社会課題の解決や公益的な活動を継続的に行うために法人化を検討する際、NPO法人(特定非営利活動法人)と一般社団法人のどちらを選ぶべきか迷う担当者は多い。両者はいずれも非営利の活動を行える法人形態であるが、設立手続の煩雑さ、活動分野の制約、情報公開義務、税制上の取扱いなどに違いがある。本記事では、両者の違いを整理し、活動内容に応じた選び方の視点を提供する。
NPO法人と一般社団法人の基本的な違い
NPO法人は特定非営利活動促進法にもとづき、所轄庁(都道府県または指定都市)の認証を受けて設立する法人である。一方、一般社団法人は一般社団法人及び一般財団法人に関する法律にもとづき、公証人による定款認証と登記のみで設立できる法人である。両者の主な違いを整理すると次のとおりである。
| 比較項目 | NPO法人 | 一般社団法人 |
|---|---|---|
| 設立手続 | 所轄庁の認証+登記(認証には一般に数か月程度を要する) | 定款認証+登記のみ(比較的短期間で設立可能) |
| 活動分野の制約 | 特定非営利活動促進法が定める活動分野(保健・医療・福祉、環境保全等)に該当する必要 | 活動分野の制約は基本的にない |
| 社員(会員)の人数要件 | 設立時10人以上の社員が必要 | 設立時2人以上の社員(設立者)で足りる |
| 情報公開義務 | 事業報告書等を所轄庁へ提出し、閲覧に供する義務がある | 法定の情報公開義務は比較的限定的 |
| 税制優遇 | 認定NPO法人になれば寄付金税制等の優遇がある | 非営利型の要件を満たせば収益事業課税の優遇があるが、認定NPO法人のような寄付金優遇は原則ない |
設立手続の流れと所要期間
NPO法人の設立には、定款・設立趣旨書・事業計画書等の必要書類を整え、所轄庁に認証申請を行う必要がある。認証申請後、一般的には縦覧期間(住民等が申請内容を確認できる期間、多くの自治体で1か月程度)を経て、その後所轄庁による審査が行われ、認証までにあわせて数か月程度を要することが多い。認証後、法務局での設立登記を経て法人が成立する。
一方、一般社団法人は、定款を作成し公証人の認証を受けたうえで、法務局に設立登記を申請すれば足り、認証手続のような行政庁の審査を経る必要がない。そのため、迅速に法人格を取得したい場合には、一般社団法人の方が短期間での設立が可能な傾向にある。
活動内容による選択の視点
NPO法人は、特定非営利活動促進法が定める活動分野(保健・医療・福祉の増進、社会教育の推進、まちづくりの推進、環境の保全など、法律上列挙された分野)に該当する活動を主たる目的とする必要がある。該当する活動を行う団体であれば、NPO法人としての社会的認知や、寄付・助成金を受けやすいというメリットが期待できる場合がある。
他方、活動内容が法定分野に明確に該当しない場合や、機動的な意思決定・事業展開を優先したい場合には、一般社団法人の方が適していることがある。たとえば、業界団体、同窓会組織、研究会、特定のビジネスモデルを伴う社会的事業などでは、活動の自由度が高い一般社団法人が選ばれる例が見られる。
運営上の義務・情報公開の違い
NPO法人は、毎事業年度終了後、事業報告書・活動計算書・貸借対照表等を所轄庁に提出し、これらの書類は所轄庁や法人の事務所において公衆の縦覧に供されることが原則とされている。この情報公開の仕組みは、NPO法人の透明性を担保する一方、事務負担として認識されることもある。
一般社団法人にも計算書類の作成・備置義務はあるが、NPO法人ほど広範な公衆縦覧の仕組みは法律上求められていない(もっとも、非営利型として税制優遇を受ける場合や、公益認定を目指す場合には、別途の情報公開が求められることがある)。
税制上の取扱いの違い
NPO法人・一般社団法人のいずれも、収益事業から生じた所得については法人税の課税対象となるのが原則である。一般社団法人については、剰余金の分配を行わない旨等の非営利型の要件を満たすことで、収益事業以外の所得を非課税とする扱いを受けられる場合がある。
NPO法人のうち、一定の要件を満たして所轄庁から認定を受けた「認定NPO法人」になると、寄付者が寄附金控除等の税制優遇を受けられるようになり、寄付を募りやすくなるというメリットがある。もっとも、認定NPO法人になるためには、パブリック・サポート・テスト(一定割合以上の寄付を広く多数から受けていること等)をはじめとする厳格な要件を満たす必要があり、認定を受けている法人は全体の一部にとどまる。
法人形態選びのチェックリスト
法人形態を検討する際は、次のような観点で整理すると判断しやすい。
- 活動内容が特定非営利活動促進法の定める分野に明確に該当するか
- 設立までのスピード感がどの程度重要か
- 寄付・助成金を主な収入源として想定しているか
- 情報公開・事務負担についてどの程度の体制を割けるか
- 将来的に公益認定や認定NPO法人化を目指す可能性があるか
よくある失敗パターン
- 活動内容が法定分野に該当するか十分確認しないままNPO法人としての認証申請を行い、所轄庁から補正を求められて設立が大幅に遅れた
- 迅速な事業開始を優先して一般社団法人を選んだが、想定していた助成金がNPO法人限定の制度であったため申請できなかった
- NPO法人設立後、事業報告書の提出を失念し、所轄庁から改善命令等の指摘を受けた
- 非営利型一般社団法人の要件を理解しないまま運営を行い、後に要件を満たしていないことが判明して税務上の扱いが変わった
- 社員(会員)の人数要件を満たすための名目的な会員集めを行い、実質的な団体運営の実態と乖離が生じた
公益社団法人・公益財団法人という選択肢
一般社団法人・一般財団法人として設立した後、公益目的事業を行う法人として一定の基準を満たせば、行政庁(内閣府または都道府県)の認定を受けて「公益社団法人」「公益財団法人」に移行することも可能である。公益認定を受けると、税制上の優遇(収益事業以外の非課税範囲の拡大、寄付金税制の適用等)を受けられる一方、公益目的事業比率(事業費用の50%以上を公益目的事業に充てること等)や、収支相償の原則など、運営上の厳格な基準を継続的に満たす必要がある。
NPO法人の認定NPO法人化と、一般社団法人の公益認定は、いずれも高いハードルを伴う制度であるため、設立当初から目指すというよりは、一定の活動実績を積んだ段階で検討されることが一般的である。
設立後の運営でよく直面する論点
法人形態を問わず、非営利法人の運営では次のような論点に直面することが多い。
| 論点 | 整理のポイント |
|---|---|
| 収益事業とみなし規定 | 会費収入・事業収入のうち、法人税法上の収益事業に該当する範囲の見極め |
| 役員報酬の設計 | 非営利性を損なわない範囲での役員報酬の設定(社員への剰余金分配の禁止との関係) |
| 社員総会・評議員会の運営 | 定款に定めた招集手続・決議要件の遵守 |
| 事業報告・情報開示 | 決算関係書類の作成・備置・提出義務の履行状況 |
特に収益事業の範囲の見極めは、法人税の課税・非課税を左右する重要な論点であり、事業内容によっては税理士への相談が不可欠である。会費や寄付金であっても、対価性のある取引と評価される場合には収益事業の収入とみなされることがあるため、注意が必要である。
よくある質問
Q. NPO法人と一般社団法人のどちらが社会的信用を得やすいですか。
一概にどちらが信用を得やすいとは言い切れない。NPO法人は認証手続や情報公開の仕組みにより一定の透明性が担保されている点で信用を得やすい面がある一方、一般社団法人であっても事業実績や情報開示の取り組みによって社会的信用を高めることは可能である。信用の獲得は法人形態そのものよりも、実際の事業運営や情報発信のあり方に左右される部分が大きいと考えられる。
Q. 一般社団法人からNPO法人へ、後から組織変更することはできますか。
一般社団法人からNPO法人への直接の組織変更手続は、法律上用意されていない。実務上は、新たにNPO法人を設立し、事業や資産を移管するという方法が検討されることが多いが、資産移管に伴う税務上の取扱いなど検討すべき論点が多い。組織形態の変更を検討する場合は、事前に税理士・弁護士等の専門家に相談することが望ましい。
Q. 認定NPO法人になるにはどのくらいの期間活動実績が必要ですか。
認定NPO法人の認定を受けるためには、一般的に設立から一定期間(多くの制度で概ね1年以上)の事業実績があり、パブリック・サポート・テストなどの要件を満たしていることが求められる。要件の詳細や自団体が満たしているかどうかの判断は、所轄庁への確認や、認定NPO法人の実務に詳しい専門家への相談を通じて行うことが確実である。
まとめ
NPO法人と一般社団法人は、いずれも非営利活動を行うための法人形態であるが、設立手続の煩雑さ、活動分野の制約、情報公開義務、税制優遇の内容が異なる。活動内容が特定非営利活動促進法の定める分野に該当するか、設立のスピード感をどの程度重視するか、寄付・助成金への依存度はどの程度かといった観点から、自団体の活動実態に合った形態を選ぶことが重要である。法人形態の選択や設立手続の詳細については、行政書士・税理士・弁護士等の専門家に相談することが望ましい。
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