離婚後の子の養育費の額と支払期間を定め強制執行認諾付公正証書にする原案。民法第766条の子の監護費用の分担を根拠に条項を組み立てます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
養育費に関する合意書(公正証書原案)
第1部: 書式本文
監護親〇〇〇〇(以下「甲」という。)と非監護親〇〇〇〇(以下「乙」という。)は、甲乙間の子〇〇〇〇(【生年月日】生、以下「本件子」という。)の養育費について、次のとおり合意(以下「本合意」という。)し、これを公正証書とすることに合意する。
第1条(養育費の支払義務) 乙は、甲に対し、本件子の養育費として、民法第766条第1項に基づき、次条以下に定めるとおり支払う。
第2条(養育費の額) 乙は、甲に対し、本件子が満【年齢】歳に達する日の属する月まで、毎月金【養育費額】円を支払う。
第3条(支払方法) 乙は、前条の養育費を、毎月【支払期日】限り、甲が指定する【金融機関名・支店名・口座番号】の口座に振り込んで支払う。振込手数料は乙の負担とする。
第4条(増減額改定) 乙の失職、傷病その他収入の著しい減少があったとき、又は本件子の進学等により特別の費用を要するときは、甲乙は養育費の額について再協議する。
第5条(特別費用の分担) 本件子の入学金、高額な医療費その他通常の養育費で賄いきれない特別費用が生じた場合、甲乙は、その負担割合について別途協議する。
第6条(強制執行認諾) 乙は、本合意に基づく金銭債務の履行を怠ったときは、直ちに強制執行に服する旨を認諾する。
第7条(公正証書の作成) 甲及び乙は、本合意の内容を、民事執行法第22条第5号に定める強制執行認諾文言付きの公正証書として作成するため、【公証役場名】において共同で嘱託手続を行う。
第8条(通知義務) 甲及び乙は、住所、勤務先又は連絡先に変更があったときは、遅滞なく相手方に通知する。
第9条(面会交流との関係) 乙の養育費支払義務は、甲乙間の面会交流の実施状況にかかわらず独立して履行されるものとする。
【合意日】
甲: 【住所・氏名】 印 乙: 【住所・氏名】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 監護親(受領者)向けの修正
A-1. 未払時の遅延損害金条項
追加条文例:「乙が養育費の支払を怠った場合、甲は乙に対し、未払額について年【利率(法定利率の範囲内)】%の割合による遅延損害金を請求できる。」 一言解説: 未払が生じた場合の心理的抑止と回収額の確保のため、監護親側は遅延損害金の定めを明記する修正を行う。
A-2. 養育費と別に大学進学費用を明記
追加条文例:「本件子が大学等へ進学した場合、乙は入学金及び授業料について、甲乙の収入割合に応じた金額を別途負担する。」 一言解説: 標準的な養育費算定表は大学進学費用を十分に織り込んでいないことが多いため、監護親側はあらかじめ進学費用の分担を明記する修正を行う。
B. 非監護親(支払義務者)向けの修正
B-1. 収入減少時の減額協議の実効性確保
修正後:「乙の収入が離婚時と比較して【割合】%以上減少したことを証する資料(源泉徴収票等)を提示した場合、甲は減額協議に誠実に応じるものとし、正当な理由なく協議を拒むことができない。」 一言解説: 減額改定条項が形式的なものにとどまり実際には協議に応じてもらえない事態を避けるため、支払義務者側は誠実協議義務を具体化する修正を行う。
B-2. 支払終了時期の明確化
修正後:「乙の養育費支払義務は、本件子が満20歳に達する日の属する月、大学等に進学した場合は満22歳に達した後最初の3月まで、のいずれか【甲乙合意する基準】とする。」 一言解説: 支払終了時期(成年年齢と経済的自立時期のいずれを基準とするか)が曖昧だと紛争化しやすいため、支払義務者側は基準を明確化する修正を行う。
B-3. 公正証書作成費用の分担
追加条文例:「本合意を公正証書とするために要する公証人手数料その他の費用は、甲乙が折半して負担する。」 一言解説: 公正証書化は主に監護親側の回収の実効性を高める措置であるため、費用負担が一方的に片寄らないよう支払義務者側が分担を明記する修正である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、離婚に伴い定める養育費の内容を、強制執行認諾文言付きの公正証書として作成することを前提に整理する場面で用いる。既に離婚協議書全体を作成している場合には、養育費部分のみを別途本書式で重複して定める必要はなく、離婚協議書内の養育費条項をそのまま公正証書化すれば足りることが多い。他方、離婚成立後に養育費についてのみ改めて取り決める場合や、婚姻費用分担の合意ではなく養育費に特化して合意する場合には、本書式が適合する。
根拠法令 養育費を含む子の監護に関する事項は民法第766条第1項に規定され、父母の協議により定めるものとされ、協議が調わないとき又は協議ができないときは家庭裁判所が定める(同条第2項)。いずれの場合も子の利益を最も優先して考慮しなければならない(同条第1項後段)。本合意を強制執行認諾文言付きの公正証書とする意義は、民事執行法第22条第5号にあり、金銭の一定の額の支払を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述(執行認諾文言)が記載されているものは、それ自体が債務名義となり、別途訴訟や調停を経ることなく強制執行(給与差押え等)を申し立てることができる。この点が私文書による合意書との最大の違いである。
実務でよくある失敗と対策 第一に、養育費の合意を私文書のみで作成し、支払が滞った際に改めて調停や訴訟を経なければ強制執行できず、回収に長期間を要する失敗がある。第7条のように当初から公正証書として作成することが対策となる。第二に、増減額改定条項を設けたものの抽象的な文言にとどまり、実際に収入変動が生じても相手方が協議に応じない失敗がある。B-1のように誠実協議義務を具体化し、資料提示による協議開始のトリガーを明確にすることが対策となる。第三に、大学進学等の特別費用について何ら取り決めをせず、進学時期に改めて大きな負担割合を巡る対立が生じる失敗がある。A-2のように進学費用の分担をあらかじめ合意しておくことが対策となる。
養育費の適正額の算定は父母双方の収入や子の人数・年齢により異なる算定表を用いるのが一般的であるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。また、公正証書の作成には甲乙双方が公証役場に出頭する必要があるのが原則であり、遠方居住等の事情がある場合には委任状による代理出頭や、テレビ電話方式の利用可否についても事前に公証役場へ確認しておくと手続がスムーズに進む。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 養育費の月額を養育費算定表等を参考に合理的に設定したか
- [ ] 支払期間の終期(成年到達・大学卒業等)の基準を明確にしたか
- [ ] 増減額改定の要件及び協議手続を具体的に定めたか
- [ ] 大学進学費用等の特別費用の分担方法を定めたか
- [ ] 未払時の遅延損害金の定めを設けたか
- [ ] 強制執行認諾文言付き公正証書として作成する準備をしたか
- [ ] 公証役場への嘱託に必要な書類(戸籍謄本、印鑑証明書等)を確認したか
- [ ] 振込先口座及び振込手数料の負担者を明記したか
- [ ] 住所・連絡先変更時の通知義務を定めたか
- [ ] 面会交流の実施と養育費支払義務の独立性を確認したか