借主が付加した空調や内装造作の買取請求権を放棄させる特約条項。借地借家法第33条の造作買取請求権が任意規定である点を踏まえ、退去時の撤去義務を明記。

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造作買取請求権放棄特約

第1部: 書式本文

造作買取請求権放棄特約

貸主【貸主氏名・名称】(以下「甲」という。)と、借主(テナント)【借主氏名・名称】(以下「乙」という。)は、甲乙間の下記建物賃貸借契約(以下「原契約」という。)に関し、次のとおり造作買取請求権放棄特約(以下「本特約」という。)を締結する。

第1条(原契約の特定) - 物件所在地: 【物件所在地】 - 物件名称・区画: 【建物名称・区画番号】 - 原契約締結日: 【原契約締結日】

第2条(造作の範囲) 本特約における「造作」とは、乙が原契約の存続期間中に本物件に付加した空調設備、内装、間仕切り、電気配線、給排水設備その他甲の承諾を得て設置した造作一切をいう。

第3条(造作買取請求権の放棄) 1. 乙は、借地借家法第33条第1項に定める造作買取請求権を、本物件のすべての造作について放棄する。 2. 乙は、原契約の期間満了、解約又は解除のいずれの事由により原契約が終了する場合であっても、前項の放棄の効力が及ぶことを確認する。

第4条(放棄の対象とする造作の例示) 本特約により買取請求権を放棄する造作には、次のものを含む。 - 空調設備(パッケージエアコン、業務用エアコン等) - 内装造作(壁面、床材、天井、間仕切り等) - 給排水設備(厨房設備、給湯設備等) - 電気設備(分電盤、配線、照明設備等)

第5条(退去時の撤去義務) 1. 乙は、原契約終了時、自己の費用負担で第2条の造作を撤去し、本物件を原契約締結時の状態(スケルトン状態を含む。)に原状回復して甲に明け渡す。 2. 甲が造作の存置を希望する場合、甲乙協議のうえ、当該造作を無償又は有償で甲に譲渡することができる。

第6条(本特約の説明) 甲は、本特約の締結にあたり、乙に対し、造作買取請求権が借地借家法上の権利であること、及び本特約により当該権利を放棄することの意味を説明し、乙はこれを理解した上で本特約に署名する。

第7条(協議事項) 本特約に定めのない事項は、甲乙誠実に協議して定める。

以上、本特約締結の証として本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各1通を保有する。

【締結日】

甲: 【住所】 【氏名・名称】 印 乙: 【住所】 【氏名・名称】 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節: 貸主向け(次のテナントへの再賃貸を円滑にしたい場合)

A-1 第5条の修正例 「乙は、本物件を退去する際、甲が次の賃借人への再賃貸のために造作の一部又は全部の存置を求めた場合、これに応じるものとし、この場合、乙は当該造作について買取りその他の対価を甲に請求しない。存置する造作の範囲は、退去の【 】か月前までに甲乙協議のうえ確定する。」 一言解説: テナントの入れ替わりが多い商業ビルのオーナーは、退去時に造作を無償で存置させ次のテナント募集に活用できる余地を残しておくことで、原状回復期間の短縮とリーシングコストの削減を図ることができる。

B節: 借主(テナント)向け(初期投資回収とのバランスを取りたい場合)

B-1 第3条への追加提案 「乙は、本特約により造作買取請求権を放棄する代わりに、原契約の賃料について契約締結後【 】年間、月額金【 】円の減額を受けるものとする。」 一言解説: テナント側は、造作買取請求権の放棄と引き換えに、初期投資の負担を賃料減額や工事協力金等の形で軽減する交渉を行うことが実務上一般的である。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

本書式は、店舗や事務所の賃貸借契約において、賃借人(テナント)が設置した空調設備や内装等の造作について、賃借人が有する造作買取請求権をあらかじめ放棄する特約を定める場面で使用する。居住用物件の賃貸借で内装造作の付加が想定されない場合や、造作を貸主が積極的に評価し買取りを予定している場合には、本特約の必要性は低い。

根拠法令は借地借家法第33条第1項である。同条は、建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した造作がある場合、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに、賃貸人に対し、時価でその造作を買い取るべきことを請求することができると定める。この造作買取請求権は、借地借家法第37条により強行規定とはされていないため、当事者間の特約によって排除することができる任意規定である。実務上、事業用の店舗・事務所賃貸借においては、原状回復義務(スケルトン返還)と造作買取請求権放棄特約をセットで定めることが一般的であり、テナントが多額の投資をして内装を施工した後に賃貸人へ買取りを強制されるリスクを排除する目的で用いられる。

実務でよくある失敗の一つ目は、造作買取請求権放棄特約を定めているにもかかわらず、原状回復義務(第5条)の範囲や原状回復の基準(スケルトン返還か、一定の内装を残すか)を明確にしておらず、退去時に「造作を撤去すべきか存置すべきか」で争いになることである。第5条のように、原則としてスケルトン状態への回復を義務付けつつ、貸主が存置を希望する場合の手続をあわせて定めておくことが有効である。

二つ目の失敗は、放棄の対象となる造作の範囲を曖昧にし、契約締結後に追加設置された設備が特約の対象に含まれるか否かで争いになることである。第2条・第4条のように、造作の定義と具体例を明記し、原契約締結後に新たに設置される造作にも特約の効力が及ぶことを明確にしておく必要がある。

三つ目の失敗は、造作買取請求権放棄特約について賃借人への説明を怠り、後日賃借人から「権利放棄の内容を理解していなかった」として特約の有効性が争われることである。造作買取請求権の放棄自体は任意規定の排除として原則有効と解されるが、消費者契約法が適用される場面(賃借人が個人で事業者との取引に該当しない場合等)や、著しく一方的な内容である場合には特約の効力が制限される可能性もあるため、第6条のように説明の機会を設け、その経緯を記録しておくことが望ましい。

四つ目の失敗は、造作買取請求権放棄特約と原状回復義務の条項が別々の書面に分散しており、両者の関係(放棄した上でさらに撤去義務も負うのか)が読み手にとって分かりにくくなることである。造作買取請求権の放棄は「造作を残置したまま対価を請求しない」という権利放棄であるのに対し、原状回復義務は「造作を撤去して原状に戻す」という別個の義務であるため、第5条のように両者を続けて規定し、放棄と撤去義務が併存することを明確にしておく必要がある。

造作買取請求権放棄特約の有効性は、賃借人の属性(事業者か消費者か)や契約締結の経緯によって評価が分かれうるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 放棄の対象となる造作買取請求権が借地借家法第33条に基づくものであることを明記したか
  • [ ] 造作の定義と具体例(空調・内装・給排水・電気設備等)を明記したか
  • [ ] 原契約締結後に追加設置される造作にも特約の効力が及ぶことを明記したか
  • [ ] 退去時の原状回復の基準(スケルトン返還等)を明確にしたか
  • [ ] 貸主が造作の存置を希望する場合の手続を定めたか
  • [ ] 賃借人への特約内容の説明経緯を記録する仕組みを設けたか
  • [ ] 賃借人の属性(事業者か消費者か)を確認し特約の有効性リスクを検討したか
  • [ ] 賃料減額や工事協力金等、造作放棄と引き換えの経済的手当てを検討したか
  • [ ] 期間満了・解約・解除いずれの終了事由にも放棄の効力が及ぶことを確認したか
  • [ ] 原契約本体との整合性(重複条項がないか)を確認したか