又は返却が完了した旨の報告は、担当役員の署名を要せず、担当者による電子メールでの報告をもって足りるものとする。」 一言解説: 厳格な書面報告は実務上の負担が大きいため、参加者側は報告方法を簡素化する修正を求めることができる。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本規約は、M&Aのデューデリジエンスにおいて、開示資料を電子的なプラットフォーム上で複数の関係者に閲覧させる場面で用いる。少数の当事者間で個別に資料をメール送付する程度の小規模な取引では、秘密保持契約のみで足りることが多く、本規約のような詳細なアクセス管理の枠組みは過剰となる場合がある。
根拠法令 開示資料に含まれる技術情報や顧客情報が秘密として管理され、有用性・非公知性の要件を満たす場合、不正競争防止法第2条第6項の営業秘密に該当し、不正な取得・使用・開示は同法上の不正競争(同条第1項第4号から第10号まで)として差止め・損害賠償の対象となりうる。開示資料自体の著作権については著作権法上、資料の作成者に原始的に権利が帰属するのが原則であり、閲覧許諾は複製権・公衆送信権等の権利移転を伴わない。開示資料に個人データが含まれる場合は、個人情報保護法上の安全管理措置(同法第23条)及び委託先・提供先における取扱いに関する規律にも留意する必要がある。
実務でよくある失敗と対策 第一に、アクセスID発行後の担当者交代が反映されず、退職者のIDが有効なまま残る失敗がある。第2条第3項のような変更届出義務の明記が対策となる。第二に、ダウンロードを許可した資料について、参加者側での目的外使用や社内共有範囲の逸脱が生じる失敗がある。第7条及び第13条のように目的外使用の禁止と終了後の削除義務を明記することが対策となる。第三に、複数の買収候補者が並行してデータルームを利用する入札案件で、候補者間の情報が意図せず共有される失敗があり、A-2のような情報遮断の仕組みが対策となる。
アクセス管理の具体的な設計や営業秘密該当性の判断は個別の事実関係によって異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] アクセスIDの発行対象者及び発行手続を明確にしたか
- [ ] 参加者ごとの閲覧権限範囲の設定方法を定めたか
- [ ] ダウンロード・印刷の許可対象資料及び手続を定めたか
- [ ] 閲覧ログの記録範囲及び照会権限を定めたか
- [ ] 外部専門家によるデータルーム利用の取扱いを明確にしたか
- [ ] 複数候補者が並行利用する場合の情報遮断の要否を検討したか
- [ ] 秘密保持義務の存続期間を明記したか
- [ ] 手続終了後のデータ削除・返却の方法及び報告様式を定めたか
- [ ] 禁止行為(不正共有、スクリーンショット等)を具体的に列挙したか
- [ ] 違反時のアクセス停止手続及び損害賠償の取扱いを定めたか