海外取引や公共調達を行う企業向け。接待・贈答の上限や事前承認を定め、不正競争防止法第18条の外国公務員贈賄罪と刑法の贈収賄規定に対応します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
贈収賄防止規程
第1部: 書式本文
第1条(目的) 海外事業及び官公庁との取引の拡大に伴い、【株式会社〇〇】(以下「会社」という。)の役員及び従業員が国内外の公務員等に対して不正な利益を供与し、又は供与しようとする行為を防止するため、本規程を定める。本規程は、刑法第197条以下の贈収賄罪、不正競争防止法第18条の外国公務員贈賄罪及び入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律(官製談合防止法)への抵触を防止することを目的とする。
第2条(定義) 1. 「公務員等」とは、日本国の公務員のほか、外国政府若しくは外国の地方公共団体の公務員、外国の政府関係機関若しくは公的国際機関の職員その他不正競争防止法第18条第2項に定める外国公務員等をいう。 2. 「不正な利益の供与」とは、公務員等に対し、その職務に関して金銭、物品、接待、便宜供与その他の経済的利益を提供し、又は提供を約束する行為をいう。 3. 「第三者」とは、会社の事業に関連して活動する代理店、販売店、コンサルタント、エージェントその他会社のために公務員等と接触する外部の者をいう。
第3条(適用範囲) 本規程は、会社の役員及び全従業員(海外駐在員、出向者を含む。)に適用するほか、会社が第三者を通じて業務を行わせる場合、当該第三者に対しても契約により本規程に準ずる義務を遵守させるものとする。
第4条(禁止行為) 役員及び従業員は、自ら又は第三者を利用して、次の各号に掲げる行為を行ってはならない。 一 公務員等に対し、職務上の行為をさせ、又はさせないようにする目的で金銭その他の利益を供与し、若しくは供与の申込み若しくは約束をすること 二 入札に関し、公務員等と通謀して入札価格その他の情報を得ること 三 前二号の行為を第三者に行わせ、又は第三者が行うことを知りながら黙認すること
第5条(接待・贈答の上限及び事前承認) 1. 役員及び従業員は、公務員等に対して接待又は贈答を行おうとするときは、あらかじめコンプライアンス部門の承認を得なければならない。 2. 公務員等に対する接待及び贈答の一件当たりの金額は、社会通念上儀礼の範囲を超えないものとし、【 】円を上限とする。 3. 現金又はこれに準ずる金券の供与は、いかなる名目であっても行ってはならない。
第6条(ファシリテーション・ペイメントの禁止) 通関手続その他の行政手続を円滑に進める目的で公務員等に対して行う少額の金銭の支払(いわゆるファシリテーション・ペイメント)についても、会社はこれを一切禁止する。
第7条(第三者の起用に関するデューデリジェンス) 1. 会社は、代理店、コンサルタント等の第三者を起用するに当たり、その実績、報酬体系及び公務員等との関係の有無について事前調査を行う。 2. 第三者に支払う報酬は、提供された役務の内容及び市場相場に照らして合理的な水準でなければならず、成功報酬の名目で不透明な高額報酬を支払ってはならない。 3. 会社は、第三者との契約書に本規程の遵守及び違反時の契約解除条項を含めるものとする。
第8条(帳簿記載の適正化) 接待、贈答及び第三者への支払は、その目的及び相手方を明記した上で正確に会計帳簿に記載し、目的を偽った記帳を行ってはならない。
第9条(通報・相談窓口) 役員及び従業員は、自己又は他の役員・従業員による本規程違反の疑いを認知したときは、内部通報窓口又はコンプライアンス部門に速やかに報告するものとする。
第10条(教育・研修) 会社は、海外事業に従事する役員及び従業員並びに官公庁取引を担当する部門に対し、年【1】回以上、贈収賄防止に関する教育研修を実施する。
第11条(違反時の措置) 本規程に違反した役員及び従業員に対しては、就業規則に基づく懲戒処分その他必要な措置を講じる。会社は、両罰規定(不正競争防止法第21条第7項及び第8項)により、従業員等の違反行為について法人としても罰金刑を科されるおそれがあることに留意する。
第12条(モニタリング) コンプライアンス部門は、接待・贈答の承認記録及び第三者への支払記録を、年【1】回以上サンプル検証する。
第13条(改廃) 本規程の改廃は、取締役会の決議による。
第14条(附則) 本規程は【西暦年】年【 】月【 】日から施行する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 海外展開企業向け(現地代理店を通じた事業展開を行う企業)
A-1 第7条の修正例 「海外現地法人が代理店を新規に起用する場合、本社コンプライアンス部門は、当該国における公務員贈賄の一般的リスク水準を踏まえたリスク評価シートの提出を現地法人に求め、承認を得た後でなければ契約を締結してはならない。」 一言解説: 国ごとの腐敗リスクは大きく異なるため、本社が一元的にリスク評価を行う仕組みを設けることで、現地任せの起用による見落としを防ぐ。
A-2 第10条の修正例 「海外駐在員として新たに赴任する者は、赴任前研修において、不正競争防止法第18条の外国公務員贈賄罪の構成要件及び罰則(個人につき5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又はその併科、法人につき3億円以下の罰金)について説明を受けるものとする。」 一言解説: 赴任前という接触機会の直前に具体的な罰則水準を伝えることで、現地慣習に流されやすい場面での抑止効果を高める。
B節: 官公庁取引企業向け(公共調達・入札に参加する企業)
B-1 第4条の修正例 「入札参加に当たり、発注者側職員との個別の接触は、原則として公式の説明会又は質問回答手続を通じてのみ行うものとし、非公式の面談を求められた場合は上長及びコンプライアンス部門に報告する。」 一言解説: 官製談合防止法が問題とする発注者側との不適切な接触を未然に防ぐため、接触経路自体を公式ルートに限定する規定を設ける。
B-2 第9条の修正例 「入札担当者は、発注者側職員から入札関連情報の示唆を受けた場合、直ちにその内容を書面化し、コンプライアンス部門及び当該入札からの離脱の要否について協議する。」 一言解説: 官公庁取引では談合の端緒となる接触が入札担当者個人に留まりやすいため、覚知した時点での即時報告と入札継続可否の判断プロセスを明記する。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本規程は、海外現地法人の設立や代理店経由での輸出を行う企業、又は国や地方公共団体の入札に参加する企業が導入すべきものであり、国内の民間企業のみを取引先とし公務員等との接点がほとんどない企業では、より一般的な倫理規程や取引先接待規程で足りる場合がある。
根拠法令は複数にまたがる。国内公務員に対する贈賄については刑法第197条(収賄)、第198条(贈賄)が基本となり、贈賄側は3年以下の拘禁刑又は250万円以下の罰金に処される。海外公務員への贈賄については、不正競争防止法第18条が外国公務員等に対する不正の利益供与を禁止しており、同法第21条には法人にも罰金刑を科す両罰規定が置かれている点が実務上特に重要である。すなわち、現場の担当者個人の違反であっても、会社が相当の注意を尽くしていなかったと評価されれば法人自体が処罰対象となり得る。また、官公庁との取引においては、発注者側職員と共謀して入札の公正を害する行為を禁じる官製談合防止法にも留意する必要がある。
実務でよくある失敗の一つ目は、代理店やコンサルタントといった第三者を介した贈賄リスクを軽視し、成功報酬名目の高額な支払が実質的な賄賂の原資となっていることに気づかないことである。第7条のようにデューデリジェンスと報酬の合理性審査を条項化することで、この種のリスクを可視化できる。二つ目は、現地の商慣習として少額の便宜供与(ファシリテーション・ペイメント)が広く行われている国において、社内で明確に禁止していないため現地担当者が自己判断で支払ってしまうことである。第6条のように名目を問わず一律禁止する条項を置くことが対策となる。三つ目は、接待・贈答の金額基準や承認手続を定めないまま運用し、後になって帳簿上の記載が実態と異なる(目的を偽った接待費計上等)ことが発覚し、贈賄の隠蔽と評価されるリスクを高めることである。第5条の金額上限と第8条の帳簿記載の適正化を組み合わせることで防止できる。贈賄罪・外国公務員贈賄罪の該当性は、供与の目的や職務関連性の評価に左右されるため、個別の接待・取引については事前に専門家へ確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 適用対象を役員・従業員に加え、代理店等の第三者にも契約上及ぼしているか
- [ ] 公務員等の定義に外国公務員及び公的国際機関職員を含めたか
- [ ] 接待・贈答の金額上限と事前承認手続を具体的に定めたか
- [ ] 現金・金券の供与を名目を問わず一律禁止としたか
- [ ] ファシリテーション・ペイメントの扱いを明記したか
- [ ] 代理店・コンサルタント起用時のデューデリジェンス手続を定めたか
- [ ] 第三者への報酬水準の合理性を審査する仕組みを設けたか
- [ ] 帳簿記載の適正化(目的・相手方の正確な記載)を義務付けたか
- [ ] 内部通報・相談窓口を明記したか
- [ ] 海外駐在員・入札担当者向けの教育研修の実施頻度を定めたか
- [ ] 両罰規定により法人が処罰対象となり得ることを役職員に周知しているか