輸出の実務で最初に直面するのが「該非判定」である。取引先の商社や通関業者から「該非判定書を出してください」と求められ、何をすればよいか分からず出荷が止まるケースは珍しくない。該非判定は、自社の製品が外為法のリスト規制に該当するかどうかを判定する作業であり、輸出者自身が責任を持って行う必要がある。本記事では、中小企業が最低限行うべき該非判定の手順と、判定書の作り方を解説する。

該非判定とは

該非判定とは、輸出しようとする貨物・技術が、輸出貿易管理令別表第1(貨物)または外国為替令別表(技術)の1項から15項に掲げられた規制品目に該当するか否かを判定する作業である。「該当」であれば、仕向地を問わず経済産業大臣の輸出許可が必要になる。「非該当」であれば、次にキャッチオール規制(16項)の確認に進む。

該非判定は輸出者の責任で行うものであり、通関業者や商社が代わりに判定してくれるわけではない。メーカーから部品を仕入れて輸出する場合でも、最終的な判定責任は輸出者にある。

該非判定の基本手順

手順1: 判定対象を特定する

まず、輸出する貨物の品名・型式・仕様を確定する。製品本体だけでなく、付属品、予備部品、取扱説明書、組込ソフトウェアも判定対象になる。複数の部品で構成される製品は、完成品としての判定に加え、個別部品の判定が必要になる場合がある。

手順2: 該当し得る項番を絞り込む

輸出貿易管理令別表第1の1〜15項は、品目の種類ごとに分類されている。例えば、工作機械は2項(原子力関連)や6項(先端材料・工作機械関連)、電子部品は7項(電子関連)、コンピュータは8項、通信・暗号は9項といった具合である。自社製品がどの項番に関係し得るかを、経済産業省が公開する「貨物・技術のマトリクス表」等で確認する。

手順3: パラメータシートで仕様を比較する

項番を特定したら、貨物等省令で定められた仕様(スペック)と自社製品の仕様を比較する。この比較作業を支援するのが「パラメータシート」であり、一般財団法人安全保障貿易情報センター(CISTEC)等が項番ごとに様式を公開している。パラメータシートの各項目に自社製品の値を記入し、全ての規制値を下回れば「非該当」、一つでも規制値を満たせば「該当」となる。

手順4: 非該当の場合はキャッチオール規制を確認する

リスト規制に非該当であっても、仕向地がグループA以外の場合は、用途要件と需要者要件を確認する。具体的には、輸出先が外国ユーザーリストに掲載されていないか、用途に懸念がないか、取引に不自然な点(過大な仕様要求、現金決済への固執、最終需要者の秘匿等)がないかをチェックする。

手順5: 判定結果を文書化して保存する

判定の結果と根拠を「該非判定書」として文書化し、保存する。判定書は取引先から求められることが多く、税関からの照会にも備える必要がある。

該非判定書の記載事項

該非判定書に法定の様式はないが、実務上は次の項目を記載するのが一般的である。

記載項目 内容
判定対象 品名、型式、数量、製造者
判定結果 該当/非該当、該当の場合は項番
判定根拠 参照した項番・貨物等省令の条項、パラメータシートの比較結果
判定者 判定者氏名、判定日、責任者の承認
有効期限 法令改正や仕様変更があった場合は再判定が必要である旨

判定書には、パラメータシートや製品仕様書を添付し、後から判定過程を検証できるようにしておくことが望ましい。

判定が難しい場合の対応

自社で判定が困難な場合、次の方法がある。

  • 部品メーカーへの照会: 仕入部品については製造元に該非判定書の提供を依頼する
  • CISTECの相談窓口: 会員向けに該非判定に関する相談サービスを提供している
  • 経済産業省への事前相談: 判定が困難な場合、安全保障貿易審査課等に相談することができる
  • 専門コンサルタント・行政書士: 該非判定の代行や支援を業務とする専門家に依頼する

ただし、外部に判定を依頼した場合でも、最終的な責任は輸出者にある点は変わらない。外部の判定結果をそのまま採用するのではなく、根拠を確認したうえで自社の判定として文書化することが望ましい。

包括許可の活用

同じ品目を継続的に輸出する場合、輸出のたびに個別許可を申請するのは負担が大きい。一定の要件を満たす企業は、複数の輸出をまとめて許可する「包括許可」を取得できる。包括許可には、一般包括許可、特別一般包括許可、特定包括許可などの種類があり、対象品目・仕向地が異なる。

包括許可の取得には、輸出管理内部規程を整備して経済産業省に届け出ていることが要件になる。内部規程の整備は該非判定の手順を社内で標準化することにもつながるため、継続的に輸出を行う企業は早期の整備を検討することが望ましい。

よくある失敗例

  • 取引先から該非判定書を求められて初めて制度を知り、出荷が数週間止まる
  • 過去の判定書を使い回し、製品仕様の変更や法令改正による再判定を怠る
  • 完成品だけ判定し、同梱する予備部品やソフトウェアの判定を漏らす
  • 通関業者が「非該当」で申告してくれると誤解し、自社で判定を行わない

よくある質問(FAQ)

Q1. 該非判定書には決まった様式がありますか。

法定の様式はない。ただし、実務上はCISTECや業界団体が公開する様式が広く使われており、取引先から特定の様式を指定されることもある。記載事項が網羅されていれば、自社様式でも差し支えないと考えられる。

Q2. 該非判定書の有効期限はどれくらいですか。

法令上の有効期限はないが、法令改正や製品仕様の変更があれば再判定が必要になる。実務上は1年程度を目安に見直す運用が多いとされる。判定書に判定日と参照した法令のバージョンを明記しておくことが望ましい。

Q3. 「非該当」の判定書があれば、どこにでも輸出できますか。

リスト規制に非該当であっても、グループA以外の仕向地についてはキャッチオール規制の確認が別途必要になる。また、米国製部品を含む製品は米国の再輸出規制(EAR)の対象になる場合もある。非該当判定はあくまで日本のリスト規制に関する判定であり、輸出可否の全てを保証するものではない。

まとめ

該非判定は輸出者自身の責任で行う作業であり、手順を標準化しておくことで出荷遅延のリスクを減らせる。

  • 判定対象は完成品だけでなく、部品・付属品・ソフトウェアも含まれる
  • 項番の特定、パラメータシートによる仕様比較、キャッチオール確認の順で進める
  • 判定結果と根拠を該非判定書として文書化し、仕様書等とともに保存する
  • 外部に判定を依頼しても、最終責任は輸出者にある
  • 継続的に輸出する場合は内部規程を整備し、包括許可の取得を検討する

判定手順を社内規程に落とし込む際は、安全保障輸出管理規程テンプレート輸出管理誓約書テンプレート、個別取引の条件を定める個別売買契約書(インコタームズ対応)テンプレートも参考になる。制度の全体像は関連記事「安全保障貿易管理(外為法)の基礎」を参照されたい。

本記事は一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではありません。本記事の内容は執筆・更新時点の法令・裁判例等に基づいており、その後の法改正等により内容が現状と異なる場合があります。本記事の内容に基づいて行った行為の結果について、株式会社リーガリスト(以下「当社」)および監修者は一切の責任を負いかねます。個別の事案については、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。

[要確認事項] - 各項番と品目分類の対応(2項・6項・7項・8項・9項)は、最新の輸出貿易管理令別表第1で確認が必要。 - 包括許可の種類・名称は制度改正で変更されることがあるため、経済産業省の最新案内と照合すること。 - CISTECの相談サービスの提供条件(会員限定か否か)は要確認。