海外の買主へ継続的に商品を輸出する取引の基本条件を定める書式。ウィーン売買条約(CISG)の適用関係、インコタームズ2020の危険移転、外為法上の輸出手続に対応します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
輸出売買基本契約書(和文)
第1部: 書式本文
輸出者〇〇株式会社(以下「甲」という。)と輸入者〇〇(以下「乙」という。)とは、甲が乙に対し別紙記載の商品(以下「本商品」という。)を継続的に輸出売渡し、乙がこれを買い受けるにあたり、次のとおり輸出売買基本契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的) 本契約は、甲が本商品を乙に継続的に輸出し、乙がこれを輸入するに際して適用される基本的取引条件を定めることを目的とする。個別の船積みごとの品目・数量・価格・船積期限等は、本契約に基づき別途締結する個別契約による。
第2条(個別契約の成立) 1. 乙は、購入しようとする本商品の品目、数量、単価、建値(インコタームズ2020による。)、船積期限その他必要事項を記載した注文書を甲に送付する。 2. 個別契約は、甲が注文書記載事項を承諾する旨の注文請書を発行した時に成立する。
第3条(価格及び支払条件) 1. 本商品の価格は、個別契約に定めるインコタームズ2020上の建値により米ドル建てとする。 2. 乙は、個別契約に定める支払期日までに、甲の指定する銀行口座への送金その他個別契約に定める方法により代金を支払う。
第4条(引渡し及び危険の移転) 本商品の引渡し及び危険の移転の時期は、個別契約に定めるインコタームズ2020の該当規則(FOB、CIF、CFR等)の定めるところによる。
第5条(船積書類) 甲は、船積みの都度、商業送り状、パッキングリスト、船荷証券又は航空運送状その他個別契約で定める書類を乙に交付する。
第6条(検査及び通知) 1. 乙は、本商品到着後〇日以内に検査を行い、数量不足又は種類、品質若しくは数量に関する契約不適合を発見したときは、直ちにその内容を甲に通知する。 2. 前項の通知を怠ったときは、乙は当該契約不適合を理由とする追完請求、代金減額請求、損害賠償請求及び契約解除をすることができない。
第7条(契約不適合責任) 甲は、本商品が個別契約に定める仕様に適合しないときは、民法第562条から第564条までの規定に準じ、乙の請求により修補、代替品の引渡し又は代金減額に応じる。ただし、甲が当該契約不適合につき責めに帰すべき事由がないことを証明したときは、損害賠償の責任を負わない。
第8条(知的財産権) 甲は、本商品の製造又は販売が第三者の知的財産権を侵害しないことを保証する。
第9条(輸出許可及び関連法令の遵守) 1. 甲は、外国為替及び外国貿易法その他輸出関連法令に基づき必要となる輸出許可、承認又は届出を自己の責任と費用において取得する。 2. 甲は、輸出許可等の取得ができない場合又はその取得が個別契約所定の期限までに間に合わない場合、遅滞なく乙に通知し、船積期限の変更その他必要な措置につき乙と協議する。
第10条(不可抗力) 天災、戦争、輸出入制限、感染症の流行その他当事者の合理的な支配を超える事由により本契約上の義務の履行が遅延又は不能となった場合、当該当事者はその責任を負わない。
第11条(契約期間) 本契約の有効期間は、効力発生日から満〇年とする。期間満了の〇か月前までにいずれの当事者からも書面による終了の申出がないときは、本契約は同一条件でさらに〇年間更新されるものとし、以後も同様とする。
第12条(解除) 甲又は乙は、相手方が本契約又は個別契約の条項に違反し、相当期間を定めた催告後もその違反が是正されないときは、本契約及び個別契約の全部又は一部を解除することができる。
第13条(秘密保持) 甲及び乙は、本契約に関連して知り得た相手方の営業上・技術上の情報を、相手方の書面による事前の承諾なく第三者に開示又は漏洩してはならない。
第14条(準拠法及び紛争解決) 1. 本契約及び個別契約は、法の適用に関する通則法第7条に基づき、日本法を準拠法とする。 2. 甲乙間の紛争については、東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
第15条(CISGの適用) 本契約及び個別契約に関しては、国際物品売買契約に関する国際連合条約(ウィーン売買条約、以下「CISG」という。)第6条に基づき、その適用の全部又は一部を排除するか否かを別紙で定める。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 輸出者(売主)向け 第7条を次のとおり修正し、契約不適合責任の期間及び範囲を限定する。 「甲は、本商品の引渡し後〇か月以内に乙から書面による通知を受けた契約不適合についてのみ、修補又は代替品の引渡しの方法により責任を負うものとし、代金減額及び損害賠償の請求には応じない。」 一言解説: 民法562条以下の任意規定を修正し、責任の期間と方法を限定することで、輸出者の予見可能性を確保する。
B. 輸入者(買主)向け 第6条2項を次のとおり修正し、検査懈怠による失権効を緩和する。 「前項の通知期間は、乙が通常の検査によって発見することができなかった契約不適合については、乙がこれを知った日から〇日に延長する。」 一言解説: 現地検査体制が未整備な輸入者にとって失権効の即時適用はリスクが大きいため、猶予期間を設ける。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
使う場面は、継続的な輸出取引の基本条件を一度定め、個別契約を軽い手続で積み重ねたい場合である。反対に、単発の輸出取引や、相手方との取引実績がなく信用状況が不明な場合には本書式は過剰であり、個別契約書や信用状(L/C)取引の確認書の活用が適する。
根拠法令としては、民法(第562条以下の契約不適合責任)、外国為替及び外国貿易法(輸出許可・承認に関する規定)、CISG(第6条の適用排除、第30条以下の売主の義務)、インコタームズ2020(危険移転・費用分岐の基準)、法の適用に関する通則法第7条・第8条(準拠法の決定)が中心となる。
実務でよくある失敗として、次の3点が挙げられる。第一に、インコタームズの版を明記しないことである。費用・危険の分岐点が不明確になり、紛争時に解釈が分かれるため、個別契約に必ず「インコタームズ2020」等の版を明記する条項を置くべきである。第二に、CISGの適用関係を放置することである。日本と乙国がいずれもCISG締約国の場合、当事者の合意がなくても自動適用され、想定外の売主の義務(契約不適合の通知期間等)が課されるおそれがある。第15条のように適用排除の要否を明示することが望ましい。第三に、輸出許可取得の失敗リスクを甲のみに負わせる条項とすることである。実際には許可取得の遅延が長期化することがあり、乙の損害賠償請求が過大化しかねない。第9条2項のような協議条項を置くことでリスクを分散できる。
なお、個別の輸出規制該当性や取引相手国の法制は国により大きく異なるため、実際の適用にあたっては最新の法令及び個別事案について専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 個別契約の様式(注文書・注文請書)を添付しているか
- [ ] インコタームズ2020のいずれの規則を用いるか個別契約で明記しているか
- [ ] CISGの適用排除の要否を検討し、必要な場合は明記しているか
- [ ] 準拠法及び紛争解決条項(裁判管轄又は仲裁)を定めているか
- [ ] 輸出許可・承認等の取得責任と費用負担を明確にしているか
- [ ] 検査期間及び通知期間が実務上履行可能な長さになっているか
- [ ] 契約不適合責任の範囲・期間・救済方法を定めているか
- [ ] 秘密保持義務の存続期間を定めているか
- [ ] 契約期間・更新・解除条件を定めているか
- [ ] 不可抗力条項の対象事由が現実的なリスクを網羅しているか