サイトの著作権・ドメイン・会員データを一括譲渡する契約書。会社法第467条の株主総会決議の要否と個人情報保護法第27条第5項第2号の承継を整理。

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Webサイト事業譲渡契約書

第1部: 書式本文

〇〇〇〇(以下「甲」という。譲渡人)と〇〇〇〇(以下「乙」という。譲受人)とは、甲が運営するウェブサイト「【サイト名/URL】」に係る事業(以下「本事業」という。)の譲渡について、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(事業譲渡の合意) 甲は、本契約に定める条件に従い、本事業を構成する別紙「譲渡資産目録」記載の資産及び権利を乙に譲渡し、乙はこれを譲り受ける。

第2条(譲渡対象資産の範囲) 譲渡対象資産は、次の各号のものとし、詳細は譲渡資産目録のとおりとする。 一 本ウェブサイトのソースコード、デザイン及び掲載コンテンツに係る著作権(著作権法第21条から第28条までの権利を含む。) 二 本ウェブサイトに使用するドメイン名の登録者名義 三 本ウェブサイトの会員及び利用者に関する情報(以下「会員データ」という。) 四 本事業に関する屋号、商標その他の標章 五 本事業に関して締結されているサーバー・システム利用等の契約上の地位(相手方の承諾が得られたものに限る。)

第3条(譲渡対価及び支払方法) 乙は、甲に対し、本事業の譲渡対価として金【 】円(消費税別)を、別紙に定める方法及び時期により支払う。

第4条(クロージングの前提条件) 乙の対価支払義務は、次の各号の事項が全て充足されることを条件とする。 一 甲において本契約の締結及び履行につき必要な会社法上の手続(株主総会決議その他)が完了していること 二 会員データの承継について本契約第7条に定める措置が完了していること 三 ドメイン名の移転手続に必要な認証コードその他の情報が乙に提供されていること

第5条(株主総会決議等の手続) 1. 甲は、本事業の譲渡が甲の事業の全部又は重要な一部の譲渡に該当し、会社法第467条第1項の定めるところにより株主総会の特別決議(同法第309条第2項第11号)を要する場合、当該決議を効力発生日の前日までに得るものとする。 2. 甲は、本事業の譲渡が同法第467条第1項第2号にいう重要な一部の譲渡に該当するか否かを判断するに当たり、本事業の帳簿価額が甲の総資産額に占める割合その他の判断要素を乙に開示する。

第6条(表明保証) 甲は、乙に対し、本契約締結日及び効力発生日において、次の各号の事実を表明し、保証する。 一 譲渡対象資産について第三者の権利(著作権、商標権、担保権等)による制限が付されていないこと 二 会員データの取得及び保管が個人情報保護法の定める手続に従って行われてきたこと 三 本事業に関して重大な法令違反又は紛争が存在しないこと

第7条(会員データの承継) 1. 甲は、乙への会員データの承継について、個人情報保護法第27条第5項第2号の定めるところにより事業の承継に伴って個人情報が提供される場合に該当することを前提に、承継後の乙における利用目的が甲における利用目的の範囲を超えないよう、承継前の利用目的を乙に開示する。 2. 乙は、承継した会員データを、甲において特定されていた利用目的の範囲内で取り扱うものとし、当該範囲を超えて利用しようとする場合は、あらかじめ本人の同意を取得する。 3. 甲は、効力発生日までに、会員規約又はプライバシーポリシー上、事業譲渡に伴う個人データの提供が予定されている旨を確認し、必要に応じて利用者への周知を行う。

第8条(ドメイン名及びシステムの移転) 甲は、第2条第2号のドメイン名について、効力発生日以降速やかにレジストラでの移転手続に必要な情報を乙に提供し、乙はこれに基づき移転手続を行う。サーバー及びシステムの利用契約上の地位の移転については、契約の相手方の承諾取得に甲乙協力して当たる。

第9条(引継期間中の運営) 甲は、効力発生日から【 】日間、乙が本事業を円滑に運営できるよう、システムの操作方法、コンテンツ更新手順その他の引継ぎに必要な事項について乙に協力する。引継ぎ協力の対価は別紙のとおりとする。

第10条(競業避止) 甲は、効力発生日から【 】年間、本事業と実質的に競合するウェブサイト事業を自ら営み、又は第三者にこれを営ませてはならない。

第11条(契約不適合責任) 譲渡対象資産に本契約の内容に適合しない事実が判明した場合、甲は乙に対し、乙が知った日から【 】か月以内に請求を受けたときに限り、修補、代金減額又は損害賠償の責任を負う。

第12条(合意管轄) 本契約に関して甲乙間に生じた紛争は、〇〇地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 譲渡人向けの修正

A-1. 株主総会決議の要否判断に関する免責

修正後:「乙は、甲が開示した資料に基づき会社法第467条第1項の適用の要否を自ら確認したうえで本契約を締結するものとし、当該判断の誤りについて甲は乙に対し責任を負わない。」 一言解説: 事業の重要性の判断は甲乙双方の資産状況にも関わるため、開示を前提に判断責任を乙にも分担させる修正である。

A-2. 引継期間の協力義務の上限設定

修正後:「甲の引継ぎ協力は、通常の営業時間内における質問対応及び操作説明に限るものとし、乙からの追加開発又はコンテンツ改修の要請には応じない。」 一言解説: 引継ぎ協力の範囲が際限なく拡大することを防ぎ、譲渡人の負担を明確な範囲にとどめる修正である。

B. 譲受人向けの修正

B-1. 会員データの利用目的の継続性確保

修正後:「甲は、効力発生日の30日前までに、承継対象となる会員データについて甲が取得時に特定していた利用目的の全文を書面で乙に開示し、当該開示内容と会員規約上の記載に齟齬がないことを確認する。」 一言解説: 個人情報保護法第27条第5項第2号による事業承継時の第三者提供の適用除外を受けるためには、承継後も利用目的の同一性を保つ必要があり、その前提資料を確実に取得する修正である。

B-2. 会社法上の手続未了時の解除権

追加条文例:「甲において第5条の株主総会決議その他必要な手続が効力発生日の前日までに完了しない場合、乙は本契約を無催告で解除することができる。」 一言解説: 手続の瑕疵により事業譲渡の効力そのものが争われるリスクを避けるため、手続未了を解除事由として明記する修正である。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、ウェブサイトの著作権、ドメイン名、会員データ及び関連する契約上の地位をひとまとまりの事業として一括して譲渡する場面に用いる。ドメイン名の名義移転のみを行う場合は、より簡素なドメイン名譲渡契約書を用いる方が適切であり、逆に会社そのものの経営権を移転する場合には株式譲渡契約書等、別の類型の書式を検討する必要がある。

根拠法令 株式会社が事業の全部又は重要な一部を譲渡する場合、会社法第467条第1項第1号及び第2号により、原則として同法第309条第2項第11号の株主総会特別決議を要する。譲渡対象事業が「重要な一部」に該当するかは、譲渡資産の帳簿価額が総資産額の5分の1を超えるか否か等を基準に判断される(同法第467条第1項第2号かっこ書)。会員データの承継については、個人情報保護法第27条第5項第2号が、事業の承継に伴って個人データが提供される場合を本人の同意を要しない第三者提供に当たらないものとして整理しており、これに該当するためには承継後も利用目的の範囲を変更しないことが前提となる。ウェブサイトのコンテンツやソースコードの著作権については著作権法第21条以下の各支分権の帰属を明確にする必要がある。

実務でよくある失敗と対策 第一に、事業譲渡の規模が会社法第467条第1項の株主総会決議を要する水準であるにもかかわらず、決議を経ずに契約を締結してしまい、後日株主から譲渡の効力を争われる失敗がある。第5条及びB-2のように、決議の要否確認と未了時の解除権を組み合わせることが対策となる。第二に、会員データを承継したものの、譲受人が承継前と異なる目的でこれを利用してしまい、個人情報保護法違反を指摘される失敗がある。第7条及びB-1のように、承継前の利用目的を正確に引き継ぎ、その範囲内での利用にとどめることが対策となる。第三に、ドメイン名やサーバー契約の移転手続が後回しにされ、譲渡対価の支払後もサイトが実際には稼働しない期間が生じる失敗がある。第4条のクロージング前提条件に手続完了を組み込むことが対策となる。

事業譲渡に伴う株主総会決議の要否や個人データ承継の適法性は個々の事業規模・取得経緯によって判断が異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 譲渡対象資産(著作権・ドメイン名・会員データ・契約上の地位)を目録で特定したか
  • [ ] 会社法第467条第1項に基づく株主総会決議の要否を判断したか
  • [ ] 決議が必要な場合、効力発生日までの決議取得スケジュールを定めたか
  • [ ] 会員データの承継が個人情報保護法第27条第5項第2号の要件を満たすか確認したか
  • [ ] 承継後の会員データの利用目的が承継前と同一の範囲にとどまるか確認したか
  • [ ] ドメイン名移転及びサーバー契約上の地位移転の手続主体を定めたか
  • [ ] クロージングの前提条件を明確に定めたか
  • [ ] 引継期間中の協力範囲及び対価を定めたか
  • [ ] 競業避止義務の期間及び地理的範囲が過度に広範でないか確認したか
  • [ ] 契約不適合責任の請求期間を定めたか