訴訟外で紛争を解決し残債務を分割払とする和解契約書。民法第695条の和解と第137条の期限の利益喪失を組み合わせ、回収の実効性を高めます。

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和解による分割弁済契約書

第1部: 書式本文

【債権者商号】(以下「甲」という。)と【債務者商号】(以下「乙」という。)とは、両者間で生じた紛争を訴訟外において解決することに関し、次のとおり和解契約(以下「本和解契約」という。)を締結する。

第1条(紛争の経緯) 甲乙間には、【〇〇年〇〇月〇〇日】付【契約名】に関し、乙の甲に対する債務の存否及び金額について争いが生じていた(以下「本件紛争」という。)。

第2条(和解金額の確定) 甲及び乙は、本件紛争を解決するため、乙が甲に対し金【 】円(以下「本件和解金」という。)の支払義務を負うことを相互に確認する。本和解は民法第695条に定める和解契約に該当し、甲乙は本件紛争に関し互いに譲歩したことを確認する。

第3条(分割弁済の方法) 乙は、本件和解金につき、【〇〇年〇〇月】から毎月【〇〇日】限り、金【 】円ずつを【 】回にわたり、甲の指定する口座に振り込む方法により分割弁済する。

第4条(和解の確定効) 甲及び乙は、本和解契約の成立により、本件紛争に関する当事者間の法律関係が本和解契約の内容のとおり確定することを確認し、民法第696条に基づき、本和解契約に反する事実が判明した場合であってもその効力を争わない。

第5条(期限の利益喪失) 乙が分割金の支払を【2】回以上連続して遅滞したときは、乙は甲の通知催告により当然に期限の利益を喪失し、未払残額全額(第6条の期限の利益喪失時加算額を含む。)を直ちに一括して支払う。

第6条(期限の利益喪失時の加算) 前条により期限の利益を喪失したときは、乙は未払残額に加え、和解による軽減前の当初請求額との差額のうち金【 】円を違約金として支払う。

第7条(遅延損害金) 乙が分割金の支払を遅滞したときは、遅滞金額に対し年【 】パーセント(利息制限法第4条の上限の範囲内)の割合による遅延損害金を支払う。

第8条(公正証書化) 甲及び乙は、本和解契約の内容につき、甲の求めがあるときは強制執行認諾文言付き公正証書を作成することに協力する。

第9条(清算条項) 甲及び乙は、本件紛争に関し、本和解契約に定めるもののほか、名目の如何を問わず何らの債権債務のないことを相互に確認する。

第10条(口外禁止) 甲及び乙は、本和解契約の成立及びその内容について、法令に基づく開示が必要な場合を除き、正当な理由なく第三者に開示しない。

第11条(協議及び合意管轄) 本和解契約に関する紛争については、【〇〇地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

以上を証するため本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各自1通を保有する。

【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】

(甲) 住所:【     】 商号:【     】 代表者:【     】 印 (乙) 住所:【     】 商号:【     】 代表者:【     】 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 債権者向け書き換え

A-1. 訴訟提起を検討していたが訴訟外で早期解決を図る場面

第8条修正例:「甲及び乙は、本和解契約締結後【2】週間以内に、公証役場において強制執行認諾文言付き公正証書を作成する。乙が正当な理由なく協力しないときは、甲は訴訟提起その他の法的手続をとることができる。」 解説: 訴訟外和解は債務名義とならないため、公正証書化の期限を区切り、不履行時の対応も明記して実効性を確保する。

A-2. 分割弁済中の乙の資産状況を継続的に把握したい場面

第3条追加項目:「乙は、本和解契約の履行期間中、甲の求めに応じ、資産及び収支の状況を示す資料を提出する。」 解説: 長期の分割弁済では乙の資力悪化リスクがあるため、途中経過のモニタリング条項を追加する。

B. 債務者向け書き換え

B-1. 一時的な収入減少に配慮した分割弁済を希望する場面

第3条修正例:「乙は、初回から【6】回分は金【 】円、以後は金【 】円ずつ分割弁済する。」 解説: 当初の負担を軽減する段階的な弁済額の設定により、履行可能性を高める。

B-2. 期限の利益喪失時の違約金負担を軽減したい場面

第6条修正例:「期限の利益喪失時の加算額は、未払残額の【10】パーセントを上限とする。」 解説: 違約金額に上限を設けることで、一時的な支払遅延による過大な負担を回避する。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面・使ってはいけない場面 本書式は、既に発生している金銭債務の存否又は金額について当事者間で争いがあり、訴訟提起前又は訴訟提起後に訴訟外で和解し、確定した和解金額を分割で弁済する場面で用いる。争いのない確定した既存債務について単に支払方法を取り決めるにすぎない場合は、債務弁済契約書を用いる方が実態に即している。また、裁判所における訴訟上の和解(民事訴訟法第267条)や即決和解(同法第275条)を行う場合は、それぞれ裁判所の手続に従う必要があり、本書式はあくまで裁判外の和解を対象とする。

根拠法令 和解契約は民法第695条に基づき、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって効力を生じる契約である。民法第696条は、和解契約成立後に当事者の一方が和解前に有していたと主張する権利が事実と異なることが判明しても、和解の効力に影響を及ぼさない旨を定める(和解の確定効)。この点が、単なる債務の確認・弁済方法の合意にすぎない債務弁済契約書との重要な相違点である。分割弁済中の遅延損害金は利息制限法第4条の上限規制の適用を受ける。強制執行認諾文言付き公正証書は民事執行法第22条第5号により債務名義となる。

実務でよくある失敗と対策 第一に、和解の要素である「互譲」の事実を明記せず、単なる債務承認と区別がつかない契約書になり、和解特有の確定効(民法第696条)を主張できなくなる失敗がある。第2条のように互譲の事実と当初請求額との差異を記録する。第二に、和解金額のみを定め、不履行時の措置(期限の利益喪失、違約金)を定めずに、乙が支払を怠っても迅速な対応ができない失敗がある。第5条・第6条のように具体的な措置を明記する。第三に、口外禁止条項を欠き、和解内容が取引先等に知られ乙の信用に影響する失敗がある。第10条のように口外禁止を明記する。第四に、清算条項の範囲を狭く定め、本件紛争に関連する別の請求(遅延損害金や弁護士費用等)が清算対象から漏れ、後日別途請求される失敗もある。清算条項は名目の如何を問わず債権債務がないことを確認する包括的な表現とすることが望ましい。訴訟提起の要否や公正証書化のタイミングについては専門家に確認することが望ましい。

和解による解決と訴訟提起との比較 訴訟外の和解は、訴訟提起に伴う時間的・金銭的コストを避けつつ紛争を早期に解決できる利点がある一方、和解契約自体は債務名義とならないため、乙が任意に履行しない場合には改めて訴訟提起や強制執行認諾文言付き公正証書の作成が必要になる。争いの内容が複雑で事実関係の対立が大きい場合や、時効の管理が重要な場合には、訴訟上の和解や支払督促といった裁判所を介する手続の方が確実性が高いこともあるため、紛争の性質や乙の資力状況を踏まえて手段を選択することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 本件紛争の経緯及び争いの内容を具体的に記載したか
  • [ ] 互いに譲歩した事実(当初請求額との差異等)を確認できるか
  • [ ] 和解金額及び分割弁済のスケジュールを明確にしたか
  • [ ] 遅延損害金の利率が利息制限法第4条の上限を超えていないか
  • [ ] 期限の利益喪失事由及び違約金の有無・上限を定めたか
  • [ ] 強制執行認諾文言付き公正証書化の要否とその手続を検討したか
  • [ ] 清算条項により本件紛争に関する紛争の蒸し返しを防止したか
  • [ ] 口外禁止条項の要否を検討したか
  • [ ] 訴訟上の和解・即決和解との使い分けを確認したか