取引先や従業員から大量破壊兵器等への転用および無断再輸出を行わない旨を約させる書式。外為法のキャッチオール規制と輸出管理内部規程の運用指針を踏まえた文例です。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
輸出管理に関する誓約書
第1部: 書式本文
本誓約書は、輸出者が取引先または自社従業員に対し、大量破壊兵器等への転用や無断での再輸出を行わない旨を確約させ、輸出管理体制の実効性を担保するために用いる。条文形式を基本とする。取引先向けと従業員向けでは誓約の名宛人や違反時の効果(契約解除か懲戒処分か)が異なるため、提出者の属性に応じて第2部の書き換えパターンを参照しつつ、必要な条項を取捨選択して使用すること。
誓約者【氏名または会社名】(以下「誓約者」という)は、【誓約書提出先の会社名】(以下「甲」という)に対し、以下のとおり誓約する。
第1条(目的) 本誓約書は、甲から誓約者に提供され、または誓約者を通じて第三者に提供される貨物および技術(以下「対象貨物等」という)が、大量破壊兵器等の開発、製造、使用もしくは貯蔵、または通常兵器の開発、製造もしくは使用に用いられることを防止することを目的とする。
第2条(転用禁止) 誓約者は、対象貨物等を、核兵器、化学兵器、生物兵器もしくはミサイルの開発・製造・使用・貯蔵、またはこれらに関連する軍事用途に使用し、または使用されることを知りながら第三者に提供してはならない。
第3条(再輸出・再提供の制限) 誓約者は、甲の事前の書面による承諾なく、対象貨物等を当初の需要者以外の第三者に再輸出、再移転、または再提供してはならない。特に、外国為替令別表に定める仕向地に対する再輸出については、甲の指示に従い個別に用途および需要者を確認するものとする。
第4条(需要者・用途情報の開示) 誓約者は、甲の求めに応じ、対象貨物等の最終需要者、最終用途、および取引の背景事情について、真実かつ正確な情報を遅滞なく開示する。
第5条(監査協力) 誓約者は、甲またはその指定する第三者が、本誓約書の遵守状況を確認するために実施する監査・照会に協力するものとする。
第6条(懸念取引の報告) 誓約者は、対象貨物等の取扱いに関して懸念すべき事情(需要者の名称変更、不自然な仕向地変更、代金決済方法の異常等)を認知した場合、直ちに甲に報告する。
第7条(違反時の措置) 誓約者が本誓約書に違反した場合、甲は取引の停止、契約の解除、および被った損害の賠償請求を行うことができる。
第8条(有効期間) 本誓約書は【西暦年月日】から効力を生じ、対象貨物等に係る取引が継続する限り効力を有する。ただし、甲乙いずれかが書面により解約を申し入れた場合はこの限りでない。
第9条(教育・研修への協力) 誓約者は、甲が実施する輸出管理に関する教育・研修プログラムへの参加を求められた場合、これに応じるものとする。特に従業員たる誓約者については、年1回以上の定期研修の受講を原則とする。
第10条(準拠法) 本誓約書は日本法に準拠し、これに従って解釈される。
年月日:【西暦年月日】 誓約者署名・記名押印欄:【氏名/会社名・役職・印】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 取引先提出用
継続的な販売代理店や部品供給先との契約締結時に取り交わす場合の文例。
修正条文例:「乙(取引先)は、甲から供給を受ける対象貨物等について、乙の顧客に対する販売に先立ち、当該顧客が外国ユーザーリストに掲載されていないことを確認し、確認記録を甲の求めに応じて提出するものとする。」
一言解説:代理店・販売店経由の取引では、最終需要者との間に商流の断終が生じやすいため、確認義務を取引先側にも分担させる条項を加えることが有効である。
B. 従業員提出用
輸出関連業務に従事する従業員の入社時または配置転換時に取得する場合の文例。
修正条文例:「本誓約書の提出者は、業務上知り得た輸出案件の需要者情報および用途情報を社外に漏洩せず、また自己の判断のみで該非判定の結論を確定させず、必ず輸出管理部門の確認を経るものとする。」
一言解説:従業員向けでは損害賠償請求よりも懲戒処分の可能性を明記し、社内規律としての実効性を高める表現に置き換えることが望ましい。あわせて、懲戒事由は就業規則本体にも定めておき、誓約書は補完的な確認資料として位置づける整理をしておくと、後日の紛争予防に資する。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本誓約書は、継続的な取引関係に入る前、または輸出関連業務に従事する従業員を配置する前の予防的措置として使用する。既に懸念取引が発生し個別の是正が必要な局面では、誓約書の取得のみで足りるものではなく、当該取引自体の停止や当局への相談を優先すべきであり、誓約書は事後対応の代替とはならない。
根拠法令は、外国為替及び外国貿易法(外為法)48条1項の輸出許可制度を補完する形で、経済産業省が定める安全保障貿易管理に関するガイドラインが求める内部管理体制(コンプライアンス・プログラム)の一環であり、特に外国為替令別表に定めるキャッチオール規制対象地域向け取引において、需要者確認および誓約書取得が推奨されている。誓約書自体は行政上の許可要件そのものではないが、輸出者等遵守基準の遵守状況を示す社内記録として機能する。従業員向けの誓約書については、就業規則との整合性も確認する必要があり、違反時の懲戒処分の根拠を誓約書のみに求めることはできない点にも留意すべきである。
実務でよくある失敗として、第一に、誓約書を取得すること自体を目的化し、実質的な需要者審査や用途確認を省略してしまうケースがある。誓約書はあくまで相手方の意思表明を書面化したものにすぎず、輸出者自身による該非判定や需要者確認を代替するものではない。対策として、第4条のように誓約者に情報開示義務を課すだけでなく、輸出者側でも独立した確認プロセスを並行して実施する運用とすべきである。第二に、再輸出制限の対象範囲が「第三者への提供」といった抽象的な表現にとどまり、対象地域や対象品目が特定されていないケースがある。対策として第3条のように、外国為替令別表に定める仕向地を明示的に引用し、対象範囲を具体化することが望ましい。第三に、誓約書の有効期間や更新手続が定められておらず、数年前の誓約書が形骸化したまま放置され、担当者の異動によって取得の経緯すら不明になるケースがある。対策として第8条のように有効期間と解約手続を明記し、第9条の教育・研修条項とあわせて定期的な更新を運用ルール化することが有効である。なお、誓約書の内容や運用が個別の輸出案件において十分な予防効果を持つかは取引実態により異なるため、専門家に個別に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 誓約書提出者が取引先・従業員のいずれであるかを明確にしたか
- [ ] 対象貨物・技術の範囲を具体的に特定したか
- [ ] 転用禁止の対象(大量破壊兵器・通常兵器等)を明記したか
- [ ] 再輸出・再提供の制限範囲と例外(事前承諾手続)を定めたか
- [ ] 需要者・用途情報の開示義務を規定したか
- [ ] 監査協力義務を規定したか
- [ ] 懸念取引の報告ルートを明記したか
- [ ] 違反時の措置(契約解除・損害賠償または懲戒)を具体的に定めたか
- [ ] 有効期間と更新・解約手続を明記したか
- [ ] キャッチオール規制対象地域を踏まえた条項になっているか
- [ ] 署名・記名押印欄と提出日を設けたか
- [ ] 教育・研修への協力義務を規定したか
- [ ] 誓約書のみに依拠せず輸出者側の独立した確認プロセスを併用しているか