金属くずや古紙などを有価物として売却する契約書です。廃棄物該当性の判断要素を踏まえ、価格、引取方法、品質基準を定めます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
再生資源(有価物)売買契約書
第1部: 書式本文
再生資源(有価物)売買契約書
【排出企業名称】(以下「甲」という。)と【再生事業者名称】(以下「乙」という。)は、甲の事業活動に伴って生じる再生資源の売買に関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的) 甲は乙に対し、甲の【事業場名称】から生じる【金属くず・古紙・空き瓶その他品目】(以下「本物件」という。)を売り渡し、乙はこれを買い受ける。
第2条(有価物であることの確認) 1. 甲及び乙は、本物件が取引価値を有し、廃棄物処理法第2条第1項に定める廃棄物に該当しないものであることを相互に確認する。 2. 前項の確認にあたり、甲及び乙は本物件の性状、通常の取扱形態、取引価値の有無及び当事者の占有・処分の意思等の事情を踏まえるものとする。
第3条(取引形態及び対価) 1. 本物件の引渡しは有償とし、乙は甲に対し本物件【 】キログラムあたり金【 】円(消費税別)を支払う。 2. 前項の単価は、【指標となる市況指数・業界相場等】を参考に、甲乙協議のうえ月ごとに見直すことができる。
第4条(逆有償取引の禁止) 1. 本物件の取引にあたり、甲が乙に対し処理料等の名目で金銭を支払う逆有償の取引形態としないものとする。 2. 市況の変動等により本物件の取引価格が実質的に逆有償となるおそれが生じたときは、甲乙は速やかに協議し、取引形態の見直し又は本契約の一時停止について検討する。
第5条(品質基準) 1. 本物件は、【異物混入率○%以下・水分率○%以下等の具体的基準】を満たすものとする。 2. 乙は、引渡しを受けた本物件が前項の品質基準を著しく下回ると認めるときは、受入れを拒否し、又は甲との協議により減額もしくは追加選別費用を請求することができる。
第6条(引渡方法及び場所) 甲は、本物件を【引渡場所】において乙又は乙の指定する運搬者に引き渡す。運搬に要する費用は【甲・乙いずれの負担とするかを明記】とする。
第7条(数量の確認) 本物件の数量は、【引渡場所に設置された計量機】による計量値をもって確定する。甲は、乙の計量結果に疑義があるときは、自らの立会いのもとで再計量を求めることができる。
第8条(所有権の移転時期) 本物件の所有権は、乙が第6条の引渡場所において本物件を受領した時に甲から乙へ移転する。
第9条(用途及び転売の取扱い) 乙は、本物件を再生資源として利用又は転売するものとし、廃棄物として処理する必要が生じた場合には、甲に対しその理由及び処理方法を報告する。
第10条(記録の保存) 甲及び乙は、本物件の取引数量、単価及び引渡年月日を記録した帳票を作成し、それぞれ【 】年間保存する。
第11条(契約期間) 本契約の有効期間は【契約締結日】から【 】年間とする。期間満了の【 】か月前までに甲乙いずれからも書面による終了の申出がないときは、同一条件で1年間自動更新するものとし、以後も同様とする。
第12条(解除) 甲又は乙が本契約に違反し、相当の期間を定めた催告後もこれが是正されないとき、又は本物件の取引実態が逆有償に該当すると合理的に認められるときは、相手方は本契約を解除することができる。
第13条(協議事項) 本契約に定めのない事項について疑義が生じたときは、甲乙誠実に協議して解決する。
以上を証するため本契約書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ各1通を保有する。
【契約締結日】 甲(売主)【住所・商号・代表者名・印】 乙(買主)【住所・商号・代表者名・印】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 排出企業(甲・売主)の立場からの修正例
A-1. 逆有償化リスクからの防御条項 Before: 「逆有償となるおそれが生じたときは甲乙協議する。」 After: 「本物件の市況単価が【 】円を下回り、乙から提示された条件が実質的に甲の金銭支払いを伴う逆有償取引となる場合、甲は当該条件による引渡しを拒否することができ、乙はこれを理由に甲に対し損害賠償その他の請求を行わない。」 一言解説: 逆有償取引は廃棄物該当性が肯定される方向に働く重要な要素であるため、甲が一方的に取引を停止できる権利を明記し、意図せず廃棄物処理業許可のない乙に廃棄物処理を委託した状態に陥ることを防ぐ。
A-2. 乙による用途外処分時の甲への通知義務の強化 Before: 「乙は廃棄物として処理する必要が生じた場合、甲に理由及び処理方法を報告する。」 After: 「乙が本物件を再生資源として利用できず廃棄物として処理する必要が生じたときは、乙は当該事実発覚後【 】営業日以内に甲に書面で通知し、処理を委託する廃棄物処理業者の名称及び許可番号を報告する。甲は当該報告内容について記録を保存する。」 一言解説: 有価物として売却したはずの物が実際には廃棄物として処理されていた場合、排出者としての実質的な処理責任が問われる可能性があるため、後日の説明資料として通知・記録の仕組みを整える。
B. 再生事業者(乙・買主)の立場からの修正例
B-1. 品質基準未達物の受入拒否権の明確化 Before: 「品質基準を著しく下回ると認めるときは受入れを拒否できる。」 After: 「本物件の異物混入率が第5条第1項の基準を超えるときは、乙は受入れを拒否し、又は受け入れる場合には超過分に相当する選別費用を単価から控除して精算することができる。控除額の算定根拠は乙が甲に開示する。」 一言解説: 「拒否できる」とのみ定めると受入れ後の精算方法が不明確になるため、控除方式による柔軟な対応を可能にしつつ算定根拠の開示により透明性を確保する。
B-2. 計量方法に関する乙の実務負担の軽減 Before: 「甲は乙の計量結果に疑義があるときは再計量を求めることができる。」 After: 「甲が再計量を求めるときは、引渡日から【 】日以内に書面で申し出るものとし、当該申出に要する立会い費用は甲の負担とする。ただし、乙の計量機器が計量法上の検定を受けていないことが判明したときはこの限りでない。」 一言解説: 無期限の再計量請求権を認めると乙の業務が不安定になるため、申出期間と費用負担を明確にしつつ、計量機器の適法性に問題がある場合の例外を残す。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使ってはいけない場面 本書式は、金属くず、古紙、空き瓶その他の再生資源を、廃棄物ではなく有価物として売却する取引で用いる。取引価格が名目上有償であっても、選別費用や運搬費用等を考慮した実質的な収支が排出企業側の負担となる場合(逆有償)は、廃棄物として扱われる可能性があるため、そのような取引実態がある場合は本書式ではなく産業廃棄物処理委託契約書の使用を検討すべきである。
根拠法令 廃棄物処理法第2条第1項は、廃棄物を「占有者が自ら利用し、又は他人に有償で譲渡することができないために不要になった物」と定義しており、いわゆる「おから決定」(最高裁平成11年3月10日決定)以降の裁判例及び環境省通知(平成25年3月29日付け環廃産発第1303299号等)では、廃棄物該当性を物の性状、排出の状況、通常の取扱形態、取引価値の有無、占有者の意思という5要素を総合的に勘案して判断するとされている。本契約書における有償性、品質基準及び用途の明記は、これらの要素を契約上明確にする目的を持つ。もっとも、これらの要素の総合判断は個別の取引実態に即してなされるものであり、契約書の記載のみで廃棄物該当性が確定的に否定されるとは限らない点に留意が必要である。
よくある失敗と対策 第一に、市況の下落により実質的に逆有償となっているにもかかわらず、契約書の文言上は有償を維持し続け、後日廃棄物として扱われるべき取引であったと指摘される例がある。第4条及びA-1のように、逆有償化した場合の取引停止権をあらかじめ定めておくことが対策になる。第二に、有価物として引き渡した物が実際には再生利用されず廃棄物として処分されていたことが排出企業側に伝わらず、排出企業の管理体制が問われる例がある。第9条及びA-2のように用途外処分時の通知・記録の仕組みを設けることが有効である。第三に、品質基準の記載が抽象的であるため受入れの可否や精算基準をめぐって紛争になる例がある。第5条及びB-1のように数値基準と精算方法を具体的に定めることが望ましい。個別の事案については弁護士・行政書士等の専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 本物件が取引価値を有する有価物であるか、廃棄物該当性の5要素に照らして確認したか
- [ ] 取引が実質的に逆有償となっていないか市況を確認したか
- [ ] 単価の算定根拠(市況指数・相場等)を明記したか
- [ ] 品質基準(異物混入率・水分率等)を数値で定めたか
- [ ] 品質基準未達時の受入拒否又は精算方法を定めたか
- [ ] 数量確認の方法(計量機器・計量法検定の有無)を確認したか
- [ ] 所有権移転時期を明記したか
- [ ] 乙が本物件を用途外(廃棄物として処理)とする場合の通知義務を定めたか
- [ ] 取引記録の保存期間を定めたか
- [ ] 逆有償化した場合の契約終了・解除条項を定めたか