始業終業時刻から割増賃金を算定して未払額を示す計算書式です。基礎賃金の範囲、割増率、深夜・法定休日の区分を整理できます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
未払残業代計算書(明細様式)
第1部: 書式本文
未払残業代計算書
対象労働者:【氏名】 対象期間:令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日まで 作成日:【令和〇年〇月〇日】
第1 基礎情報 1 雇用形態:【正社員・契約社員・パートタイム等】 2 所定労働時間:1日【〇時間】、1週【〇時間】 3 所定休日:【毎週〇曜日、その他会社カレンダーによる休日】 4 賃金締切日・支払日:毎月【〇日】締め、翌月【〇日】払い
第2 基礎賃金の算定 1 月額基本給:金【〇〇円】 2 手当の内訳と割増賃金基礎への算入可否 ・役職手当:金【〇〇円】(算入する/しない) ・住宅手当(労働基準法施行規則第21条に定める除外賃金に該当する場合は算入しない):金【〇〇円】 ・通勤手当(同条の除外賃金に該当する場合は算入しない):金【〇〇円】 ・家族手当(同条の除外賃金に該当する場合は算入しない):金【〇〇円】 3 割増賃金の基礎となる賃金合計:金【〇〇円】 4 1か月平均所定労働時間数:【〇〇時間】(年間所定労働日数×1日の所定労働時間÷12で算出) 5 1時間あたり基礎賃金:金【〇〇円】(上記3÷上記4)
第3 労働時間の集計(日別明細) 【日付】/【始業時刻】/【終業時刻】/【休憩時間】/【実労働時間】/【法定内労働時間】/【時間外労働時間】/【深夜労働時間(22時から翌5時)】/【法定休日労働時間】 (以下、対象期間分を日ごとに記載する)
第4 割増賃金の算定 1 時間外労働割増賃金(労働基準法第37条第1項、割増率25%以上。月60時間超の部分は中小企業を含め50%以上) 時間外労働合計【〇〇時間】×1時間あたり基礎賃金×1.25(又は1.50)=金【〇〇円】 2 深夜労働割増賃金(同条第4項、割増率25%以上) 深夜労働合計【〇〇時間】×1時間あたり基礎賃金×0.25=金【〇〇円】(時間外と深夜が重複する場合は合算して1.50倍以上) 3 法定休日労働割増賃金(同条第1項、割増率35%以上) 法定休日労働合計【〇〇時間】×1時間あたり基礎賃金×1.35=金【〇〇円】 4 割増賃金合計:金【〇〇円】
第5 既払額との差引計算 1 会社が支払済みの割増賃金相当額:金【〇〇円】 2 未払差額:金【〇〇円】(上記第4の4-上記第5の1)
第6 対象期間全体の未払総額 月別の未払差額を合算した金額:金【〇〇円】
第7 添付資料 タイムカード、業務日報、パソコンのログイン・ログアウト記録等、労働時間の根拠資料の写しを添付する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 労働者側の立場(証拠資料が限られている場面)
- 労働時間の推計方法に関する修正例 タイムカードが存在しない場合、第3の日別明細欄に「パソコンのログオン・ログオフ記録により始業・終業時刻を推計した」「業務用チャットツールの送信時刻から在社時間を推計した」のように、代替証拠に基づく推計方法とその根拠を明記する。会社側がタイムカード等の記録を保存していない場合でも、労働者側が合理的な推計方法を示せば、賃金請求の基礎となり得る。
B節: 労働者側の立場(固定残業代が支給されている場面)
第5の既払額欄に「固定残業代として月額【〇〇円】(みなし時間外労働〇〇時間相当)が支給されているが、実際の時間外労働時間はこれを上回っているため、超過分について未払いが生じている」のように、固定残業代の対象時間数と実際の労働時間数を対比させる記載を加える。固定残業代がある場合は、その金額をそのまま既払額として控除するのではなく、対応する時間数を明示した上で差額を計算する必要がある。
A節: 会社側の立場(算定基礎の見直しを行う場面)
第2の2について、会社側が「住宅手当は全従業員一律定額で支給しており、住宅の状況に応じた算定ではないため、労働基準法施行規則第21条の除外賃金には該当せず、割増賃金の算定基礎に含めるべきである」のように反論する場合がある。除外賃金に該当するか否かは名称ではなく実質(住宅費用や扶養家族数等に応じて算定されているか)で判断されるため、会社側は手当の支給実態を確認した上で算入の要否を検討する必要がある。
B節: 会社側の立場(労働時間の一部を争う場面)
第3の日別明細について、会社側が「〇月〇日の記録されている在社時間には、私用による滞在時間が含まれており、実労働時間とは認められない」のように、労働時間該当性を個別に争う場合がある。単に在社時間の全体を否定するのではなく、争う日・時間帯を特定し、その根拠(休憩室での私的な滞在を示す記録等)を示す形で反論することが求められる。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、労働者側が未払残業代の有無及び金額を具体的に算定し、会社との交渉や労働審判・訴訟に先立って請求根拠を明確化する場面、また会社側が自社の割増賃金の支払状況を点検する場面の双方で用いることができる。割増賃金の算定にあたっては、まず基礎賃金の範囲を確定する必要がある。労働基準法施行規則第21条は、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金を、原則として割増賃金の算定基礎から除外すると定めている。もっとも、これらの手当であっても、名称にかかわらず、扶養家族数や住宅費用の実額等に応じて算定されていない一律定額の手当は、除外賃金に該当しないと解される場合があるため、名称のみで判断せず支給実態を確認する必要がある。
割増率については、労働基準法第37条により、時間外労働は原則25%以上(月60時間を超える部分は50%以上)、深夜労働(午後10時から午前5時まで)は25%以上、法定休日労働は35%以上とされている。時間外労働と深夜労働が重複する時間帯は、それぞれの割増率を合算した率(合計50%以上)を適用する必要がある。法定休日労働と深夜労働が重複する場合も同様に合算する(合計60%以上)。使ってはならない場面としては、所定労働時間と法定労働時間の区別をせず、所定時間を超えた時間すべてに法定の割増率を適用してしまう場合が挙げられる。所定労働時間を超えても法定労働時間(1日8時間・1週40時間)以内であれば、法律上の割増賃金支払義務は生じない場合がある点に注意が必要である。
よくある失敗として、第一に、法定休日と所定休日を混同し、法定休日でない休日労働にも35%の割増率を適用してしまうケースがある。対策として、就業規則上の法定休日の特定方法(週のいずれの曜日を法定休日とするか)を事前に確認する。第二に、除外賃金の判断を手当の名称のみで行い、実質的な算定方法を確認しないケースがある。対策として、賃金規程や実際の支給実績を確認し、名称と実態の双方から検討する。第三に、固定残業代の既払額を全額差し引いてしまい、対応する時間数を超える部分の未払いを見落とすケースがある。対策として、固定残業代に対応するみなし時間数を明示し、実際の労働時間数との差分のみを計算対象とする。個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- 対象期間及び対象労働者の雇用形態を明記したか
- 所定労働時間・所定休日・法定休日の特定方法を確認したか
- 割増賃金の算定基礎に含める手当と除外する手当を、労働基準法施行規則第21条に照らして整理したか
- 1時間あたり基礎賃金の計算式(基礎賃金合計÷1か月平均所定労働時間)が正しいか確認したか
- 日別の始業・終業時刻・休憩時間を根拠資料に基づいて記載したか
- 時間外労働・深夜労働・法定休日労働の区分を誤りなく集計したか
- 月60時間超の時間外労働について50%以上の割増率を適用したか
- 深夜労働と時間外労働・法定休日労働が重複する時間帯の割増率を合算したか
- 固定残業代が支給されている場合、対応するみなし時間数と実労働時間数を対比したか
- 既払額との差引計算に誤りがないか確認したか
- 添付資料(タイムカード、業務日報等)の写しを準備したか