取引先や従業員に贈収賄を行わない旨を誓約させる書式。不正競争防止法の外国公務員贈賄罪や刑法の贈収賄規定を踏まえ、接待・贈答の上限と報告義務を明記します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
贈収賄防止に関する誓約書
第1部: 書式本文
【会社名】(以下「会社」という)は、贈収賄の防止に関する社内方針を定め、【誓約者所属・氏名】(以下「本人」という)は、下記事項を誓約する。
第1条(目的) 本誓約書は、本人が業務遂行にあたり、贈収賄その他の不正な利益供与を行わないことを確認することを目的とする。
第2条(公務員等への金品等の供与禁止) 本人は、国内外の公務員又はこれに準ずる者(外国公務員を含む)に対し、職務上の行為をさせ若しくはさせないこと、又は不当な利益を得ることを目的として、金銭、物品、接待その他の利益を供与しない。
第3条(民間取引先への不当利益供与の禁止) 本人は、取引先の担当者に対し、取引上の便宜を得る目的で社会通念上相当な範囲を超える金品の供与又は接待を行わない。
第4条(接待・贈答の上限) 本人が取引先との関係で行う接待及び贈答は、会社の定める接待贈答基準に定める金額及び回数の上限を遵守する。
第5条(第三者を介した供与の禁止) 本人は、代理店、コンサルタント、仲介者その他の第三者を利用して、前2条に違反する行為を行わない。
第6条(便宜供与の要求に対する対応) 本人は、取引先又は公務員等から金品の要求、接待の要求を受けた場合、直ちにこれに応じることなく、コンプライアンス部門に報告する。
第7条(報告義務) 本人は、贈収賄に該当し又はそのおそれがある事実を認識したときは、速やかに会社の定める報告窓口に報告する。
第8条(記録の作成・保存) 本人は、接待及び贈答を行った場合、日時、相手方、金額、目的を記録し、会社の定める方法により保存する。
第9条(違反時の措置) 本人が本誓約に違反した場合、会社は就業規則に基づく懲戒処分その他必要な措置を講じることができる。
以上、本誓約書の内容を確認し、下記に署名する。
【署名日】 【誓約者所属・氏名】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 海外事業担当の立場から
海外事業では現地の商慣習と贈収賄規制の境界が曖昧になりやすいため、少額の謝礼や慣習的な贈答についても事前確認を要する旨を明記することが有効である。
修正例:「本人は、海外の取引先又は公務員等に対して金品を提供しようとする場合、金額の多寡にかかわらず事前にコンプライアンス部門の承認を得るものとする。」
一言解説:外国公務員贈賄罪は少額の利益供与であっても成立し得るため、金額基準よりも事前承認プロセスを重視した規定が実務的である。
B. 調達・購買担当の立場から
調達・購買担当者は取引先との接点が多く利益供与の温床になりやすいため、取引先選定プロセスにおける利害関係の申告義務を追加することが望ましい。
修正例:「本人は、取引先の選定又は評価に関与するにあたり、当該取引先との間に金銭的利害関係又は親族関係がある場合、事前にその旨を申告する。」
一言解説:利益相反の申告を制度化しておくことで、贈収賄に至る前段階の利害関係を可視化し予防につなげることができる。
C. コンプライアンス担当の立場から
コンプライアンス担当としては、違反が疑われる事案の調査協力義務を明記し、内部通報制度との連携を図ることが有効である。
修正例:「本人は、本誓約に関する調査が実施される場合、正当な理由なくこれに協力を拒まないものとし、調査結果は懲戒手続及び再発防止策の検討に用いられることを了承する。」
一言解説:調査協力義務を誓約書に組み込むことで、疑義事案の事実確認を迅速に行う根拠を確保できる。
コンプライアンス担当としては、贈収賄防止方針の実効性を確保するため、内部通報窓口を利用した場合に通報者が不利益を受けない旨をあわせて誓約書上で確認させることが望ましい。
修正例:「本人は、本誓約に関連する事実を内部通報窓口に通報したことを理由として、会社から不利益な取扱いを受けないことを確認する。」
一言解説:通報者保護を明記することで、贈収賄の兆候を早期に把握できる可能性が高まり、予防的効果を強化できる。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、従業員や取引先担当者に対し、公務員及び民間取引先への贈収賄・不正な利益供与を行わない旨を誓約させる場面で使用する。海外事業を展開する企業や、公共調達に関与する部署、代理店・エージェントを利用した営業活動を行う部署では特に重要性が高い。単なる社内の贈答マナーの周知にとどまる場合は、より簡易な社内通達で足りることもある。
根拠法令としては、不正競争防止法が外国公務員等に対する不正の利益の供与等を禁止しており、違反した場合は個人及び法人の両方が罰則の対象となり得る(いわゆる両罰規定)。国内公務員に対する贈賄については刑法第198条の贈賄罪が適用され、公務員側には同法第197条以下の収賄罪が成立し得るため、供与側・収受側の双方にリスクがある点を誓約書上でも意識させることが望ましい。また、会社法上、取締役等が会社の利益に反して不正な利益供与を行った場合は特別背任罪の問題も生じ得るほか、株主の権利行使に関する利益供与を行った場合は会社法第970条の利益供与罪が問題となる場合もある。
実務でよくある失敗として、第一に、接待や贈答を業務上の慣行として何の記録も残さず行い、後日その趣旨や金額の相当性を説明できなくなるケースがある。日時・相手方・金額・目的を記録する条項を設けることが対策となる。第二に、代理店やコンサルタントを介した支払いであれば会社の直接の関与がないと誤解し、第三者を通じた利益供与が発覚するケースがあり、第三者を利用した迂回行為も禁止の対象であることを明記する必要がある。特に海外の代理店に対する成功報酬が実質的な贈賄資金の原資となっていたと後日判明する事例もあるため、報酬体系の透明性を確認する運用もあわせて検討すべきである。第三に、取引先からの金品要求に応じてしまい、後にその事実が発覚してから報告するケースがあり、要求を受けた時点での即時報告義務を明確にしておくことが望ましい。
第四に、内部通報窓口の存在を知りながら、通報後に不利益な取扱いを受けることを恐れて事実を報告しない従業員が多く、贈収賄の兆候が経営層に届かないまま放置されるケースがある。通報者保護を明確に定め、周知することが対策となる。
贈収賄規制は国によって適用範囲や罰則が異なるため、海外取引を伴う場合は実際の運用にあたって弁護士等の専門家に個別に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 国内公務員及び外国公務員への利益供与禁止を明記したか
- [ ] 民間取引先への不当な利益供与の禁止を明記したか
- [ ] 接待・贈答の金額及び回数の上限基準を参照させたか
- [ ] 第三者(代理店・仲介者)を通じた迂回供与の禁止を明記したか
- [ ] 金品要求を受けた場合の即時報告義務を定めたか
- [ ] 接待・贈答の記録作成及び保存方法を定めたか
- [ ] 海外取引における事前承認プロセスを定めたか
- [ ] 利害関係の申告義務を定めたか
- [ ] 調査協力義務を明記したか
- [ ] 違反時の懲戒処分等の措置を明記したか
- [ ] 内部通報窓口の利用と通報者保護を明記したか
- [ ] 誓約対象者の範囲(従業員・取引先担当者)を明確にしたか