産業廃棄物の処理を外部業者に委託する事業者は、廃棄物処理法上の委託基準に従って委託を行う義務を負う。委託基準を満たさない委託は、排出事業者自身が委託基準違反として行政処分や罰則の対象となり得るほか、委託先の不適正処理が発覚した場合に排出事業者としての責任が問われる契機ともなる。本記事では、委託基準の具体的な内容と、委託先の処理施設に対する現地確認の実施頻度・記録方法を中心に、排出事業者の実務担当者向けに整理する。
委託基準の全体像
廃棄物処理法12条5項・6項および同法施行令6条の2は、産業廃棄物の処理を委託する際に事業者が遵守すべき委託基準を定めている。委託基準の主な内容は、次のように整理できる。
- 委託しようとする産業廃棄物の処理(収集運搬・処分)について、都道府県知事等の許可を受けた業者に委託すること
- 委託する処理内容が、委託先の許可の範囲(取り扱うことのできる廃棄物の種類、事業の範囲)に含まれていること
- 収集運搬業者と処分業者が異なる場合、それぞれと個別に委託契約を締結すること
- 委託契約は書面により行い、法定記載事項を満たすこと
- 委託契約の締結にあたり、産業廃棄物管理票(マニフェスト)の運用体制を確保すること
委託基準に違反した委託(無許可業者への委託、許可範囲外の廃棄物の委託等)を行った場合、排出事業者自身が委託基準違反として措置命令や罰則の対象となり得る。委託先の許可の有無を確認しないまま契約を締結することは、委託基準違反リスクの典型例であり、契約締結前に許可証の写しを取得し、許可の有効期限と許可品目を必ず確認する必要がある。
委託契約書の必要記載事項
委託契約書には、廃棄物処理法施行令6条の2等が定める事項を記載する必要があるとされる。主な記載事項を整理すると、次のとおりである。
| 記載事項の区分 | 主な内容 |
|---|---|
| 廃棄物の種類・数量 | 委託する産業廃棄物の種類、予定数量 |
| 運搬に関する事項 | 運搬の最終目的地の所在地、運搬方法、運搬先の名称・所在地 |
| 処分に関する事項 | 処分方法、処分施設の所在地・処理能力、処分後に生じる産業廃棄物の種類・数量 |
| 許可に関する事項 | 受託者の事業の範囲、許可番号、許可の有効期間 |
| 適正処理のための情報 | 廃棄物の性状、荷姿、取扱い上の注意事項等(WDS:廃棄物データシート等の活用が推奨される場合がある) |
| 契約期間・料金 | 委託契約の有効期間、委託料金 |
| 契約終了時の措置 | 契約解除時の未処理廃棄物の取扱い等 |
これらの記載事項を欠く委託契約書は、委託基準違反と評価されるおそれがある。市販のひな形や産業廃棄物処理委託契約書テンプレートを利用する場合であっても、実際に締結する委託先・廃棄物の内容に応じて、記載事項に漏れがないかを個別に確認することが重要である。
処理施設の現地確認の位置づけ
廃棄物処理法上、委託先の処理施設を実際に訪問して確認すること(現地確認、実地確認)そのものは、委託基準として一律に義務付けられているわけではなく、排出事業者の努力義務として位置づけられているとされる。もっとも、現地確認を行わずに委託先の実態を把握しないまま委託を継続した結果、不適正処理や不法投棄が発覚した場合、排出事業者が委託先の選定・管理について注意を怠っていたと評価されるリスクがある。実務上は、リスク管理の観点から、現地確認を委託先選定時・契約更新時の重要なプロセスとして位置づけている企業が多い。
現地確認の実施頻度の考え方
現地確認をどの程度の頻度で実施すべきかについて、法令上の一律の基準は設けられていないと考えられるが、実務上の目安としては、次のようなタイミングでの実施が挙げられる。
| 実施タイミング | 確認の目的 |
|---|---|
| 新規委託先の選定時 | 許可内容と実際の処理能力・処理方法の一致、施設の稼働状況の確認 |
| 契約更新時(定期) | 施設の稼働状況・許可内容に変更がないかの継続的な確認 |
| マニフェストの返送遅延・異常時 | 処理状況に疑義が生じた場合の実態確認 |
| 委託量・委託内容を大きく変更する時 | 変更後の処理能力・許可範囲の確認 |
多くの企業では、年1回程度を目安とした定期的な現地確認に加え、新規委託先の選定時には必ず現地確認を実施するという運用を採用している例が見られる。委託する廃棄物の種類(特別管理産業廃棄物等、処理の難易度が高いもの)や、委託量が多い主要な委託先については、より高い頻度での確認を検討することが望ましいと考えられる。
現地確認の実施方法と記録
現地確認を実施する際は、確認項目をあらかじめチェックリスト化し、確認結果を記録として残しておくことが重要である。確認すべき主な項目としては、次のようなものが挙げられる。
- 処理施設の許可証の原本(または写し)と、実際の施設・処理内容が一致しているか
- 処理施設の稼働状況(処理量、保管状況、保管上限を超えていないか)
- 搬入されている廃棄物の種類が許可品目の範囲内か
- 処理工程(破砕、焼却、中間処理等)が委託契約書の記載内容と一致しているか
- 最終処分先(委託先が処分業者に再委託している場合の再委託先)の把握状況
- 施設の周辺環境(異臭、汚水の流出等、不適正処理を疑わせる兆候の有無)
現地確認の結果は、訪問日時、確認者、確認項目ごとの結果、写真等の記録として残し、一定期間保管しておくことが望ましい。記録を残しておくことで、後日不適正処理が発覚した場合に、排出事業者として委託先の管理に努めていたことを説明する材料にもなり得る。処理施設現地確認記録テンプレートのような様式を用いて、確認項目を標準化しておくと、担当者による確認のばらつきを抑えることができる。
収集運搬業者との契約における留意点
処分業者だけでなく、収集運搬業者との委託契約についても、委託基準・記載事項の遵守が求められる。収集運搬のみを行う業者については、処分施設のような大規模な設備を持たないことが多いが、次の点を確認しておく必要がある。
- 運搬車両・運搬ルートが許可内容(積替え・保管の有無等)と整合しているか
- 積替え保管施設を経由する場合、当該施設についても許可の範囲内で行われているか
- 収集運搬業者と処分業者が異なる場合、それぞれと別個の契約書を締結しているか(産業廃棄物収集運搬委託契約書テンプレート等の活用も考えられる)
収集運搬業者と処分業者を一つの契約書にまとめて締結する運用は、原則として認められないとされており、誤って一本化した契約書を使用しているケースが実務上見受けられるため注意が必要である。
よくある失敗パターン
産業廃棄物の委託基準対応・現地確認をめぐっては、次のような失敗が実務上しばしば見られる。
- 委託先の許可証を契約締結時に一度確認したのみで、その後の許可更新状況(有効期限切れ)を継続的にチェックしていなかった
- 委託契約書の記載事項のうち、処分後に生じる産業廃棄物の種類・数量など、見落としやすい項目が漏れたまま契約を締結していた
- 現地確認を一度も実施しないまま長期間にわたり同一業者に委託を続け、委託先の実態(処理能力を超えた受入れ等)を把握できていなかった
- 現地確認を実施したものの、確認項目をその場限りの目視にとどめ、記録を残していなかったため、後日の説明資料として活用できなかった
- 収集運搬業者と処分業者の契約を一本化してしまい、委託基準違反の指摘を受けるおそれのある状態になっていた
よくある質問(FAQ)
Q1. 処理施設の現地確認は、法律上必ず実施しなければなりませんか。
現地確認そのものは、廃棄物処理法上、排出事業者の努力義務として位置づけられているとされ、一律に義務付けられているわけではないと考えられる。もっとも、現地確認を行わずに委託先の実態を把握しないまま不適正処理が発覚した場合には、排出事業者としての注意義務が問われるリスクがあるため、リスク管理の観点から実施することが望ましい。
Q2. 現地確認はどのくらいの頻度で行えばよいですか。
法令上の一律の頻度基準は設けられていないと考えられるが、実務上は、新規委託先の選定時に必ず実施し、既存の委託先についても年1回程度を目安に定期的な確認を行う運用が広く見られる。委託量が多い主要な委託先や、特別管理産業廃棄物など処理の難易度が高い廃棄物を委託する場合には、より高い頻度での確認を検討することが考えられる。
Q3. 収集運搬業者と処分業者を1通の契約書にまとめて締結することは可能ですか。
原則として、収集運搬業者と処分業者が異なる場合には、それぞれと個別に委託契約を締結する必要があるとされている。1通の契約書にまとめて締結する運用は委託基準違反と評価されるおそれがあるため、契約書の作成にあたっては契約主体ごとに書面を分けることが望ましい。
まとめ
- 委託基準は、許可業者への委託、許可範囲内の委託、書面による契約と法定記載事項の充足を求めており、違反すると排出事業者自身が処分の対象となり得る
- 委託契約書には、廃棄物の種類・数量、運搬・処分の内容、許可情報、契約期間・料金等の法定記載事項を漏れなく記載する必要がある
- 処理施設の現地確認は法律上一律の義務ではないが、努力義務として位置づけられ、リスク管理の観点から実施が推奨される
- 現地確認は新規委託時・定期(年1回程度が目安)・異常時に実施し、チェックリストと記録を用いて確認内容を標準化することが望ましい
- 収集運搬業者と処分業者は原則として別個の契約書で委託する必要があり、一本化した契約書の使用は避けるべきである
委託先管理の実務には産業廃棄物処理委託契約書や処理施設現地確認記録が参考になる。
本記事は一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではありません。本記事の内容は執筆・更新時点の法令・裁判例等に基づいており、その後の法改正等により内容が現状と異なる場合があります。本記事の内容に基づいて行った行為の結果について、株式会社リーガリスト(以下「当社」)および監修者は一切の責任を負いかねます。個別の事案については、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。
[要確認事項] - 委託契約書の法定記載事項(廃棄物処理法施行令6条の2等)の条文根拠・記載範囲について、最新の法令に基づく監修者確認が必要。 - 現地確認の努力義務としての位置づけ、および実務上推奨される頻度の記載について、監修者による正確性の確認が必要。