離婚に伴い夫婦の共有財産や不動産の名義を清算する場面の書式。民法第768条の財産分与請求権と二年の期間制限を踏まえて条項を定めます。

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財産分与契約書

第1部: 書式本文

分与する配偶者〇〇〇〇(以下「甲」という。)と分与を受ける配偶者〇〇〇〇(以下「乙」という。)は、甲乙間の離婚(令和【 】年【 】月【 】日成立)に伴う財産分与について、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(財産分与の合意) 甲及び乙は、民法第768条に基づき、婚姻中に形成した財産について、次条以下のとおり財産分与を行うことに合意する。

第2条(分与対象財産の範囲) 分与の対象となる財産は、婚姻期間中に甲乙が協力して取得した財産であり、別紙財産目録記載のとおりとする。婚姻前から各自が有していた財産及び相続・贈与により取得した財産(特有財産)は、分与の対象から除外する。

第3条(金銭による分与) 甲は、乙に対し、財産分与として金【分与金額】円を、【支払方法・期限】に従って支払う。

第4条(不動産の分与) 甲乙が共有し、又は甲が単独所有する【不動産の表示】については、【乙への所有権移転・売却して分与・甲が取得し代償金を支払う等】の方法により処理する。

第5条(不動産の名義移転) 前条により乙に所有権を移転する場合、甲は、本契約締結後【期間】以内に、所有権移転登記手続に必要な書類を乙に交付する。登記費用は【負担者】の負担とする。

第6条(住宅ローンの取扱い) 分与対象の不動産に住宅ローンが残存する場合、当該ローンの債務者及び返済継続方法について、次のとおり定める。【債務者変更・連帯保証の取扱い・金融機関との協議要否】

第7条(退職金・年金の取扱い) 甲の退職金のうち婚姻期間に対応する部分については、【既に支給済みの場合の分与方法/将来支給される場合の按分方法】により清算する。年金分割については別途取り決める。

第8条(慰謝料的財産分与との関係) 本契約に基づく財産分与には、離婚に伴う慰謝料の趣旨を【含む・含まない】。含む場合、その内訳を別紙のとおり明示する。

第9条(期間制限の確認) 甲及び乙は、財産分与請求権が民法第768条第2項により離婚の時から一定期間を経過すると家庭裁判所に請求できなくなることを確認し、当該期間内に本契約を締結する。

第10条(清算条項) 甲及び乙は、本契約に定めるもののほか、財産分与に関し何らの債権債務がないことを相互に確認する。

【契約日】

甲: 【住所・氏名】 印 乙: 【住所・氏名】 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 分与する配偶者向けの修正

A-1. 分割払いの場合の期限の利益喪失条項

追加条文例:「甲が分与金を分割して支払う場合において、支払を1回でも怠ったときは、甲は当然に期限の利益を喪失し、残額を直ちに一括して支払う。」 一言解説: 分割払いとする場合、分与を受ける乙側の回収リスクに配慮しつつ、支払う甲側としても明確な履行基準を設けることで紛争を予防する修正である。

A-2. 特有財産であることの立証資料の添付

追加条文例:「甲は、分与対象財産から除外した【財産の内容】が婚姻前から甲が有していた特有財産であることを示す資料(通帳の履歴、贈与契約書等)を乙に提示する。」 一言解説: 特有財産であることの主張が後日争われないよう、分与する側は裏付け資料を提示し協議の透明性を高める修正を行う。

B. 分与を受ける配偶者向けの修正

B-1. 財産開示義務と隠匿財産発覚時の対応

追加条文例:「甲は、婚姻期間中に形成した財産の全部を乙に開示したことを表明保証する。本契約締結後に甲が開示しなかった財産が判明した場合、乙は当該財産についても財産分与を請求できる。」 一言解説: 財産隠しが発覚した場合の救済手段を確保するため、分与を受ける側は開示義務違反時の追加請求権を明記する修正を行う。

B-2. 住宅ローン付き不動産取得時の求償排除

修正後:「乙が本契約により不動産を取得し住宅ローンの債務者となる場合、甲は乙に対し当該ローンに関して一切求償しない。」 一言解説: 不動産と住宅ローンをまとめて引き継ぐ場合、後日甲から負担割合を争われないよう、分与を受ける側は求償排除を明記する修正を行う。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、離婚に伴い夫婦が婚姻期間中に形成した財産を清算する場面で用いる。離婚協議書に財産分与条項を含めて包括的に処理する場合には、財産分与のみを独立させた本書式を重複して作成する必要はないが、財産分与の内容が複雑(複数の不動産、退職金の将来清算等)であり詳細を別途定めたい場合には、本書式が適合する。婚姻前から有していた財産や、相続・贈与により取得した特有財産(民法第762条第1項)は、原則として財産分与の対象とならない点に注意する。

根拠法令 財産分与請求権は民法第768条に規定され、協議離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる(同条第1項)。分与の額及び方法について当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して分与の可否及び額を定める(同条第2項・第3項)。財産分与請求権は離婚の時から2年を経過したときは家庭裁判所に請求することができなくなる(同条第2項ただし書、なお令和6年改正民法により期間が5年に伸長される予定である)。婚姻費用の清算や年金分割(厚生年金保険法第78条の2)は財産分与とは異なる制度であり、退職金についても、既に支給された退職金は財産分与の対象財産となりうるが、将来支給される退職金の分与方法は算定の困難さから協議・裁判例の蓄積を踏まえた個別判断が必要となる。

実務でよくある失敗と対策 第一に、特有財産と共有財産(分与対象財産)の区別が曖昧なまま協議し、後日その範囲を巡って紛争が再燃する失敗がある。第2条及びA-2のように対象財産の範囲を明確にし、特有財産の裏付け資料を提示することが対策となる。第二に、財産分与の対象財産の一部を意図的に開示せず、後日隠匿が発覚しても既に清算条項により追加請求ができなくなる失敗がある。B-1のように開示義務違反時の追加請求権を明記することが対策となる。第三に、住宅ローン付き不動産の分与について、名義とローンの債務者が一致せず、分与後に金融機関との関係で問題が生じる失敗がある。第6条のように金融機関との協議要否を明記し、必要に応じて債務者変更の手続を検討することが対策となる。

財産分与の対象範囲や退職金・年金の按分方法の算定は個別の財産状況により大きく異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 分与対象財産と特有財産(婚姻前財産・相続贈与財産)を区別したか
  • [ ] 財産分与請求権の期間制限(民法第768条第2項)内であることを確認したか
  • [ ] 不動産の分与方法(移転・売却・代償)を明確にしたか
  • [ ] 住宅ローンが残存する場合の債務者及び金融機関との調整方法を確認したか
  • [ ] 退職金・年金の清算方法を定めたか
  • [ ] 慰謝料的財産分与を含むか否かを明記したか
  • [ ] 財産の全部開示について表明保証を得たか
  • [ ] 分割払いの場合の期限の利益喪失条項を検討したか
  • [ ] 登記費用等の諸費用の負担者を確認したか
  • [ ] 清算条項により本契約外の債権債務がないことを確認したか