租税特別措置法第29条の2の要件を満たす新株予約権の割当契約書。会社法第236条の新株予約権の内容の決定を前提に、行使期間・行使価額・譲渡禁止条項を定めます。
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税制適格ストックオプション割当契約書
第1部: 書式本文
新株予約権割当契約書(税制適格ストックオプション)
株式会社【会社名】(以下「甲」という)と【氏名】(以下「乙」という)は、甲が乙に対して新株予約権を割り当てるにあたり、次のとおり契約(以下「本契約」という)を締結する。
第1条(新株予約権の割当て) 甲は、乙に対し、【 年 月 日】開催の【株主総会・取締役会】決議に基づき、会社法第236条、第238条及び第239条の規定により決定された下記の内容の新株予約権(以下「本新株予約権」という)【 】個を無償で割り当てる。
第2条(目的となる株式の種類及び数) 本新株予約権の目的である株式の種類及び数は、甲の普通株式【 】株(本新株予約権1個当たり【 】株)とする。
第3条(行使価額) 本新株予約権の行使に際して出資される財産の価額は、本新株予約権1個当たり【 】円とし、本新株予約権の割当てを受けた日における甲の株式の1株当たりの評価額と同額以上とする。
第4条(行使期間) 本新株予約権を行使できる期間は、本新株予約権に係る割当て決議の日から2年を経過した日から【 】年を経過する日までとする。当該期間は、租税特別措置法第29条の2第1項第2号に定めるところにより、割当て決議の日から10年(同項の要件を満たす設立後の期間が一定に満たない株式会社の場合は15年)を超えないものとする。
第5条(権利行使価額の年間合計額の制限) 乙が本新株予約権及び甲が乙に付与した他の税制適格ストックオプションを行使することにより取得する株式の権利行使価額の合計額は、いずれの年においても1200万円を超えないものとする(租税特別措置法第29条の2第1項第3号)。
第6条(譲渡の禁止) 本新株予約権は、乙が第三者に譲渡し、質入れその他の処分をしてはならない(租税特別措置法第29条の2第1項第1号、会社法第236条第1項第6号)。
第7条(権利行使の資格) 本新株予約権を行使できる者は、行使時において甲又は甲の子会社(租税特別措置法施行令第19条の3に定める要件を満たす関係会社に限る)の取締役、執行役又は使用人であることを要する。乙が甲及び甲の子会社の取締役、執行役又は使用人の地位を喪失した場合、本新株予約権は行使できない。ただし、乙の死亡による相続の場合その他租税特別措置法上認められる場合を除く。
第8条(保管委託契約) 乙は、本新株予約権の行使により取得する株式について、甲が指定する金融商品取引業者又は金融機関との間で租税特別措置法第29条の2第1項第6号に定める保管の委託等に係る契約(以下「保管委託契約」という)を締結し、当該契約に従い株式を管理するものとする。
第9条(組織再編行為時の取扱い) 甲が合併、株式交換、株式移転その他の組織再編行為を行う場合において、本新株予約権に代わる新たな新株予約権を交付するときは、租税特別措置法施行令第19条の3第16項に定める要件を満たす範囲で行うものとする。
第10条(取得条項) 乙が第7条に定める資格を喪失した場合その他甲が別途定める事由が生じた場合、甲は本新株予約権を無償で取得することができる。
第11条(権利の消滅) 乙が行使期間内に本新株予約権を行使しなかったときは、本新株予約権はその効力を失う。
第12条(税制適格要件の充足に関する協力) 甲及び乙は、本新株予約権が租税特別措置法第29条の2に定める税制適格ストックオプションの要件を充足するよう相互に協力するものとし、法令改正等により要件充足が困難となった場合は、甲乙協議の上、契約内容の変更を検討する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 役職員向け(付与対象者の属性による書き分け)
修正条文例:
第7条(権利行使の資格) 乙が甲との間で租税特別措置法第29条の2第1項に定める社外高度人材に該当する者として経済産業大臣の要件確認を受けた者である場合、乙が甲の取締役、執行役又は使用人でないときであっても、当該確認の有効期間内は本新株予約権を行使することができる。
一言解説: 社外高度人材向けの税制適格ストックオプションの特例では、経済産業大臣の確認を受けることが要件となるため、通常の役職員向け契約とは別に、確認手続の履行を条件として明記する必要がある。
B節: 税制適格要件(要件充足の担保・失権リスク管理)
修正条文例:
第5条(権利行使価額の年間合計額の制限) 甲は、乙に対し、他の新株予約権契約に基づく権利行使予定額を事前に申告させるものとし、年間合計額が1200万円を超えると見込まれる場合には、乙と協議の上、行使時期を調整する。
一言解説: 1200万円の年間合計額は乙が保有する全ての税制適格ストックオプションを通算して判定されるため、複数回にわたり付与を受けている役職員については、本人からの自己申告と会社側の管理台帳による二重チェックが実務上重要である。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、非上場のスタートアップ等が役職員のインセンティブ設計として無償の新株予約権を発行し、権利行使時に給与課税等を生じさせず、株式売却時の譲渡益として一体的に課税されることを企図する場面で使用することを想定している。他方、発行時に金銭の払込みを受ける有償ストックオプションにはこの書式は適用されない(税制適格要件は無償発行を前提とする)。また、権利行使価額を付与時の時価未満に設定する場合は税制適格要件(時価以上であること)を満たさないため、この書式をそのまま使用することはできない。
根拠法令としては、税制適格ストックオプションの要件を定める租税特別措置法第29条の2、その委任を受けた租税特別措置法施行令第19条の3、新株予約権の内容の決定を定める会社法第236条、募集事項の決定を定める同法第238条、割当てに関する同法第239条を確認する必要がある。
実務でよくある失敗としては、第一に、行使期間の起算日を割当契約の締結日など会社法上の決議日と異なる日で設定してしまい、租税特別措置法上の要件を満たさなくなる例がある。対策として、起算日を新株予約権の内容を決定する株主総会又は取締役会決議の日に統一することが必要である。第二に、譲渡制限文言を新株予約権の内容(会社法第238条第1項第1号、第236条第1項第6号)として発行要項や登記事項に反映せず、割当契約書のみに記載してしまう例がある。対策として、発行要項及び登記事項の双方に譲渡制限の定めを反映することが求められる。第三に、権利行使後の保管委託契約の締結を失念し、税制適格要件を欠いてしまう例がある。対策として、行使手続のフローに保管委託契約の締結を前提条件として組み込んでおくことが有効である。
税制適格要件の充足性は税務当局による事後の判断に左右される部分もあるため、個別事案は専門家に確認の上で条項及び運用体制を確定することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 新株予約権が無償発行であることを発行要項及び本契約に明記したか(租税特別措置法第29条の2第1項柱書)
- [ ] 行使価額が付与決議時の1株当たり時価以上に設定されているか
- [ ] 行使期間が付与決議の日から2年経過後10年以内(一定要件を満たす場合15年以内)に収まっているか
- [ ] 権利行使価額の年間合計額が1200万円を超えないよう管理する仕組みを設けたか
- [ ] 新株予約権の譲渡禁止を契約書及び発行要項の双方に規定したか
- [ ] 付与対象者が甲又は要件を満たす子会社の取締役・執行役・使用人等に該当するか確認したか
- [ ] 社外高度人材に付与する場合、経済産業大臣の要件確認手続を予定しているか
- [ ] 保管委託契約の締結先金融商品取引業者等を特定し、行使前に締結する運用としたか
- [ ] 組織再編時の新株予約権の取扱いが租税特別措置法施行令第19条の3の要件を満たす設計か
- [ ] 会社法第236条第1項各号の新株予約権の内容決定事項を発行要項に漏れなく記載したか