債務者に財産状況の陳述を求める財産開示手続の申立書です。申立ての要件、実施決定後の流れ、不出頭時の制裁を整理します。実務で迷いやすい記載箇所には解説コメントを付しています。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
財産開示手続申立書
第1部: 書式本文
財産開示手続申立書
【申立日】令和【 】年【 】月【 】日 【提出先裁判所】【 】地方裁判所 御中
当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり 請求債権の表示 別紙請求債権目録記載のとおり
第1 申立ての趣旨 債務者について、財産開示手続を実施するとの決定を求める。
第2 申立ての理由 1 執行力ある債務名義の正本を有すること 債権者は、債務者に対し、【裁判所名】令和【 】年(【 】)第【 】号【事件名】事件の【確定判決/和解調書/調停調書/金銭債権について執行証書(強制執行認諾文言付き公正証書)】を有する(民事執行法197条1項)。 2 申立て要件(次のいずれかを選択して記載) (1)強制執行の申立てにおいて、金銭債権の完全な弁済を得ることができなかったこと(同項1号)。具体的には、令和【 】年【 】月【 】日、【 】地方裁判所に対し【動産/債権】執行を申し立てたが、【差押物件が無価値であった/差押債権が存在しなかった等】ため完全な弁済に至らなかった。 (2)知れている財産に対する強制執行を実施しても、金銭債権の完全な弁済を得られない見込みがあること(同項2号)。具体的には、債権者が把握している財産は【 】のみであり、その価額は請求債権額に照らし著しく不足する。 3 実施決定に対する不服の不存在 本申立てに係る事情の下で、民事執行法197条1項ただし書の除外事由(過去3年以内の財産開示実施等)に該当する事実は認められない。 4 不出頭・不陳述等の場合の効果についての教示希望(任意記載) 債務者に対しては、決定書において、正当な理由なく出頭せず、若しくは宣誓を拒み、又は陳述すべき事項について陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をしたときは、刑事罰の対象となり得る(民事執行法213条1項5号・6号)旨の教示を求める。
第3 疎明方法 1 執行力ある債務名義の正本(写し) 2 送達証明書 3 強制執行の不奏功又は財産不足を疎明する資料(配当表、執行不能証明書等) 4 過去の財産開示・情報取得手続の実施状況に関する上申書
第4 添付書類 1 執行力ある債務名義の正本 1通 2 送達証明書 1通 3 資格証明書(法人の場合) 1通 4 当事者目録 1通 5 請求債権目録 1通
第5 実施決定後の手続についての参考記載 本申立てが認容され実施決定がされた場合、財産開示期日が指定され、その期日の1週間前までに債務者から財産目録の提出を受けることが予定されている(民事執行規則183条参照)。債権者は当該期日に出頭し、債務者に対して質問を行うことができる(民事執行法199条4項)。
第6 不出頭・虚偽陳述時の措置についての申立人の意見(任意記載) 債務者が正当な理由なく出頭せず、又は虚偽の陳述をした場合には、債権者は刑事告発の要否を別途検討する予定である。
(別紙)当事者目録 【申立人(債権者)】住所【 】 氏名又は名称【 】 【相手方(債務者)】住所【 】 氏名又は名称【 】
(別紙)請求債権目録 上記当事者間の【裁判所名】令和【 】年(【 】)第【 】号事件の執行力ある債務名義に表示された下記金員 元金【 】円 遅延損害金(令和【 】年【 】月【 】日から支払済みまで年【 】%) 合計【 】円
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節 債権者の立場から
1 申立て要件の記載を「強制執行不奏功要件」と「財産不足の疎明要件」のいずれで構成するかを冒頭で明示し、選択した要件に対応する疎明資料番号を本文に引用する形に書き換える。理由は、要件選択が曖昧だと裁判所から補正を求められやすいためである。 2 実施決定後の期日に債務者が出頭しない可能性が高いと見込まれる場合、上申書を添付し、過料通知や刑事告発の要否について事前に方針を記載しておく。理由は、実施決定後の不出頭対応を迅速化するためである。 3 場面バリエーション(相手方が法人の場合) 債務者が法人の場合は、開示義務者を代表者本人とする旨を明記し、資格証明書と代表者の住所を目録に追記する。理由は、法人には財産開示期日に出頭する自然人を特定する必要があるためである。 4 場面バリエーション(緊急性が高い場合) 時効完成が迫っている等、早期の財産把握が必要な場合は、上申書に事情を記載し、期日指定の迅速化を求める。理由は、時効の管理と財産隠匿防止の観点から早期実施が望ましいためである。 5 場面バリエーション(高額請求で財産隠匿のおそれが強い場合) 債務者が財産を第三者名義に移転している疑いがある場合、申立ての理由に「知れている財産の状況」を具体的に記載し、開示対象財産の範囲(不動産、預貯金、有価証券等の主要な資産一覧)を明示する形に書き換える。理由は、開示範囲を具体的に示すことで、実施決定後の陳述の実効性を高めるためである。
B節 債務者の立場から
1 債務者側で除外事由(民事執行法197条1項ただし書、同条3項等)に該当すると考える場合は、意見書の形式で「過去3年以内に財産開示期日において陳述したこと」等の該当事実と資料を摘示する記載に書き換える。理由は、実施決定前に除外事由を主張することで手続の要件不備を争えるためである。 2 出頭・陳述に応じる場合の留意点として、陳述書のひな形に「陳述拒否権の範囲(民事執行法200条参照)」を確認する欄を設ける。理由は、陳述義務の範囲を誤解したまま虚偽陳述と評価される事態を避けるためである。 3 代理人を選任して出頭する場合の留意点として、開示義務者本人の出頭が原則であることを踏まえ、やむを得ない事情がある場合の代理出頭の可否を事前に裁判所へ確認する記載を追加する。理由は、財産開示期日は本人の陳述及び宣誓が前提とされており、代理出頭が当然に認められるものではないためである。 4 場面バリエーション(相手方が個人で生活困窮が疑われる場合) 債務者が生活困窮状態にあると見込まれる場合、財産目録の提出に際し差押禁止財産(民事執行法131条等)に該当する資産の範囲を確認する欄を追加する。理由は、開示対象財産と差押可能財産の範囲を混同すると、その後の執行方針の検討に支障が出るためである。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、既に債務名義を得ている債権者が、強制執行が不奏功に終わった場合、又は知れている財産だけでは完全な弁済を得られない見込みがある場合に、債務者本人の財産状況を裁判所を通じて陳述させるために使用する。単に財産を推測したいだけで強制執行不奏功等の要件を満たさない段階では利用できない。
根拠法令は民事執行法196条から203条までであり、令和元年法律第2号による改正(令和2年4月1日施行)により、不出頭・虚偽陳述等に対する制裁が過料から刑事罰(6月以下の懲役又は50万円以下の罰金、同法213条1項5号・6号)へと強化された点が実務上の重要な変更点である。
よくある失敗の第一は、要件事実(不奏功又は財産不足の見込み)の疎明資料が不足していることである。対策として、配当表や執行不能証明書など客観資料を添付し、上申書で経緯を時系列で説明する。第二の失敗は、除外事由の有無を確認せずに申し立ててしまうことである。対策として、過去の財産開示手続の履歴を裁判所に照会し、除外事由がないことを事前に確認する。第三の失敗は、法人が債務者の場合に開示義務者となる自然人の特定を怠ることである。対策として、代表者の氏名・住所を当事者目録に明記する。第四の失敗は、実施決定後の期日運営(財産目録の提出期限、質問権の行使方法)を事前に把握せず当日の対応が後手に回ることである。対策として、実施決定書を受領した時点で期日までのスケジュールを整理し、質問事項を事前に準備しておく。
不出頭時の制裁の適用可否や除外事由の該当性の判断は事案ごとに異なるため、申立て前に弁護士等の専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
1 執行力ある債務名義を有しているか確認したか 2 送達証明書を取得したか 3 強制執行不奏功又は財産不足見込みのいずれの要件で申し立てるか決めたか 4 要件を裏付ける疎明資料(配当表・執行不能証明書等)を用意したか 5 除外事由(過去3年以内の実施等)に該当しないか確認したか 6 債務者が法人の場合、代表者情報を目録に記載したか 7 提出先裁判所(債務者の普通裁判籍所在地の地方裁判所)を確認したか 8 不出頭・虚偽陳述時の制裁について債務者への教示を検討したか 9 予納郵券・手数料を確認したか 10 実施決定後の期日対応方針(出頭確認・過料/刑事告発の要否)を検討したか 11 財産目録の提出期限・質問権行使の準備を計画したか 12 差押禁止財産の範囲と開示対象財産の範囲の違いを整理したか