委託先へ原材料や部品を有償で支給する際の契約書。下請法第4条第2項第1号が禁じる有償支給原材料等の対価の早期決済に触れ、支給価格と相殺時期を定めます。

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有償支給契約書

第1部: 書式本文

有償支給契約書

【親事業者商号】(以下「甲」という。)と【下請事業者商号】(以下「乙」という。)は、甲が乙に対し製造委託に用いる原材料又は部品を有償で支給する取引について、以下のとおり有償支給契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(目的)

本契約は、甲が乙に対し、甲乙間の製造委託取引に用いる原材料又は部品(以下「支給材」という。)を有償で支給し、乙がこれを用いて加工又は製造した製品(以下「支給材使用製品」という。)を甲に納入することに関する権利義務を定めることを目的とする。

第2条(定義)

(1)「支給価格」とは、甲が乙に支給材を売り渡す対価をいう。 (2)「下請代金」とは、甲が乙に対し支給材使用製品の製造委託の対価として支払う代金をいう。

第3条(支給材の売買)

  1. 甲は、乙に対し個別契約で定める数量の支給材を売り渡し、乙はこれを買い受ける。
  2. 支給材の所有権は、乙への引渡し時に甲から乙に移転する。

第4条(支給価格の決定)

  1. 支給価格は、甲の仕入価格に通常必要な諸経費を加えた額を基準とし、甲乙協議のうえ定める。
  2. 甲は、乙が他から同種の原材料を通常の取引条件で調達する場合の価格と比べて著しく高い価格を支給価格として定めてはならない。

第5条(支給材を用いた製造委託)

甲は、乙に対し支給材を用いた製品の製造を委託し、乙はこれを受託する。製造委託の内容(品目、数量、加工賃)は個別契約に定める。

第6条(支給材代金の相殺)

  1. 甲は、乙に対して有する支給材代金債権をもって、乙に対して負担する下請代金債務と相殺することができる。
  2. 前項の相殺は、当該支給材を用いて製造される支給材使用製品に係る下請代金の支払期日以後に行うものとし、当該支払期日より早い時期に相殺し、又は当該支払期日より早い時期に支給材代金の支払を乙に求めてはならない。
  3. 甲は、乙が当該支給材を用いた支給材使用製品を用いる下請代金よりも多い金額又は早い時期に支給材代金の決済を求める相殺その他の方法により、乙の利益を不当に害してはならない。

第7条(下請代金の支払期日)

甲は、下請代金支払遅延等防止法第2条の2の規定に従い、支給材使用製品の給付を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に定めた支払期日までに下請代金を支払う。

第8条(支給材の在庫管理)

  1. 乙は、支給材を善良な管理者の注意をもって保管し、甲の求めに応じて在庫数量を報告する。
  2. 甲及び乙は、【 】か月ごとに支給材の棚卸しを行い、帳簿上の数量と実在庫数量を照合する。

第9条(未使用支給材の取扱い)

  1. 本契約が終了した場合、乙は未使用の支給材を甲に返還する。
  2. 甲は、前項により返還を受けた支給材について、乙が支払済みの支給価格相当額を乙に返金する。

第10条(支給材の品質保証)

甲は、乙に支給する支給材が通常の品質を有することを保証する。支給材の欠陥に起因して支給材使用製品に不良が生じた場合、甲乙協議のうえ負担を定める。

第11条(秘密保持)

甲及び乙は、本契約の履行を通じて知り得た相手方の営業上・技術上の秘密情報を、本契約の目的以外に使用し、又は第三者に開示してはならない。

第12条(契約期間及び解除)

本契約の有効期間は締結日から【 】年間とし、当事者は相手方に重大な契約違反があり催告後是正されない場合、本契約を解除できる。

第13条(反社会的勢力の排除)

甲及び乙は、自己が反社会的勢力に該当せず、反社会的勢力と関係を有しないことを表明し、保証する。

第14条(合意管轄)

本契約に関する紛争については、【 】地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 支給する親事業者向け修正パターン

A-1. 第6条(支給材代金の相殺)の相殺時期に関する記載を維持しつつ運用手順を明記

「甲は、支給材代金債権と下請代金債務の相殺を行うときは、相殺の対象となる支給材使用製品の下請代金の支払期日及び相殺額を記載した明細書を乙に交付する。」との一文を追加し、相殺の透明性を確保する。相殺時期そのものを支払期日より前倒しする修正は、下請法第4条第2項第1号が禁止する有償支給原材料等の対価の早期決済に該当するため行うべきではない。

A-2. 第9条(未使用支給材の取扱い)に買戻し価格の減額要素を追加

「返還時の支給材の状態により毀損又は劣化が認められる場合、甲は当該状態に応じて返金額を減額できる。」との条項を追加し、保管状態を反映した買戻し価格の調整を可能にする。

B. 支給を受ける下請事業者向け修正パターン

B-1. 第6条(支給材代金の相殺)に相殺額の上限を追加

「甲が一回の相殺で控除できる支給材代金は、当該相殺の対象となる下請代金の【 】割を上限とする。」との上限を設け、乙の資金繰りに与える影響を緩和する。

B-2. 第4条(支給価格の決定)に価格算定根拠の開示請求権を追加

「乙は、甲に対し支給価格の算定根拠(仕入価格及び諸経費の内訳)の開示を求めることができ、甲はこれに誠実に応じる。」との条項を追加し、支給価格が市場実勢より不当に高く設定されていないかを乙が検証できるようにする。

B-3. 第9条(未使用支給材の取扱い)の返金時期を明記

「甲は、支給材の返還を受けた日から【 】日以内に返金する。」との期限を追加し、契約終了時の資金回収を早期化する。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

本書式は、親事業者が下請事業者に対し原材料や部品を有償で支給し、下請事業者がこれを用いて製造した製品を親事業者に納入する取引で使用する。原材料の調達を全面的に下請事業者に委ねる取引や、無償で支給材を貸与する取引の場合は、本書式の相殺条項(第6条)はそのままでは適合しないため、無償支給を前提とした契約書を別途検討すべきである。

根拠法令の中心は、下請代金支払遅延等防止法第4条第2項第1号である。同号は、親事業者が下請事業者の給付に必要な原材料等を有償で支給した場合において、当該原材料等を用いた給付に係る下請代金の支払期日よりも早い時期に、当該原材料等の対価を支払わせ、又は下請代金の支払額から控除することを禁止している。相殺による決済自体は民法第505条以下の一般的な相殺の規定に従い可能であるが、その時期については下請法上の特則が優先する。また、支給価格が乙の通常の調達価格と比べて不当に高い場合、下請法第4条第1項第5号の買いたたきや独占禁止法上の優越的地位の濫用に該当するおそれがある点にも留意が必要である。

実務でよくある失敗として、第一に、支給材代金を月次で一律に相殺する運用にしてしまい、特定のロットについては下請代金の支払期日より早い時期に事実上の決済が生じてしまうケースがある。第6条第2項のように、相殺の対象となる支給材使用製品の下請代金支払期日を基準として相殺時期を統制することが対策となる。第二に、支給価格の算定根拠を示さないまま一方的に価格を設定し、乙が市場価格より高い価格で支給材を購入させられているケースがあり、第4条のように支給価格の決定基準を明記することが予防策となる。第三に、契約終了時に未使用の支給材の返還・精算方法を定めておらず、在庫として残った支給材の扱いを巡って紛争になるケースがあり、第9条のように返還と返金の手続をあらかじめ規定しておくことが有効である。

なお、相殺時期の適法性は個々の取引の実態(支払サイクル、相殺の対象範囲等)によって判断が分かれ得るため、個別事案については弁護士等の専門家に確認することを推奨する。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 支給材の範囲・品目・数量を個別契約で特定する仕組みになっているか
  • [ ] 支給価格の決定基準(仕入価格+諸経費等)を明記したか
  • [ ] 支給価格が乙の通常の調達価格と比べて不当に高くないか確認する仕組みがあるか
  • [ ] 支給材代金の相殺時期が、対応する下請代金の支払期日より早くならないよう規定したか
  • [ ] 相殺の対象となる支給材使用製品と支給材の対応関係を明細書等で明確にできるか
  • [ ] 下請代金の支払期日が給付受領後60日以内に収まっているか確認したか
  • [ ] 支給材の在庫管理・棚卸しの頻度と手続を定めたか
  • [ ] 契約終了時の未使用支給材の返還及び返金の手続を定めたか
  • [ ] 支給材の欠陥に起因する不良発生時の負担ルールを定めたか
  • [ ] 支給材の所有権移転時期(引渡し時)を明記したか